異世界でもうちの娘が最強カワイイ!

皇 雪火

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第5章:魔法学園 入学騒乱編

第173話 『その日、成果を披露した』

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「……うぅ、頑張ったのに。ご褒美……ぐすん」

 震える身体を抱きしめる。
 悲しくて、哀しくて、カナシクテ。
 悔しくて、口惜しくて、クヤシクテ。

 いっぱい頑張ったのに、これじゃあ、ご褒美、もらえないよぉ……。

「うぅー! えぐっ、ぐすっ」
「こ、これはまさか噂の……あ、ソフィア様!」
「シラユキ!」
「お嬢様!」

 両隣が、温かい感触に包まれる。
 顔を上げるとアリシアとソフィーが私を見つめていた。

「アリシア……ソフィー……ぐすっ」
「お嬢様、心配しないでください」
「うぅ、でもぉ……」

 涙が止めどなくこぼれ落ちていく。
 視界も歪んで、2人の顔もよく見えない。

「そうよ。ちゃんとシラユキは頑張ったもの。だからちゃんと、ご褒美を上げるわ」
「でも、私、ダメージを……」
「あんなの些細な物よ。言ったでしょ、大怪我しなければ良いって」
「で、でも……」
「あーもう、こっち見なさい!」
「ふぇ」

 ソフィーの手で顔を挟まれ、無理矢理向かされると、ソフィーの顔がゆっくりと近づいてきた。

「んむっ。んっ、んっ……」

 悲しい感情がゆっくりと解され、次第に心はソフィーへの想いへと塗り変わっていく。

「ぷぁっ……。ソフィー!」

 唇を離し、カワイらしく微笑むソフィーへと、今度は私からキスをする。彼女は拒む事なく受け入れてくれた。
 激しく求める様なキスではなく、お互いの気持ちを確かめる様な長いキスを堪能し、ゆっくりと彼女から離れる。

 もう、涙は止まっていた。

「コレが、ご褒美……?」

 少し戸惑いながらも、彼女にそう尋ねる。確かにいつもとは違う感じのキスだけれど、どう言った意味合いのご褒美なのか、よくわからなかった。

「そうよ、察しの悪い子ね」

 そんな私に、ソフィーは怒らず優しく微笑んでくれるだけだった。なにそれ、カワイイんだけど。もう1回キスしていいかしら?

「お嬢様、次は私です」
「アリシア。んっ」

 今度はアリシアの手が伸びてきて、私を思いっきり抱きしめながらキスをしてくる。最近アリシアが積極的になってくれて嬉しいんだけど、今日はいつもより熱を帯びている気がするわ。
 そう思っているとアリシアの方から離れていった。

 もう、私まだ満足してないんだからっ!

 距離を置いたアリシアに接近して、今度は私からアリシアに貪るようにキスをする。
 唇をこじ開け、舌をねじ込む。

「……んう?」

 いつもならアリシアも舌で応戦してくれるのに、今日はなんだか大人しい。熱は感じるのにアリシアからは抱擁を強くされる以外、何も返されなかった。
 不思議に思って顔を離すと、今度は横合いから小さくカワイらしい手が伸びてきた。

「シラユキ姉様」
「アリスちゃ、んっ」

 まだまだ、キスはたどたどしいけれど、私を求めて来てくれているのが分かる。
 それと、キス自体まだまだ不慣れな上に、緊張と興奮が入り混じっているからか、すぐに呼吸が苦しくなってアリスちゃんから離れてしまった。

 そんなアリスちゃんがカワイくて、ほっぺや口に何度も啄むようなキスでお返しする。

「あうあう」

 すっかり茹ダコになったアリスちゃんを撫でていると、恥ずかしそうな声が聞こえた。

『……いやー、あはは。ごちそうさまです』
「あら?」

 思えば、試合の直後だったわね。
 試合が終わったと思ったら私が泣き出して、かと思えば公爵令嬢や王女様からキスされたりし返したり。観客が困惑するのも当然か。
 ……ん? 彼らから感じるのは困惑だけではないわね。祝福されてる? 何を??

 アリシアが立ち上がり、キャサリンちゃんに何か耳打ちしている。……あー、断片的にだけど私が泣いた理由について説明しているみたい。そしてキャサリンちゃんはアリシアと相談したうえで、その情報を愉快な事に思えるよう色を付けて発表を始めた。
 脚色も誇張もなく、ただ事実を言ってるはずなのにお客さん達は大盛り上がりね。キャサリンちゃん凄いなー。

 その光景を見て、私も自然と笑みをこぼした。
 さっきまで悲しい気持ちに支配されていたのに、皆にキスされた事で、涙は完全にどこかへと行っちゃったみたい。

「ねえソフィー、さっきのキスがご褒美なの?」
「そうよ」

 アリスちゃんほどではないけど、ソフィーも少し気恥ずかしげに茹で上がりつつあった。改めて、自分のしたことを噛み締めているのかしら。
 まあこんなに大観衆の中でのキスだもんね。恥ずかしがり屋のソフィーからのご褒美としては、十分嬉しい物だったわ!

「そっかー、えへへ」
「……ソフィア姉様。たぶんですが、反応から察するに、シラユキ姉様には真意が伝わっていないかと」
「え、嘘でしょ?」
「意味?」

 あのキスに、そんなに深い意味が?
 そう言えば一部の観客からの反応が不思議で気になっていたのよね。

「……うわ」

 何か知らないけどドン引きされた。

「ええ……?」
「シラユキ。この国の婚姻制度はもう理解しているでしょ」
「うん」

 女の子同士でも、ってことよね。

「なら、こんな大観衆の中、キスをして見せると言うことが、どういう事を意味するのか。……分かるでしょ?」
「……ああ!」

 なるほど! つまりソフィー達は大観衆の中で、私とそういう関係であると大々的に公表したってことね!
 えへ。

「そしてシラユキ姉様は、期せずして私達にキスで応えてくれました。つまりその……
「これが、頑張った貴女への、私達からのご褒美よ。……そ、その代わり。ここまでしたんだから、ちゃんと……。責任、取りなさいよね!」
「ソフィー……うん!」

 更に茹で上がった2人の姉妹を抱きしめながら、私は全力で頬ずりした。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 歓声と黄色い声が鳴りやまない中、キャサリンちゃんたっての希望により、最終戦の解説をお願いされた。立ちながらはなんだったので、土魔法で椅子も出す。
 もう大観衆の中で魔法を披露したのだ。このくらいの小ネタは、もう我慢する必要はない。

『おお、立派な椅子ですね! 少しお尻が冷たいですが』
『だってフィールドの岩を流用して作ってるんだもの、そこは仕方がないわ』
『あはは、そうでしたね! あまりに綺麗な魔法でしたので、思わずマジックバッグから取り出したのかと思うほどですよ!』
『ふふ、ありがとう』
『可愛らしい笑顔ありがとうございますっ! では早速ですが、皆さんも気になっているでしょう、神丸さんとの試合から!』

 勝利インタビューかと思いきや、キャサリンちゃんの求めるまま、実況解説のように戦いを説明していく。

 神丸の流派に関しては、秘密を抱えてる流派だから詳細は言えなかったけど、お互いの一連の行動を最初から最後まで、解説して行った。そして出自の軽い匂わせも。

『なるほど! つまり神丸さんは和国において、歴戦の勇士というわけですね!』
『ちょっとバトルジャンキーだけどね』
『あはは……』

 何かしら。お前が言うなって感情が見えたわ。
 まあ、自覚あるけど。

『では続いてレオン選手の戦いについてです。途中までシラユキさんからは稽古をしている風にも感じましたが、最後の攻防は如何だったのでしょう』
『超接近戦からの目潰し攻撃ね。あれはちょっと意外だったけど、やっぱり前衛が魔法を使えればあんな感じでトリッキーな戦いが出来ると思うのよね。魔法は威力だけが全てじゃないもの。あんな風に、戦いの場で敵の意識を逸らせる事で敵にダメージを与えられる可能性が出てくるわ。騎士科だからって近接武器だけ使えれば良いなんて考えはもう古いの。そういう意味でも、レオン君には期待しているのよ』
『ベタ褒めですねー。前線で戦いながら魔法が使えるシラユキさんの凄さは、この場にいる皆さんが知った事でしょう。魔法は魔法使いだけのもの。そんな考えは古いという事ですか。教授方が頭を抱える様子が目に浮かびますね!!』

 全ての科で魔法が使えれば、戦術だけじゃなく色んなことの強さが増すわ。これからどんどん魔法の知識を広げて行かなくちゃ。

 続いて『武闘家』のルドラー戦は、『爆砕鉄拳』を回避してパンチを決めただけだったので、軽く解説して終えた。
 キャサリンちゃん的にはカウンターが熱かったらしいけど、私としては腕のリーチや被弾の兼ね合いで、クロスカウンターを決められなかったのが心残りね。

『それでは続きまして、シャドーステップさんとの試合! あれはどういう立ち回りだったのか教えてください!』

 最初は律儀に自分の周辺を回ってくれたので、無詠唱の『サンダーウェーブ』で痺れさせ、転ばせたところを倒したと説明した。

『おお! 『サンダーウェーブ』ですか! 雷の属性魔法は、使い手が少ない為情報がほとんどなくて、効果が分かっていない物が多いんですが……やはり効果的な魔法なんですね!』

 リングの外、私と対角線上の位置には相手陣営の姿があった。
 200人以上の対戦相手が地べたに座っており、私の優勝スピーチを黙って聴いている。その中にはもちろん5戦目の面々もいて、自身がやられた技の解説を色々な思いを抱えながら聞いていた。
 あ、そういえば神丸。『酩酊』効果はどうなったんだろ。ここから見る限りシラフっぽいし、フィールドから敗北で退出した関係で、効果も切れたかな。

『そうねー、どの属性も覚えて損はないけれど、戦闘で一番役立つのはやっぱり雷と氷だと思うわ』
『覚えて損はない……ですか。シラユキ選手の様に自在に魔法が操れる方が言うと、簡単そうに聞こえてきますね。ですが、ほとんどの生徒は1種類、稀に才能があって2種類や3種類が現状ですよ』
『『適性』とかいうくだらないレッテルだっけ? そんなもので人の可能性を縛るから、この国の魔法は弱いのよ』

 観客。主に貴族の席が騒めいた。それに対して王族の席は静かなものだ。国の実力を舐める発言だから、不敬罪でとっ捕まってもおかしくない発言だけど、きっと陛下が根回ししてくれたのね。
 騒ぐ観客を無視して、話を続けた。

『キャサリンちゃんは新聞部だよね、だったら私のこと調べていたんじゃない?』
『え、ええ、まあ。直接の取材は出来なかったので、聞き込みに限られましたが』

 キャサリンちゃんの腰が引けた。あ、もしかして私のことを探ってるから怒られるとか思われたかな? そんな事ないわよ?
 私、カワイイ子には目がないもの。

『だったら知ってるわよね、私が何人かに魔法の扱い方を教えているって話』
『は、はい! 眉唾でしたが、存じてます!』
「ソフィー、こっち来て」
「はいはい」

 手招きをすると、後ろに控えていたソフィーがやって来た。そしてポソポソとカワイらしく耳打ちしてくる。

「魔法を使えって事?」
「そうよ、お願い」
「あんたの大魔法の後で使わされるの、恥ずかしいんだけど」
「これもアリスちゃんの為よ」
「そう……なら、仕方ないわね」

 キャサリンちゃんがどこまで知っているのかは分からないけど、折角だしその実況という立ち位置、利用させて貰うわ。

『キャサリンちゃん。ソフィーの『適性』は知っているわよね』
『はい、有名ですから。風、水、火の『トリプルユーザー』ですよね』

 久々に聞いたわね、その呼び方。

「そうね、私の使える魔法はその3属性だったわ。……シラユキに会うまでは」

 ソフィーは深呼吸をしながら、両手を前に突き出した。
 彼女の体内を魔力が駆け巡り、両手へと集まっていくのが見える。

「ふー……。っ!!」

 ソフィーが気合を入れるのと同時、彼女の眼前に3種のボールが出現した。
 大きさはバラバラだが、間違いなく彼女が得意とする3属性のボール魔法。それを同時に無詠唱で呼び出したのだ。

「……ふふっ、どんなもんよ」

 大粒の汗を額から流しながら、ソフィーがカワイらしく強がる。今すぐ抱きしめてあげたいけど、我慢我慢。

『こ、これは……! ソ、ソフィア様が扱える魔法の属性ですが、無詠唱で同時に出現させましたー!! これも、シラユキ選手に魔法を教えてもらった成果なのでしょうか!』

 現時点で、ソフィーが同時に制御出来る魔法の数は、3種類まで。それ以上を操ろうとすると、元々制御下においていた魔法は全部飛んでいっちゃう。
 あとは、無詠唱で同時併用可能なのも、元々扱えていた風、水、火の3属性のボールだけだ。その他の属性に関しては、ボールの無詠唱は出来るようになったけど、まだまだ同時併用は出来ていない。

 まあでも、実戦で使用する場合は1つ1つを丁寧に使わないと威力が安定しないから、複数同時無詠唱の活躍の場なんて、威力がバラついても問題ない時や、相手を驚かしたり、こういう見せ物にする時くらいが関の山だ。

「……ほっ」
『パチン』

 ソフィーが小さく呟き指を弾くと、3種のボールが掻き消えた。ソフィーったら満足気ね。やっぱり指パッチンで消えてくれたら嬉しくなるものなのよ。

『き、消えた!? そう言えばシラユキ選手も魔法を消していましたが……』

 ようやくここで、マイクがソフィーに向けられる。

『シラユキが教えてくれる技法の1つよ。魔法を自分の意思で消すことが出来るの。上手く出来れば自分の魔力に戻せるから、手元にある内なら無限に魔法が使えるかもしれないわ』
『おおー! それだけでも魔法学園の教授がひっくり返るレベルの新技術ですねー! 教授達の間では、もうシラユキ選手はびっくり箱に思われてるかもしれませんね』
『それと、本番はこれからよ……『アースボール』『アイスボール』『サンダーボール』』

 連続で最近覚えた属性のボールを出現させる。
 ソフィーは無詠唱での同時発動が出来ないと言うだけで、詠唱破棄で3つ順々に呼び出して操作する分には問題ない。

『えっ!? ソフィア様、他属性にも『適性』があったのですか!?』

 キャサリンちゃんが驚いてくれる。ソフィーが全種類の魔法が使えることを既に知っている可能性はあるけど、周りに伝えるためにあえて驚いた反応をしてくれてるのだったとしたら……。ありがたいわね。

『いいえ、私が『適性』とされていた属性は風と水と火の3種だけよ。ただ、シラユキ曰く『適性』というのは、その人が覚えやすい属性というだけで、誰でも全属性が扱えるらしいの』
『ええっ!? で、でもそれは、ソフィア様が元々凄かったからではないですか?』
『そう言ってくれるのは嬉しいけど、シラユキと比べたら全然すごくは無いけどね』
『あ、あはは……』
『でも、その気持ちはよくわかるわ。所詮は才能の違いだとか、選ばれた人間しか使えないんだとか。観客の中には、そう思っちゃう人もいるでしょうね』

 ソフィーはそこで一区切りする。そして振り返り、最愛の妹を指さした。

『でも、あの子が魔法を使えるようになっていたらどうかしら。今まで国の誰もが無能と蔑み、魔法が使えない出来損ないとされて来た子が、シラユキに教えてもらう事で魔法を使える様になったのなら。今までの魔法体系や技術が、どれだけ無意味な物だったのかをね。そして、シラユキの知識がどれだけ希望に満ちた物なのかを、観客の皆も信じられるんじゃないかしら』

 ソフィー、無能だとか出来損ないとかハッキリ言っちゃうわねー。でも、アリスちゃんが今までどんな扱いをされて来たか、この場にいる全員に再認識して貰えた事でしょう。

 そして丁度いいタイミングで、魔法科の学園長であるポインス学園長と、フェリス先輩、モニカ先輩がリングに上がって来た。緑色の『スコアボード』と共に。

「ポインス学園長、頑張ったご褒美をお願いします」
「ええ。準備は出来ていますよ」
『どうやらシラユキ選手、決闘でもし勝てたら、アリスティア王女殿下の魔法の実力を再度計り、適正なクラスへと移行させて欲しいと、学園長にお願いをされていたようです!』

 キャサリンちゃんが説明をしてくれたのを同意するかの様に学園長は大きく頷いた。
 さて、私も補足しておこうかな。

『彼女が始める前に1つ。まず私は、この力を特定の誰かにだけ伝えるつもりはありません。いずれは国の誰もが魔法を扱うことが出来る環境をつくりあげたいと考えています。ですがその為には、環境や人材が圧倒的に不足しています。私が国民1人1人に教えていてはキリがありませんから。だからその内、お偉方には手伝っていただきたいのですが……。まあその話は、私のレクチャーを1週間受け続けた事で才能を開花させた、彼女の本当の実力を見てからにしましょうか』

 アリスちゃんを手招きし、入れ替わる様に私とソフィーはリングの外まで出た。私達が代わりに魔法を行使したとは思われたくないもの。

 そしてポインス学園長とフェリス先輩は、立ち位置を『スコアボード』を挟み込む様にして立ってみせた。それを見て危険だから止めるようにと、観客席から心配する声が上がるが、ポインス学園長が片手を上げ静かにさせる。

 意図を察したキャサリンちゃんが、アリスちゃんにマイクを向ける。

『心配は無用です。魔法を狙ったところに飛ばすという技法は、シラユキ姉様の教えの中では基礎の基礎。一番最初の修行で半ば自動的に修得するものなのです。外す事はありえません。……『ウィンドボール』』

 アリスちゃんはとても綺麗で、安定した『ウィンドボール』を現出させた。
 アリスちゃんの身体的特徴。頭に『魔力溜まり』がある子は、1つ1つの魔法に対して、様々な恩恵が受けられる。威力に関しては本来の倍率を超過して限界値を超える効果を持つし、形ある魔法に対しては大きさが肥大化する傾向にある。

 彼女は特別多く力を込めたつもりではないはずだ。むしろいつも通り、身構えず平静な状態で魔法を行使しただろう。
 にも関わらず、彼女の『ウィンドボール』は、他の子達が標準としているサイズを軽く凌駕し、二回りほど大きく膨れ上がらせていた。

 1週間でここまで成長出来るのなら、彼女はいったいどこまで強くなるのかしら。元々はソフィーの為ではあったけど、今ではあの子は、私の大事な妹だ。
 リリちゃんと同じく、原石は綺麗に磨いて、輝ける様にしていかなきゃ。

『……』

 会場は静まりかえっていた。
 アリスちゃんが魔法を使ったことが信じられないのだろう。キャサリンちゃんも出現したボールの巨大さに、困惑している様だった。
 逆に、声こそ上げなかったものの、1方向からは動きがあった。彼女の肉親……。そう、王族側の席だ。
 アリスちゃんのお母様はホロホロと涙を流して娘の成長を喜んでいる様だし、陛下も言葉や嗚咽を漏らすのをグッと堪えて、平静を保とうと必死な様子だった。

『……あっ、失礼しました。実況にも関わらず放心してしまっていた様です! 今日は驚くことがありすぎて困りますね! 嬉しい悲鳴ですけど!』

 キャサリンちゃんは茶化す様に言うが、観客席からは未だ反応がない。むしろ本当にアリスちゃんが魔法を使っているのか怪しむ声が出るほどだった。
 ……今言い出したやつ。顔は覚えたわよ?

『えー、アリスティア様。確認ですがその魔法は、アリスティア様の意思で動かせますか?』
『はい、勿論です。この子は私の管理下にありますから。そして自分の手から離れた魔法を操作することも、シラユキ姉様から受ける知識の、基礎でもあります。まだまだ力不足ですが、これくらいのことは出来ます』

 そう言ってアリスちゃんは、『魔力防御』を応用して『ウィンドボール』でお手玉をして見せる。発射したかと思わせてキャサリンちゃんの周囲をグルグルと動かしたり。
 それでも疑う連中に対しては、キャサリンちゃん発案の元、私やソフィーに後ろを向かせた上で操作してもらうなど。色々とを見せ納得させる。

 納得はさせたが、この国における魔法の一番の価値は、そんな繊細な操作技術ではない。実戦ではそれが一番必要なんだけど、この国では何故かそれが評価項目として重要視されていない気がする。
 だから、一部の連中はアリスちゃんが魔法を使えることには納得しても、その威力は見かけ倒しだと言い始めた。

 わざと。
 聞こえる声で。

 そうすると一部の連中が同調し騒ぎ始めた。
 声が大きくなると敵対的ではない人達も怪しみ始める。

 まあ、お手玉なんて真似は『魔力防御』を知らないと、威力のない魔法でやってる様に見えるもんね。風と水は、威力を極限まで弱めたら、無害になっていく属性だからね。そう思われるのも致し方ない。

『えー、会場も温まったところで! そろそろ本番に行きましょう。皆さんお忘れですか? 彼女は、Sクラスに相応しいかを計測する為にこの場に立っているのです。さあアリスティア様、その魔法をあの『スコアボード』へ!』
『行きます。……やっ!』
『ドン!』

 カワイらしい掛け声とは裏腹に、今日の試合相手の誰よりも早い速度で飛んだ『ウィンドボール』は、勢いよく『スコアボード』の中心へと吸い込まれていった。
 そして……。

『2011』
『おおお!!』

 最大値には及ばないまでも、フェリス先輩に次ぐボールのダメージを叩き出した。そのダメージは今日の戦いで目が肥えた人達でも驚く数値だった様だ。

「そんな……」
「馬鹿な……」

 唖然とする声が青組からも聞こえてくる。
 ふふん、いい気味よ。

『では次に行きます。……『ウィンドランス』!』

 観客達の興奮冷めやらぬ中、アリスちゃんは次点の魔法を使った。その槍もまた、本日出てきた中では最大級の大きさで、あんなのが体にあたれば風穴どころでは済まない。

『おお、またまた大きなランスが詠唱破棄で現れましたー!』
『シラユキ姉様の教えでは、詠唱破棄も基礎になります。ですので、シラユキ姉様に教わり、本人のやる気さえあれば魔法の正確性、安定した形状、そして詠唱破棄の3点が保証されるでしょう。……やっ!』
『ドガンッ!!』

 またまたカワイらしい掛け声と共に、ランスが飛び出す。凄まじい衝撃の余波を受け『スコアボード』が表示されたダメージは……。

『6219』
『で、出たー! 魔法学園の卒業生でも中々出せない6000点台だー!!』
『シラユキ姉様と比べればなんてことない数字ですが……』
『アリスティア様、それを言うのは野暮ですよ』
『うふふ、そうですね』

 柔かに笑うアリスちゃんは、最高にカワイイわね。

『それでは。そこは危険ですので、学園長先生達は離れて下さい』
『えっ!?』

 アリスちゃんの言葉に、キャサリンちゃんや観客だけでなく、学園長先生達も驚きを隠せない様だった。まあ、その成長スピードは異常よね。私も使えると聞いた時は耳を疑ったわ。
 一応先んじて魔法書を作って渡してはいたけれど、まさかこんなに早く消費されるだなんて……。

 魔法を教えてから1週間だけど、レベルが上がり始めたのはたったの5日前だ。その成長速度と魔法に対する貪欲さは、エルフであるカープ君をも凌駕している。
 このままだと、ソフィー達も抜かされちゃうかもしれないわね。

 そしてフィールド上にいた全ての人がアリスちゃんの後ろに回ったのを確認し、彼女は力強く呪文を唱えた。

『『ハイウィンド』!!』
『ゴオッッ!』

 アリスちゃんから見て、上空5メートルほどの位置に風の塊が現れ、『スコアボード』目掛けて落ちて行く。

 スキルレベル25から使えるハイ系の魔法は、本来攻撃目標の頭上に出現させ、そこを起点に対象を狙い撃ちするものだ。自分の上から落とすと、前衛に掠めちゃう危険もあれば、狭い場所なら自分にも被害が出る為推奨は出来ない。
 ただ、まだアリスちゃんは魔法を覚えたばかりで、実戦での経験も数えるほどにしか使い熟せていない。自分から離れた場所に攻撃の起点を作るには至れていないのだ。

 それでも、ハイ系は威力特化の魔法だ。使い手が多少未熟だろうと、込められた魔力の高さと本人の素質も合わさり……。

『9999』

 余裕でカンストダメージを叩き出した。壊れるまでには至らなくても、十分合格点ね。
 アリスちゃんはこれで、魔法学園史上3人目の、測定不能のダメージホルダーとなったのだった。

 驚愕と称賛と、祝福の言葉が飛び交う中。
 ポインス学園長より明日からSクラスへの編入が許可され、アリスちゃんは最高にカワイイ笑顔を花開かせた。
 諦めず努力を続けた事で結んだ実が、形となった瞬間だった。そんな彼女には、最高のご褒美が待っていた。

 彼女の頑張りを家族で誉めていると、彼女の本来の家族。陛下と王妃様が、観客席から降りてフィールドへと上がって来ていた。

「お、お父様。お母様……」
「頑張ったな、アリスティア」
「……っ!」

 不意に、アリスちゃんから涙が溢れた。
 そんな彼女の背中を押してあげる。

「シラユキ姉様……」
「行ってきなさい」
「はいっ」

 アリスちゃんは長年甘えられなかった両親の胸へと、飛び込んだのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 さて、アリスちゃんの件も解決したし、美しい家族愛が見れてシラユキちゃん大満足! と言いたいところだけど、娘を溺愛する陛下に更なるサプライズを用意しましょうか。

 キャサリンちゃんに目配せをして、マイクを渡してもらう。ここからは、陛下と私の間の個人的な話も含まれている。人を間に挟む必要は無いものね。

『陛下、団欒の中申し訳ありません。1つお話が』
『……うむ、余もお主とは話し合いたいと思っていた。娘に魔法を教えてくれたこと、感謝している。そしてその比類なき武術にも、卓越した魔法にも、余は感服しておる。言いたい事があるのなら何でも申してみよ』

 私の目の前にいるのは、いつもの親戚のおじさんポジションの男ではなく、一国の王であった。
 民衆や大勢の貴族の前だからか、威厳たっぷりだけど……さっきまで娘を前に、父親の顔をしないよう必死に我慢していたのよね。そう思うと少し可笑しいわ。

『はい。まずは一部の方が懸念されていることから申し上げます。私は、この国に牙を向けることはございません。この国は私にとってもかけがえのない場所ですから』
『ふむ。続けたまえ』
『しかし、言葉だけならなんとでも言えましょう。ですのでその証として、今回この戦いの報酬と定めた数々の名品を王家に献上致します。友好の証として、受け取っていただけますか?』

 陛下は一瞬、目だけ驚いて見せたが重々しく頷き了承した。

『あいわかった。この様な貴重な品を納めてくれるとは、感謝しかない。しかしそれでは、お主の懐が痛むばかりではないか。何か希望はないかね。可能な限り便宜しよう』

 ふむ。本来であればさっき聞いた重婚のことでお願いしても良いんだろうけれど……。両親の前で婚約的なキスを披露しちゃったしね。
 でもここは、約束の履行のために使わせてもらおう。
 場合によっては、約束が貴族の思惑で有耶無耶になっちゃうかもしれないし、そうなったら悔しくてから。

『では1つだけ。今回目玉としていた景品の剣と盾。あれを白騎士ミカエラ様に差し上げたいです。とても似合うと思いますから、出来れば一番相応しい方に使って頂きたく存じます』

 私の言葉に、観客席からは驚きよりも、同調する声が多く上がる。特に女子生徒から。
 皆もあの輝きは、ミカちゃんにこそ似合う物だと思っているのだろう。っていうかミカちゃんのためだけに作ったんだから、彼女以外が着こなせるはずがないのだ。

『良かろう。お主の願い、しかと聞き届けた。ミカエラ・レヴァンディエス!』
「はっ!」

 陛下の後ろに控えていた騎士の2人の内の1人、ミカちゃんが颯爽と歩いてきた。もう片方が第一騎士団の団長ね。ゲーム内でも見たことあるわ。
 ミカちゃんを目の敵にしていて、そこに目をつけられて魔人によって悪感情を増幅させられ、最終的に『人工魔兵』に作り替えられちゃったのよね。
 彼は本物の騎士だったから、豚なんかと違って純粋な武力の高さに手を焼いた記憶があるわ。それでも、欲望の深い豚はいろんな特殊能力を得て更に強かったんだけど……。まあ、この世界ではもう起こり得ない話ね。

 彼はミカちゃんを、少し妬ましげに見たが、それも一瞬のこと。すぐに切り替えて騎士の表情へと戻った。
 どうやらまだ、彼は魔人とは接触していない時期だったようね。多少のわだかまりはあるだろうけど、大きな問題にならなさそうで良かったわ。

 さて、今はミカちゃんだ。
 私が考え事をしている間に、先輩達が『栄光と不敗の金剛装備』を陛下の元へと持ってきていた。

「陛下。これらの装備、彼女から直接授かりたく存じます」
「……良かろう」

 ああ、陛下ったら。せっかく威厳保ててたのに、今露骨に面倒臭そうな顔したわね。
 幸い、観客達のほとんどはミカちゃんに夢中になっていたし、陛下の顔も影になっていたから気付かれることはなかったみたいだけど。

 それにしてもミカちゃんったら、そんなに私から直接下賜されたいのね。オフの時ならいくらでもしてあげたのに、こんな大観衆の前でだなんて。
 陛下もOK出しちゃうんだもんなぁ。

 まあ、今後それが原因でトラブったら、陛下のせいにしよっと。

 覚悟を決めた私は、マイクをキャサリンちゃんに返して、代わりにフェリス先輩から『栄光の金剛剣』を受け取る。そして、それを両手で持って剣先を天に向けた。

「ミカエラ様、此方へ」
「はっ」

 ミカちゃんは私の前で片膝をつき祈りを捧げる様に頭を下げる。
 折角だからここで『誓いの儀式』をしておきましょうか。

 刃の付いていない剣の腹でミカちゃんの右肩、そして左肩を叩く。ミカちゃんは興奮しているのか、顔を紅潮させ見惚れる表情でこちらを見上げていた。……カワイイじゃない。
 この国の習わしとしては、ここで聖句を唱える所なんだけど、私はこの国の人間じゃない。間違ったら後で怒られちゃうかもだし、やめておくことにした。
 その代わりとして、私は剣に魔力を込める。
 魔力を受けたことで刀身から光の柱が現れ、天を貫いた。

『おお……』

 それは誰の声だったか。
 沢山の人が息を呑む雰囲気を感じた。

「ミカエラ様、受け取り下さい」
「ありがたく、頂戴致します」
「貴女様に、永遠の栄光があらんことを」

 2つのアイテムを受け取り『栄光と不敗の金剛装備』を装備したミカちゃんは、全身に淡い光を纏わせた。魔力を込めた剣は、しばらくの間周囲に『浄化』効果を振り撒く。
 剣に魔力を込めるだけで神聖属性を簡単に使える様になる為、ミカちゃんには近いうちに魔力の練習をさせないとね。まあその度ミカちゃんが光っちゃうんだけど、輝きはある程度調整出来るはずだから……。うん。

 名実ともに『白騎士』となったミカちゃんから、手の甲にキスをされる。黄色い悲鳴が飛び交ったくらいで、景品の譲渡に関してはつつがなく完了した。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 陛下から締めの挨拶が執り行われた。赤組青組共に健闘を讃え、敗者には後日改めて裁決を下すとも。元々はその場で下す予定だったみたいなんだけど、私がコッソリとお願いして引き伸ばしてもらった。
 そして、最後に私から発表があるとして、マイクが手渡された。

『では改めまして、シラユキです。今回は私が持つ魔法の知識がどれほどの物なのか、皆さんに理解してもらえたと思っています。先程お伝えした様に、私はこの知識を独占するつもりも、特定の誰かにだけ伝えるつもりもありません。可能な限り全ての人に伝えていきたいと考えています。それは魔法学園の関係者に限りません。いずれは貴族も平民も関係なく、全ての人が魔法を一般的な学問の1つとして取り入れられる様にしていきたいと考えています』

 演説は続く。
 私の言葉を遮る者はいないし、私の言葉を疑う者もこの場にはいない。

『そして私の知識の前では、魔法が扱えない無能者は存在しません。今までの教え方が間違っていただけです。ですので今、魔法が使えなくて嘆いている人も、才能がないと落ち込んでいる人も、安心して下さい。私が絶対に魔法を使える様にして見せます』

 話しながらアリスちゃんの頭を撫でる。
 王国始まって以来の無能者とまで呼ばれた彼女が魔法を使えたのだ。誰でも可能性を感じてくれるだろう。

『ですがそれを実現する為には、私1人の力だけでは、到底手が足りていません。ですので私以外にも、魔法を教えられる人を増やしていきたいと思います。今すぐ私に教わりたいと思ってくださる方もいるかも知れませんが、少しお待ちくださいね』

 シラユキちゃんスマイルとCHRの力を振り撒く。
 決して嘘はついていないのだと、理解させる。

『そして、魔法は貴族の特権だと思われる方や、この話に納得出来ない方々は、どうぞ私に決闘をお申し込み下さい。挑戦、いつでもお待ちしております。また、学園から逃げ出されるならお好きにどうぞ。追いはしません。相手にしてる暇はありませんので』

 これからこの学園の、魔法に関する権限は私が一括管理……とまではいかないまでも、魔法を扱う授業は全て、私が指導をするわ。当然反感的な相手には教えるつもりは一切ない。それが例え生徒でも、教師でも、教授でもだ。
 あと、さきほどまでの戦いで、前衛として戦いながらも魔法を使えることは、どれだけ有効な手段なのかも理解してくれたはず。
 だから調合で使う調合学科だけじゃなく、騎士科にも魔法は教えていかないとなぁ。

 それとHP回復ポーションの調合に関しては、私の管轄から外してしまっても大丈夫かな。
 ソイゾル学園長と、アレン先生にお任せしよう。

 ああ、これからもっと忙しくなるなぁ。
 そう思いながら、私は1つ釘を刺しておく事にした。

『ただ、ご注意していただきたいのですが、私は家族や友人を非常に大事にしています。ですのでもし、もし! 私ではなく、大事な彼ら彼女達に手を出したら……』

 『威圧』『剣圧』『重圧』を青組の面々に向け同時に放つ。害意を向けられた第一陣から第四陣の面々は震え上がり、壊れた人形の様に繰り返し首を振りはじめた。

『……お分かりいただけた様ですね』

 これでいいかな。さて、この場を締めくくろう。

『それでは皆さん。ご静聴、ありがとうございました』

 割れんばかりの歓声が、闘技場を包み込んだ。

「シラユキ!」
「お嬢様!」
「シラユキ姉様!」

 振り返ると、私の大事な家族が微笑んでいた。
 私は勢いよく、彼女達の胸に飛び込むのだった。

「終わったよー!」
「「「お疲れ様 (でした)」」」
「うん!」

『お疲れ様、マスター!』
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1/19の20時の投稿で他サイトで投稿中のものに追いつきます。以後隔日で20:01頃投稿予定です。
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