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1 独りぼっちの学園生活

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いつも通りの独りぼっちのお昼ご飯。
大きな木の下で、手作りのサンドイッチを頬張る。
私の瞳に映るのは他の子達が楽しそうにお喋りをする姿。

「すごーいアラン! 流石次期勇者ね!」

「ふっ、まぁな!」  

「調子に乗るな、凄いのはお前の父上だ。お前はまだ勇者と呼ぶに足らん」

「なんだとー! お前こそまだまだ王の器じゃねえよ!」

「ちょっと! 2人ともやめなよ!」

·····うん、今日も平和だなー。
勇者と王子が口喧嘩するのなんて日常茶飯事だしねうん。
でも凄いなぁ、流石一流校、勇者や王子、各国の同世代の天才達がそこらかしこにいるだなんて。
私、よく入学できたな~。

ここは、アルテミュラ学園。
世界各国の才能ある選ばれた者しか入れない一流の学校だ。
そんな学校に通うの私は結崎あいら、今年の春にこの学園に合格して異国から遥々やってきた。
でも、なぜ入れたのか分からない低スペック。
入学してすぐの実力テストで最下位になったせいで、同級生から笑われぼっちだし、母国からもお怒りの電報がくるし、散々な目に遭ってます。

「よぉ、結崎またぼっち飯か?」

灰色の髪の少年が声をかけて隣に座る。

「えっ、えっと、灰音君!」

「お前、俺の事覚えてねぇのな! 同じ留学生ってのに·····」

「いっ、いや! 覚えてるよ! |霧崎灰音キリサキハイネ君でしょ! 日輪出身だもんね!」

私達二人は日輪共和国という小さな島国から来た留学生だ。

「でっ、でも、そのー、私落ちこぼれだし話しかけてもなんの得にもなんないよ?」

「そういうの気にしねえし、同郷のやつといたら安心するじゃん? 他国のやつは気疲れするんだよ」

「うっ、うん、確かにそうだけど·····」

あまり人と関わることが、苦手でずっと魔法ばかり勉強してたから1人でいる方が楽なんだけど·····それに君·····

「きゃー! 灰音様だわ!」

「かっこいい! 確か異国の騎士様よね!」

超絶人気者じゃん。
霧崎灰音、祖国でもかなり有名だったらしい。
最年少で魔法騎士団の試験に受かった超天才。

「灰音くん、ファンサしないの?」

「いちいちしねぇよ、つーか俺アイドルじゃねぇし」

「そっ、そうなんだね」

「それに、女は嫌いだ」

ひいいっ!! こわっ! じゃあなんで私に話しかけてくるんですかぁ! 変な誤解うむじゃないですかァ!!
色々とお腹痛いんだよ! さっき灰音くんにキャーキャー言ってた子、私を見るなり睨みつけてきたもん!
聞こえなかったけどめっちゃヒソヒソしてたし!
私の事悪口絶対言ってるよ!
あの不吉な黒髪女とか! 青い目が気持ち悪いとか! 最下位は学校来んなとか!

「あははっ、じゃっ、じゃあ私」

「あっ! 違っ! お前は違う! 言い方を間違えた! なんか媚び売ってくる奴が嫌いなんだよ!」

少し涙目になった私を見て彼は慌てて訂正した。
別に貴方に嫌われても悲しくなんかはないんですが。

「ともかく、結崎は違うんだよ! なんつーか俺と同じ匂いを感じるっていうかさぁ! ずっと努力してきた孤高の天才っていうかさ!」

「君も、自分のこと天才って思って調子乗るタイプなの?」

「なんでひねくれてんだお前は!?」

「別に·····友達も作らず、独りぼっちで魔法の研究してたのに世界中のトップの前では力及ばなかったからって、ひねくれてなんか無いです、人気者で実力者の君に嫉妬なんかしてないです、同じ国なのになんでここまで差があるのなんて思ってないです」

「うわああああ!! ごめっ、ごめん!!」

溢れんばかりの黒いオーラをみて彼は頭を下げる。

「·····でも、声を掛けてくれてありがとう、えっと、うん、ちょっとは嬉しいから·····」

女子のこわーい目がなければ、すっごく嬉しいけど。

「はぁー、なんて面倒臭い性格してるんだお前は、ともかくだ同郷どうし仲良くしようぜ」

「うっ、うん、よろしく」

笑顔で差し出された手を、慣れない笑顔見せながら握った。


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