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脱走

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「突き止めてしまうなんて、凄いですね。」

 こんな状況で褒められても全く嬉しくない。

「ところで、君って、陽太郎くんって子?」

「いいえ、陽太郎ではありません。」

「じゃあ、あのノートを書いた人?」

「いいえ、あのノートを書いたのは蛍です。私ではありません。」

「では、あのノートを拾った人?」

「そうです。」

 僕はその仮面の人と距離を取りながら、ジリジリと後退する。

 全く何を考えているのか、分からない。

「僕は実は夏木って名前で……。」

「ご成婚されていたのですね。おめでとう御座います。」

 また、嘘がバレた。

「最近、この辺に引っ越してきた者でして、」

「では住民票の手続きをしないといけませんね。どうです。ここは町役場なのですぐ出来ますよ。」

 なんとか、一瞬の隙でもできれば、

「そう言えば、この村の人ってどちらにいらっしゃるんですかね。ご挨拶の方をしたいのですが……。」

「あなた、この村の秘密を突き止めたんでしょう?それなら知っていても当然だと思いますがね。」

 本当になんとか。

「ところで、」

「何でしょう。」

「拳銃はどちらにあるのでしょうか?」

 その時、僕は仮面の人の隣を素早く通り抜け、部屋の扉に真っ直ぐに突き進む。

 どうやら、今の一言に動揺して、動けなかったらしい。

 僕は部屋を出てすぐにあった、ベンチで扉を塞いだ。

 そのあと、すぐに扉を烈火の如く叩く音が中から響く。

 僕はその扉の前にもう枯れた観葉植物と金属製のロッカーを足して、その場から走って離れた。

「逃さないよ。高木京介!」

 そんな叫び声が聞こえ、僕が後ろを振り返ると、無数のドローンが迫ってくる。

 どうやら、あの仮面の人が操っているらしい。

「あんな数操るなんて、これもファイヤみたいなものか?」

 そのドローンの体当たりを避けつつ、僕は出口を求め走り続ける。

 どこだ?どこに出口が、それよりあのドローンをなんとかしないと……。そうだ!

 僕はとある部屋に進んでいく。さっきの倉庫の部屋だ。

 この部屋に滑り込んでいく。ドローンも間髪入れずに続くが、余りの暗闇に、僕の姿を見失った。

 今だ。

 僕は倉庫から出て、扉を閉める。そして、またさっきの様に近くあったものを適当に置いた。

 ドローンが扉に体当する音がひっきりなしに響く。

 僕は急いで階段を登り、図書館の窓を確かめる。

「良かった。まだここは開く。」

 そして、僕は窓から飛び出した。





 アパートに戻って、二針学校の生徒を全員確認してみたが、なんと全員いた。

 僕はさっきのは夢だったのかと、涼波に買ってきたものを渡して、自分の部屋に行く。

 そして、汗でベトベトになった服を着替えようとした時、胸ポケットに紙が入っていた。

 そこには、

「明日の夜、零時二分。二針病院の前にて待つ。今日はゆっくりとおやすみなさい。」

 と書いてあった。





今回は、最初から霧は晴れていた。

そして、あのドアノブを力を入れて回そうとしているが動かない。

まぁ、この夢はきっと……。

その時、そのドアの向こう側から声が聞こえた。

僕はドアに耳を押し付け、聞く。

「私の娘は一体いつ目覚めるのですか?私の娘はこのプロジェクトに参加していないぞ!」

この声は聞いたことのある声だった。

多分あの人だ。という事は……。

「まだ分かりません。というより彼女次第ですよ。どんなに起こそうと刺激を与えてもまるで反応がない。まるで起きるのを拒んでいるみたいです。実際、そうなのでしょう。」

その時、点と点が繋がった。
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