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青年期

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 雷に打たれたような衝撃が体を駆け巡る。

 心臓が熱い。自分の胸を見ると、穴が空いていた。

 後ろを見ると、あの銃を構えたメアリーが立っていた。

 その中からは煙が立ち上がっている。

 急に力が抜けて、ルイスの腕から落ちる。

「大丈夫か、クリス!」

 すぐにルイスが私を持ち上げようとする。

 その時、激痛が走る。

 思わず、体を震わせる。

 その様子を見て、ルイスは持ち上げるのをやめた。

 私はルイスの顔を見つめる。

 私はもう死んでしまうのか……。不思議と涙が流れる。

 前の世界の最後もこんな感じだったか。

 前の世界の最後もルイスの、いや、栄太郎の前だったな。

 栄太郎、言えなかったけど、私と遊んでくれてありがとう。

 結構、家では暇してたんだよ。

 初めて会った時、私だと気づいてくれてありがとう。

 本当はいきなり別の世界に来てすごく寂しかったし、不安だったんだよ?

 そして、私と付き合ってくれて、結婚してくれて、ありがとう。

 栄太郎のスープ、好きだったなぁ。あれ、ほんのり甘いんだよね

 結婚してからも楽しかったなぁ。

 毎日、同じ部屋の同じベッドから起きて、一緒にご飯を食べて、って、これは結婚前もか……。そして、また同じベッドで寝る。

 そしてさ、栄太郎、私のそばにいてくれてありがとう。

 私は最後の力を振り絞って涙を流しながらルイスの肩を掴む。

 そして、体を起こして、ルイスの顔を近づける。

 ルイスは今にも泣きそうな顔をしている。

 私の最後の願いは、また生まれ変わったら、栄太郎に会えることかな。そして、また同じように付き合って、結婚して、それから……今度は老後まで一緒に暮らしたいな。

 私はそんな叶わぬ願いと思いを思いながら、ルイスの唇にやさしくキスをした。

 ここで時間が止まってくれればな。

 私の体から力が抜けていき、冷たい地面に転がった。

 もう涙は出なかった。止まってしまった。
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