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幼少期

理央の思い出

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 いつも通り、階段を登り、定位置で腰を下ろす。

 そして、また、きんぴらを食べようとした時に彼はやってきた。

「あぁ、今日も来てたんですね。岡部さん。」

 そう言って、やってきたのはあの緑栄太郎だった。

 あの一件以降、ほぼ毎日こうしてご飯を食べている。

 ちなみにあの後、彼はテルミット反応の実験の許可を先生に取ろうとしたが、断られ、しかも理科室の掃除を頼まれたり、それに巻き込まれたり、等いろいろあって、今こうして一緒にご飯を食べる仲になった。

「ねぇ、科学部に入ってくれませんか、岡部さん?先輩が退部しちゃって、部員が俺一人になってしまいまして……。」

 実は科学部には入部していなかった。こうして一緒にご飯を食べるようになったけど、まだどこかでこの緑栄太郎という男に警戒しているのかもしれない。

「まだ考えさせてくれない?」

 私の返事はいつもそれだった。その返答に少し残念そうにしながら彼は弁当を食べ始めた。

 そんな不安定な日々を過ごしていた。





 そんな感じで過ごしていたら、いつの間にか一月ぐらいが過ぎていて、きれいな紅葉もピークが過ぎ散り始めていた。

 そうして、いつも通りあの場所に行こうとすると、栄太郎の声が聞こえた。誰かと話している。

「ねぇ、あんな奴とつるまないほうが良いよ。」誰かがそう栄太郎に言っている。

 盗み見ると、同じクラスの女子がそう言っていた。

「いやはや、そう言われましても、困ります。」となだめるように栄太郎は答えている。

「いい。あんなのとはもう関わらないほうが君のためだって言ってんの。」と語気を強めて栄太郎に迫る。

「だから、なんでそんな事を言うんだよ。」と声を栄太郎はすこし荒らげた。この時、初めて敬語以外の栄太郎の声を聞いた気がする。

「もしかして、あの子の秘密にまだ気づいていないの?」

 その時ドキリとした。まさか私の秘密に気づいてる?

 嘘でしょ。必死に隠してきたのに……。

 もう元のように弁当を食べる事はできないなと思った。

 私の秘密を聞いているところは見たくないなと感じ、その場を離れようとしたときだった。

「別にどうだっていいだろ。秘密なんて。くだらない。」

 かなり粗暴な声で彼はそう言った。再度覗いてみると、本当に呆れたような顔をしている。

「第一、なんでお前が理央の秘密なんて知ってんだよ。もしかしてストーキングでもしたのか?やめたほうがいいぞ、犯罪だし。」

 理央って呼んだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 そんな感じで栄太郎はその女子を煽っているかのようにあしらい、女子は散々喚き散らした後、壁を蹴り帰っていった。

 栄太郎はやれやれという感じでそこに立っていた。

「やぁ、おまたせ。」

 いつも通りの挨拶をする。

「あ、や、やぁ、岡部さん。こんにちは。」

 つい、乱暴な言い方になりかけたようで、急にボソボソ喋り始める。そんな、栄太郎を見ると、思わず笑いそうになる。

「ねぇ、私、科学部に入るよ。」

 ついさっきの話を聞かれたかもと不安そうな顔をしている、栄太郎の顔が一瞬固まった後、すぐに笑顔になった。

「よろしくお願いします。岡部理央さん。」

「あと、私に敬語使うのは禁止で、あとさん付けもなしで。それが条件。」

 それを聞いて、ポカンとしたような顔を彼はした。
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