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第6章:魔法学園 授業革命編
第188話 『その日、突撃した』
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「本当に良いの? 素材を全部貰っちゃって」
「構わぬ。本来であれば立ち入ることすら許されなかった、前人未到の地へと挑む権利をもらえたのだ。それだけで代え難い経験になるだろう。それに、某は此の国で得体の知れぬ素材を、適切な値で捌ける関係を築けておらぬしな」
「そうねー、ここの素材を適切に扱える人なんて、まだこの国……。下手したらこの世界に私だけかも知れないしね」
「流石です、お嬢様」
昼食を終えた私達4人は、とある場所へとやって来ていた。
そこは王国にとって前人未到の地であり、国としても危険すぎて存在を隠し通しておきたい難所の1つ。
その名も『上級ダンジョン』。
大昔にこのダンジョン関係で、国が盛大に失敗をしたらしく、秘匿せざるを得なかったとか言う曰く付きの場所だ。
一応学園ダンジョンの1つであるから、放っておいても氾濫なんてしないし、きちんと脱出用アイテムは設定されているんだけど……。困ったことに作成に必要な要求スキルと素材が難しすぎて、誰もそのレシピを発見出来ていないみたい。
製法が失われてしまったのかな。もしくは、試そうにも危険すぎて試せないからかも。
まあ、発動しなければダンジョンをクリアするしかなくなるもんね。それってつまり死刑宣告みたいなものだし、試せるわけないか。
上級ダンジョンを知っているのは王族とその親族に限られているみたいで、彼らにとってもここは、1度入れば脱出不可能な死地という認識みたい。
他2種のダンジョンのように脱出アイテムも存在しなければ、誰一人として戻ってこなかった場所。入れば絶対に死ぬダンジョン。そう考えれば、恐怖を感じてしまうのも分かるわ。
だから、その内上級ダンジョンに攻め込むと宣言した時は、陛下だけではなくソフィー達からもとっても心配されたわ。
そういうこともあって、ソフィー達には心配かけまいと、今日は何も伝えずに内緒で入ったのよね。
さっさとクリアして、ソフィー達を驚かせてあげよーっと。
「でも折角付き合ってくれるんだから、何か報酬を渡したいわね。例の条件、3つとも選んでくれる以上は、今後とも長い付き合いになるでしょうし」
「その申し出はありがたいが、対価が思いつかんな」
「んー。でもなぁ」
「この『ぱーてぃー』とやらだったか? この奇特な魔道具を経験させて貰えるだけでも十分すぎる対価だと言えよう。説明を受けただけでも、諸外国全てが喉から手を伸ばすほど魅力的であると言える。下手すれば戦争を起こす切っ掛けにもなりかねん。扱いには気をつけるべきだぞ、女王よ」
「んー。神丸も欲しい?」
「ふむ……。有用性はわかるが、某の手には余る代物だな。此の旅も、1人旅であるが故」
「そう言えばボッチだったわね」
「うむ、ぼっちであるな! ふははは!」
私達4人を構成する中に、ナンバーズは含まれていない。彼らは皆、外で待機……ではなく。同じくダンジョンに入ってもらっている。ただし初級ダンジョンではなく、中級ダンジョンだ。
お昼前のお使い。
エイゼルは当然、神丸を呼び出すために走らせていたけれど、ドライには陛下の元へと向かわせていた。理由は私が上級ダンジョンに挑んでいる間、暇になるナンバーズにも中級ダンジョンで素材を回収してもらう為だ。その為にパーティ編成使用の許可を貰いに行かせたのだ。
中級ダンジョンといっても、なにも初っ端から、闇属性ゾーンでレンズを集めろなんて無茶な指示はしないわ。ただ、あのメンバーの実力なら十分中級ダンジョンでも戦っていけるはず。
エイゼルはアリシアクラスの腕前を持っているし、他の子達も数値に準じた実力を有しているはず。ツヴァイに関しては、私の授業を受けた以上、今まで以上に戦えるはずだしね。
あと、3人だと心配だったので、アハトとノインも戦列に加えたわ。ナンバーズが5人もいれば、安心ね。
だけど、ちょっと心配のしすぎかもしれないわね。だってあの中級ダンジョンは、実質アリシア1人で余裕だったんだもん。
彼ら5人が揃って敗退するところは想像できない。いつまでも私の護衛を務めるだけでは成長の機会が無いだろうし、素材も含めて何かしらの成果は期待出来るだろう。
念のため回復と脱出用アイテムは持たせてあるしね。
「……あ、じゃあマジックバッグの中サイズなんてどう? 1人旅に大サイズはやり過ぎだけど、中サイズなら困ることはないでしょ」
「確かに、あれはあって困るものではない。……いや待て、まさかと思うが女王よ。中サイズを……いや、大サイズですら作れると言うのではなかろうな」
「あら神丸、私の事理解してきたじゃない」
「……中サイズですら、君主お抱えの秘蔵術師が作れると言う噂だと言うのに。お主の言う最強とは、武力だけでなく知力や製造能力をも指すのか。誠に天晴れであるな」
「ふふん、そうでしょ。カワイイでしょ」
「む?? ……女王よ、分かるように言ってくれ」
「やっぱり神丸、私のこと分かってないわね」
「む????」
まるで理解出来ないといった表情を浮かべる神丸を置いて、ダンジョン奥へと歩を進める。
『~~』
微笑む私を追いかけるように、パーティーの4人目はふよふよとついて来ていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「敵影5。最初の敵はリザードマンの戦士ね」
「ほう、鱗持ちが剣を持つか。面白い」
「草原と沼地の混合エリアだから、あいつらにとって有利な地形ね」
「一番槍は貰った!」
目視するや否や、神丸は刀を抜き放ち、獰猛な笑みを浮かべて敵へと突貫して行った。
全くもう、連携も何もあったもんじゃないわね。ま、この程度の相手に足並み揃える必要を感じないし、好きにさせときましょ。一応あいつには、ドロップしたアイテムは根こそぎ回収するようには伝えてあるんだし。
「お嬢様、ここらでは自生していない薬草が沢山あります! 中には故郷でしか見たことが無いような霊草まで……」
「流石は上級ダンジョンと言ったところね。敵のレベルに見合った良いものが生えているわ。……さて、今日のアリシアは素材採取がメインよ。私も採取を主体にはするけれど、進むに連れて出現する魔物の数も増加していくから回収する余裕が無くなっていくわ」
「承知しました」
「けど、アリシアも戦う用意だけは常にしておいて。地中の連中や背後に沸いた奴が、そっちに行くかも知れないから。マップ確認は怠らないようにね」
「はいっ」
「んっ」
アリシア成分を補給するために抱きしめ、頬擦りし、キスをする。
上級ダンジョンは中級ダンジョンよりも広大だ。
1つ1つのマップの長さもそうだが、そのフロアの数も3から5へと増えているし、更には2階層になっているため全部で10個のフロアを踏破しなければならない。
それに加えて、今回脱出アイテムは用意が出来ていない。
いや、用意出来ない事はないんだけど、レシピの関係上どうしてもダンジョン内で作るしか無いのよね。それくらい希少な素材が要求される。
逆に、初心者ダンジョンと中級ダンジョンの脱出アイテムは、レシピのスキルもお手軽だからか、錬金術部で量産されてるみたいだけど。
という訳でアリシアの補給はこまめにやっていかなきゃ!
「おっ、アリシア見て見て。沼地の中に『マンドラゴラ』があるよー」
「ぜ、『絶命草』ですか。対処はどのように?」
マンドラゴラ。引っこ抜くと奇声を上げる事で有名だろう。別に聞いたところで死にはしないが、まともに奴の声を聴けばバッドステータスのオンパレードだ。
「そうねー。まず絶叫を耳にする際、10メートル以上離れてしまえばただの騒音になるわ。逆に10メートル以内であれば、近距離になるほど受ける影響は酷くなるの。もし引き抜く時に10メートル以内に人がいたら離れるように伝えて」
「はい」
「次に引き抜く際の手順は簡単よ。『魔力防御』で耳を押さえるの。こいつの絶叫には魔力が乗っているから、耳栓じゃ全て抑える事は出来ないわ」
「なるほど……」
「もしどうしても近距離の人を遠くに移動させられない場合は、完全に土の壁で覆ってしまってから、遠隔操作で引っこ抜くとかね。まあそれはまた今度でいいわ。とりあえず引っこ抜いてごらんなさい」
「はいっ!」
神丸は確実に20メートルくらい離れた位置にいるし問題はないだろう。あ、今2体目を切り伏せたわね。ゆっくり楽しむように戦ってるわ。
『ギィヤアアアアア!!』
聞き慣れた絶叫に、遠くにいたリザードマン達が身体をこわばらせる。
神丸はその隙を見逃す事なくまた1体減らした。
「採れました、お嬢様!」
「おめでとう」
嬉しそうなアリシアがカワイイわ。
それにしてもダンジョンっていうのは、本当に素材の宝庫ね。ここは草原と沼地エリアだから壁が無い分鉱石系は取得できないけど、壁のあるエリアならミスリルとかも普通に掘れるし。
出入りする度にダンジョン内が変化するので実質無限湧き。だから、取り過ぎによる枯渇を気にする必要もない。正にダンジョンは素材を集めるために存在していると言っても過言ではないわね。そのダンジョンの存在に泣かされている人達がいるのは聞いてはいるから、表立っては言えないけど……。
足元の素材を素早く回収しながら前に進んでいると、いつの間にやら正面に映っていた赤い敵影が消えていた。
顔を上げれば残心を終えた神丸が佇んでいた。どうやら追加で発生したリザードマンも撃破したらしい。回収のついでにチラ見したけど、全部で10体くらい倒してたかな?
「どう? 相手の強さは」
「……うむ。先日の戦いにいた、衛兵であったか? そやつらと同等か少し上程度の力量であったな。ただ、あれらよりは連携を理解している分、多少はマシと言った所か」
「まあ序盤だしね。それでも、最初から衛兵レベルが出てくると考えれば、期待は出来そうでしょう?」
「確かに。そら、女王よ。受け取るが良い。奴らの素材に、獲物が1本である」
神丸から『リザードマンの鱗』を17枚と『鉄製のロングソード』を2本受け取る。
「ふむ……。武器の方はランクが2だけど、この鱗を集めて作る鱗帷子なら、工夫次第で5とか6ランクの防具は出来そうね」
「ほう……」
1枚1枚は小さいから、作るにはどうしても数がいるのが難点だけど。まあでも、ここの上級ダンジョンは質もある程度揃ってるけど、本質は数の暴力だから、素材が足りないなんてことはないけどね。
「防具と聞いて思ったのだが、女王よ。それは何か特殊な衣装なのか?」
そう言って神丸は、私のお洒落着を指差した。
何の変哲もない、アリシアに選んでもらった、王都に売っているごく普通のカワイイだけの衣装を。
「神丸は見て……ないか。今日昼食を頂いた所から、目と鼻の先にある洋服屋さんで買った、少し値が張るだけの……防具としての価値は無いお洋服よ」
「先日の戦いでもそうだったが、女王はランク付きの装備を、何一つ持ち歩いてはおらんのか? お主の実力は理解しておるが、危ないのではないか」
「あら、心配してくれるの?」
「くく。服が破れて泣かれては困るのでな」
「あら、言ってくれるじゃない。でも大丈夫よ、先日の戦いで魔法を弾くところを見ていたでしょ。あれを今、私は全身でやっているの。だからそこらの装備をつけるより、ずっと身の守りは固いわ」
「お嬢様」
そうこう話していると、ほくほく顔のアリシアがやって来た。貴重な霊草が取れてとっても嬉しそうね。なでなで。
「この辺りのアイテムは全て回収しました」
「おっけ。じゃあ神丸、このダンジョン、先は長いわよ。だからお話は戦いながらして、効率よく先へ進みましょ」
「あいわかった」
「アリシアは臨機応変によろしくー」
「お任せください、お嬢様!」
「スピカは、魔法で戦ってごらんなさい。あなたも、そろそろ成長したいでしょう?」
『~~!』
スピカの戦ってみたいという強い想いが、波動となって私たちの心に鳴り響いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「側面からサソリ2、蛙3の大蛇1! 正面のゴーレムは私が受け持つ!」
「あいわかった! 『速刃流、弐之太刀・追連椿』!」
「スピカ! 横から邪魔が入らないよう周囲に風の障壁! ただし、正面は開けておいて!」
『~~!』
襲いくる敵集団の猛攻に、私と神丸、そしてスピカの支援で立ち回る。大技をぶっ放せばこの騒ぎは片付くが、それで対処していてはいつか本当に困った時の選択肢が狭まってしまう。
集団戦にも対応できるよう、今のうちに彼らの練度。そして私の意識を高めておかなければ。
神丸の鋭い一撃が大蛇とサソリを切り刻む。サソリは素材を落としながら消えていくが、大蛇は消えず残り続けていた。
それを知覚せずに蛙の相手をしようとする神丸に、情報を伝える。
「神丸! その倒した大蛇、消えてないから注意しなさい!」
「む、承知!」
神丸が大蛇から距離を置くと同時、その場に大量の毒液がぶちまけられた。犯人は大蛇の腹から飛び出した、小さな3体の蛇だった。
「マザースネークはお腹が膨らんでたら子供が入ってるわ。次から気をつけて」
「『ウィンドランス』!」
後方から飛んできた複数の槍が、小蛇の群れを貫く。
「かたじけない!」
「ナイスアリシア!」
「はいっ」
逆にアリシアには何の指示も出していない。彼女は何も言わなくても、私の意図を酌めるのだ。言葉を交わさずとも、本当に必要な所に支援を飛ばせる彼女には素材回収兼、サポート役に努めてもらっていた。
このダンジョンは乱戦になる程に大量の魔物が出現する。そしてそんなゾーンほど、希少性の高い素材が出現しやすい傾向にある。そんな各種素材にアリシアは目を輝かせながらも、風の槍を的確に打ち込んでくれていた。
そうして私と神丸が主体となって、群れを全て撃滅したところでメッセージが流れた。
『アリシアのレベルが47になりました。各種上限が上昇しました』
「あら、おめでとうアリシア」
「ほう、成長か。めでたいな」
『~~!』
「お嬢様、スピカ様、神丸様。ありがとうございます。戦いにあまり参加していない身での成長、少し居た堪れませんが……」
「良いのよ。倒してから回収するようでは、集め切る前にまたリポップする可能性があるんだから。だからと言って希少性の高い素材を雑に回収して品質を落とすわけにもいかないしね。それに、高い品質のままその速度で回収出来るのは、私を除けばアリシアだけよ。貴女でなくては、この仕事は任せられないわ」
「お嬢様……!」
「アリシア……!」
「ふぅ、またかね。睦言を交わすのは構わんが、先に進まぬか? またぞろ魔物が現れるぞ」
「もう、わかってるわよー。スピカ、さっきの要領で散らばったドロップ素材を集めてごらんなさい」
『~~』
今日の戦いを通じて、スピカの風魔法操作スキルは格段に上昇していた。思うがままに風を操り、魔物が落とした戦利品の山を浮かして集めて見せた。いつぞやの盗賊たちの根城で私がアイテムを集めた時のように。
あの時もこの子は、ペンダントの中でひっそりとその様子を見ていたみたい。私ほどではないにしろ、スピカの魔法は正確だ。精霊にとっての魔法は呼吸と同義だと言われているし、ほんの少しの練習でこれだけ出来るのなら十分ね。
私が手元の雑貨用マジックバッグの口を広げ、スピカは風を操りドボドボとアイテムたちを入れていく。
雑多に物を入れ込んでも整理の必要がないのは助かるけど、やっぱり中サイズだと容量が心もとないわね。錬金術のスキルもある程度育って来てるし、今度時間を作って便利アイテムをまとめて作ってしまいましょうか。
『~~』
「ふふ、ご苦労様」
仕事を終えて満足気なスピカを撫でて褒める。
『~~~!』
そんな調子で歩を進め、大きな地下階段のある場所まで辿り着いた。
「前半戦終了ね。休憩しましょ」
階段の手前で陣取り、草地に寝転がる。
「お嬢様、ここはセーフティーポイントですか?」
「そうよー。魔物は湧かないし、隣のエリアから攻めてくることもない。遠距離持ちもこちらを見つけても手出しして来ないわ。……こっちからちょっかい出した場合は別だけど」
すぐそばに座ったアリシアの膝へとダイブしつつ、同じように飛び込んできたスピカにご飯をあげる。
『~~』
セーフティーポイントとは、大きめのダンジョンであれば必ずあると言われている安全地帯だ。その性質上、他のパーティーがキャンプをしていたりする物だが、この上級ダンジョンはパーティー毎に別空間で存在しているから、ここで出会うことはまずない。
1つのフロアが中級ダンジョンの2倍以上の広さとはいえ、出現する魔物の種類も数も豊富で、なおかつ自生している素材類は貴重品ばかり。それら全てを回収しながら進んでいるせいか、進捗は思っていた以上に悪かった。
「突入して、かれこれ3時間ほどか。今日は授業をサボって正解だったわ。授業が終わってから挑んでたら、帰りは真夜中になっていそうだもの」
「ですがこのままの速度で進んだとして、踏破して出てくる頃には日は落ちていそうですね」
「そうねー。アリシアは大丈夫? 疲れてない?」
「はい、楽をさせてもらってますから」
「そー? 神丸も疲れてない?」
少し距離を置いたところで胡座を組む神丸を見遣る。微妙に距離があるわね。何に遠慮してるのかしら?
「うむ……多少の疲労は感じているが、些細なものよ。それよりも、戦いの最中に手傷を負っても、即座に怪我を治療して貰えるのだ。そのおかげもあって、消耗は最低限であるな。それどころか、安全な環境で一対多の戦いに励めるのだ。久しくなかった、剣気が研ぎ澄まされる感覚を得ている。それが愉しくて仕方がない」
「あー、バトルでハイになっちゃってんのね。……その状態でも疲労を感じてるんなら、そのうち倒れかねないわよアンタ。まあ無理させてるのは私だから、叱ったりはしないけど」
「お嬢様もお疲れでしょうし、長めに休んで行かれますか?」
アリシアが心配そうに覗き込んで、頭を撫でてくれる。
えへへ、心地良い。けど、あんまり遅くなりすぎてあの子達を心配させたくもないのよね。
「ううん、早めに切り上げて進みましょ。その代わりアリシア、道中で拾った素材を見せてもらえる?」
「あ、はい。こちらをどうぞ」
マジックバッグを受け取り、アリシアのお腹で深呼吸してから起き上がる。けどやっぱり寂しくて、アリシアに寄りかかりながらマジックバッグに手を突っ込んだ。
「……おー、色々あるわね」
錬金術スキルや調合スキルを40から50くらいまで成長させてくれそうな薬草や希少な霊草に、魔物の素材にドロップ品の数々。更には多種多様な鉱石に貴金属まで。
ああ、これとかこれなんて錬金術で繊維を抽出したら糸が作れそうだし、織物も捗りそう……!
「んふっ」
ヤバい。
眺めてるだけでニヤニヤが止まんない。
さすがにこれだけでスキルを上げ切るのは難しいし、なんならアリシアとの2人分で考えたら全然足りないわ。でも、先のことは置いといて、これらの素材があれば、あの薬が作れるはず!
『マスターが楽しそうで何よりね』
「構わぬ。本来であれば立ち入ることすら許されなかった、前人未到の地へと挑む権利をもらえたのだ。それだけで代え難い経験になるだろう。それに、某は此の国で得体の知れぬ素材を、適切な値で捌ける関係を築けておらぬしな」
「そうねー、ここの素材を適切に扱える人なんて、まだこの国……。下手したらこの世界に私だけかも知れないしね」
「流石です、お嬢様」
昼食を終えた私達4人は、とある場所へとやって来ていた。
そこは王国にとって前人未到の地であり、国としても危険すぎて存在を隠し通しておきたい難所の1つ。
その名も『上級ダンジョン』。
大昔にこのダンジョン関係で、国が盛大に失敗をしたらしく、秘匿せざるを得なかったとか言う曰く付きの場所だ。
一応学園ダンジョンの1つであるから、放っておいても氾濫なんてしないし、きちんと脱出用アイテムは設定されているんだけど……。困ったことに作成に必要な要求スキルと素材が難しすぎて、誰もそのレシピを発見出来ていないみたい。
製法が失われてしまったのかな。もしくは、試そうにも危険すぎて試せないからかも。
まあ、発動しなければダンジョンをクリアするしかなくなるもんね。それってつまり死刑宣告みたいなものだし、試せるわけないか。
上級ダンジョンを知っているのは王族とその親族に限られているみたいで、彼らにとってもここは、1度入れば脱出不可能な死地という認識みたい。
他2種のダンジョンのように脱出アイテムも存在しなければ、誰一人として戻ってこなかった場所。入れば絶対に死ぬダンジョン。そう考えれば、恐怖を感じてしまうのも分かるわ。
だから、その内上級ダンジョンに攻め込むと宣言した時は、陛下だけではなくソフィー達からもとっても心配されたわ。
そういうこともあって、ソフィー達には心配かけまいと、今日は何も伝えずに内緒で入ったのよね。
さっさとクリアして、ソフィー達を驚かせてあげよーっと。
「でも折角付き合ってくれるんだから、何か報酬を渡したいわね。例の条件、3つとも選んでくれる以上は、今後とも長い付き合いになるでしょうし」
「その申し出はありがたいが、対価が思いつかんな」
「んー。でもなぁ」
「この『ぱーてぃー』とやらだったか? この奇特な魔道具を経験させて貰えるだけでも十分すぎる対価だと言えよう。説明を受けただけでも、諸外国全てが喉から手を伸ばすほど魅力的であると言える。下手すれば戦争を起こす切っ掛けにもなりかねん。扱いには気をつけるべきだぞ、女王よ」
「んー。神丸も欲しい?」
「ふむ……。有用性はわかるが、某の手には余る代物だな。此の旅も、1人旅であるが故」
「そう言えばボッチだったわね」
「うむ、ぼっちであるな! ふははは!」
私達4人を構成する中に、ナンバーズは含まれていない。彼らは皆、外で待機……ではなく。同じくダンジョンに入ってもらっている。ただし初級ダンジョンではなく、中級ダンジョンだ。
お昼前のお使い。
エイゼルは当然、神丸を呼び出すために走らせていたけれど、ドライには陛下の元へと向かわせていた。理由は私が上級ダンジョンに挑んでいる間、暇になるナンバーズにも中級ダンジョンで素材を回収してもらう為だ。その為にパーティ編成使用の許可を貰いに行かせたのだ。
中級ダンジョンといっても、なにも初っ端から、闇属性ゾーンでレンズを集めろなんて無茶な指示はしないわ。ただ、あのメンバーの実力なら十分中級ダンジョンでも戦っていけるはず。
エイゼルはアリシアクラスの腕前を持っているし、他の子達も数値に準じた実力を有しているはず。ツヴァイに関しては、私の授業を受けた以上、今まで以上に戦えるはずだしね。
あと、3人だと心配だったので、アハトとノインも戦列に加えたわ。ナンバーズが5人もいれば、安心ね。
だけど、ちょっと心配のしすぎかもしれないわね。だってあの中級ダンジョンは、実質アリシア1人で余裕だったんだもん。
彼ら5人が揃って敗退するところは想像できない。いつまでも私の護衛を務めるだけでは成長の機会が無いだろうし、素材も含めて何かしらの成果は期待出来るだろう。
念のため回復と脱出用アイテムは持たせてあるしね。
「……あ、じゃあマジックバッグの中サイズなんてどう? 1人旅に大サイズはやり過ぎだけど、中サイズなら困ることはないでしょ」
「確かに、あれはあって困るものではない。……いや待て、まさかと思うが女王よ。中サイズを……いや、大サイズですら作れると言うのではなかろうな」
「あら神丸、私の事理解してきたじゃない」
「……中サイズですら、君主お抱えの秘蔵術師が作れると言う噂だと言うのに。お主の言う最強とは、武力だけでなく知力や製造能力をも指すのか。誠に天晴れであるな」
「ふふん、そうでしょ。カワイイでしょ」
「む?? ……女王よ、分かるように言ってくれ」
「やっぱり神丸、私のこと分かってないわね」
「む????」
まるで理解出来ないといった表情を浮かべる神丸を置いて、ダンジョン奥へと歩を進める。
『~~』
微笑む私を追いかけるように、パーティーの4人目はふよふよとついて来ていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「敵影5。最初の敵はリザードマンの戦士ね」
「ほう、鱗持ちが剣を持つか。面白い」
「草原と沼地の混合エリアだから、あいつらにとって有利な地形ね」
「一番槍は貰った!」
目視するや否や、神丸は刀を抜き放ち、獰猛な笑みを浮かべて敵へと突貫して行った。
全くもう、連携も何もあったもんじゃないわね。ま、この程度の相手に足並み揃える必要を感じないし、好きにさせときましょ。一応あいつには、ドロップしたアイテムは根こそぎ回収するようには伝えてあるんだし。
「お嬢様、ここらでは自生していない薬草が沢山あります! 中には故郷でしか見たことが無いような霊草まで……」
「流石は上級ダンジョンと言ったところね。敵のレベルに見合った良いものが生えているわ。……さて、今日のアリシアは素材採取がメインよ。私も採取を主体にはするけれど、進むに連れて出現する魔物の数も増加していくから回収する余裕が無くなっていくわ」
「承知しました」
「けど、アリシアも戦う用意だけは常にしておいて。地中の連中や背後に沸いた奴が、そっちに行くかも知れないから。マップ確認は怠らないようにね」
「はいっ」
「んっ」
アリシア成分を補給するために抱きしめ、頬擦りし、キスをする。
上級ダンジョンは中級ダンジョンよりも広大だ。
1つ1つのマップの長さもそうだが、そのフロアの数も3から5へと増えているし、更には2階層になっているため全部で10個のフロアを踏破しなければならない。
それに加えて、今回脱出アイテムは用意が出来ていない。
いや、用意出来ない事はないんだけど、レシピの関係上どうしてもダンジョン内で作るしか無いのよね。それくらい希少な素材が要求される。
逆に、初心者ダンジョンと中級ダンジョンの脱出アイテムは、レシピのスキルもお手軽だからか、錬金術部で量産されてるみたいだけど。
という訳でアリシアの補給はこまめにやっていかなきゃ!
「おっ、アリシア見て見て。沼地の中に『マンドラゴラ』があるよー」
「ぜ、『絶命草』ですか。対処はどのように?」
マンドラゴラ。引っこ抜くと奇声を上げる事で有名だろう。別に聞いたところで死にはしないが、まともに奴の声を聴けばバッドステータスのオンパレードだ。
「そうねー。まず絶叫を耳にする際、10メートル以上離れてしまえばただの騒音になるわ。逆に10メートル以内であれば、近距離になるほど受ける影響は酷くなるの。もし引き抜く時に10メートル以内に人がいたら離れるように伝えて」
「はい」
「次に引き抜く際の手順は簡単よ。『魔力防御』で耳を押さえるの。こいつの絶叫には魔力が乗っているから、耳栓じゃ全て抑える事は出来ないわ」
「なるほど……」
「もしどうしても近距離の人を遠くに移動させられない場合は、完全に土の壁で覆ってしまってから、遠隔操作で引っこ抜くとかね。まあそれはまた今度でいいわ。とりあえず引っこ抜いてごらんなさい」
「はいっ!」
神丸は確実に20メートルくらい離れた位置にいるし問題はないだろう。あ、今2体目を切り伏せたわね。ゆっくり楽しむように戦ってるわ。
『ギィヤアアアアア!!』
聞き慣れた絶叫に、遠くにいたリザードマン達が身体をこわばらせる。
神丸はその隙を見逃す事なくまた1体減らした。
「採れました、お嬢様!」
「おめでとう」
嬉しそうなアリシアがカワイイわ。
それにしてもダンジョンっていうのは、本当に素材の宝庫ね。ここは草原と沼地エリアだから壁が無い分鉱石系は取得できないけど、壁のあるエリアならミスリルとかも普通に掘れるし。
出入りする度にダンジョン内が変化するので実質無限湧き。だから、取り過ぎによる枯渇を気にする必要もない。正にダンジョンは素材を集めるために存在していると言っても過言ではないわね。そのダンジョンの存在に泣かされている人達がいるのは聞いてはいるから、表立っては言えないけど……。
足元の素材を素早く回収しながら前に進んでいると、いつの間にやら正面に映っていた赤い敵影が消えていた。
顔を上げれば残心を終えた神丸が佇んでいた。どうやら追加で発生したリザードマンも撃破したらしい。回収のついでにチラ見したけど、全部で10体くらい倒してたかな?
「どう? 相手の強さは」
「……うむ。先日の戦いにいた、衛兵であったか? そやつらと同等か少し上程度の力量であったな。ただ、あれらよりは連携を理解している分、多少はマシと言った所か」
「まあ序盤だしね。それでも、最初から衛兵レベルが出てくると考えれば、期待は出来そうでしょう?」
「確かに。そら、女王よ。受け取るが良い。奴らの素材に、獲物が1本である」
神丸から『リザードマンの鱗』を17枚と『鉄製のロングソード』を2本受け取る。
「ふむ……。武器の方はランクが2だけど、この鱗を集めて作る鱗帷子なら、工夫次第で5とか6ランクの防具は出来そうね」
「ほう……」
1枚1枚は小さいから、作るにはどうしても数がいるのが難点だけど。まあでも、ここの上級ダンジョンは質もある程度揃ってるけど、本質は数の暴力だから、素材が足りないなんてことはないけどね。
「防具と聞いて思ったのだが、女王よ。それは何か特殊な衣装なのか?」
そう言って神丸は、私のお洒落着を指差した。
何の変哲もない、アリシアに選んでもらった、王都に売っているごく普通のカワイイだけの衣装を。
「神丸は見て……ないか。今日昼食を頂いた所から、目と鼻の先にある洋服屋さんで買った、少し値が張るだけの……防具としての価値は無いお洋服よ」
「先日の戦いでもそうだったが、女王はランク付きの装備を、何一つ持ち歩いてはおらんのか? お主の実力は理解しておるが、危ないのではないか」
「あら、心配してくれるの?」
「くく。服が破れて泣かれては困るのでな」
「あら、言ってくれるじゃない。でも大丈夫よ、先日の戦いで魔法を弾くところを見ていたでしょ。あれを今、私は全身でやっているの。だからそこらの装備をつけるより、ずっと身の守りは固いわ」
「お嬢様」
そうこう話していると、ほくほく顔のアリシアがやって来た。貴重な霊草が取れてとっても嬉しそうね。なでなで。
「この辺りのアイテムは全て回収しました」
「おっけ。じゃあ神丸、このダンジョン、先は長いわよ。だからお話は戦いながらして、効率よく先へ進みましょ」
「あいわかった」
「アリシアは臨機応変によろしくー」
「お任せください、お嬢様!」
「スピカは、魔法で戦ってごらんなさい。あなたも、そろそろ成長したいでしょう?」
『~~!』
スピカの戦ってみたいという強い想いが、波動となって私たちの心に鳴り響いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「側面からサソリ2、蛙3の大蛇1! 正面のゴーレムは私が受け持つ!」
「あいわかった! 『速刃流、弐之太刀・追連椿』!」
「スピカ! 横から邪魔が入らないよう周囲に風の障壁! ただし、正面は開けておいて!」
『~~!』
襲いくる敵集団の猛攻に、私と神丸、そしてスピカの支援で立ち回る。大技をぶっ放せばこの騒ぎは片付くが、それで対処していてはいつか本当に困った時の選択肢が狭まってしまう。
集団戦にも対応できるよう、今のうちに彼らの練度。そして私の意識を高めておかなければ。
神丸の鋭い一撃が大蛇とサソリを切り刻む。サソリは素材を落としながら消えていくが、大蛇は消えず残り続けていた。
それを知覚せずに蛙の相手をしようとする神丸に、情報を伝える。
「神丸! その倒した大蛇、消えてないから注意しなさい!」
「む、承知!」
神丸が大蛇から距離を置くと同時、その場に大量の毒液がぶちまけられた。犯人は大蛇の腹から飛び出した、小さな3体の蛇だった。
「マザースネークはお腹が膨らんでたら子供が入ってるわ。次から気をつけて」
「『ウィンドランス』!」
後方から飛んできた複数の槍が、小蛇の群れを貫く。
「かたじけない!」
「ナイスアリシア!」
「はいっ」
逆にアリシアには何の指示も出していない。彼女は何も言わなくても、私の意図を酌めるのだ。言葉を交わさずとも、本当に必要な所に支援を飛ばせる彼女には素材回収兼、サポート役に努めてもらっていた。
このダンジョンは乱戦になる程に大量の魔物が出現する。そしてそんなゾーンほど、希少性の高い素材が出現しやすい傾向にある。そんな各種素材にアリシアは目を輝かせながらも、風の槍を的確に打ち込んでくれていた。
そうして私と神丸が主体となって、群れを全て撃滅したところでメッセージが流れた。
『アリシアのレベルが47になりました。各種上限が上昇しました』
「あら、おめでとうアリシア」
「ほう、成長か。めでたいな」
『~~!』
「お嬢様、スピカ様、神丸様。ありがとうございます。戦いにあまり参加していない身での成長、少し居た堪れませんが……」
「良いのよ。倒してから回収するようでは、集め切る前にまたリポップする可能性があるんだから。だからと言って希少性の高い素材を雑に回収して品質を落とすわけにもいかないしね。それに、高い品質のままその速度で回収出来るのは、私を除けばアリシアだけよ。貴女でなくては、この仕事は任せられないわ」
「お嬢様……!」
「アリシア……!」
「ふぅ、またかね。睦言を交わすのは構わんが、先に進まぬか? またぞろ魔物が現れるぞ」
「もう、わかってるわよー。スピカ、さっきの要領で散らばったドロップ素材を集めてごらんなさい」
『~~』
今日の戦いを通じて、スピカの風魔法操作スキルは格段に上昇していた。思うがままに風を操り、魔物が落とした戦利品の山を浮かして集めて見せた。いつぞやの盗賊たちの根城で私がアイテムを集めた時のように。
あの時もこの子は、ペンダントの中でひっそりとその様子を見ていたみたい。私ほどではないにしろ、スピカの魔法は正確だ。精霊にとっての魔法は呼吸と同義だと言われているし、ほんの少しの練習でこれだけ出来るのなら十分ね。
私が手元の雑貨用マジックバッグの口を広げ、スピカは風を操りドボドボとアイテムたちを入れていく。
雑多に物を入れ込んでも整理の必要がないのは助かるけど、やっぱり中サイズだと容量が心もとないわね。錬金術のスキルもある程度育って来てるし、今度時間を作って便利アイテムをまとめて作ってしまいましょうか。
『~~』
「ふふ、ご苦労様」
仕事を終えて満足気なスピカを撫でて褒める。
『~~~!』
そんな調子で歩を進め、大きな地下階段のある場所まで辿り着いた。
「前半戦終了ね。休憩しましょ」
階段の手前で陣取り、草地に寝転がる。
「お嬢様、ここはセーフティーポイントですか?」
「そうよー。魔物は湧かないし、隣のエリアから攻めてくることもない。遠距離持ちもこちらを見つけても手出しして来ないわ。……こっちからちょっかい出した場合は別だけど」
すぐそばに座ったアリシアの膝へとダイブしつつ、同じように飛び込んできたスピカにご飯をあげる。
『~~』
セーフティーポイントとは、大きめのダンジョンであれば必ずあると言われている安全地帯だ。その性質上、他のパーティーがキャンプをしていたりする物だが、この上級ダンジョンはパーティー毎に別空間で存在しているから、ここで出会うことはまずない。
1つのフロアが中級ダンジョンの2倍以上の広さとはいえ、出現する魔物の種類も数も豊富で、なおかつ自生している素材類は貴重品ばかり。それら全てを回収しながら進んでいるせいか、進捗は思っていた以上に悪かった。
「突入して、かれこれ3時間ほどか。今日は授業をサボって正解だったわ。授業が終わってから挑んでたら、帰りは真夜中になっていそうだもの」
「ですがこのままの速度で進んだとして、踏破して出てくる頃には日は落ちていそうですね」
「そうねー。アリシアは大丈夫? 疲れてない?」
「はい、楽をさせてもらってますから」
「そー? 神丸も疲れてない?」
少し距離を置いたところで胡座を組む神丸を見遣る。微妙に距離があるわね。何に遠慮してるのかしら?
「うむ……多少の疲労は感じているが、些細なものよ。それよりも、戦いの最中に手傷を負っても、即座に怪我を治療して貰えるのだ。そのおかげもあって、消耗は最低限であるな。それどころか、安全な環境で一対多の戦いに励めるのだ。久しくなかった、剣気が研ぎ澄まされる感覚を得ている。それが愉しくて仕方がない」
「あー、バトルでハイになっちゃってんのね。……その状態でも疲労を感じてるんなら、そのうち倒れかねないわよアンタ。まあ無理させてるのは私だから、叱ったりはしないけど」
「お嬢様もお疲れでしょうし、長めに休んで行かれますか?」
アリシアが心配そうに覗き込んで、頭を撫でてくれる。
えへへ、心地良い。けど、あんまり遅くなりすぎてあの子達を心配させたくもないのよね。
「ううん、早めに切り上げて進みましょ。その代わりアリシア、道中で拾った素材を見せてもらえる?」
「あ、はい。こちらをどうぞ」
マジックバッグを受け取り、アリシアのお腹で深呼吸してから起き上がる。けどやっぱり寂しくて、アリシアに寄りかかりながらマジックバッグに手を突っ込んだ。
「……おー、色々あるわね」
錬金術スキルや調合スキルを40から50くらいまで成長させてくれそうな薬草や希少な霊草に、魔物の素材にドロップ品の数々。更には多種多様な鉱石に貴金属まで。
ああ、これとかこれなんて錬金術で繊維を抽出したら糸が作れそうだし、織物も捗りそう……!
「んふっ」
ヤバい。
眺めてるだけでニヤニヤが止まんない。
さすがにこれだけでスキルを上げ切るのは難しいし、なんならアリシアとの2人分で考えたら全然足りないわ。でも、先のことは置いといて、これらの素材があれば、あの薬が作れるはず!
『マスターが楽しそうで何よりね』
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1/19の20時の投稿で他サイトで投稿中のものに追いつきます。以後隔日で20:01頃投稿予定です。
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