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青年期
番外編 3 白衣
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「ねぇ、ルイスさん。お店って、開けている意味あるんですか?」
カウンターに座ってのんびりとしていると、エラがそんなことを言ってきた。
確かに本屋の中には俺とエラ以外誰もいない。本当に閑散としている。
「正直ないと思う。」
「ですねぇ。」
そしてぼうっと天井を見つめていると、突然、本屋のドアが開いた。
お客さんかと思って急いで姿勢を戻す。入ってきたのは隣の呉服店の女主人、ミツ・クーデンホーフさんだった。
「お久しぶりです。ミツさん。」
「こんにちは。ルイス君。」
俺の隣の店のクーデンホーフ呉服店には、ちょくちょく行っていた。
「何か、御用ですか。」
ミツさんはかなり重そうな荷物を床に置いた。
「実は注文を受けて作っていたら、いろいろ余ってね。これはおすそ分け。」
そういって、木箱一箱を置いた。
「いらなかったら、引き取るからねぇ~。」
腰を叩きながら店の外に出ていくミツさんを見届け、木箱をあけた。
「これは、白いタキシードですか?」
エラが中にはいっていたタキシードを持ち上げる。結婚衣装だろうか。
「ドレスも入っているな。何でこんな物をくれたんだ?」
ウェディングドレスのおすそ分けなんて聞いたことがなかった。この世界では普通のことなのだろうか。
「結婚式を上げる予定なんてないんだけどな。」
エラからタキシードを受け取り、体に合わせてみる。袖や腰回りまで、少し余裕を持って作られていた。
「でもサイズは合ってますよ。」
確かに……。
「どうしましょうか、これ。」
ドレスを持ちながらエラは少し名残惜しそうな顔をしていた。俺は自分のサイズに合ったから、持っていてもいいが、エラはサイズに合わなかった。
「さぁ、でも成長したらサイズが合うかもよ。」
少しだけ気分が晴れたようだ。
その間、店のカウンターで俺は結婚衣装と共に入っていた、白い布で裁縫をしていた。
「ところで、ルイスさんはさっきから何を縫っているんですか?」
エラが手元を覗き込んできた。
「いや、俺の昔の服を作ろうと思ってね。よしできた。」
余った糸を切ると、左右非対称ないかにも不格好な白衣ができた。
着てみると、この世界に来る前の感覚が蘇ってきた。
「なんというか懐かしい感覚だなぁ。」
懐かしい感覚に浸っていると、エラがこっちを見て、「何やっているんですか?」と聞いてきた。
カウンターに座ってのんびりとしていると、エラがそんなことを言ってきた。
確かに本屋の中には俺とエラ以外誰もいない。本当に閑散としている。
「正直ないと思う。」
「ですねぇ。」
そしてぼうっと天井を見つめていると、突然、本屋のドアが開いた。
お客さんかと思って急いで姿勢を戻す。入ってきたのは隣の呉服店の女主人、ミツ・クーデンホーフさんだった。
「お久しぶりです。ミツさん。」
「こんにちは。ルイス君。」
俺の隣の店のクーデンホーフ呉服店には、ちょくちょく行っていた。
「何か、御用ですか。」
ミツさんはかなり重そうな荷物を床に置いた。
「実は注文を受けて作っていたら、いろいろ余ってね。これはおすそ分け。」
そういって、木箱一箱を置いた。
「いらなかったら、引き取るからねぇ~。」
腰を叩きながら店の外に出ていくミツさんを見届け、木箱をあけた。
「これは、白いタキシードですか?」
エラが中にはいっていたタキシードを持ち上げる。結婚衣装だろうか。
「ドレスも入っているな。何でこんな物をくれたんだ?」
ウェディングドレスのおすそ分けなんて聞いたことがなかった。この世界では普通のことなのだろうか。
「結婚式を上げる予定なんてないんだけどな。」
エラからタキシードを受け取り、体に合わせてみる。袖や腰回りまで、少し余裕を持って作られていた。
「でもサイズは合ってますよ。」
確かに……。
「どうしましょうか、これ。」
ドレスを持ちながらエラは少し名残惜しそうな顔をしていた。俺は自分のサイズに合ったから、持っていてもいいが、エラはサイズに合わなかった。
「さぁ、でも成長したらサイズが合うかもよ。」
少しだけ気分が晴れたようだ。
その間、店のカウンターで俺は結婚衣装と共に入っていた、白い布で裁縫をしていた。
「ところで、ルイスさんはさっきから何を縫っているんですか?」
エラが手元を覗き込んできた。
「いや、俺の昔の服を作ろうと思ってね。よしできた。」
余った糸を切ると、左右非対称ないかにも不格好な白衣ができた。
着てみると、この世界に来る前の感覚が蘇ってきた。
「なんというか懐かしい感覚だなぁ。」
懐かしい感覚に浸っていると、エラがこっちを見て、「何やっているんですか?」と聞いてきた。
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