248 / 252
第7章:エルフ王国 救出編
第227話 『その日、精霊の森へ立ち入った』
しおりを挟む
「盟友様、行ってらっしゃいませ」
「ありがとー」
私達は今、『精霊の森』入り口前にいる。
『精霊の森』は、ダンジョンの様に別世界への入り口の様になっている。その為ここ以外から近付いても、中に入る事は叶わずいつの間にか別の場所へとワープしている不思議仕様だ。
正面以外から入る事はできない為、監視も正面だけで済むのはお得よね。
「アリシア、緊張してる?」
「はい。ですが、お嬢様が一緒ですから」
「んふ」
「ねえ、私も一緒でいい訳? 2人の邪魔はしたくないんだけど」
「いいのいいの。ちょっと確認したいこともあるからさ」
「ふうん?」
2人の手を引いて『精霊の森』へと侵入する。
ダンジョンと同じ様に、門を潜ると周囲の空気が変わったことを知覚する。それと同時に、清涼な風と朗らかな陽気が、私の肌を優しく撫でた。
視界に広がるのは華やかに咲く色とりどりの花達。懐かしくも夢見た、あの時と同じ……。いや、似た景色だ。
そう。『精霊の森』と名を冠しているにもかかわらず、ここには誰もいないのだ。
この森からは、精霊の気配がまるでなかった。
「ここが……『精霊の森』」
「静かなものね」
「……やっぱり。素敵な場所なのに、寂しい空間だわ」
寂しさを感じているのは、精霊が居ないからだけじゃない。
私が最期に過ごした場所が、遠くに見えているからだ。
「お嬢様?」
「ん」
寂寥感をごまかすために、アリシアの手を握る。
「スピカ、出て来なさい」
『~~!』
「良かった。精霊が入れない訳ではないのですね」
「ええ。ただ、契約精霊しか入れないのは、この森に問題があるからなの」
本来、この森を管理しているはずの上位精霊が、エルフの国で空位となっているからだ。
その席は、シルヴァちゃんが契約している精霊をランクアップさせれば、管理を任せられそうだけど……。その前に、うちの子を上位精霊にしてあげたい。
それは親心から来るものもあるけれど、本命はこの地に溜まった、数百年分のエネルギーだ。溜まりに溜まったそれを使えば、この子はより強力な上位精霊へと進化してくれることだろう。
必要なアイテムは準備している。あとは、進化の為の祭壇が、この森の奥にある。
私の最期を迎えた、あの場所の奥に……。
「シラユキ、大丈夫?」
「ん、ありがと」
「辛いなら、迂回していきましょ」
もう片方の手をミーシャが握ってくれる。
「……そうしよっかな」
ミーシャが先導するように、遠回りの道を進んでくれる。
まだ、あの場所を直視するのは、辛いかもしれないわ。
うん、気を取り直して行こう。
祭壇へ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
遠回りと言っても、『精霊の森』はそこまで広い空間ではない。
10分程度で、その目的地に到着した。
精霊王を模した石像と、その両手から溢れる水源が、小さなため池を形成している。
この水源は、この地でしか採れない貴重なもの。あとでいくつか瓶に分けて、汲ませてもらおうかな。
『~~??』
「そうよ、この石像は精霊王。精霊の頂点に位置するお方よ」
『~~~』
「そうね。今は存在しないと云われてるわ」
『~~?』
「ふふ、私が王様? そんな訳ないでしょー」
『~~』
スピカの頭を撫でつつ、必要な素材を取り出す。
『世界樹の葉』『世界樹の実』『女神の聖水』。そして、目の前に広がる『精霊の清水』。
最後に、私の魔力を籠めた純粋な魔力の塊。……これで、準備は整った。
ミーシャとアリシアは、空気を読んで下がってくれる。
「スピカ、これからあなたを進化させるわ。準備は良い?」
『~~~!!』
―平気だよ!―
「それじゃ、始めるわ」
純粋な魔力の塊に、順番に素材を放り込んでいく。
すると、素材に秘められた力が魔力の中へと溶けだし、合わさり交わっていく。
その力に呼応するかのように、像が輝きを放った。
『~~!!』
スピカが意を決して、魔力の塊へと飛び込む。
その瞬間、世界は光に包まれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
どれくらいそうしていただろうか。
一瞬か、それとも数分か。眩い光と共に溢れ出る魔力に全身が飲み込まれ、揉みくちゃにされた様な感覚を覚えた。
光りが収まり、目を開ける。すると、そこには成長したスピカが佇んでいた。手乗りサイズだったはずの彼女は、今やシラユキちゃんと同じくらいの……。ううん、よく見たら浮いてるから、身長としてはリリちゃん達と同じくらいかも。
「シラユキ?」
「スピカ?」
「わーい、シラユキ! お話しできるー!」
スピカはハートを振り撒きながら抱きついてくるので、大きくなった彼女の頭を撫でてあげる。あ、赤ちゃんみたいにすべすべで柔らかい。ふふ、産まれたてだからかしら。
「言葉、喋れるのね?」
「うん! いっぱいお話しよ!」
ああ、聞き間違いではない。念話ではなく、しっかりと彼女の口が、言葉を話していた。
あれれ、でも、上位精霊でもこんな流暢に言葉は話せなかった様な……?
彼女をしっかりと観察してみる。
**********
名前:スピカ
種族:精霊王
レベル:60
説明:女神に仕える精霊種の王。女神の寵愛を受けた身で、『精霊の森』に眠っていた力を全て吸収したことで神格を得た。精霊が扱う全ての権能を使役可能
**********
「ほわぁ?」
な、なぁにこれぇ?
「ミーシャ、みてみて。スピカが上位精霊も大精霊もすっ飛ばして、精霊王になっちゃった!」
「う、うん……」
「スピカ様が言葉を……」
ミーシャは最近よく見る呆れ顔だし、アリシアは今にも跪きそうな恍惚とした表情をしている。
シラユキちゃん、またなんかやっちゃったかも?
うーん、でもまあいっか! 強くなるに越した事はないもの!
それに……。
元気にはしゃぐスピカの背後で、ふわふわと浮かび上がる、半透明の元のスピカを見る。
********
名前:精霊王の抜け殻
説明:精霊王スピカが脱いだ抜け殻。神の力を宿すそれは、扱いを誤れば国すら吹き飛ばすほどの力を蓄えている。世界に一つしかない秘宝。
********
小雪を作成するためのキーアイテム、2つ目ゲット!
『おめでとう、マスター』
「ありがとー」
私達は今、『精霊の森』入り口前にいる。
『精霊の森』は、ダンジョンの様に別世界への入り口の様になっている。その為ここ以外から近付いても、中に入る事は叶わずいつの間にか別の場所へとワープしている不思議仕様だ。
正面以外から入る事はできない為、監視も正面だけで済むのはお得よね。
「アリシア、緊張してる?」
「はい。ですが、お嬢様が一緒ですから」
「んふ」
「ねえ、私も一緒でいい訳? 2人の邪魔はしたくないんだけど」
「いいのいいの。ちょっと確認したいこともあるからさ」
「ふうん?」
2人の手を引いて『精霊の森』へと侵入する。
ダンジョンと同じ様に、門を潜ると周囲の空気が変わったことを知覚する。それと同時に、清涼な風と朗らかな陽気が、私の肌を優しく撫でた。
視界に広がるのは華やかに咲く色とりどりの花達。懐かしくも夢見た、あの時と同じ……。いや、似た景色だ。
そう。『精霊の森』と名を冠しているにもかかわらず、ここには誰もいないのだ。
この森からは、精霊の気配がまるでなかった。
「ここが……『精霊の森』」
「静かなものね」
「……やっぱり。素敵な場所なのに、寂しい空間だわ」
寂しさを感じているのは、精霊が居ないからだけじゃない。
私が最期に過ごした場所が、遠くに見えているからだ。
「お嬢様?」
「ん」
寂寥感をごまかすために、アリシアの手を握る。
「スピカ、出て来なさい」
『~~!』
「良かった。精霊が入れない訳ではないのですね」
「ええ。ただ、契約精霊しか入れないのは、この森に問題があるからなの」
本来、この森を管理しているはずの上位精霊が、エルフの国で空位となっているからだ。
その席は、シルヴァちゃんが契約している精霊をランクアップさせれば、管理を任せられそうだけど……。その前に、うちの子を上位精霊にしてあげたい。
それは親心から来るものもあるけれど、本命はこの地に溜まった、数百年分のエネルギーだ。溜まりに溜まったそれを使えば、この子はより強力な上位精霊へと進化してくれることだろう。
必要なアイテムは準備している。あとは、進化の為の祭壇が、この森の奥にある。
私の最期を迎えた、あの場所の奥に……。
「シラユキ、大丈夫?」
「ん、ありがと」
「辛いなら、迂回していきましょ」
もう片方の手をミーシャが握ってくれる。
「……そうしよっかな」
ミーシャが先導するように、遠回りの道を進んでくれる。
まだ、あの場所を直視するのは、辛いかもしれないわ。
うん、気を取り直して行こう。
祭壇へ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
遠回りと言っても、『精霊の森』はそこまで広い空間ではない。
10分程度で、その目的地に到着した。
精霊王を模した石像と、その両手から溢れる水源が、小さなため池を形成している。
この水源は、この地でしか採れない貴重なもの。あとでいくつか瓶に分けて、汲ませてもらおうかな。
『~~??』
「そうよ、この石像は精霊王。精霊の頂点に位置するお方よ」
『~~~』
「そうね。今は存在しないと云われてるわ」
『~~?』
「ふふ、私が王様? そんな訳ないでしょー」
『~~』
スピカの頭を撫でつつ、必要な素材を取り出す。
『世界樹の葉』『世界樹の実』『女神の聖水』。そして、目の前に広がる『精霊の清水』。
最後に、私の魔力を籠めた純粋な魔力の塊。……これで、準備は整った。
ミーシャとアリシアは、空気を読んで下がってくれる。
「スピカ、これからあなたを進化させるわ。準備は良い?」
『~~~!!』
―平気だよ!―
「それじゃ、始めるわ」
純粋な魔力の塊に、順番に素材を放り込んでいく。
すると、素材に秘められた力が魔力の中へと溶けだし、合わさり交わっていく。
その力に呼応するかのように、像が輝きを放った。
『~~!!』
スピカが意を決して、魔力の塊へと飛び込む。
その瞬間、世界は光に包まれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
どれくらいそうしていただろうか。
一瞬か、それとも数分か。眩い光と共に溢れ出る魔力に全身が飲み込まれ、揉みくちゃにされた様な感覚を覚えた。
光りが収まり、目を開ける。すると、そこには成長したスピカが佇んでいた。手乗りサイズだったはずの彼女は、今やシラユキちゃんと同じくらいの……。ううん、よく見たら浮いてるから、身長としてはリリちゃん達と同じくらいかも。
「シラユキ?」
「スピカ?」
「わーい、シラユキ! お話しできるー!」
スピカはハートを振り撒きながら抱きついてくるので、大きくなった彼女の頭を撫でてあげる。あ、赤ちゃんみたいにすべすべで柔らかい。ふふ、産まれたてだからかしら。
「言葉、喋れるのね?」
「うん! いっぱいお話しよ!」
ああ、聞き間違いではない。念話ではなく、しっかりと彼女の口が、言葉を話していた。
あれれ、でも、上位精霊でもこんな流暢に言葉は話せなかった様な……?
彼女をしっかりと観察してみる。
**********
名前:スピカ
種族:精霊王
レベル:60
説明:女神に仕える精霊種の王。女神の寵愛を受けた身で、『精霊の森』に眠っていた力を全て吸収したことで神格を得た。精霊が扱う全ての権能を使役可能
**********
「ほわぁ?」
な、なぁにこれぇ?
「ミーシャ、みてみて。スピカが上位精霊も大精霊もすっ飛ばして、精霊王になっちゃった!」
「う、うん……」
「スピカ様が言葉を……」
ミーシャは最近よく見る呆れ顔だし、アリシアは今にも跪きそうな恍惚とした表情をしている。
シラユキちゃん、またなんかやっちゃったかも?
うーん、でもまあいっか! 強くなるに越した事はないもの!
それに……。
元気にはしゃぐスピカの背後で、ふわふわと浮かび上がる、半透明の元のスピカを見る。
********
名前:精霊王の抜け殻
説明:精霊王スピカが脱いだ抜け殻。神の力を宿すそれは、扱いを誤れば国すら吹き飛ばすほどの力を蓄えている。世界に一つしかない秘宝。
********
小雪を作成するためのキーアイテム、2つ目ゲット!
『おめでとう、マスター』
0
1/19の20時の投稿で他サイトで投稿中のものに追いつきます。以後隔日で20:01頃投稿予定です。
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる