18 / 71
幼少期
報酬
しおりを挟む
目の前で顔がぐしゃぐしゃになった人間らしきものが転がっている。元顔だった所から泉のように血が吹き出し辺りに飛び散っていた。その血の匂いと独特な煙の匂いが入り混じり、ここだけ別世界な気がする。そして自分はその匂いのせいで吐き、そして目の前が真っ暗になり、後ろに倒れてしまった。
目が覚めた時、最初に目に入ってきたのはクリスの顔だった。横で椅子に座りながら寝ている。自分自身はベッドに寝かされていた。
起こさないようにそっと起き、近くの窓の外を見た。もう日が落ちかけている。ということは半日ほど寝ていたのだろうか。
その時クリスが目を覚ました。そして
「ルイスが起きたぁぁぁ、良かったぁぁぁ!」
と、泣き顔でこっちに近づいてきた。俺は抱きつかれながら、あの後はどうなったのかと聞いた。クリスはその後、決闘は相手の死をもって終わったこと、息子を除く領主の一家はルイスに殺人罪を求めたが決闘での殺人は罪に問わない事や決闘が領主の一方的で法外であった事、領主の息子の説得等から俺は無罪になったこと、ついさっきまでその手続きが行われていたことを話してくれた。
どうやらその手続きを済ませてくれたのはクリスらしい。そして今やっと帰れるようになったことを教えてくれた。
「ありがとな、クリス。」
と、お礼を言った後、俺は自分がした事を鮮明に思い出した。
自分がした事を思い出すと、吐き気がしてくる。人を殺したのだ。殺人なんていつの時代、どの世界でも許される筈がない。唐突に血の気が引いて、脂汗が滲み出てきた。そんな自分の姿を見てクリスは、「大丈夫?」と声を掛けてくれた。
その言葉を聞いて少し安心する。そう結局無罪になったのだ。だから自分は悪くない。そう悪くない。そう自分に言い聞かせた。
「それよりせっかく私が帰れるようにしてあげたんだから、帰ろうよ。おばさん達を迎えに行かなきゃだし……。」
確かに夜逃げのために先に逃げた親を迎えに行ってあげないとな、と思いベッドから降りた。
部屋を出て家に帰ろうとした時、あの領主の息子が護衛を連れてやって来た。
「お身体は大丈夫でしょうか?」
と、丁寧に聴いてきた。正直この人には親を殺してしまった負い目があるため、あまり会いたくなかった。が、自分の無罪を訴えてくれたのはクリスから聞いていたので露骨に拒絶などできないな。そう考えていた時、
「本当に我が父が申し訳ない事を。まさか自分の息子と同じくらいの子供に決闘を申し込むなんて!」と頭を深々と下げ、謝った。
殺してしまった人の息子になんて言うべきか分からなくて、固まっていたら、
「そのお詫びとは何ですが、何か望みはありますか?何でも言ってください。」
と、にこやかに尋ねてきた。親を殺しておいて、その上、望みを言うなんて……。と考えていたが、相手の申し出を断ることなんてできる状況じゃないよな。そう思い、
「それでは、貴方の財産の中で最も価値のない物をください。」
少しでも早くこの場を離れたかった。物をもらう事なら後に家に届けてもらう事だってできるし、今持っているならすぐに受け取ることもできる。そう考えた。
「分かりました。少しお待ちください。」そう言って護衛の一人を残して離れて行った。
すこしして戻ってきた時、後ろにはあの荷物持ちの少年を連れていた。「ねぇ、あの子に荷物を持たせてるのかな?その割には何も持ってないようだけど。」とクリスがこそっと聞いてきた。確かにその子供も息子も手ぶらである。
「それではルイスさん、コレを貴方に差し上げます。」と言ってそこに置いて離れて行った。そう、荷物持ちの少年を置いて……。
何だよ、息子も十分馬鹿じゃないか。
目が覚めた時、最初に目に入ってきたのはクリスの顔だった。横で椅子に座りながら寝ている。自分自身はベッドに寝かされていた。
起こさないようにそっと起き、近くの窓の外を見た。もう日が落ちかけている。ということは半日ほど寝ていたのだろうか。
その時クリスが目を覚ました。そして
「ルイスが起きたぁぁぁ、良かったぁぁぁ!」
と、泣き顔でこっちに近づいてきた。俺は抱きつかれながら、あの後はどうなったのかと聞いた。クリスはその後、決闘は相手の死をもって終わったこと、息子を除く領主の一家はルイスに殺人罪を求めたが決闘での殺人は罪に問わない事や決闘が領主の一方的で法外であった事、領主の息子の説得等から俺は無罪になったこと、ついさっきまでその手続きが行われていたことを話してくれた。
どうやらその手続きを済ませてくれたのはクリスらしい。そして今やっと帰れるようになったことを教えてくれた。
「ありがとな、クリス。」
と、お礼を言った後、俺は自分がした事を鮮明に思い出した。
自分がした事を思い出すと、吐き気がしてくる。人を殺したのだ。殺人なんていつの時代、どの世界でも許される筈がない。唐突に血の気が引いて、脂汗が滲み出てきた。そんな自分の姿を見てクリスは、「大丈夫?」と声を掛けてくれた。
その言葉を聞いて少し安心する。そう結局無罪になったのだ。だから自分は悪くない。そう悪くない。そう自分に言い聞かせた。
「それよりせっかく私が帰れるようにしてあげたんだから、帰ろうよ。おばさん達を迎えに行かなきゃだし……。」
確かに夜逃げのために先に逃げた親を迎えに行ってあげないとな、と思いベッドから降りた。
部屋を出て家に帰ろうとした時、あの領主の息子が護衛を連れてやって来た。
「お身体は大丈夫でしょうか?」
と、丁寧に聴いてきた。正直この人には親を殺してしまった負い目があるため、あまり会いたくなかった。が、自分の無罪を訴えてくれたのはクリスから聞いていたので露骨に拒絶などできないな。そう考えていた時、
「本当に我が父が申し訳ない事を。まさか自分の息子と同じくらいの子供に決闘を申し込むなんて!」と頭を深々と下げ、謝った。
殺してしまった人の息子になんて言うべきか分からなくて、固まっていたら、
「そのお詫びとは何ですが、何か望みはありますか?何でも言ってください。」
と、にこやかに尋ねてきた。親を殺しておいて、その上、望みを言うなんて……。と考えていたが、相手の申し出を断ることなんてできる状況じゃないよな。そう思い、
「それでは、貴方の財産の中で最も価値のない物をください。」
少しでも早くこの場を離れたかった。物をもらう事なら後に家に届けてもらう事だってできるし、今持っているならすぐに受け取ることもできる。そう考えた。
「分かりました。少しお待ちください。」そう言って護衛の一人を残して離れて行った。
すこしして戻ってきた時、後ろにはあの荷物持ちの少年を連れていた。「ねぇ、あの子に荷物を持たせてるのかな?その割には何も持ってないようだけど。」とクリスがこそっと聞いてきた。確かにその子供も息子も手ぶらである。
「それではルイスさん、コレを貴方に差し上げます。」と言ってそこに置いて離れて行った。そう、荷物持ちの少年を置いて……。
何だよ、息子も十分馬鹿じゃないか。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
砂漠と鋼とおっさんと
ゴエモン
SF
2035年ある日地球はジグソーパズルのようにバラバラにされ、以前の形を無視して瞬時に再び繋ぎ合わされた。それから120年後……
男は砂漠で目覚めた。
ここは日本?海外?そもそも地球なのか?
訳がわからないまま男は砂漠を一人歩き始める。
巨大な陸上を走る船サンドスチーム。
屋台で焼き鳥感覚に銃器を売る市場。
ひょんなことから手にした電脳。
生物と機械が合成された機獣(ミュータント)が跋扈する世界の中で、男は生き延びていかねばならない。
荒廃した世界で男はどこへいくのか?
と、ヘヴィな話しではなく、男はその近未来世界で馴染んで楽しみ始めていた。
それでも何とか生活費は稼がにゃならんと、とりあえずハンターになってたま〜に人助け。
女にゃモテずに、振られてばかり。
電脳ナビを相棒に武装ジャイロキャノピーで砂漠を旅する、高密度におっさん達がおりなすSF冒険浪漫活劇!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる