上 下
9 / 10

8 終幕と結果

しおりを挟む
「もー! なんなのあれ! 最悪だわ!」

「誰だよあんなもの用意したやつ!」

ここは敗者の待機室。
リタイアしたもの達は、校庭の特設会場に戻されていた。
この二人、エリス・カラバッダとアラン・フォレスターはあいらが放った魔獣にやられてこの場所に強制送還された。

「はいはい! どいてちょうだい! 保健室行きよ!」

「·····今回大暴した本人がぶっ倒れるって、はぁ·····あの問題児は早急に対処せねば·····」

一方、多数の犠牲者を出したあいらは魔力切れで倒れ保健室に担ぎ込まれていた。

「いやああああ!! ああっあああああ!!!」

「フォルキンス! おいっ! 誰か暗示が得意なやつ!」

「うっわー、何あれいつも偉ぶってたフォルキンスじゃん、どうしちゃったのあれ」

「死にかけたんだってさ、取り巻きの二人も重症だって」

「日頃のバチが当たったんだな、それよりカイルの戦闘見ようぜ、あいつ俺らが魔獣を倒して疲れてるところを狙いやがって!」

発狂したレイアをよそに彼らはモニターを見に行った。

「宝剣乱舞!!」

「よっと! 剣はそんな風に使うもんじゃないぜ王子様」

映っているのはカイルと灰音。
カイルの攻撃を容易く避け、得意げに笑う灰音。

「まったくその技騎士の俺を馬鹿にしてんのかよ、剣ってのはこう使うんだぜ!」

飛んできた剣を一本掴んで彼はカイルに切りかかる。

「·····っ!鋼鉄の手腕!」

それを魔法で強化した腕で受け止めるカイル。

「一筋縄じゃいかないか」

「·····はぁ、まぁタダじゃ負けられないからな」
|(·····相当彼女との戦闘がきてるな、身代わりまで使わされたし、俺の魔力がもうもたない)

先のあいらとの戦いでカイルの魔力は大幅に減ってしまった。
彼女の最後の魔法は、彼にとって想定外だった。

(こんな授業で、身代わりを使う羽目になるとは·····判断を見誤ったな)

身代わりは攻撃を全て引き受ける分身を作り安全な場所に逃げる魔法。
それを使い見事あいらの攻撃から逃げたカイルは、生き延びた代わりに、大量の魔力を使ってしまった。

あいらを倒した後、何人かと戦い残った魔力を全部使い勝利を納めようと考えていたが、その見通しが甘かった。

最後の一人、霧崎灰音はあいら以上に強かった。
通常のカイルの実力なら灰音に勝てたと思うが、疲れ果てた彼は灰音に圧倒されていた。

「嘘でしょ、カイルが押されてるだなんて!」

「信じられねぇ! あのカイルだぞ!」

当然客席も驚いていた。

「·····結局俺もあいつと同じことをするのか」

「·····どうした?」

「いや、日輪人は本当に強くて困るって話だよ」

「褒めてくれて光栄だぜ王子様!」

負けを悟ったカイルは自分の全ての力を振り絞った。

「光よ! 全てを導く礎となり、闇を照らし諸悪を浄化せよ!」

「いいねぇ!詠唱! じゃあ俺も! 混沌を司る神よ、その力で人を狂気に魅入らせろ!」

「神聖なる光の託宣《セイクリッド・シャインフォース》」

「狂気を孕む邪神の波動《ルナティック・カオスリッド」

光は闇に飲まれ、術者は攻撃を回避できずに攻撃を喰らった。
こうして波乱のバトルロワイヤルは霧崎灰音の優勝で幕を閉じた。
しおりを挟む

処理中です...