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森の中のエルフ幼女、森の中の生活を開始する

ソシャゲのイベントでも色々問題が出ますよね。ゲームをしているのにイベントが気に入らない……世の中は大変そうです

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 セシルの魔法を完成させる為に、俺は森のダンジョンのボスと対峙する。

 セシル魔法が早いか、ボスが俺を突破するのが早いかの競争になりそうだが俺としては主人として良い所を見せていきたい所だ。

「さて、お前の相手は私がしてやる。短い間になるとは思うけどよろしくね」

 俺は相手を挑発するような言葉を口にすると、聖剣の力を解除して(ファイア・アロー)を乱れ打つ!

 巨木のボスもそれに対応するかのように先程まで俺達を攻撃していた『何か』をこちらに飛ばしてくるが、何かの正体を大体予想していた俺は更にそこから(ウインド・アロー)を追加していく。

 実はこの(ウインド・アロー)、ドラゴンファンタジアでは不遇のアロー系魔法だったりする。

 初動が早く不可視という圧倒的に利便性の高い付加価値があるのだが、敵にダメージを与えられない。

 敵の動きをある程度止める程度の力しかなく、それならば(アイス・アロー)や(サンダー・アロー)の方が使い勝手が良いからだ。

 更に物理的重さがないし、(ストーン・アロー)や(アクア・アロー)のように攻撃力が高いわけではないので牽制が主な使い方になってしまう。

 玄人が使えばかなりのものになるのではと思う人もいるかも知れないが、ソシャゲ程度のゲームシステムだとこれが一気に劣化する形となり、不遇の魔法と呼ばれれるようになってしまう……

 しかし、現実のようなこの世界では使い方次第では恐ろしい力を発揮する!

 これから起こる惨劇のように……



「どうせ『それ』の正体は葉っぱだろ? タネさえ分かれば対応の仕方なんて幾つでもあるさ! 」

 風の矢に煽られた炎の矢は更に火の勢いを増し、風に煽られた敵の攻撃である木々の葉は風に押されて巨木のボスの元へと飛ばされていく。

 空中に舞う木々の葉を燃やしながらボスの元へと襲い掛かる火の矢は風に煽られ大きな火の渦へと姿を変える!

『#######』

 巨木の声にならない悲鳴が辺りの空気を震わせていく。

 炎の嵐に巻かれ、木々の幹から煙を上げる森のダンジョンのボスの様子を見ながら、俺はこのままボスの動きを止める事が出来るのではと淡い希望を持ってしまう。

 そんな甘い考えが、地中から突如として襲い掛かるボスの攻撃をまともに受けてしまう結果となってしまう……

「え? 地中から魔力反応? しまった⁈  」

 強烈な魔力反応を自分の足元から感じ、俺は自分の迂闊さを呪う。

 植物系の魔物なのだからこういう事もあるはずなのに……

「だからと言ってここからは引き下がれない! 」

 地中から無数の巨木の根が俺を目掛けて襲い掛かってくる。

 幾つかの根は聖剣で切り捨てるが、流石の数の暴力に俺の体は無数の木の根に締め付けられて身動きが取れなくなっていく……

「ぐはっ……! 嫌味な野郎だな。じわじわと締め付けやがって」

 俺の手足を締め付けて身動きを取れなくした巨木は一思いに絞め殺そうとはせずに、じわりじわりとゆっくり嬲るように俺の首を絞めてくる……

 胴体を締め付けてきた根が俺の肺から空気を絞りとり、焦る俺をあざ笑うかのように巨木の魔物はこちらへゆっくりと近づいてくる……しかし、その慢心がお前の命取りだ!

「ここまで来てくれてありがとな。お礼に……これをくれてやる! 」

 俺は口の中に広がる血の味を感じながら自分自身の体を起点として(サンダー・ランス)を無数に繰り出す!



『???!!!!???』

 俺から流れ出す電流を受け驚きの感情を辺りに振りまく巨木だが、俺に絡まっている根から伝わる電流が巨木を内部から蹂躙し動く事が出来ない。

「セシル!後は任せた! 」

 俺はそれだけ言うと後の事はセシルに任せ、巨木の動きを封じる事だけに専念する。






「天より落ちし異界の剣、七海を滅ぼし覇の剣よ……」

 セシルのいつもとは違う抑揚ない澄み切った声が俺の元へと聞こえてくる。

「星雲の煌めきの元、光よ集え。光よ、その身に宿し始まりの力を我に授けん……」

 どうやら聞こえて来た詠唱は中盤に差し掛かっているようでセシルの周りから圧倒的な魔力と、それに惹かれるように集まる力を意識が朧げな俺は幻想のように感じてしまう。

「覇を統べし異界の剣に満ちし光よ! 我が敵へとその力を示せ……《アクト・イレイザー》!」

 セシルの詠唱が完成すると共に、薄っすらとしか開かない俺の瞳にすら暴力的に輝く光が飛び込んでくる。

 白と言うよりも黒い光と言うべきその閃光は俺を締め続ける巨木の根の存在自体を塗りつぶしてゆきその存在を消し去っていく……それなのに俺を包むその黒き光は何故かほんのりと暖かさを感じ、俺はその優しい暖かさに包まれて意識を失うのであった……






「ジルアちゃん、ジルアちゃんしっかりして! ケットシーちゃん、ジルアちゃんは本当に大丈夫なのよね? 」

「セシル殿、先程言ったようにエルフの姫は単に集中力が切れて意識を失っただけですにゃ。巨木の締め付けで多少はダメージを受けていますが、【精霊女王】であるエルフの姫は自然治癒力が高いですから既に傷一つない状態まで戻っていますにゃ」

 セシルのいつもと違う雰囲気から発せられる言葉と、どこか辟易とした様子で応対するケットシーの会話が俺の耳へと聞こえてくる。

 どうやら俺がまた気絶をした為にセシルがかなり動揺しているようだ……俺もまだまだ未熟だな。

「こらこら、喧嘩なんかするんじゃない。私は自分のヘマで気を失っただけだから……だから2人共仲良くっぷ ⁈  」

 俺が2人に声を掛けた途端、目の前が真っ暗闇に包まれて甘い匂いが漂ってくる。

 暗闇から逃れようと頭を振るが、その度に柔らかい何かを押し付けられて俺の動きが止められてしまう……柔らかくて暖かくていい匂いで……もうこのままでも良いかな?

「何をどさくさ紛れでしているのですか! そういう事は奴隷同士で分かち合うものでしょう ⁈  シロは抜け駆けなんて許しませんよ?」

 シロの絶叫と共に俺の目に光が戻り、四肢を押さえつけられているセシルと背中から羽交い締めにしているシロの姿が映る。

 ……成る程、先程の柔らかいものはセシルのおっぱいか。

 やっぱり大きい胸って幸せが詰まっているんだな。

 ぼんやり頭に浮かんだ感想は先程までの死闘とはかけ離れた、平和でほのぼのとしたものだった。
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