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第2章 勇者大戦

魔王と魔人の邂逅

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 魔力を解放し、戦闘態勢を取った俺は、上位聖魔法(ホーリーレイン)を使い相手に光の雨を降り注ぐ。

(ホーリーレイン)はダメージこそ少ないものの、継続して発動する魔法の為結界を解こうものなら聖なる雨に晒されるという相手の動きを止めるには最適の魔法だ。

 特に、魔族や魔物以外には回復魔法になるという所もこの魔法を使用した理由の一つだ。

 どうやら相手もこの魔法の効果を知っているらしく、結界から外に出ようとはしない。

 その結界も徐々に薄れている為、相手の取る手段も限られてきそうだ。

 その間に俺は左手の竜に魔力を注ぎ、奴を一撃で仕留める準備を進める。



(ホーリーレイン)により、結界が消失した瞬間、相手は魔力の波動を放ち俺の魔法自体をかき消そうとする。

 俺もその瞬間に合わせ、相手の体目掛けて左手を相手に打ち込もうとする! 



 魔力の波動は辺り一帯を吹き飛ばす勢いで広がっていくが、俺はその波動に逆らいながら相手目掛けて突き進んでいく。

 波動により、体のあちこちにダメージを負うが、ミスリルの鱗は致命傷を作らず俺を前にと進ませてくれる。

 倒れていた青崎は、いつのまにか相手が抱き抱えており俺に向けられている。

 それでも俺は躊躇せず、左手を相手に打ち込む! 

『貴様、正気か? 仲間ごと俺を殺すつもりか ⁈  』


 人間とは思えない、音の重なる声を聞きながら俺は青崎に拳を当てる。

 拳が青崎に当たった瞬間に、青崎を俺のスライム膜で包み込み、そのまま亜空間に送り込む。

『馬鹿な! 』

 相手の驚く声に、俺は会心の笑みを浮かべ相手に当てた左手の魔力を解放する! 

 音すら聞こえないほどの激震が相手を襲い、火竜の業火が相手を包む。

 敵を包み込んだ炎は天へと登り、その炎によって俺はその場から弾き飛ばされていく……






 気がつくと辺りは全て燃え尽きており、辺りに形あるものは何も無かった。

 亜空間からスライムに包まれた青崎を取り出し、スライムを剥がす。

 スライムから出る事の出来た青崎は、何度か咳をしながらも意識は覚醒したようだった。

「けほっ!な、何が……圭一さん ⁈  その傷は一体 ⁈  」

 周りを見て俺に気付いた青崎だが、俺の体を見て言葉を失ったようだ。

 今の俺は左手がかろうじて繋がっている程度で、左半分の顔も焼け付いて目が見えない。

 左足に至っては炭化しており無理に動かすとそのまま崩れそうだった。

 内臓もあちこち焼け付いており、口の中には炭の匂いと焼けた肉汁しか感じない…まるで焼き肉の気分だなと我ながら笑えない冗談を考えてしまう。

「ひ、酷い火傷…それに炭化までしているなんて……意識はありますか? 圭一さん? 」

「聞こえているから安心しろ。傷も時間は掛かるが治るはずだ。それよりも周りに気を配れ。俺はもう動く事すらきつい…最悪は俺を見捨ててでもアヤハ達と合流しろ」

 俺の言葉に首を横に振り、俺に縋る青崎…流石にこの状況では不味いので俺は糸を使い青崎を無理矢理運ぼうかと考えるが、その前に先程の相手以上の魔力の持ち主が頭上に現れた事を確認し、青崎を動く右手で出来るだけ遠くに投げる!





「やれやれ…部下の尻拭いに辟易へきえきしていた所に、その部下がやられてしまうとは…これは相当怒られそうだ」

 軽口を叩きながら空中から降りてくる謎の男に集中しながらも、初めて自分より魔力の多い相手に愕然としながら俺は何とか活路を見出そうと頭を振り絞る…

「おや、そんな体で無理をしなくてもいいよ? どうせ私はこの場所の後始末をしに来ただけだから。君がどうなろうと私の知ったことではないし、君の相手をする程暇でもないのでね」

 男はそう言うと、指を鳴らす……それだけで、先程の戦う前の風景に戻るこの場所を見て、俺は何も言葉にする事が出来なかった…

として…後は、この街の人間の記憶の改竄かな?……やれやれ魔人使いが荒すぎるよ」

「魔人…だと! 」

 俺は微かに動く唇で言葉を紡ぐが、ほとんど聞こえない程度の声だった。

 しかし、その男はその声に反応し、面白そうにこちらを見ている。

「おや? 喋れるほど回復するとは、流石は魔王といったところかな? 初めまして。私は三魔王の内の一人、ヒルグリム様の部下である魔人ギュネリスという者だ。機会があればヒルグリム様に会いに来るといい…君が知りたい初代勇者について教えてくれるかも知れないよ? 」

 そう言うと、男は俺の目の前で霞むように消えていった…






「先程の人は魔人…と言ってましたが、あの人程の力を持つ人さえ魔王の部下なんですか? 私達地球人が能力なんて持っていても絶対に勝てませんよ! 」

 クマに変身して俺を乗せて運ぶ青崎の言葉を聞きながら、俺は世界は広いなと考えてしまう。

 今の俺では一番体調の良い時ですら相手になるかどうか…

 まだまだ続く青崎の愚痴を聞きながら俺は意識を保てなくなり、クマの背で意識を失うのだった……










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