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夏
トンネル
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白い霧の中に僕は立っていた。
今度は意識がはっきりとしている。
ただ、僕は動くことが出来ずずっと立っている。
そして、僕は夢から覚めた。
次の日、僕と涼波は学校に行って、パソコンを操作していた。
「やはり、別のサイトにアクセス出来ないな。」
学校に会ったパソコンには、学校に必要なサイト以外アクセスできない様になっていて、メールを送ることが出来なかった。
僕と涼波は学校が終わった後、アパートに荷物を置き、外に出ていた。
手につけていたデジタル時計は二時五十六分を表示している。
「そう言えば、今朝学校前にどっか行ってたみたいだけど、何処行ってたの?」
「まぁ、ある所にね。」
「私に隠し事は……。」
「すぐに分かるから、ちょっと待ってて。」
涼波は僕の背負っているリュックが気になるようだった。
「で、そのトンネルは何処にあるのか、検討がついている場所って?一応ペンライトは持ってきたけど……。」
「あぁ、こっち。ついてきて。」
そう言って僕は坂道を指差す。
「この先にはせいぜい病院がある位だと思うけど……。」
「いや、もっと先。」
そう言って、僕たちは坂道を登り始めた。
「そもそも、トンネルは何の為にあるのかって話なんだけど……。」
「雪国にでも行くためじゃないの?」
川端康成か、と思いつつ話し続ける。
「まぁ、端的に言うと、道と道を繋げる為、といえば良いかな。変な話、トンネルは道の途中に無いと意味がないんだ。で、この村には、まともな道は一本ぐらいしか無い。」
そう、病院、アパート、二針学校、二針商店の側に通っているこの道しか存在しない。
「で、この道の途中にはトンネルは無い為、この道の両端のどっちか、病院が近いからこっちの方が可能性が高いのと、単純にアパートから近い上の方の端から調べる。」
涼波はなるほどねぇ、と声に漏らしながら登っていく。
「なんで、病院が近いとトンネルが近くにある可能性が高いの?」
「だって、病院には救急車が来る可能性があるじゃん。交通の便が比較的いい所に病院は作ると思うし、多分下の二針商店、仕入れとかドローンで配達されてそうだしね。それならトンネルの近くに作る必要ないし。」
ドローンによって適当に陳列されていたのなら、あの変な商品配置も分かる。
そうこうしている内に道の端まで来た。コンクリートの先はサラサラな土になっていて、前には鬱蒼とした茂みが占拠していた。
さてと、と言って僕はリュックを下ろす。
僕はリュックから鎌を取り出した。
涼波は何か不思議に思ったらしく、僕に訊いてきた。
「そんな鎌、どこにあったの?アパートにはなかったような気がするけど……。」
「コレは今朝、二針商店で買ってきた。」
「へぇ、用意が良いね。」
「わざわざ、トンネルを開けたってことは、山の麓なんかあるのかなって思って、そして長い年月が経っているなら、植物がトンネルの入口を塞いでいるかもって思って……。」
僕は、鎌を振りあげて、茂みを切り落とす。
二、三十分くらい茂みを切っていると、ようやく目の前に大きなトンネルが姿を現した。
「やっぱりあった。」
トンネルの中は真っ暗で何も見えない。
「さて、入るか。」
そう言って、僕は歩き出す。それを鈴波は止めた。
「この先どうなっているか分からないし、そのまま行くのは……。そうだ、壁に伝って行った方が良いよ。」
「分かったよ。それで行こう。」
そう言って、僕と鈴波は手を繋いで、壁を涼波が触りながら、僕がペンライトを持ちながら進み始めた。
僕のリュックはトンネルの入口に置いといて、目印代わりにした。
トンネルの中は外の蒸し暑さとは打って変わって凍えるほどの寒さだった。
「寒いな……。」
僕と鈴波はどんどん進んでいく。
トンネルの中はかなり広いようで反対側の壁はペンライトで照らしても見えなかった。
トンネルは曲がりくねっているらしく、何回か鈴波の体が僕に当たった。
そして暫く進むと、一つの小さな光が見えた。
「アレが出口かな。」
僕と涼波はその光に向かって進んだ。
トンネルを抜けると、そこは雪国ではなく、僕のリュックが置いてある場所だった。
そう、元の場所に戻ってきてしまった。
「あの日記と同じだったね。元の場所に戻ってきちゃったみたいだし……。」
「確かに……。」
涼波は僕の肩に手を置く。
「それで、もうどういう原理か分かっているんでしょ?京介。」
やはり、涼波に隠し事は無理そうだ。
「涼波が提案した壁伝いに進むって方法は迷路なんかでは結構使われる手なんだけど、幾つか欠点があるんだ。」
僕は置いていったリュックのチャックを下ろす。
「まず、最初は最初左伝いに行くのか、右伝いで行くのか、この二つの選択次第でゴールに到達する時間が変わると言う事。そして他にも色々あるんだけど、有名なのはゴールが外に通じていない、迷路の中にゴールがあるタイプの迷路は絶対にこの方法ではクリア出来ないという物なんだ。」
「つまり、このトンネルはどうなってるの?」
「多分、このトンネルは始めは真っ直ぐ、一本に伸びているんだろうけど、途中で三方向に分岐するんだよ。そして、両端の二つはゆっくりと曲がりくねりながらもう片方の端の分岐に戻ってくる様になっているんじゃないかな。だから、壁を伝って行くと、必ず元の場所に戻ってくる。」
「なるほど、真ん中の分岐を見つけてその中を進むのね。」
「んで、その分岐を探すためにはコレがいる。」
そして、僕はLEDランタンをリュックから出した。
「それも、二針商店から?」
「そ、今朝買ってきたやつ。こんな風に光が広がるような明かりのほうが分岐なんかは見つけやすいと思って……。じゃあ、また入るか。」
そう言って、またトンネルの中に入った。
「こんな、分岐するトンネルなんて絶対不便だよな……。それに両端の分岐は結局元の場所に戻るし……。なんで、こんなトンネルを作ったんだ?」
そんな独り言を漏らしながら、前に進んでいく。
五十メートル程進んだ位で僕たちの進むのをやめた。
トンネルは予想通り分岐していた。
ただ、その分岐が予想していた三方向ではなく、二方向だった。
僕たちは、そのまま、左の分岐に進んだが、曲がりくねったトンネルを進んでいく内にまた同じ分岐の所に戻ってきてしまった。
つまり、このトンネルは何処にも通じていないのだ。
今度は意識がはっきりとしている。
ただ、僕は動くことが出来ずずっと立っている。
そして、僕は夢から覚めた。
次の日、僕と涼波は学校に行って、パソコンを操作していた。
「やはり、別のサイトにアクセス出来ないな。」
学校に会ったパソコンには、学校に必要なサイト以外アクセスできない様になっていて、メールを送ることが出来なかった。
僕と涼波は学校が終わった後、アパートに荷物を置き、外に出ていた。
手につけていたデジタル時計は二時五十六分を表示している。
「そう言えば、今朝学校前にどっか行ってたみたいだけど、何処行ってたの?」
「まぁ、ある所にね。」
「私に隠し事は……。」
「すぐに分かるから、ちょっと待ってて。」
涼波は僕の背負っているリュックが気になるようだった。
「で、そのトンネルは何処にあるのか、検討がついている場所って?一応ペンライトは持ってきたけど……。」
「あぁ、こっち。ついてきて。」
そう言って僕は坂道を指差す。
「この先にはせいぜい病院がある位だと思うけど……。」
「いや、もっと先。」
そう言って、僕たちは坂道を登り始めた。
「そもそも、トンネルは何の為にあるのかって話なんだけど……。」
「雪国にでも行くためじゃないの?」
川端康成か、と思いつつ話し続ける。
「まぁ、端的に言うと、道と道を繋げる為、といえば良いかな。変な話、トンネルは道の途中に無いと意味がないんだ。で、この村には、まともな道は一本ぐらいしか無い。」
そう、病院、アパート、二針学校、二針商店の側に通っているこの道しか存在しない。
「で、この道の途中にはトンネルは無い為、この道の両端のどっちか、病院が近いからこっちの方が可能性が高いのと、単純にアパートから近い上の方の端から調べる。」
涼波はなるほどねぇ、と声に漏らしながら登っていく。
「なんで、病院が近いとトンネルが近くにある可能性が高いの?」
「だって、病院には救急車が来る可能性があるじゃん。交通の便が比較的いい所に病院は作ると思うし、多分下の二針商店、仕入れとかドローンで配達されてそうだしね。それならトンネルの近くに作る必要ないし。」
ドローンによって適当に陳列されていたのなら、あの変な商品配置も分かる。
そうこうしている内に道の端まで来た。コンクリートの先はサラサラな土になっていて、前には鬱蒼とした茂みが占拠していた。
さてと、と言って僕はリュックを下ろす。
僕はリュックから鎌を取り出した。
涼波は何か不思議に思ったらしく、僕に訊いてきた。
「そんな鎌、どこにあったの?アパートにはなかったような気がするけど……。」
「コレは今朝、二針商店で買ってきた。」
「へぇ、用意が良いね。」
「わざわざ、トンネルを開けたってことは、山の麓なんかあるのかなって思って、そして長い年月が経っているなら、植物がトンネルの入口を塞いでいるかもって思って……。」
僕は、鎌を振りあげて、茂みを切り落とす。
二、三十分くらい茂みを切っていると、ようやく目の前に大きなトンネルが姿を現した。
「やっぱりあった。」
トンネルの中は真っ暗で何も見えない。
「さて、入るか。」
そう言って、僕は歩き出す。それを鈴波は止めた。
「この先どうなっているか分からないし、そのまま行くのは……。そうだ、壁に伝って行った方が良いよ。」
「分かったよ。それで行こう。」
そう言って、僕と鈴波は手を繋いで、壁を涼波が触りながら、僕がペンライトを持ちながら進み始めた。
僕のリュックはトンネルの入口に置いといて、目印代わりにした。
トンネルの中は外の蒸し暑さとは打って変わって凍えるほどの寒さだった。
「寒いな……。」
僕と鈴波はどんどん進んでいく。
トンネルの中はかなり広いようで反対側の壁はペンライトで照らしても見えなかった。
トンネルは曲がりくねっているらしく、何回か鈴波の体が僕に当たった。
そして暫く進むと、一つの小さな光が見えた。
「アレが出口かな。」
僕と涼波はその光に向かって進んだ。
トンネルを抜けると、そこは雪国ではなく、僕のリュックが置いてある場所だった。
そう、元の場所に戻ってきてしまった。
「あの日記と同じだったね。元の場所に戻ってきちゃったみたいだし……。」
「確かに……。」
涼波は僕の肩に手を置く。
「それで、もうどういう原理か分かっているんでしょ?京介。」
やはり、涼波に隠し事は無理そうだ。
「涼波が提案した壁伝いに進むって方法は迷路なんかでは結構使われる手なんだけど、幾つか欠点があるんだ。」
僕は置いていったリュックのチャックを下ろす。
「まず、最初は最初左伝いに行くのか、右伝いで行くのか、この二つの選択次第でゴールに到達する時間が変わると言う事。そして他にも色々あるんだけど、有名なのはゴールが外に通じていない、迷路の中にゴールがあるタイプの迷路は絶対にこの方法ではクリア出来ないという物なんだ。」
「つまり、このトンネルはどうなってるの?」
「多分、このトンネルは始めは真っ直ぐ、一本に伸びているんだろうけど、途中で三方向に分岐するんだよ。そして、両端の二つはゆっくりと曲がりくねりながらもう片方の端の分岐に戻ってくる様になっているんじゃないかな。だから、壁を伝って行くと、必ず元の場所に戻ってくる。」
「なるほど、真ん中の分岐を見つけてその中を進むのね。」
「んで、その分岐を探すためにはコレがいる。」
そして、僕はLEDランタンをリュックから出した。
「それも、二針商店から?」
「そ、今朝買ってきたやつ。こんな風に光が広がるような明かりのほうが分岐なんかは見つけやすいと思って……。じゃあ、また入るか。」
そう言って、またトンネルの中に入った。
「こんな、分岐するトンネルなんて絶対不便だよな……。それに両端の分岐は結局元の場所に戻るし……。なんで、こんなトンネルを作ったんだ?」
そんな独り言を漏らしながら、前に進んでいく。
五十メートル程進んだ位で僕たちの進むのをやめた。
トンネルは予想通り分岐していた。
ただ、その分岐が予想していた三方向ではなく、二方向だった。
僕たちは、そのまま、左の分岐に進んだが、曲がりくねったトンネルを進んでいく内にまた同じ分岐の所に戻ってきてしまった。
つまり、このトンネルは何処にも通じていないのだ。
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