246 / 252
第7章:エルフ王国 救出編
第225話 『その日、返還した』
しおりを挟む
「それで、何のお話をしていたの?」
「うむ、盟友殿の活躍により、帝国を支配していた魔人の連中が全て撤退。魔物も殲滅し、内部に巣くっていた諸悪の根源も居なくなった。それにより、帝国は事実上の崩壊となったのだ」
あらら。
「お偉いさんとか、だーれも残ってなかったの?」
「うむ。まともに国を動かせるものは誰一人としてな。その為、帝国の領土を此度の戦いに参加した国々で分け合う事にしたのじゃ」
じゃあ、帝国は完全に地図から消える事になったのね。
それなら、かなり大きな穴が開いたことになるわよね。侵略に次ぐ侵略で、色んな国の領土をかっさらって出来たような国だもの。
「そっかー。じゃあ、シラユキちゃん出番なくない? 何で呼ばれたの?」
「うむ……。此度の戦い、活躍度合いで言えば盟友殿が95、盟友殿の友人が4。それ以外は1以下といった所なのじゃ。ほぼ何もしていない我らでが勝手に分け合うわけにも行くまい?」
「興味ないからパス」
「私もパス」
私もミーシャも庶民なのだ。そんな国の領土をどうこうする気はまるでない。
っていうか、寝起きだから正直言って身体がダルイ。本調子には程遠いわ……。だからいつものように、カワイく魅せる気力すら湧いてこない……。うーん、重症。
そもそも魅せる必要がないくらいシラユキちゃんカワイイけど!
机に突っ伏して、ぐでーっと『垂れシラユキちゃん』と化していると、シルヴァちゃんが溜息を吐いた。
「はぁ、盟友殿。そこを何とか頼む」
「なら、とりあえずは帝国に奪われた領土を、それぞれの国に返還して行って、それで残った領土を考えればいいんじゃない」
「うむ……。ではそうした場合、帝国の首都しか残らんのじゃ」
「ん-。なら、そこに各国の大使館と、流通拠点としての街を築き上げれば良いんじゃないかしら。折角、帝国のお城や城下町は残ってるんだし、再利用しちゃいましょ」
「ほぉ、流通拠点か。悪くないの……。其方らはどうじゃ? ……ふむ、満場一致のようじゃ」
思い付きで喋ったけど、あっさりと通ってしまった。
良いのかな、こんなに適当で。
「各国の代表たちよ。今回の事は国に持ち帰り、しっかりと此度の戦いで起きた事を伝えよ。欲を見ればどうなるか、其方たちも目にしたであろうからな」
皆が一様に頷くのを見て、シルヴァちゃんは満足そうに微笑んだ。
「では最後に、盟友殿。此度の戦い、各国がそれぞれ礼をしたいと申しておる。何か欲しいものがあれば申してみよ。皆、其方と敵対するつもりは無いそうだ」
「んぅー?」
んー? なになに、お礼?
「あんた、本気で眠そうね」
「本調子じゃないから、怠いのー……」
「軽度の『衰弱』ってとこか。それは分かったから、早く答えてあげなさい。皆待ってるわよ」
「むにゅ……。じゃあ、宝物庫に仕舞うぐらい貴重だけど、誰も扱える人がいなくて困ってる。けど高価すぎて扱いにも困ってる。そんな感じの素材や武器防具アイテムなんかがあれば、下さい。あ、でもマジックバッグは要らないです」
自作出来るし。
そう言えばミーシャには予備のマジックバッグの小サイズをあげたけど、帰ったら大サイズ作ってあげなきゃね。
「との様だが、可能であるか? もし該当する物がないのであれば、珍しい素材でも構わん。妾達の国に送ってくれれば直接手渡そう」
特に、異存はないそうだ。
それにしても、誰も、一言も喋らないわね??
「では解散じゃ」
シルヴァちゃんの号令と共に順番に退出しようとして行くので、慌てて姫騎士ちゃんを捕まえた。
「あー、姫騎士ちゃん。貴女はこっちにおいで」
「ひゃいっ!? ……は、はいっ」
呼ばれるとは思っていなかったのか、悲鳴に近い声を上げた。
「お名前、教えてー?」
「……はっ。エレガンテ王国第一王女、シュミール・ド・エレガンテと申します。女神様にご挨拶できる事、誠に光栄であります。この度の戦場でのご活躍、まさしく次代に伝えるべき聖戦でございました。女神様が紡いだ神話、必ずや自国の民に喧伝致します」
何だか敬われてるな~? むにゃむにゃ。
彼女は王女様でありながら、騎士団長でもある。そんな彼女が、私に向かって最上の敬礼と共に跪いた。
なんなら、お祈りしそうな勢いだわ。
「ん-、じゃあ、ミルちゃんね」
「はっ。愛称を頂き、光栄であります!」
「ミルちゃん、今は鎧姿だけどドレスは持って来てるの?」
「はい。式典用に持ち歩いております」
「じゃあ着替えて来てくれる? 見てみたいから」
「はっ、少々お待ちください。10分で支度して参りますっ!」
そう言ってミルちゃんは天幕の外へと速足で出て行った。
「ちょっとシラユキ、どうするつもり?」
「どうって?」
「もしかして、食べる気じゃないでしょうね」
「ん-? カワイかったら、ミカちゃんみたいに育てるのもありかなーと」
「ふぅん? まああの国は、私も知らないし……。強いに越したことはないかもね」
「そうなんだ?」
ミーシャが知らないってことは、本来はなくなる国なのか。
なら、今後の安全のためにも、鍛えるのも悪くないわね。
「うとうと……」
「眠いなら、続きは明日にしたら?」
「んー……。拝んでから、寝る……」
「仕方ないわねぇ」
そうして目を擦りながら待ってると、お姫様の格好に着飾ったミルちゃんがやって来たので、匂いを嗅いだりキスしたりして、最後には抱き枕にして眠ったのだった。
『体が馴染むまで、もう少し掛かりそうね』
「うむ、盟友殿の活躍により、帝国を支配していた魔人の連中が全て撤退。魔物も殲滅し、内部に巣くっていた諸悪の根源も居なくなった。それにより、帝国は事実上の崩壊となったのだ」
あらら。
「お偉いさんとか、だーれも残ってなかったの?」
「うむ。まともに国を動かせるものは誰一人としてな。その為、帝国の領土を此度の戦いに参加した国々で分け合う事にしたのじゃ」
じゃあ、帝国は完全に地図から消える事になったのね。
それなら、かなり大きな穴が開いたことになるわよね。侵略に次ぐ侵略で、色んな国の領土をかっさらって出来たような国だもの。
「そっかー。じゃあ、シラユキちゃん出番なくない? 何で呼ばれたの?」
「うむ……。此度の戦い、活躍度合いで言えば盟友殿が95、盟友殿の友人が4。それ以外は1以下といった所なのじゃ。ほぼ何もしていない我らでが勝手に分け合うわけにも行くまい?」
「興味ないからパス」
「私もパス」
私もミーシャも庶民なのだ。そんな国の領土をどうこうする気はまるでない。
っていうか、寝起きだから正直言って身体がダルイ。本調子には程遠いわ……。だからいつものように、カワイく魅せる気力すら湧いてこない……。うーん、重症。
そもそも魅せる必要がないくらいシラユキちゃんカワイイけど!
机に突っ伏して、ぐでーっと『垂れシラユキちゃん』と化していると、シルヴァちゃんが溜息を吐いた。
「はぁ、盟友殿。そこを何とか頼む」
「なら、とりあえずは帝国に奪われた領土を、それぞれの国に返還して行って、それで残った領土を考えればいいんじゃない」
「うむ……。ではそうした場合、帝国の首都しか残らんのじゃ」
「ん-。なら、そこに各国の大使館と、流通拠点としての街を築き上げれば良いんじゃないかしら。折角、帝国のお城や城下町は残ってるんだし、再利用しちゃいましょ」
「ほぉ、流通拠点か。悪くないの……。其方らはどうじゃ? ……ふむ、満場一致のようじゃ」
思い付きで喋ったけど、あっさりと通ってしまった。
良いのかな、こんなに適当で。
「各国の代表たちよ。今回の事は国に持ち帰り、しっかりと此度の戦いで起きた事を伝えよ。欲を見ればどうなるか、其方たちも目にしたであろうからな」
皆が一様に頷くのを見て、シルヴァちゃんは満足そうに微笑んだ。
「では最後に、盟友殿。此度の戦い、各国がそれぞれ礼をしたいと申しておる。何か欲しいものがあれば申してみよ。皆、其方と敵対するつもりは無いそうだ」
「んぅー?」
んー? なになに、お礼?
「あんた、本気で眠そうね」
「本調子じゃないから、怠いのー……」
「軽度の『衰弱』ってとこか。それは分かったから、早く答えてあげなさい。皆待ってるわよ」
「むにゅ……。じゃあ、宝物庫に仕舞うぐらい貴重だけど、誰も扱える人がいなくて困ってる。けど高価すぎて扱いにも困ってる。そんな感じの素材や武器防具アイテムなんかがあれば、下さい。あ、でもマジックバッグは要らないです」
自作出来るし。
そう言えばミーシャには予備のマジックバッグの小サイズをあげたけど、帰ったら大サイズ作ってあげなきゃね。
「との様だが、可能であるか? もし該当する物がないのであれば、珍しい素材でも構わん。妾達の国に送ってくれれば直接手渡そう」
特に、異存はないそうだ。
それにしても、誰も、一言も喋らないわね??
「では解散じゃ」
シルヴァちゃんの号令と共に順番に退出しようとして行くので、慌てて姫騎士ちゃんを捕まえた。
「あー、姫騎士ちゃん。貴女はこっちにおいで」
「ひゃいっ!? ……は、はいっ」
呼ばれるとは思っていなかったのか、悲鳴に近い声を上げた。
「お名前、教えてー?」
「……はっ。エレガンテ王国第一王女、シュミール・ド・エレガンテと申します。女神様にご挨拶できる事、誠に光栄であります。この度の戦場でのご活躍、まさしく次代に伝えるべき聖戦でございました。女神様が紡いだ神話、必ずや自国の民に喧伝致します」
何だか敬われてるな~? むにゃむにゃ。
彼女は王女様でありながら、騎士団長でもある。そんな彼女が、私に向かって最上の敬礼と共に跪いた。
なんなら、お祈りしそうな勢いだわ。
「ん-、じゃあ、ミルちゃんね」
「はっ。愛称を頂き、光栄であります!」
「ミルちゃん、今は鎧姿だけどドレスは持って来てるの?」
「はい。式典用に持ち歩いております」
「じゃあ着替えて来てくれる? 見てみたいから」
「はっ、少々お待ちください。10分で支度して参りますっ!」
そう言ってミルちゃんは天幕の外へと速足で出て行った。
「ちょっとシラユキ、どうするつもり?」
「どうって?」
「もしかして、食べる気じゃないでしょうね」
「ん-? カワイかったら、ミカちゃんみたいに育てるのもありかなーと」
「ふぅん? まああの国は、私も知らないし……。強いに越したことはないかもね」
「そうなんだ?」
ミーシャが知らないってことは、本来はなくなる国なのか。
なら、今後の安全のためにも、鍛えるのも悪くないわね。
「うとうと……」
「眠いなら、続きは明日にしたら?」
「んー……。拝んでから、寝る……」
「仕方ないわねぇ」
そうして目を擦りながら待ってると、お姫様の格好に着飾ったミルちゃんがやって来たので、匂いを嗅いだりキスしたりして、最後には抱き枕にして眠ったのだった。
『体が馴染むまで、もう少し掛かりそうね』
0
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる