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幼少期

報酬

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 目の前で顔がぐしゃぐしゃになった人間らしきものが転がっている。元顔だった所から泉のように血が吹き出し辺りに飛び散っていた。その血の匂いと独特な煙の匂いが入り混じり、ここだけ別世界な気がする。そして自分はその匂いのせいで吐き、そして目の前が真っ暗になり、後ろに倒れてしまった。

 目が覚めた時、最初に目に入ってきたのはクリスの顔だった。横で椅子に座りながら寝ている。自分自身はベッドに寝かされていた。

 起こさないようにそっと起き、近くの窓の外を見た。もう日が落ちかけている。ということは半日ほど寝ていたのだろうか。

 その時クリスが目を覚ました。そして

「ルイスが起きたぁぁぁ、良かったぁぁぁ!」

 と、泣き顔でこっちに近づいてきた。俺は抱きつかれながら、あの後はどうなったのかと聞いた。クリスはその後、決闘は相手の死をもって終わったこと、息子を除く領主の一家はルイスに殺人罪を求めたが決闘での殺人は罪に問わない事や決闘が領主の一方的で法外であった事、領主の息子の説得等から俺は無罪になったこと、ついさっきまでその手続きが行われていたことを話してくれた。

 どうやらその手続きを済ませてくれたのはクリスらしい。そして今やっと帰れるようになったことを教えてくれた。

「ありがとな、クリス。」

 と、お礼を言った後、俺は自分がした事を鮮明に思い出した。

 自分がした事を思い出すと、吐き気がしてくる。人を殺したのだ。殺人なんていつの時代、どの世界でも許される筈がない。唐突に血の気が引いて、脂汗が滲み出てきた。そんな自分の姿を見てクリスは、「大丈夫?」と声を掛けてくれた。

 その言葉を聞いて少し安心する。そう結局無罪になったのだ。だから自分は悪くない。そう悪くない。そう自分に言い聞かせた。

「それよりせっかく私が帰れるようにしてあげたんだから、帰ろうよ。おばさん達を迎えに行かなきゃだし……。」

 確かに夜逃げのために先に逃げた親を迎えに行ってあげないとな、と思いベッドから降りた。

 部屋を出て家に帰ろうとした時、あの領主の息子が護衛を連れてやって来た。

「お身体は大丈夫でしょうか?」

 と、丁寧に聴いてきた。正直この人には親を殺してしまった負い目があるため、あまり会いたくなかった。が、自分の無罪を訴えてくれたのはクリスから聞いていたので露骨に拒絶などできないな。そう考えていた時、

「本当に我が父が申し訳ない事を。まさか自分の息子と同じくらいの子供に決闘を申し込むなんて!」と頭を深々と下げ、謝った。

 殺してしまった人の息子になんて言うべきか分からなくて、固まっていたら、

「そのお詫びとは何ですが、何か望みはありますか?何でも言ってください。」

 と、にこやかに尋ねてきた。親を殺しておいて、その上、望みを言うなんて……。と考えていたが、相手の申し出を断ることなんてできる状況じゃないよな。そう思い、

「それでは、貴方の財産の中で最も価値のない物をください。」

 少しでも早くこの場を離れたかった。物をもらう事なら後に家に届けてもらう事だってできるし、今持っているならすぐに受け取ることもできる。そう考えた。

「分かりました。少しお待ちください。」そう言って護衛の一人を残して離れて行った。

 すこしして戻ってきた時、後ろにはあの荷物持ちの少年を連れていた。「ねぇ、あの子に荷物を持たせてるのかな?その割には何も持ってないようだけど。」とクリスがこそっと聞いてきた。確かにその子供も息子も手ぶらである。

「それではルイスさん、コレを貴方に差し上げます。」と言ってそこに置いて離れて行った。そう、荷物持ちの少年を置いて……。

何だよ、息子も十分馬鹿じゃないか。
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