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青年期

生き残った者

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 もう春だというのに冷たい空気が溜まる廊下を歩いていく。

 その廊下の中で、最も大きいドアの前に立ち、呼吸を整える。

 そして、私はその扉の、空気よりも冷たいドアノブを回して部屋の中に入った。





「以上で報告を終わります。」

「ご苦労、メアリー班長。」

 私、メアリー・シャーは直属の上司である、私の前で椅子に座っている赤みがある茶髪のロングの女、ケレス第2中隊長への口頭での報告を終わらせた。

「4班が君を除いて全滅とは……。」

 ケレス中隊長は部屋の真ん中にある机の向こうで天を仰いだ。

 私が今いるのは混血領地内の特別剣兵隊の秘密基地だ。混血領地内での我々、特別剣兵隊の活動は公になっていない。

「君は相当運がいいな。」

 私はあの後ルイスから逃げ惑う部下たちに押され、階段から落ち、そこで動けなくなった。その為私はルイスに気づかれず、あのルイスが投げた爆発するものにも巻き込まれずに済んだのだ。

「まぁ、4班は現3班に吸収されることになった。と言っても君一人の異動だな。」

 今回のことはかなり厳しく処罰が下されるとばかり、思っていたが、実際は私の一般兵への降格のみだった。実のところ、肝心な処罰を下される人が私だけだかららしい。

「分かりました。今後はより一層精進いたします。」

 ケレス中隊長は持っていた資料を前に置いた。

「それにしても、あの筒の威力は素晴らしいね。あれだろ、あの棒っぽいものを引いたら、あの魔女の体に穴が空いたんだろ。」

 ケレス中隊長は脚を組みかえて、椅子にもたれかかった。

「素晴らしくなんてありません。あの筒は憎き魔女が作りし物。あれほど卑劣で無価値なものはありません。」

 私はケレス中隊長にそう言ってしまった。

 すぐに正気に戻って姿勢整える。

「すみません。」

「いや、よろしい。では、下がりなさい。」

 その後、私は部屋から出た。





「今の方ってあの4班の?」

 部屋の隅で事務処理をしていた私の秘書が尋ねる。

「そうだが、何か?」

「いえ、ただ、なんと言いますか……。無知は罪ですね。」

 私は深いため息をついて「そうだな。」と言った。
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