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 僕のノートにある程度の考えが纏まった時、ドアをノックされた。

 ドアを見てみると、鍵がかかっていない。締め忘れたのだ。

 僕は立ち上がって、ノートと血の付いた日記をベッドの下に放り込んだ

「開いていますよ。」

 部屋に入ってきたのは、涼波だった。

「夕食、まだ食べてないだろうと思って……。何してたの?」

「別にぃ……。特には何も……。」

 涼波は僕に向かって指差す。

「じゃあ、何で、立ってるの?椅子がすぐそばにあるのに……。」

 しまった。

「いやぁ、ゴミ箱にティッシュを捨てようと思って……。」

「へぇ、そのティッシュを取ったティッシュ箱は何処にあるんだい?」

 また、しまった。そーいや、この部屋の中にティッシュ箱は見当たらない。

「ゴミ箱にティッシュが入ってないね。空っぽ。」

 涼波は僕をじっと見つめる。

「んで、何してたの?」

「いや、ストレッチをしてたと言うか、何と言うか……。」

「今更、それで誤魔化せると?」

「はい……。」

 涼波は、僕に近づいて、口元を僕の耳元に近づける。

「私に隠し事はしちゃ、駄目だよ……。ねぇ。京介。」

 涼波は僕の背中に手を回す。僕を抱え込むように……。

「はい…………。」

 僕は洗いざらい全て話した。





「へぇ、そこまで考えを纏めたんだね。」

「まぁ、はい。」

 涼波は、僕が纏めたノートとあの血の付いた日記を交互に読んでいる。

 涼波は、日記を指差して、僕に話しかける。

「うーん。拳銃があるのかとかは別にして……。このトンネルは気になるな……。一体何処にあるんだろう。」

「いや、トンネルの場所はだいたい予想着くんだけどなぁ。」

「え?京介、分かるの?」

 このトンネルが何処にあるのか、だいたい予想はついている。おそらく、のどちらかだ。

「じゃあ、明日。一緒にその場所にいこうよ。」

「何で、涼波が行く前提なの?」

 涼波は、僕のことをまた見つめて……。

「私に隠し事は駄目って、さっき言ったでしょ。」

「はぁ。」

「それなら、ご飯はちゃんと食べておかないとね。今日、ちょっと夕食作りすぎちゃって……。おすそ分けいるか聞きに来たんだった。いるよね。食堂でちょっと待ってて。」

 涼波、廊下を小走りで走っていく。外は若干赤くなっている。部屋の時計を見ると五時十二分だった。

 僕は部屋を出て、部屋の鍵を閉め、食堂に歩き始めた。

 そういえば、ここ。寮じゃないから、自分で料理を作らなければいけないんだっけ。

 僕、料理はからっきしなんだよなぁ。そもそも、食事買い忘れてるし……。

 お金は家族が置いていってくれたらしいカードにいくらか入れてくれているらしいし、足りなくなれば補充してくれるだろう。

 明日からはちゃんと、弁当でも買いに行かなきゃな。

「もしかして、明日からは食事は弁当で済まそうとしてない?」

 パンと片手鍋と皿をお盆に乗せて食堂に入ろうとしている涼波に開口一番、そう言われた。

「なんで……。分かったの?」

「京介には色々と考え込む癖があるからね。今、丁度その結論に至ったでしょ。」

「バレてたか。」

 僕は食堂の中に入る。

「駄目だよ。今日、倒れそうになって私に助けてもらったの覚えてる?」

 確かに、食事はちゃんと摂らないと。でも、調理なんて出来ないし……。

「私の料理、作るの手伝ってくれたら、二人分作ってあげるよ。」

 涼波は適当な所にお盆を置いて、すぐ近くに座る。

「本当?かなり助かる。」

 僕は鈴波と向かい合うように座った。

「でも、買い物とかも付き合ってよね。」

「分かったよ。いただきます。」

 僕はそう言って、両手を合わせた。





 食器を洗い終わって、適当なふきんを探していた。

 涼波は麦茶が入ってたグラスを片手に、食堂にあったテレビの電源を点ける。

 テレビでは十数年くらいに起きた大災害の特集をしていた。

 涼波がチャンネルを変える。そこでは、児童の性虐待に関するドキュメンタリー映画を放送していた。

 涼波は、どうやらただのニュースが見たいらしく、チャンネルを次々と変えていた。

 目的のチャンネルになったのか。涼波はテレビのリモコンを置く。

 ニュースでは、配送用ドローンの実用化から三年が経ったことを報じていた。

「そう言えば、僕のスマホって知らない?この村に来てから、僕のスマホが見当たらなくてね。」

 涼波は体の向きはそのままに首だけこっちに向けた?

「スマホ?私は知らないよ。」

「涼波のタブレットはあるの?」

「そーいや、私のタブレットもないな。」

 涼波はスマホを持っておらず、その代わりタブレットにSIMカードを差して持ち歩いている。

 前に理由を聞いたのだが、

「こっちの方が画面大きいし、カバーにキーボード付いてるし……。何故かこっちの方がスマホより安いし……。」

 と言っていた。

 通話する時とか、絶対不便でしょ。と言った時もあるが、

「そもそも通話なんてしないし……。」

 と返された。その後、色々言い包められ、僕の電話番号と、トークアプリのIDを教えた。

 因みに、僕も電話帳アプリには家族と涼波以外の番号は無いし、トークアプリにも企業の公式アカウントとキャッシュレス決済の利用履歴のトークと涼波しかいない。

 涼波も似たようなものだった。

「参ったな、スマホが無いと家族と連絡が出来ない……。ここに電話ってあるの?」

「見てないような気がする。」

 確かに見てないな。

「パソコンとかって……。」

「学校にあったのと……。他には、無いような気がする。」

 後で学校のパソコンがインターネットに繋がるのか確かめて置く必要がありそうだな。

 家族にメールを送れるなら、それで良いのだけど……。

 僕はふきんを見つけ、皿を拭いた。
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