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第5章:魔法学園 入学騒乱編
第172話 『その日、本命と戦った』
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「何故って、そんなの決まってるわ。『侍大将』程度を極めずに、最強は名乗れないもの」
私の言葉を聞いた神丸から、殺気が霧散する様に消えた。
「……ふ、『程度』か。和国の一部地域では、そのような発言をすると不敬だと処刑されかねんぞ、女王よ」
「なら、実力で黙らせるわ。弱い犬ほどよく吠えるもの」
「くっ、はは! そうであるな、女王の言う通りぞ! だがすまぬ、国の禁忌に触れるのでな。我が職業は口では言えぬのだ。代わりに、この刀で語って見せようぞ」
「良いわね。好きよ、そういうの」
あの自信、間違いなく神丸は『侍大将』ね。
陛下の『剣聖』、アリシアの『ローグ』であるエクストラよりも更に上位。ココナちゃんの『巫女』を含めた、8つあるハイエンド職の内の1つ。
そしてアリシアを軽く下に見れる実力があり、尚且つ史実での実力から鑑みて、現在のレベルは60から70は手堅い。その推定総戦力は、少なく見積もってもおおよそ7000前後。アリシアが装備を加味しても4000くらいだったから……うん。
久々に、本気でやらなきゃ怪我をする相手ね。
神丸は刀を抜き放ち、私と同じ様に正眼に構える。
刀技には大まかに分けて『静』と『動』の2種類に分けられている。『静』は抜刀術など、極力動かずに力を蓄え、一気に放つ事で相手を攻撃する遠距離型の技だ。決まれば格好良いし、奥の手と呼ばれる秘奥義も大体が『静』だったりする。
だけど、私も神丸も『動』の技。つまりは、動きながら放つ技を好んで使う。だから神丸は鞘を早々にマジックバッグへと収納したし、私も鞘を作らずに刀身だけを形と成した。
『それでは第五戦目、シラユキ選手対神丸選手。試合開始』
「「いざ尋常に、勝負!!」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
待ちに待った女王と、遂に戦いの時が来た。
口で語り合う事で理解出来るのは本質の1割にも満たず、魂を込めた武器でぶつかり合えば、十全に知れるという。某もその考えは理解出来るが、対峙することでもある程度分かるつもりだ。
……しかし、改めて女王は規格外であるな。この様な強者と戦える機会など、そう何度も起こり得ぬだろう。
まずはレオン少年を弾き飛ばしたその膂力、試させてもらおうか!
決闘や決戦の舞台というのは、今まで何度か経験をしてきたが、どうしてもその仕組み上、技と技とのぶつかり合いとなってしまう。しかし、初手ぐらいは純粋な力技も許されよう。女王もその気のようだしな!
『ガキィン!』
金属同士がぶつかり合う様な音が響き渡る。
不思議なものだ、魔力で練られた武器というにも関わらず、まるで本物の刀の様である。実に面妖だが、今はそれよりも……!
「ぬぅ……!!」
「ふふっ」
押し切れぬ!
レオン少年の時とは違い両手を使わせているが、よもや膂力で女子に負ける日が来ようとは。自身を最強と嘯いたり、不遜な物言いをするだけはある様だ。
そして、刀でぶつかり合う事で理解させられた事がある。……これは、魔法を封じた刀同士の戦いであっても、勝てぬかもしれぬな。
「……笑止! 実力差があろうとも、ここで引いては武士の名折れ。某の太刀、必ずや女王の身に届かせる!」
「良い気合いね。でも、そう簡単に届かせはしないわ」
女王の弾きに合わせ後ろへと飛び、特別な構えをとる。
「鬼の力を我が身に! 『鬼神の構え』!!」
鬼神の御霊を我が身に宿し、圧倒的な膂力を一時的に得られる技法。永い修練の果てに得られる技法で、この構えを使うと膂力だけでなく、技の冴えや鬼神独特の圧力も得られる。
常に剣圧を周囲に放っている様なものなのだ。現に観客席のあちこちから悲鳴が上がっておる。若い者達も多いであろうから、中には失神した者もいるだろう。……しかし、女王は眉一つ動かさず、涼しい表情で微笑むだけだった。
その顔、我が太刀を受けても崩さずにいられるか?
マジックバッグより、高名な巫女の力を借りて精錬した海水を取り出し、刀に振りかける。
「いざ参る! コオオオォォォ……!」
全身全霊を込め、水神の御霊を降臨させる。
水神の力は我が愛刀に集い、巨大な荒波となって顕現していく。
「『神命濁流術・奥義』」
水神は気性が荒く、海を粗末に扱えばたちまち荒ぶる神となり、沿岸部の街々は海の藻屑にされるという逸話は、古くから語り継がれてきた。
『神命濁流術』は、その逸話とされてきた水神を奉り、その御力を借りて剣技へと昇華させたもの。
初めて師匠からこの技を見せてもらった時、某は武者振るいをしたものだ。だと言うのに、女王はその笑みを深くしただけ。……いや、待て。この反応、『神命濁流術』を知っているという事か……?
だとすれば、某では出来なかった事が可能かも知れぬ。この技をどのようにして破るのかを。
行くぞ女王よ!
「『伍之太刀・濁龍剣』!!」
「『月華流、参之太刀・満月』!」
『月華流』。月の魅力に取り憑かれ、刀の力だけで月を表現しようとしたことが流派の起こりだったはず。いくつかある道場では、刀の技巧だけでなく、使用者の美しさを磨く事に執心している所があると聞くが、それでもその実力の高さは折り紙付き。
妖魔や魔物の退治だけでなく、芸術的なまでに美しい刀捌きを一目見たいが為、高官や大名から城に招かれる事が多いのだとか。
また、達人が放つ技には、必ず月の姿が映ると言う。
眉唾だと思っていたが、どうやら事実だった様だ。
女王が放った技にも月が現れ、濁龍を弾き返したのだから。
「ぬうっ!?」
女王に弾かれたことで、勢いの増した濁龍は、某の隣を通り抜け、地面へと激突した。
「満月は相手の技を跳ね返す技。条件は相手の技量を完全に上回っていることが条件よ」
「……女王よ、わざとか?」
「ええ。自分の技でやられるなんて、間抜けもいいとこでしょ? 安心しなさい、もうしないから」
「くっ……」
手加減どころか、遊ばれている。しかも、確実に有効な手であるその技を以後使わないと宣言し、それでも尚余裕の表情。まだまだ手があると言いたげだ。
しかもあの表情……。恐らく溜めのある技はもう使えんだろう。
『隙を見せれば斬る』
あの目を、某はよく知っている。師の物と同一であるな……。
だが女王の事だ、まだまだ遊び足りないのだろう。レオン少年と同じく、全力を出すまで終わらせるつもりはないらしい。
ならば!
「『速刃流、壱之太刀・疾風』!」
『キィン!』
防がれた!?
「!? ぐっ!」
蹴りを食らい反射的に飛びのいたが、動揺を隠しきれぬ。
何かの技で返される訳でもなく、ただの攻撃でいなされた……?
『速刃流』は速さを追求した流派の1つ。その中でも壱之太刀は速さだけなら某の刀技でも最速の……!
「速いだけの技で、私に届くとでも?」
「……ふっ、本当に格が違うのだな、女王は」
「もしかして、もう品切れ? 期待以下だったわね」
「待たれよ、まだ見限るには早いぞ女王よ。某の本気はここからである」
「ふぅん?」
『鬼神の構え』で力を増幅させた『疾風』程度では、技を出すまでもないと言う事か。ならば、もっと苛烈に行く必要があるな!
「夜叉神よ、我が身を喰らえ! 『夜叉の構え』!!」
これを使った以上、早々にケリをつけねば。こちらの身が保たぬ!
『行くぞ女王よ!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
『オオオオオオオオッッ!!!』
『鬼神の構え』と来て『夜叉の構え』か。やっぱりレベル60は堅いわね。
どちらも『侍大将』で使用可能になるアビリティで、前者はレベル40。後者はレベル60から使用可能なものだ。
『鬼神の構え』は効果時間10分で、STRが1.2倍。上限値は最大100で、ついでに技の威力も1.2倍。技の威力に上限値は無し。
『夜叉の構え』は効果時間3分で『鬼神の構え』の効果を圧縮した様な上位互換。STRが1.5倍。上限値は最大400で、技の威力も1.5倍の上限値無し。しかも『鬼神の構え』との重ねがけが可能で、同時発動すると何故か効果も上限値も飛躍的に伸びてSTRが2.0倍。上限値は1000にもなり、当然技の威力も2倍になるという壊れスキルだ。
でも、それだけ強いと当然デメリットもある訳で、単独使用なら効果時間が切れると同時に『酩酊』効果。重度の酔っ払い状態になり、正常な思考が出来なくなる。
ただこれは、魔法で治療出来るからまだ良い。変なことをし出す前に治せば良いんだから。
だけど、同時使用時には『酩酊』に加え、STRとVITが3分間半減する効果が付与される。しかもこの状態異常、厄介な事に通常の『リカバリー』系統では治療出来ず、『巫女』の専用魔法で『お祓い』をする必要がある。
厄介な仕様をしているけれど、その分効果は非常に高く、『侍大将』と『巫女』の組み合わせは最強タッグの1つと称されるほど人気の組み合わせだった。
『侍』の格好良さと、『巫女』のカワイさ。
その両方を味わったけど、どちらのシラユキちゃんも最高にカワイかったわ。
まあ今なら、そのどちらの職業の力も同時に行使出来るんだけどね。
『参るぞ!』
それにしても二重使用すると圧力と言うか、存在感が増すって話だったけど……リアルだとこうなるのね。
和国にいる大ボス。『鬼神』と『夜叉』の2体が、そこにいるかの様な存在感だわ……!
声もなんだか二重三重になって聞こえるし、異形が人の形をしているかのような雰囲気もある。良いわ、良いわね……!!
「来なさい!」
『『速刃流、秘奥義』『捌之太刀・千手万華』!』
『速刃流』の奥の手。あまりに速い攻撃に、斬撃が千にも万にも見える無数の攻撃術。元々は軽いチクチクとした技だけど、『鬼神』と『夜叉』の同時使用だから威力も馬鹿にならない。
……けど!
「これが決め手のつもり? 『月華流、肆之太刀・朧月』!」
正面に水鏡が現れ、中には月が儚く揺れている。神丸の攻撃は全てその月へと吸い取られて行った。まるで水面に映る月のように、その攻撃は1つも私に届くことは無かった。
攻撃を全て吸い取った水鏡が消えると、次の技の発動を整えた神丸が吶喊してきた。
『『剛刃流、奥義』『漆之太刀・剛刃壊天』!!』
「『断界流、壱之太刀・破天』!」
『ガゴンッ!』
脳天目指して振り下ろされる強力無比な一撃を、天を壊すと云われた技で迎え撃つ。
力と力のぶつかりは互いを弾き飛ばす衝撃を生み、突風を巻き起こす。その結果、フィールド内では砂嵐が発生。また、衝撃は結界をすり抜け、闘技場どころか王都が揺れるほどだった。
視界を確保するため、魔法ではなく刀の技術で砂埃を斬り払う。
そこには力を充電し、解き放つ準備を整えた神丸の姿があった。
さっきから技の流れが美しいわね。目くらましも想定の内だったのなら、次は大技が来る……!
その証拠に、神丸の足元には先ほどと同じように、海水が入っていた水筒がいくつか転がっている。
『『世界を喰らうは終焉の蛇』』
神丸が詠唱態勢に入った。
全ての流派には最終技である『玖之太刀』と、超越技と呼ばれる『終之太刀』がある。これらと一部の特殊流派には、大技の為か詠唱が存在していた。詠唱をしなくても技は発動するが、これをするのとしないのとでは、威力が大幅に違ってくる。
内容も短く格好良いし、急ぎでなければ私も積極的に使っている。
『『その尊き三叉の、鋭き顎をもって、世の全てを呑み込まん』』
「あはっ」
それにしてもこの詠唱、間違いない。
ソレを! 今、ここで! 使うと言うのね……!
アハッ、アハハハ! 神丸、貴方最高ッ!!!
「『空を断ち、海を断ち』」
なら、私も今出来るとっておきで返さなきゃ!
使うのは、今のスキルで使える限界点。4番目の『肆之太刀』。
でも月華流では力不足だ。使えば必ず、月ごと私も喰われるだろう。
だから、今使える最強の技で、迎えてあげる!
「『大地を断ち、世界を断つ』」
彼我の距離は10メートル。近接武器ではありえない距離だが、この技は、互いに飛ぶ。
『『神命濁流術・秘奥義』『玖之太刀・真濁龍剣』!!!』
神丸が愛刀を振り下ろすと、先程の濁龍よりも大きな個体が、3体飛び出した。濁龍はまるで意思を持つように真っ直ぐこちらへと向かってくる。
これを受ければ、今の私でも死にかねない。
「『断界流、肆之太刀・断界』!!」
渾身の力を込めて刀を振るうと、世界が音を立てて割れた。
『断界流』は、プレイヤー考案の流派で、華やかな技の多い刀技の中にあって、全ての技が破壊する事に特化している流派だ。
先程使った『壱之太刀・破天』は空を断ち、『弐之太刀・壊乱』は海を断ち、『参之太刀・崩裂』は大地を断つ。そして『肆之太刀・断界』は空間を叩き斬るのだ。
『断界』は間違いなく、三匹の濁龍と神丸を捉え、その空間ごと断ち斬ったはずだった。しかし、空間を断たれ形を崩したのは濁龍達だけであり、神丸は片腕が吹き飛ぶくらいで、まだその原型を保っていた。
きっと、濁龍のエネルギーが強すぎて、神丸まで刃が届かなかったのね。あの龍達は、水飛沫となってまで神丸を守ったのかしら。
片腕が吹き飛ぶ事態となっても、神丸はそのステータスの高さからHPも当然高い数値を持っている。この程度じゃ一撃退場、とまでは行かなかったか。
『……ふ、ここまで、か』
そう言って、神丸は残心の後、太刀をゆっくりと鞘へと戻した。
「あら、ギブアップ?」
『うむ。片腕を失っては、体幹が崩れる。真っ直ぐ刀を振るうことも難しいだろう。それに……力を使い過ぎた』
神丸が放つ圧力が、みるみると萎んでいく。
どうやら、奥義や秘奥義の連発で疲労が限界に達したみたいね。構えを維持する体力も尽きたみたいで、『鬼神』と『夜叉』の効果も自らの意思で切ったみたい。
ふぅん、この世界の人間でも、スキルのオフが手動で出来る人が居るのね。ソレって結構凄いことよね? やっぱり良いわね、神丸。
「ふ、直接手傷を負わせることは出来なんだが……久々に熱くなれた死合であった。女王も、満足させられた様で何よりだ」
「そうね、とっても楽しかったわ」
荒げていた呼吸を整え、神丸に近寄り手を差し出す。
「また、やりましょ」
「うむ。是非とも」
神丸と握手を交わすと、盛大な拍手が会場から鳴り響いた。その音を聴いた神丸は、ゆっくりと魔力粒子へと変わっていった。
『決闘、全試合の工程しゅうりょおおおおーーー!!!! この途方もない偉業を達成し、勝利を掴んだのは、単騎で大人数に挑んだシラユキ選手でしたぁ!! 最後の決闘は、誰も見たことがない、非常に洗練された技の応酬でした! しかし最後は爽やかに握手をしての決着!! 実に、実に見事な戦いでした! 皆さん、もう一度、激闘を演じたシラユキ選手と、神丸選手に盛大な拍手をー!!』
『ワアアアアア!!』
『パチパチパチパチ!!』
こういう時は手を振るのが良いかしら?
うん、そうね。とびっきりの笑顔で手を振りましょう。
『いやホントに、素晴らしい戦いでした! 実況にも関わらず途中何が起きてるのかさっぱりわからないシーンが多々あったので、シラユキ選手には是非ともご教授いただきたいところですが……その前に、決闘の締め処理をさせていただきます!』
キャサリンちゃんが『決戦フィールドV2』を結界の外側から操作をし、『最終ログ』の公開ボタンを押した。
『最終ログ』。
これもまた、決闘及び決戦シリーズの見どころの一つで、一連の戦いの中で『相手に与えた累計ダメージ』を表示していくシステムだ。これもアタッチメントの追加で、『使用した魔法』であったり、『使用した武技』であったり、『累計ではなく単発ごとのダメージ』だったりが表示されるんだけど、この装置には最低限のものしか備わっていないから、表示されるのも累計ダメージだけだ。
表記のされ方としては『赤組シラユキ 3450ダメージ ― 青組モブ 0ダメージ 』といった感じだ。
第一戦目から順々に、参加した連中の名前と与えたダメージの表示がされていくが、そのどれもが0ダメージ表記。対して私の名前の後にある数字は、そのどれもが4桁ダメージのオンパレードで、一部の高威力ランスに貫かれた連中に至っては5桁ダメージがあり、それがまた会場を沸かせた。
2戦目、3戦目、4戦目と続き、5戦目の最初は剣での打撲や斬撃撃破がメインだったから、中には3桁ダメージもチラホラと見受けられたけど、レオン君直属の配下戦ではまた5桁ダメージがインフレし始めた。
神丸戦に至っては測定不能だったようだし……んん!?
『赤組シラユキ 数値オーバーフロー 測定不能 ― 青組神丸 28ダメージ』
にじゅうはちだめーじ……?
え? なにそれ……?? シラユキちゃんわかんない……。
震える身体を抑えながら、視線を左上に向ける。
このパーティシステムのHPとMPは、特殊な戦いのフィールドにおいても有効で、きちんと両方の増減も明確に記してくれているのだが……。
そこにはしっかりと、HP99/100%の文字があった。
「うそ……一体いつ受けたの? 何処で!?」
『いやー、それにしても圧巻ですね! これほどの激闘を終えて、受けたダメージがたったの28ダメージなんて』
「キャサリンちゃん! このダメージは何!?」
『わあお!? どうしたんです、そんなに慌てて。それならボクがしっかり見ていましたよ。先程お二人の攻撃がぶつかり合った時、衝撃波と砂嵐が発生したじゃないですか。その時にダメージが発生してましたよ! 実況は続けていたんですが、衝撃の爆音でかき消されてしまった様ですねー!』
「そ、そんな……」
結界が消え去り、試合終了の文字が浮かび上がると同時に、膝から崩れ落ちる。
せっかく、頑張ったのに……。
『あれ、シラユキ選手? どうされました?』
「うぅ……がんばったのにぃ……」
視界が滲んだ。
『マスター頑張ったのにね……』
私の言葉を聞いた神丸から、殺気が霧散する様に消えた。
「……ふ、『程度』か。和国の一部地域では、そのような発言をすると不敬だと処刑されかねんぞ、女王よ」
「なら、実力で黙らせるわ。弱い犬ほどよく吠えるもの」
「くっ、はは! そうであるな、女王の言う通りぞ! だがすまぬ、国の禁忌に触れるのでな。我が職業は口では言えぬのだ。代わりに、この刀で語って見せようぞ」
「良いわね。好きよ、そういうの」
あの自信、間違いなく神丸は『侍大将』ね。
陛下の『剣聖』、アリシアの『ローグ』であるエクストラよりも更に上位。ココナちゃんの『巫女』を含めた、8つあるハイエンド職の内の1つ。
そしてアリシアを軽く下に見れる実力があり、尚且つ史実での実力から鑑みて、現在のレベルは60から70は手堅い。その推定総戦力は、少なく見積もってもおおよそ7000前後。アリシアが装備を加味しても4000くらいだったから……うん。
久々に、本気でやらなきゃ怪我をする相手ね。
神丸は刀を抜き放ち、私と同じ様に正眼に構える。
刀技には大まかに分けて『静』と『動』の2種類に分けられている。『静』は抜刀術など、極力動かずに力を蓄え、一気に放つ事で相手を攻撃する遠距離型の技だ。決まれば格好良いし、奥の手と呼ばれる秘奥義も大体が『静』だったりする。
だけど、私も神丸も『動』の技。つまりは、動きながら放つ技を好んで使う。だから神丸は鞘を早々にマジックバッグへと収納したし、私も鞘を作らずに刀身だけを形と成した。
『それでは第五戦目、シラユキ選手対神丸選手。試合開始』
「「いざ尋常に、勝負!!」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
待ちに待った女王と、遂に戦いの時が来た。
口で語り合う事で理解出来るのは本質の1割にも満たず、魂を込めた武器でぶつかり合えば、十全に知れるという。某もその考えは理解出来るが、対峙することでもある程度分かるつもりだ。
……しかし、改めて女王は規格外であるな。この様な強者と戦える機会など、そう何度も起こり得ぬだろう。
まずはレオン少年を弾き飛ばしたその膂力、試させてもらおうか!
決闘や決戦の舞台というのは、今まで何度か経験をしてきたが、どうしてもその仕組み上、技と技とのぶつかり合いとなってしまう。しかし、初手ぐらいは純粋な力技も許されよう。女王もその気のようだしな!
『ガキィン!』
金属同士がぶつかり合う様な音が響き渡る。
不思議なものだ、魔力で練られた武器というにも関わらず、まるで本物の刀の様である。実に面妖だが、今はそれよりも……!
「ぬぅ……!!」
「ふふっ」
押し切れぬ!
レオン少年の時とは違い両手を使わせているが、よもや膂力で女子に負ける日が来ようとは。自身を最強と嘯いたり、不遜な物言いをするだけはある様だ。
そして、刀でぶつかり合う事で理解させられた事がある。……これは、魔法を封じた刀同士の戦いであっても、勝てぬかもしれぬな。
「……笑止! 実力差があろうとも、ここで引いては武士の名折れ。某の太刀、必ずや女王の身に届かせる!」
「良い気合いね。でも、そう簡単に届かせはしないわ」
女王の弾きに合わせ後ろへと飛び、特別な構えをとる。
「鬼の力を我が身に! 『鬼神の構え』!!」
鬼神の御霊を我が身に宿し、圧倒的な膂力を一時的に得られる技法。永い修練の果てに得られる技法で、この構えを使うと膂力だけでなく、技の冴えや鬼神独特の圧力も得られる。
常に剣圧を周囲に放っている様なものなのだ。現に観客席のあちこちから悲鳴が上がっておる。若い者達も多いであろうから、中には失神した者もいるだろう。……しかし、女王は眉一つ動かさず、涼しい表情で微笑むだけだった。
その顔、我が太刀を受けても崩さずにいられるか?
マジックバッグより、高名な巫女の力を借りて精錬した海水を取り出し、刀に振りかける。
「いざ参る! コオオオォォォ……!」
全身全霊を込め、水神の御霊を降臨させる。
水神の力は我が愛刀に集い、巨大な荒波となって顕現していく。
「『神命濁流術・奥義』」
水神は気性が荒く、海を粗末に扱えばたちまち荒ぶる神となり、沿岸部の街々は海の藻屑にされるという逸話は、古くから語り継がれてきた。
『神命濁流術』は、その逸話とされてきた水神を奉り、その御力を借りて剣技へと昇華させたもの。
初めて師匠からこの技を見せてもらった時、某は武者振るいをしたものだ。だと言うのに、女王はその笑みを深くしただけ。……いや、待て。この反応、『神命濁流術』を知っているという事か……?
だとすれば、某では出来なかった事が可能かも知れぬ。この技をどのようにして破るのかを。
行くぞ女王よ!
「『伍之太刀・濁龍剣』!!」
「『月華流、参之太刀・満月』!」
『月華流』。月の魅力に取り憑かれ、刀の力だけで月を表現しようとしたことが流派の起こりだったはず。いくつかある道場では、刀の技巧だけでなく、使用者の美しさを磨く事に執心している所があると聞くが、それでもその実力の高さは折り紙付き。
妖魔や魔物の退治だけでなく、芸術的なまでに美しい刀捌きを一目見たいが為、高官や大名から城に招かれる事が多いのだとか。
また、達人が放つ技には、必ず月の姿が映ると言う。
眉唾だと思っていたが、どうやら事実だった様だ。
女王が放った技にも月が現れ、濁龍を弾き返したのだから。
「ぬうっ!?」
女王に弾かれたことで、勢いの増した濁龍は、某の隣を通り抜け、地面へと激突した。
「満月は相手の技を跳ね返す技。条件は相手の技量を完全に上回っていることが条件よ」
「……女王よ、わざとか?」
「ええ。自分の技でやられるなんて、間抜けもいいとこでしょ? 安心しなさい、もうしないから」
「くっ……」
手加減どころか、遊ばれている。しかも、確実に有効な手であるその技を以後使わないと宣言し、それでも尚余裕の表情。まだまだ手があると言いたげだ。
しかもあの表情……。恐らく溜めのある技はもう使えんだろう。
『隙を見せれば斬る』
あの目を、某はよく知っている。師の物と同一であるな……。
だが女王の事だ、まだまだ遊び足りないのだろう。レオン少年と同じく、全力を出すまで終わらせるつもりはないらしい。
ならば!
「『速刃流、壱之太刀・疾風』!」
『キィン!』
防がれた!?
「!? ぐっ!」
蹴りを食らい反射的に飛びのいたが、動揺を隠しきれぬ。
何かの技で返される訳でもなく、ただの攻撃でいなされた……?
『速刃流』は速さを追求した流派の1つ。その中でも壱之太刀は速さだけなら某の刀技でも最速の……!
「速いだけの技で、私に届くとでも?」
「……ふっ、本当に格が違うのだな、女王は」
「もしかして、もう品切れ? 期待以下だったわね」
「待たれよ、まだ見限るには早いぞ女王よ。某の本気はここからである」
「ふぅん?」
『鬼神の構え』で力を増幅させた『疾風』程度では、技を出すまでもないと言う事か。ならば、もっと苛烈に行く必要があるな!
「夜叉神よ、我が身を喰らえ! 『夜叉の構え』!!」
これを使った以上、早々にケリをつけねば。こちらの身が保たぬ!
『行くぞ女王よ!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
『オオオオオオオオッッ!!!』
『鬼神の構え』と来て『夜叉の構え』か。やっぱりレベル60は堅いわね。
どちらも『侍大将』で使用可能になるアビリティで、前者はレベル40。後者はレベル60から使用可能なものだ。
『鬼神の構え』は効果時間10分で、STRが1.2倍。上限値は最大100で、ついでに技の威力も1.2倍。技の威力に上限値は無し。
『夜叉の構え』は効果時間3分で『鬼神の構え』の効果を圧縮した様な上位互換。STRが1.5倍。上限値は最大400で、技の威力も1.5倍の上限値無し。しかも『鬼神の構え』との重ねがけが可能で、同時発動すると何故か効果も上限値も飛躍的に伸びてSTRが2.0倍。上限値は1000にもなり、当然技の威力も2倍になるという壊れスキルだ。
でも、それだけ強いと当然デメリットもある訳で、単独使用なら効果時間が切れると同時に『酩酊』効果。重度の酔っ払い状態になり、正常な思考が出来なくなる。
ただこれは、魔法で治療出来るからまだ良い。変なことをし出す前に治せば良いんだから。
だけど、同時使用時には『酩酊』に加え、STRとVITが3分間半減する効果が付与される。しかもこの状態異常、厄介な事に通常の『リカバリー』系統では治療出来ず、『巫女』の専用魔法で『お祓い』をする必要がある。
厄介な仕様をしているけれど、その分効果は非常に高く、『侍大将』と『巫女』の組み合わせは最強タッグの1つと称されるほど人気の組み合わせだった。
『侍』の格好良さと、『巫女』のカワイさ。
その両方を味わったけど、どちらのシラユキちゃんも最高にカワイかったわ。
まあ今なら、そのどちらの職業の力も同時に行使出来るんだけどね。
『参るぞ!』
それにしても二重使用すると圧力と言うか、存在感が増すって話だったけど……リアルだとこうなるのね。
和国にいる大ボス。『鬼神』と『夜叉』の2体が、そこにいるかの様な存在感だわ……!
声もなんだか二重三重になって聞こえるし、異形が人の形をしているかのような雰囲気もある。良いわ、良いわね……!!
「来なさい!」
『『速刃流、秘奥義』『捌之太刀・千手万華』!』
『速刃流』の奥の手。あまりに速い攻撃に、斬撃が千にも万にも見える無数の攻撃術。元々は軽いチクチクとした技だけど、『鬼神』と『夜叉』の同時使用だから威力も馬鹿にならない。
……けど!
「これが決め手のつもり? 『月華流、肆之太刀・朧月』!」
正面に水鏡が現れ、中には月が儚く揺れている。神丸の攻撃は全てその月へと吸い取られて行った。まるで水面に映る月のように、その攻撃は1つも私に届くことは無かった。
攻撃を全て吸い取った水鏡が消えると、次の技の発動を整えた神丸が吶喊してきた。
『『剛刃流、奥義』『漆之太刀・剛刃壊天』!!』
「『断界流、壱之太刀・破天』!」
『ガゴンッ!』
脳天目指して振り下ろされる強力無比な一撃を、天を壊すと云われた技で迎え撃つ。
力と力のぶつかりは互いを弾き飛ばす衝撃を生み、突風を巻き起こす。その結果、フィールド内では砂嵐が発生。また、衝撃は結界をすり抜け、闘技場どころか王都が揺れるほどだった。
視界を確保するため、魔法ではなく刀の技術で砂埃を斬り払う。
そこには力を充電し、解き放つ準備を整えた神丸の姿があった。
さっきから技の流れが美しいわね。目くらましも想定の内だったのなら、次は大技が来る……!
その証拠に、神丸の足元には先ほどと同じように、海水が入っていた水筒がいくつか転がっている。
『『世界を喰らうは終焉の蛇』』
神丸が詠唱態勢に入った。
全ての流派には最終技である『玖之太刀』と、超越技と呼ばれる『終之太刀』がある。これらと一部の特殊流派には、大技の為か詠唱が存在していた。詠唱をしなくても技は発動するが、これをするのとしないのとでは、威力が大幅に違ってくる。
内容も短く格好良いし、急ぎでなければ私も積極的に使っている。
『『その尊き三叉の、鋭き顎をもって、世の全てを呑み込まん』』
「あはっ」
それにしてもこの詠唱、間違いない。
ソレを! 今、ここで! 使うと言うのね……!
アハッ、アハハハ! 神丸、貴方最高ッ!!!
「『空を断ち、海を断ち』」
なら、私も今出来るとっておきで返さなきゃ!
使うのは、今のスキルで使える限界点。4番目の『肆之太刀』。
でも月華流では力不足だ。使えば必ず、月ごと私も喰われるだろう。
だから、今使える最強の技で、迎えてあげる!
「『大地を断ち、世界を断つ』」
彼我の距離は10メートル。近接武器ではありえない距離だが、この技は、互いに飛ぶ。
『『神命濁流術・秘奥義』『玖之太刀・真濁龍剣』!!!』
神丸が愛刀を振り下ろすと、先程の濁龍よりも大きな個体が、3体飛び出した。濁龍はまるで意思を持つように真っ直ぐこちらへと向かってくる。
これを受ければ、今の私でも死にかねない。
「『断界流、肆之太刀・断界』!!」
渾身の力を込めて刀を振るうと、世界が音を立てて割れた。
『断界流』は、プレイヤー考案の流派で、華やかな技の多い刀技の中にあって、全ての技が破壊する事に特化している流派だ。
先程使った『壱之太刀・破天』は空を断ち、『弐之太刀・壊乱』は海を断ち、『参之太刀・崩裂』は大地を断つ。そして『肆之太刀・断界』は空間を叩き斬るのだ。
『断界』は間違いなく、三匹の濁龍と神丸を捉え、その空間ごと断ち斬ったはずだった。しかし、空間を断たれ形を崩したのは濁龍達だけであり、神丸は片腕が吹き飛ぶくらいで、まだその原型を保っていた。
きっと、濁龍のエネルギーが強すぎて、神丸まで刃が届かなかったのね。あの龍達は、水飛沫となってまで神丸を守ったのかしら。
片腕が吹き飛ぶ事態となっても、神丸はそのステータスの高さからHPも当然高い数値を持っている。この程度じゃ一撃退場、とまでは行かなかったか。
『……ふ、ここまで、か』
そう言って、神丸は残心の後、太刀をゆっくりと鞘へと戻した。
「あら、ギブアップ?」
『うむ。片腕を失っては、体幹が崩れる。真っ直ぐ刀を振るうことも難しいだろう。それに……力を使い過ぎた』
神丸が放つ圧力が、みるみると萎んでいく。
どうやら、奥義や秘奥義の連発で疲労が限界に達したみたいね。構えを維持する体力も尽きたみたいで、『鬼神』と『夜叉』の効果も自らの意思で切ったみたい。
ふぅん、この世界の人間でも、スキルのオフが手動で出来る人が居るのね。ソレって結構凄いことよね? やっぱり良いわね、神丸。
「ふ、直接手傷を負わせることは出来なんだが……久々に熱くなれた死合であった。女王も、満足させられた様で何よりだ」
「そうね、とっても楽しかったわ」
荒げていた呼吸を整え、神丸に近寄り手を差し出す。
「また、やりましょ」
「うむ。是非とも」
神丸と握手を交わすと、盛大な拍手が会場から鳴り響いた。その音を聴いた神丸は、ゆっくりと魔力粒子へと変わっていった。
『決闘、全試合の工程しゅうりょおおおおーーー!!!! この途方もない偉業を達成し、勝利を掴んだのは、単騎で大人数に挑んだシラユキ選手でしたぁ!! 最後の決闘は、誰も見たことがない、非常に洗練された技の応酬でした! しかし最後は爽やかに握手をしての決着!! 実に、実に見事な戦いでした! 皆さん、もう一度、激闘を演じたシラユキ選手と、神丸選手に盛大な拍手をー!!』
『ワアアアアア!!』
『パチパチパチパチ!!』
こういう時は手を振るのが良いかしら?
うん、そうね。とびっきりの笑顔で手を振りましょう。
『いやホントに、素晴らしい戦いでした! 実況にも関わらず途中何が起きてるのかさっぱりわからないシーンが多々あったので、シラユキ選手には是非ともご教授いただきたいところですが……その前に、決闘の締め処理をさせていただきます!』
キャサリンちゃんが『決戦フィールドV2』を結界の外側から操作をし、『最終ログ』の公開ボタンを押した。
『最終ログ』。
これもまた、決闘及び決戦シリーズの見どころの一つで、一連の戦いの中で『相手に与えた累計ダメージ』を表示していくシステムだ。これもアタッチメントの追加で、『使用した魔法』であったり、『使用した武技』であったり、『累計ではなく単発ごとのダメージ』だったりが表示されるんだけど、この装置には最低限のものしか備わっていないから、表示されるのも累計ダメージだけだ。
表記のされ方としては『赤組シラユキ 3450ダメージ ― 青組モブ 0ダメージ 』といった感じだ。
第一戦目から順々に、参加した連中の名前と与えたダメージの表示がされていくが、そのどれもが0ダメージ表記。対して私の名前の後にある数字は、そのどれもが4桁ダメージのオンパレードで、一部の高威力ランスに貫かれた連中に至っては5桁ダメージがあり、それがまた会場を沸かせた。
2戦目、3戦目、4戦目と続き、5戦目の最初は剣での打撲や斬撃撃破がメインだったから、中には3桁ダメージもチラホラと見受けられたけど、レオン君直属の配下戦ではまた5桁ダメージがインフレし始めた。
神丸戦に至っては測定不能だったようだし……んん!?
『赤組シラユキ 数値オーバーフロー 測定不能 ― 青組神丸 28ダメージ』
にじゅうはちだめーじ……?
え? なにそれ……?? シラユキちゃんわかんない……。
震える身体を抑えながら、視線を左上に向ける。
このパーティシステムのHPとMPは、特殊な戦いのフィールドにおいても有効で、きちんと両方の増減も明確に記してくれているのだが……。
そこにはしっかりと、HP99/100%の文字があった。
「うそ……一体いつ受けたの? 何処で!?」
『いやー、それにしても圧巻ですね! これほどの激闘を終えて、受けたダメージがたったの28ダメージなんて』
「キャサリンちゃん! このダメージは何!?」
『わあお!? どうしたんです、そんなに慌てて。それならボクがしっかり見ていましたよ。先程お二人の攻撃がぶつかり合った時、衝撃波と砂嵐が発生したじゃないですか。その時にダメージが発生してましたよ! 実況は続けていたんですが、衝撃の爆音でかき消されてしまった様ですねー!』
「そ、そんな……」
結界が消え去り、試合終了の文字が浮かび上がると同時に、膝から崩れ落ちる。
せっかく、頑張ったのに……。
『あれ、シラユキ選手? どうされました?』
「うぅ……がんばったのにぃ……」
視界が滲んだ。
『マスター頑張ったのにね……』
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1/19の20時の投稿で他サイトで投稿中のものに追いつきます。以後隔日で20:01頃投稿予定です。
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