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第1章 鮮血の旅路
俺の復讐相手はご機嫌だった。
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2人の行動に俺の心が悲鳴をあげる。俺は復讐をしたい…なのにこの2人を見ていると、どうしても戸惑ってしまう自分がいる。同郷の者だからいう事は確かにあるだろう。しかし、この2人を見ていると山賊に襲われていた女子供達を思い出してしまう。あの時の感情までもが蘇ってしまう…
「…興が冷めた、先ずは復讐より確かめたいことがある。」
俺は言葉を無理矢理紡ぎ出す。
「マリア、お前の知っている事を全て話してくれ。今の俺には情報が必要だ。お前ら2人は殺す気は失せた。ただあの研究所を作った奴だけは絶対に許せない。」
喉を抑えながら涙を流し続けるマリアは小さな声ながらも全てを語ってくれた。
「私が知ったのは、ドゥクスが頻繁に居なくなる事が多くなったので彼を調べていたの。その時にイゼールの北に研究所がある事を知ったわ。研究所の情報については本部で働いていた時でさえ一切の情報がなかったから驚きだった。ドゥクスに尋ねようとした事もあったけど彼は私達地球の勇者を特に嫌っていたから話せる場を持つ事すら出来なかった…そんな時、彼が急にこの国に来て研究所を行く所を私の部下が発見したの。彼の動向を探る為、気づかれずに追跡していたらしいけど途中で巻かれてね、研究所まで行く途中に野盗の奇妙な死体を発見し、研究所についた時には既に研究所は燃やされ尽くした様子だったそうよ…これが私の知る全ての情報よ………」
マリアはそれだけ喋ると手を床について泣き崩れた。
「研究所を焼いたのは君か?」
ユータは信じられない様子でこちらを見ている。俺は自虐的に笑いながら教えてやる。
「あぁ、その通りだ。奴らにはこんな身体にしてもらったお礼をしてやっただけだ。」
俺の言葉にユータは逆上する。地球で幸せに生きここでは勇者と呼ばれている男だ。汚い世界など殆ど知らないのだろう。
「研究所にはそんな事を知らなかった人間もいるはずだ。そんな人間も巻き込んだのか?」
ユータの言うことは正しいのだろう。しかし、俺にはそんな言葉はもう届かない。
「なら、お前にも俺と同じ苦痛を味わってもらおうか?竜の血を無理矢理入れられ体を作り変えられ蠱毒の末に出来た蟲に体を食われ、バグベアを左目に入れられて脳を掻き乱され、挙句にスライムに穴という穴を犯される…なんて顔をしてるんだ二人とも?このぐらいなら耐えれるんだろう?勇者様なら耐えれるんだろう?」
俺の自嘲に二人とも声が出ない。想像以上だったのか何も考えられないのかどうでもいい。
「復讐に際限なんか無いんだよ。分かったらお前らの中の正義程度で俺に正論を言うな。壊れているのは誰よりも自分自身がよく知っている。」
そう言うとマリアの前に行く。ユータは庇おうとするがどうでもいい。
「ドゥクスに命令を出せるのは誰だ?教えろ。」
マリアは少し考えて自身なげに話し出す。
「彼に命令を出せるのは国際冒険者ギルド総長のハルマン・イェーガーと賢人会の人達ぐらいだと思うわ。賢人会は…」
その瞬間、強烈な魔力を感じた為、聖なる盾を多重展開し、マリアを庇う。盾は悉く破られ俺の右腕が炭化する。
「うがぁぁあ!」
あまりの痛みに意識が飛びそうになるが舌を噛み潰し意識を保つ。
「2人とも構えろ!奴は俺達全員を殺す気だ!」
俺の言葉に2人は躊躇しながらも構える。しかし、相手をする人の顔を見て絶望の表情を浮かべる。
「な、なんであんたが俺達を殺そうとするんだよ…エレイア姫!」
この国の王の娘であるエレイア姫。この国の王がユータを取り込む為に側に置こうとしていた姫らしいがとんだじゃじゃ馬姫さまだったらしい。
「あら?マリアを殺せなかったのは残念でしたわ。ユータ様、そのような者達とは離れてこちらに来てくださいまし。そのままでは賢人会に貴方も処分されてしまいますわ。」
何もなかったかのようにユータに話し掛けるエレイア姫。その姿を信じられない思いで見つめるユータとは裏腹にマリアは苦い顔をしてエレイア姫を睨んでいる。
「マリアはある程度エレイア姫の行動理由が分かるようだな。良かったら教えてくれ。」
俺の言葉にマリアは目を離さないままこの国の真実を教えてくれる。
「あの研究所についてはおかしいと思っていたのです。国際冒険者ギルドからあのような研究所を作れる金額が動いているならば私の能力[演算]で財政管理をしていた私に分からない筈がありません。だとしたら独立部門の賢人会か、この国の…」
そこまで言うとエレイア姫が笑いながら話の後を自分で語り出した。
「えぇ、そうよ。あの研究所はこの国で管理していたの。賢人会の協力をもらってね。マリアは思ったより使えるようね。首から上は私が貰おうかしら?」
嬉しそうに小首を傾げるエレイア姫を呆然と見ているユータ。それに対して嬉しさを堪えきれず笑みを浮かべてエレイア姫を見る俺。
ようやく見つけた復讐の相手だ。俺の復讐に相応しい相手かどうか確かめないとな。相応しくないようならそれ以上の対価を貰うだけだ!
「…興が冷めた、先ずは復讐より確かめたいことがある。」
俺は言葉を無理矢理紡ぎ出す。
「マリア、お前の知っている事を全て話してくれ。今の俺には情報が必要だ。お前ら2人は殺す気は失せた。ただあの研究所を作った奴だけは絶対に許せない。」
喉を抑えながら涙を流し続けるマリアは小さな声ながらも全てを語ってくれた。
「私が知ったのは、ドゥクスが頻繁に居なくなる事が多くなったので彼を調べていたの。その時にイゼールの北に研究所がある事を知ったわ。研究所の情報については本部で働いていた時でさえ一切の情報がなかったから驚きだった。ドゥクスに尋ねようとした事もあったけど彼は私達地球の勇者を特に嫌っていたから話せる場を持つ事すら出来なかった…そんな時、彼が急にこの国に来て研究所を行く所を私の部下が発見したの。彼の動向を探る為、気づかれずに追跡していたらしいけど途中で巻かれてね、研究所まで行く途中に野盗の奇妙な死体を発見し、研究所についた時には既に研究所は燃やされ尽くした様子だったそうよ…これが私の知る全ての情報よ………」
マリアはそれだけ喋ると手を床について泣き崩れた。
「研究所を焼いたのは君か?」
ユータは信じられない様子でこちらを見ている。俺は自虐的に笑いながら教えてやる。
「あぁ、その通りだ。奴らにはこんな身体にしてもらったお礼をしてやっただけだ。」
俺の言葉にユータは逆上する。地球で幸せに生きここでは勇者と呼ばれている男だ。汚い世界など殆ど知らないのだろう。
「研究所にはそんな事を知らなかった人間もいるはずだ。そんな人間も巻き込んだのか?」
ユータの言うことは正しいのだろう。しかし、俺にはそんな言葉はもう届かない。
「なら、お前にも俺と同じ苦痛を味わってもらおうか?竜の血を無理矢理入れられ体を作り変えられ蠱毒の末に出来た蟲に体を食われ、バグベアを左目に入れられて脳を掻き乱され、挙句にスライムに穴という穴を犯される…なんて顔をしてるんだ二人とも?このぐらいなら耐えれるんだろう?勇者様なら耐えれるんだろう?」
俺の自嘲に二人とも声が出ない。想像以上だったのか何も考えられないのかどうでもいい。
「復讐に際限なんか無いんだよ。分かったらお前らの中の正義程度で俺に正論を言うな。壊れているのは誰よりも自分自身がよく知っている。」
そう言うとマリアの前に行く。ユータは庇おうとするがどうでもいい。
「ドゥクスに命令を出せるのは誰だ?教えろ。」
マリアは少し考えて自身なげに話し出す。
「彼に命令を出せるのは国際冒険者ギルド総長のハルマン・イェーガーと賢人会の人達ぐらいだと思うわ。賢人会は…」
その瞬間、強烈な魔力を感じた為、聖なる盾を多重展開し、マリアを庇う。盾は悉く破られ俺の右腕が炭化する。
「うがぁぁあ!」
あまりの痛みに意識が飛びそうになるが舌を噛み潰し意識を保つ。
「2人とも構えろ!奴は俺達全員を殺す気だ!」
俺の言葉に2人は躊躇しながらも構える。しかし、相手をする人の顔を見て絶望の表情を浮かべる。
「な、なんであんたが俺達を殺そうとするんだよ…エレイア姫!」
この国の王の娘であるエレイア姫。この国の王がユータを取り込む為に側に置こうとしていた姫らしいがとんだじゃじゃ馬姫さまだったらしい。
「あら?マリアを殺せなかったのは残念でしたわ。ユータ様、そのような者達とは離れてこちらに来てくださいまし。そのままでは賢人会に貴方も処分されてしまいますわ。」
何もなかったかのようにユータに話し掛けるエレイア姫。その姿を信じられない思いで見つめるユータとは裏腹にマリアは苦い顔をしてエレイア姫を睨んでいる。
「マリアはある程度エレイア姫の行動理由が分かるようだな。良かったら教えてくれ。」
俺の言葉にマリアは目を離さないままこの国の真実を教えてくれる。
「あの研究所についてはおかしいと思っていたのです。国際冒険者ギルドからあのような研究所を作れる金額が動いているならば私の能力[演算]で財政管理をしていた私に分からない筈がありません。だとしたら独立部門の賢人会か、この国の…」
そこまで言うとエレイア姫が笑いながら話の後を自分で語り出した。
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嬉しそうに小首を傾げるエレイア姫を呆然と見ているユータ。それに対して嬉しさを堪えきれず笑みを浮かべてエレイア姫を見る俺。
ようやく見つけた復讐の相手だ。俺の復讐に相応しい相手かどうか確かめないとな。相応しくないようならそれ以上の対価を貰うだけだ!
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