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第4章:魔法学園 入学準備編
第106話 『その日、うんちくの続きをした』
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公爵様と閣下、そしてアリシアが主体となってポルトから王都に来るまでに起きた事件とその因果関係、全てを陛下に説明した。
私はというと、真面目な空気になった以上ふざけたりはしなかった。けれどすることもないのも事実なので、のんびりとお茶を飲んだりアリシアの手をにぎにぎしたりして、時間を潰していた。
そしてナイングラッツから王都に向けた話になった時にスピカの紹介を済ませた。案の定ソフィーは驚きすぎてひっくり返りかけたけど、イングリットちゃんが止めてくれた。
イングリットちゃんナイス。
そんなスピカは今、夕食代わりのシラユキちゃん特製魔法水を、両手に抱えて大事そうに飲んでいた。和むわぁ。
『~~』
「はぁ、ため息が出ちゃうくらい可愛いわね……」
今陛下に説明している事は、ソフィーにとってはさっき聞いたばかりの事でもあり、優先度は低いらしい。自分達に起きかけた悲惨な出来事とはいえ、実際に起きなければ現実味のない事だものね。
そんな事よりも、目の前のスピカのカワイさが勝つのは無理もない事だわ。
フェリス先輩も、ソフィーほど前のめりになってはいないものの、スピカのカワイさにメロメロって感じね。
「ソフィーも水魔法のスキルを上げたら、その内スピカにご飯をあげさせても良いわよ」
「ほんと!?」
「ええ。精霊によって好みの波長があるから、リピートされるかはその子との相性があるけどね」
「そうなんだ……。よし、頑張ってみるわ。シラユキ、魔法教えてくれる?」
「勿論よ」
ソフィーと親交を深めていると、陛下が立ち上がった。
「臣民だけでなくフェリスフィアやソフィアリンデまで狙うとは、万死に値する……!! 至急近衛兵と第一・第二騎士団を派遣し、即刻奴等を捕らえねば!」
「兄上、お供します」
「俺もだ陛下。うちの娘に手を出した事、後悔させてやる」
大人達は殺意に目覚めたのか、目をギラ付かせているわね。ザナックさんは冷静に分析している様な顔だけど、苛立ちは感じられるわね。
「諸君らの助力、感謝する。フェリスフィアとソフィアリンデも、安全が確認されるまでこの城に留まると良い。必要なものがあれば何でも言ってくれて構わん」
「ありがとうございます、叔父様」
「ありがとう、おじさま。シラユキが居てくれたら安心だわ」
「うむ。ワシからも改めて頼む。シラユキよ、ワシの大事な姪っ子達を守ってやってくれないか。報酬はまた改めて渡そう」
なんだか話が一気に進みそうね。けど少し冷静になった方がいいわ。少し水をかけて冷やさないと。
「それは勿論、私にとって大事な友達ですから、傷一つつかないように守ります。ただ、陛下達は少し冷静になった方がいいかと。このまま攻め込むのは愚策だと思いますわ」
「む……何故かね」
「公爵様も閣下も、お忘れでしょうか。例の悪意の塊のような首輪に、大量殺人を厭わない毒の魔道具、そして毒竜や邪竜、テラーコングを連れてきた方法など。奴らは謎の多い手段と知識を多数有しています。この計画は何年も前から準備して来た様ですし、彼らは自身の守りにもそれらの知識を使っていない保証はありません。もう少し慎重に事を進めたほうがよろしいかと」
それを聞いた御三方は、多少の冷静さを取り戻したようだった。レイモンド? あいつは脳筋だから注意するだけ無駄ね。
「むぅ、それもそうか」
「陛下の知る中で、例の首輪や毒の魔道具などを作る事ができる者は居ますか? 少なくとも私は知りませんし、私では作る事は出来ません」
レシピが分からないので作りようがない。もしゲーム世界で存在していたとしても、プレイヤーでは入手する事は出来なかっただろうし、製作も不可能だとかそんな感じのアイテムだったでしょうしね。
流石に『浄化』とか一部の特殊な方法での回避以外は必中で人型の敵対者を無力化、ならびに使役するだなんて、チート過ぎるんだもの。
「お嬢様でもご存知ないのですね……」
「世界は広いんだし、私が知らない事だってあるわよ」
「ふふ、そうですね」
ここはゲームの世界とは違って現実なんだから、むしろ知らないことの方が多くなっている可能性すらあるわね。
「……ワシもそのような技法、預かり知らぬな。アブタクデがその様な技法に精通しているという話も聞かん」
「奴は外部からその技術を取り寄せたのでしょうか?」
「いや、そもそもその様な首輪による隷属技術、表に出ていれば噂になっているはずだ。そしてその悍ましさから禁忌に指定されているだろう。だが、そう言った話は一度も聞いていない」
「では、一体どうやって……」
この首輪自体は、私としてもこの世界に来て初めて知ったけど、あの豚が協力している相手なら知っている。
多分そいつらが提供元だとは思うんだけど、確証が無いのよね。
でも、お偉方は相手の予測を立てづらいみたいだし、援護しておきますか。
「……技術の提供元ですが、確証は有りませんが可能性として怪しんでいる所があります。恐らく、なんですけど」
「構わん、言ってみてくれ」
「前提としてですけど、この国の資源を破壊し、尚且つ力を削ぐことで得する相手ですよね。その点で考えると、隣国とはどこもそれなりに仲良くは出来ている方だと私は思っています。勿論、海の向こう側にある国とも、大きないざこざは起きていません」
「うむ」
「そして人を人と思わない様な悪虐非道な魔道具の数々。こんな物を量産出来、搦め手で攻めて来て、エルドマキアの国力を落として得する組織。となれば相手は、魔族。なのではないかと」
私の言葉に、お偉方はそれぞれ思案し、納得した様だった。まぁ魔族と言っても善良な種族や平和的な種族もいるんだけど。今はそこは良いわね。
「確かに、得体の知れない彼奴らならば有り得るか……」
「もし魔族が待ち構えていれば、無闇に押し込んでもこちらの被害が増すだろう。教会にも協力を要請する必要があるな」
「魔族がいると確定したわけじゃねえが、用心するに越した事はねえな。うちでも緊急クエストとして、Bランク以上の人間を招集しよう。奴らを叩くのは明日で良いか?」
「いや、レイ。何も奴等の土俵で戦う必要はないんじゃないか? 適当に理由をでっち上げて、本人を城まで呼ぶというのも有りかも知れない」
お偉方がわいのわいのと盛り上がってる。まあ、たとえ市街地で戦いが勃発したとしても、貴族の屋敷って結構広い上に、お隣さんとも距離が空いていたりするのよね。だから他人が巻き込まれる事はそうそうないでしょ。
大規模魔法でも使われない限り。
それなりに方向修正を出来たし、ひとまずは今出来る私の仕事は終わりかな。話がまとまるまで、スピカでも眺めていよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
陛下が、後は全て任せよ。と言って、作戦を立てにお偉方と一緒に部屋を出て行った。まあいつまでもこんな話を、女の子がいっぱいいる部屋でするもんじゃないわよね。
やばかったら手伝うとは伝えたけど、大丈夫かな?
一応乗り掛かった船だし、出来るなら最後まで面倒を見るべきだと思うんだけど。
「この国の問題は、本来彼らがどうにかするべき領分なのです。お嬢様に全て肩代わりさせてしまっては、彼等の沽券に関わるのでしょう。お嬢様は働きすぎたのですから、今はゆっくり体を休める事を考えましょう」
とアリシアに言われたので、気にしないことにした。
まあ確かに、今まではトラブルに突っ込んでいったせいで色々なイベントに出くわして来たわけで、動かなければ何も起きないわよね?
「私とお姉様も、そろそろ部屋に戻るわ。まだまだ話したい事はたくさんあるけど、今日は色々有りすぎたし、少し整理することに努めるわ。また明日ね」
「シラユキちゃん、アリシア姉さん、皆様も。ごきげんよう」
皆で夕食を頂いた後、姉妹はそう言ってあてがわれた部屋へと向かって行った。私としてももっとお話しをしたかったけれど、これから一緒になれるんだから、急ぐ必要はないわよね。
それに、ソフィーに構ってばかりでリディやイングリットちゃんとあんまりお話し出来てなかったわ。
「んー、宮廷料理は美味しかったけど、マナーに気を付けていたせいか味わう余裕がなかったわね」
そう言ってリディはお腹をさすった。そういえばちょっと食べるのにモタ付いてたわね、リディ。
「フェリス先輩もソフィーも、無礼講だから気にしなくて良いって言ってくれてたんだから、普通に食べればよかったのに」
「いやいや、そうは言っても王宮で豪華な晩餐が出て来たら緊張しちゃうじゃない。あの場に陛下がいらっしゃったら、きっと喉を通らなかったわ」
「リディって、堂々としてる割にそう言うのは気にしちゃうのね」
「普通は気にするでしょ。私だって冒険者や貴族様相手に踊ったりはして来たけど、お城に入る事なんて未体験なんだから、緊張したって仕方がないでしょー」
そう言って口を尖らせた。カワイイなぁリディは。
「ママは意外にも普通に食べてたよね」
「うーん、やっぱり娘の友達繋がりで考えていたのが大きかったかしら。それが無かったら、ママも緊張してたと思うの」
あの時適当に思いついた助言が、ママの助けに繋がったのならよかったわ。
そしてリリちゃんは当然の様に緊張していなかったし、イングリットちゃんも小慣れたものを感じたわね。聖職者は貴族や王族と関わり合いが深いみたいね。
陛下も、魔族と聞いて真っ先に神殿に助力を検討していたし。
「リディ、あんまり食べれてないなら何か出そうか?」
「大丈夫よ。それに変な時間に食べたら太っちゃうかも知れないでしょ」
ああ、やっぱりそう言うのはこの世界でもそうなのね。あまりにも太ってる人を見ないから、一般的ではないのかと思ったけど。
アブタクデは例外として。
「それよりも、昼前の話の続きをしましょうよ」
「うん? 何かあったっけ??」
昼前?
「ほら、なんだっけ……あの特殊な文字の話!」
「……あー、『ワード』と『付与士』の事?」
「そうそう。結局シラユキが凄いって話で終わっちゃったけど、その『ワード』について結局何なのかを聞けてないわ」
「そうだっけ。……そうだったかも。何だか途中で曖昧になってたわね」
完全に失念してたわ。そう言われてみれば、他にも何か忘れているような気が……。
うーん、アリシアが言ってきてないし、大したことではないかも? うん、まあいっか!
「確かに……お嬢様の事を知ることが出来て、満足してしまっていました」
「それじゃえーっと、どこまで話したっけ」
「『付与士』と『導き手』や『紡ぎ手』との違いと、『ワード』は『付与士』にしか扱えないと言うところですね」
「ああ、どこまでも何も、触りの部分しか話していなかったのね」
結局『付与士』はどう言う職業なのか、何の説明も出来ていなかったわね。
また新しいお話が聞けるのかと、魔法の自己練習をしていたリリちゃんとイングリットちゃんも、ワクワクした表情でこちらを見ている。
皆も聞きたそうにしているから、惜しまず話しましょうか。
「まず『付与士』とは、『ハイランク』の職業でね、実を言うと『導き手』や『紡ぎ手』よりもランクが低い職業なの。ただ、その職業を始めるには『ノーマル』の『調合士』と『ハイランク』の『錬金術師』を育てる必要があるわ」
ふむふむと皆頷く。
「『ワード』を扱うには『付与士』の時に体に取り込む必要があるんだけど、別に怖いことじゃないわ。その言葉の意味を理解して口に唱えることで、勝手に吸収されるの」
この中で『ワード』を見たことがあるのは、アリシアとイングリットちゃんかな。
『ワード』が自身に取り込まれる様子を、何となくで想像していそうな顔をしてる。
「そして『ワード』にはいくつかの効果を及ぼす文字と、その文字の性能を強化させるレベルが存在するの。レベルが高いほど効果も高くなるけれど、その分『ワード』自体も見つかりにくい部類になって行くわ」
と言っても、有用な物ってだいたい序盤に揃って、後半はピーキーなものが増えて行くから結局最後の方は趣味になって行くのよね。
ただ生産系の職業って、キャップ超えをするにはアイテム作成とかが主体になるから、完全に要らないって訳でもないんだけど。
「例えば……そうね。この紙を使いましょうか。皆知ってると思うけど、こういう植物繊維で作られた紙って、羊皮紙と比べると結構破れやすいのよね」
机の上に置かれていた備品の紙を取り、ヒラヒラとさせてみる。羊皮紙よりは高級な扱いだから、これがある程度数揃えればスキルレベル25以降の魔法書を作れそうね。今度調達しておかなきゃ。
「『付与士』のレベルに応じて、1つの物に対して書き込める文字数が決まっているの。レベル1~14は2文字。15~29は3文字。って感じでね。だから今私が書き込めるのは最大2文字までになるわ」
そう言って『耐』と『保』の2文字を書き込む。
「正直、『付与士』は書き込みさえ出来れば誰が書いても効果は同じなの。例えばリリちゃんが『付与士』に転職して、この2文字を覚えて私と同じように書けば、同じ効果を得られるわ。使い手の強さが反映されず平等に効果が得られるの。でも『付与士』のレベルが低いと、書き込む素材やアイテムの強度が高すぎて、書き込むことが出来なかったりするわ」
なので、一部の高レベル装備は『付与士』のレベルを100にして、上位の同系列の生産職で作るしかなかった。それでもステータスが足りずに弾かれるほどの強力なエンドコンテンツ装備は、実質付与は不可能とされていたけど……。
今の私なら、『グランドマスター』で高いステータスのまま付与が可能となる。極めれば制限なんて無くなるのかもしれないわ。
「……お嬢様、この紙には何を書かれたのですか?」
「ああそっか、ごめんね。書いたのは耐久力のレベル1と、状態保存のレベル1よ。レベル1は1文字で書けるの。レベル2は2文字。レベル3は3文字と言った感じね」
「この状態保存、先ほども見ましたね。という事は、私との誓約書は状態保存のレベル2ということでしょうか?」
「ええ、そうよ。もう1枚の紙に状態保存のレベル2を用意しましょうか」
『保存』と書き込んだ紙を机に置く。
「わお、こっちのレベル2はどんなに強く持っても曲がらないわね。ずっと真っ直ぐのままだわ」
「こっちのレベル1は、少し硬い程度でしょうか。耐久力と言うのは何を表すのでしょう?」
「衝撃や破損に強いとかかな」
「お姉ちゃん、試して良い?」
「いいわよー」
リリちゃんのカワイイお手々が、紙を千切ろうと引っ張っているが、中々千切れない。
まぁリリちゃん、後衛職だし力はそんなにないのよね。
「むぅー! ……だめなの」
「あ、じゃあお姉さんにやらせてみて。んっ……。お、切れ目が入ったわね。それでも羊皮紙以上に丈夫だわ」
「おお~」
反対に『踊り子』はDEXとAGI中心、それからCHRに全振りするかのようなステータス構成だけど、それでも一応は『エクストラ』の前衛職。それなりに力もあるので割とあっさり裂いて見せた。
「耐久力とは、文字通り丈夫さに直結するのですね」
「そうねー。だからその紙、ちょっと炎で炙っても燃えにくかったりするわ」
流石に超高温でやったら一瞬で燃えカスになっちゃうけど。低スキルのファイアーボールで多少炙る程度なら、しばらく保つんじゃないかしら。
それを聞いた家族は、手元のマジックバッグから色々と取り出し始めた。
「ではお嬢様、以前に作って頂いたつるはしにはどのような効果が?」
「え、シラユキったらつるはしも作ったの!?」
「まぁ! リーリエ様の弓は、ここに彫り込みがされているのですね」
「そうみたい。でもママは、このメイド服のどこに書かれているのかも気になるわ」
「ねえねえ、リリの杖に書いたのって、ここであってるの?」
「ちょ、ちょっとまって。順番、順番に答えるから!」
皆が詰めかけてくると同時に、天井裏に居た気配がどこかへと消えた。
『ふふ、マスターったら大変ね。そして上の人も、仕事熱心だわー』
私はというと、真面目な空気になった以上ふざけたりはしなかった。けれどすることもないのも事実なので、のんびりとお茶を飲んだりアリシアの手をにぎにぎしたりして、時間を潰していた。
そしてナイングラッツから王都に向けた話になった時にスピカの紹介を済ませた。案の定ソフィーは驚きすぎてひっくり返りかけたけど、イングリットちゃんが止めてくれた。
イングリットちゃんナイス。
そんなスピカは今、夕食代わりのシラユキちゃん特製魔法水を、両手に抱えて大事そうに飲んでいた。和むわぁ。
『~~』
「はぁ、ため息が出ちゃうくらい可愛いわね……」
今陛下に説明している事は、ソフィーにとってはさっき聞いたばかりの事でもあり、優先度は低いらしい。自分達に起きかけた悲惨な出来事とはいえ、実際に起きなければ現実味のない事だものね。
そんな事よりも、目の前のスピカのカワイさが勝つのは無理もない事だわ。
フェリス先輩も、ソフィーほど前のめりになってはいないものの、スピカのカワイさにメロメロって感じね。
「ソフィーも水魔法のスキルを上げたら、その内スピカにご飯をあげさせても良いわよ」
「ほんと!?」
「ええ。精霊によって好みの波長があるから、リピートされるかはその子との相性があるけどね」
「そうなんだ……。よし、頑張ってみるわ。シラユキ、魔法教えてくれる?」
「勿論よ」
ソフィーと親交を深めていると、陛下が立ち上がった。
「臣民だけでなくフェリスフィアやソフィアリンデまで狙うとは、万死に値する……!! 至急近衛兵と第一・第二騎士団を派遣し、即刻奴等を捕らえねば!」
「兄上、お供します」
「俺もだ陛下。うちの娘に手を出した事、後悔させてやる」
大人達は殺意に目覚めたのか、目をギラ付かせているわね。ザナックさんは冷静に分析している様な顔だけど、苛立ちは感じられるわね。
「諸君らの助力、感謝する。フェリスフィアとソフィアリンデも、安全が確認されるまでこの城に留まると良い。必要なものがあれば何でも言ってくれて構わん」
「ありがとうございます、叔父様」
「ありがとう、おじさま。シラユキが居てくれたら安心だわ」
「うむ。ワシからも改めて頼む。シラユキよ、ワシの大事な姪っ子達を守ってやってくれないか。報酬はまた改めて渡そう」
なんだか話が一気に進みそうね。けど少し冷静になった方がいいわ。少し水をかけて冷やさないと。
「それは勿論、私にとって大事な友達ですから、傷一つつかないように守ります。ただ、陛下達は少し冷静になった方がいいかと。このまま攻め込むのは愚策だと思いますわ」
「む……何故かね」
「公爵様も閣下も、お忘れでしょうか。例の悪意の塊のような首輪に、大量殺人を厭わない毒の魔道具、そして毒竜や邪竜、テラーコングを連れてきた方法など。奴らは謎の多い手段と知識を多数有しています。この計画は何年も前から準備して来た様ですし、彼らは自身の守りにもそれらの知識を使っていない保証はありません。もう少し慎重に事を進めたほうがよろしいかと」
それを聞いた御三方は、多少の冷静さを取り戻したようだった。レイモンド? あいつは脳筋だから注意するだけ無駄ね。
「むぅ、それもそうか」
「陛下の知る中で、例の首輪や毒の魔道具などを作る事ができる者は居ますか? 少なくとも私は知りませんし、私では作る事は出来ません」
レシピが分からないので作りようがない。もしゲーム世界で存在していたとしても、プレイヤーでは入手する事は出来なかっただろうし、製作も不可能だとかそんな感じのアイテムだったでしょうしね。
流石に『浄化』とか一部の特殊な方法での回避以外は必中で人型の敵対者を無力化、ならびに使役するだなんて、チート過ぎるんだもの。
「お嬢様でもご存知ないのですね……」
「世界は広いんだし、私が知らない事だってあるわよ」
「ふふ、そうですね」
ここはゲームの世界とは違って現実なんだから、むしろ知らないことの方が多くなっている可能性すらあるわね。
「……ワシもそのような技法、預かり知らぬな。アブタクデがその様な技法に精通しているという話も聞かん」
「奴は外部からその技術を取り寄せたのでしょうか?」
「いや、そもそもその様な首輪による隷属技術、表に出ていれば噂になっているはずだ。そしてその悍ましさから禁忌に指定されているだろう。だが、そう言った話は一度も聞いていない」
「では、一体どうやって……」
この首輪自体は、私としてもこの世界に来て初めて知ったけど、あの豚が協力している相手なら知っている。
多分そいつらが提供元だとは思うんだけど、確証が無いのよね。
でも、お偉方は相手の予測を立てづらいみたいだし、援護しておきますか。
「……技術の提供元ですが、確証は有りませんが可能性として怪しんでいる所があります。恐らく、なんですけど」
「構わん、言ってみてくれ」
「前提としてですけど、この国の資源を破壊し、尚且つ力を削ぐことで得する相手ですよね。その点で考えると、隣国とはどこもそれなりに仲良くは出来ている方だと私は思っています。勿論、海の向こう側にある国とも、大きないざこざは起きていません」
「うむ」
「そして人を人と思わない様な悪虐非道な魔道具の数々。こんな物を量産出来、搦め手で攻めて来て、エルドマキアの国力を落として得する組織。となれば相手は、魔族。なのではないかと」
私の言葉に、お偉方はそれぞれ思案し、納得した様だった。まぁ魔族と言っても善良な種族や平和的な種族もいるんだけど。今はそこは良いわね。
「確かに、得体の知れない彼奴らならば有り得るか……」
「もし魔族が待ち構えていれば、無闇に押し込んでもこちらの被害が増すだろう。教会にも協力を要請する必要があるな」
「魔族がいると確定したわけじゃねえが、用心するに越した事はねえな。うちでも緊急クエストとして、Bランク以上の人間を招集しよう。奴らを叩くのは明日で良いか?」
「いや、レイ。何も奴等の土俵で戦う必要はないんじゃないか? 適当に理由をでっち上げて、本人を城まで呼ぶというのも有りかも知れない」
お偉方がわいのわいのと盛り上がってる。まあ、たとえ市街地で戦いが勃発したとしても、貴族の屋敷って結構広い上に、お隣さんとも距離が空いていたりするのよね。だから他人が巻き込まれる事はそうそうないでしょ。
大規模魔法でも使われない限り。
それなりに方向修正を出来たし、ひとまずは今出来る私の仕事は終わりかな。話がまとまるまで、スピカでも眺めていよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
陛下が、後は全て任せよ。と言って、作戦を立てにお偉方と一緒に部屋を出て行った。まあいつまでもこんな話を、女の子がいっぱいいる部屋でするもんじゃないわよね。
やばかったら手伝うとは伝えたけど、大丈夫かな?
一応乗り掛かった船だし、出来るなら最後まで面倒を見るべきだと思うんだけど。
「この国の問題は、本来彼らがどうにかするべき領分なのです。お嬢様に全て肩代わりさせてしまっては、彼等の沽券に関わるのでしょう。お嬢様は働きすぎたのですから、今はゆっくり体を休める事を考えましょう」
とアリシアに言われたので、気にしないことにした。
まあ確かに、今まではトラブルに突っ込んでいったせいで色々なイベントに出くわして来たわけで、動かなければ何も起きないわよね?
「私とお姉様も、そろそろ部屋に戻るわ。まだまだ話したい事はたくさんあるけど、今日は色々有りすぎたし、少し整理することに努めるわ。また明日ね」
「シラユキちゃん、アリシア姉さん、皆様も。ごきげんよう」
皆で夕食を頂いた後、姉妹はそう言ってあてがわれた部屋へと向かって行った。私としてももっとお話しをしたかったけれど、これから一緒になれるんだから、急ぐ必要はないわよね。
それに、ソフィーに構ってばかりでリディやイングリットちゃんとあんまりお話し出来てなかったわ。
「んー、宮廷料理は美味しかったけど、マナーに気を付けていたせいか味わう余裕がなかったわね」
そう言ってリディはお腹をさすった。そういえばちょっと食べるのにモタ付いてたわね、リディ。
「フェリス先輩もソフィーも、無礼講だから気にしなくて良いって言ってくれてたんだから、普通に食べればよかったのに」
「いやいや、そうは言っても王宮で豪華な晩餐が出て来たら緊張しちゃうじゃない。あの場に陛下がいらっしゃったら、きっと喉を通らなかったわ」
「リディって、堂々としてる割にそう言うのは気にしちゃうのね」
「普通は気にするでしょ。私だって冒険者や貴族様相手に踊ったりはして来たけど、お城に入る事なんて未体験なんだから、緊張したって仕方がないでしょー」
そう言って口を尖らせた。カワイイなぁリディは。
「ママは意外にも普通に食べてたよね」
「うーん、やっぱり娘の友達繋がりで考えていたのが大きかったかしら。それが無かったら、ママも緊張してたと思うの」
あの時適当に思いついた助言が、ママの助けに繋がったのならよかったわ。
そしてリリちゃんは当然の様に緊張していなかったし、イングリットちゃんも小慣れたものを感じたわね。聖職者は貴族や王族と関わり合いが深いみたいね。
陛下も、魔族と聞いて真っ先に神殿に助力を検討していたし。
「リディ、あんまり食べれてないなら何か出そうか?」
「大丈夫よ。それに変な時間に食べたら太っちゃうかも知れないでしょ」
ああ、やっぱりそう言うのはこの世界でもそうなのね。あまりにも太ってる人を見ないから、一般的ではないのかと思ったけど。
アブタクデは例外として。
「それよりも、昼前の話の続きをしましょうよ」
「うん? 何かあったっけ??」
昼前?
「ほら、なんだっけ……あの特殊な文字の話!」
「……あー、『ワード』と『付与士』の事?」
「そうそう。結局シラユキが凄いって話で終わっちゃったけど、その『ワード』について結局何なのかを聞けてないわ」
「そうだっけ。……そうだったかも。何だか途中で曖昧になってたわね」
完全に失念してたわ。そう言われてみれば、他にも何か忘れているような気が……。
うーん、アリシアが言ってきてないし、大したことではないかも? うん、まあいっか!
「確かに……お嬢様の事を知ることが出来て、満足してしまっていました」
「それじゃえーっと、どこまで話したっけ」
「『付与士』と『導き手』や『紡ぎ手』との違いと、『ワード』は『付与士』にしか扱えないと言うところですね」
「ああ、どこまでも何も、触りの部分しか話していなかったのね」
結局『付与士』はどう言う職業なのか、何の説明も出来ていなかったわね。
また新しいお話が聞けるのかと、魔法の自己練習をしていたリリちゃんとイングリットちゃんも、ワクワクした表情でこちらを見ている。
皆も聞きたそうにしているから、惜しまず話しましょうか。
「まず『付与士』とは、『ハイランク』の職業でね、実を言うと『導き手』や『紡ぎ手』よりもランクが低い職業なの。ただ、その職業を始めるには『ノーマル』の『調合士』と『ハイランク』の『錬金術師』を育てる必要があるわ」
ふむふむと皆頷く。
「『ワード』を扱うには『付与士』の時に体に取り込む必要があるんだけど、別に怖いことじゃないわ。その言葉の意味を理解して口に唱えることで、勝手に吸収されるの」
この中で『ワード』を見たことがあるのは、アリシアとイングリットちゃんかな。
『ワード』が自身に取り込まれる様子を、何となくで想像していそうな顔をしてる。
「そして『ワード』にはいくつかの効果を及ぼす文字と、その文字の性能を強化させるレベルが存在するの。レベルが高いほど効果も高くなるけれど、その分『ワード』自体も見つかりにくい部類になって行くわ」
と言っても、有用な物ってだいたい序盤に揃って、後半はピーキーなものが増えて行くから結局最後の方は趣味になって行くのよね。
ただ生産系の職業って、キャップ超えをするにはアイテム作成とかが主体になるから、完全に要らないって訳でもないんだけど。
「例えば……そうね。この紙を使いましょうか。皆知ってると思うけど、こういう植物繊維で作られた紙って、羊皮紙と比べると結構破れやすいのよね」
机の上に置かれていた備品の紙を取り、ヒラヒラとさせてみる。羊皮紙よりは高級な扱いだから、これがある程度数揃えればスキルレベル25以降の魔法書を作れそうね。今度調達しておかなきゃ。
「『付与士』のレベルに応じて、1つの物に対して書き込める文字数が決まっているの。レベル1~14は2文字。15~29は3文字。って感じでね。だから今私が書き込めるのは最大2文字までになるわ」
そう言って『耐』と『保』の2文字を書き込む。
「正直、『付与士』は書き込みさえ出来れば誰が書いても効果は同じなの。例えばリリちゃんが『付与士』に転職して、この2文字を覚えて私と同じように書けば、同じ効果を得られるわ。使い手の強さが反映されず平等に効果が得られるの。でも『付与士』のレベルが低いと、書き込む素材やアイテムの強度が高すぎて、書き込むことが出来なかったりするわ」
なので、一部の高レベル装備は『付与士』のレベルを100にして、上位の同系列の生産職で作るしかなかった。それでもステータスが足りずに弾かれるほどの強力なエンドコンテンツ装備は、実質付与は不可能とされていたけど……。
今の私なら、『グランドマスター』で高いステータスのまま付与が可能となる。極めれば制限なんて無くなるのかもしれないわ。
「……お嬢様、この紙には何を書かれたのですか?」
「ああそっか、ごめんね。書いたのは耐久力のレベル1と、状態保存のレベル1よ。レベル1は1文字で書けるの。レベル2は2文字。レベル3は3文字と言った感じね」
「この状態保存、先ほども見ましたね。という事は、私との誓約書は状態保存のレベル2ということでしょうか?」
「ええ、そうよ。もう1枚の紙に状態保存のレベル2を用意しましょうか」
『保存』と書き込んだ紙を机に置く。
「わお、こっちのレベル2はどんなに強く持っても曲がらないわね。ずっと真っ直ぐのままだわ」
「こっちのレベル1は、少し硬い程度でしょうか。耐久力と言うのは何を表すのでしょう?」
「衝撃や破損に強いとかかな」
「お姉ちゃん、試して良い?」
「いいわよー」
リリちゃんのカワイイお手々が、紙を千切ろうと引っ張っているが、中々千切れない。
まぁリリちゃん、後衛職だし力はそんなにないのよね。
「むぅー! ……だめなの」
「あ、じゃあお姉さんにやらせてみて。んっ……。お、切れ目が入ったわね。それでも羊皮紙以上に丈夫だわ」
「おお~」
反対に『踊り子』はDEXとAGI中心、それからCHRに全振りするかのようなステータス構成だけど、それでも一応は『エクストラ』の前衛職。それなりに力もあるので割とあっさり裂いて見せた。
「耐久力とは、文字通り丈夫さに直結するのですね」
「そうねー。だからその紙、ちょっと炎で炙っても燃えにくかったりするわ」
流石に超高温でやったら一瞬で燃えカスになっちゃうけど。低スキルのファイアーボールで多少炙る程度なら、しばらく保つんじゃないかしら。
それを聞いた家族は、手元のマジックバッグから色々と取り出し始めた。
「ではお嬢様、以前に作って頂いたつるはしにはどのような効果が?」
「え、シラユキったらつるはしも作ったの!?」
「まぁ! リーリエ様の弓は、ここに彫り込みがされているのですね」
「そうみたい。でもママは、このメイド服のどこに書かれているのかも気になるわ」
「ねえねえ、リリの杖に書いたのって、ここであってるの?」
「ちょ、ちょっとまって。順番、順番に答えるから!」
皆が詰めかけてくると同時に、天井裏に居た気配がどこかへと消えた。
『ふふ、マスターったら大変ね。そして上の人も、仕事熱心だわー』
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【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
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少年テッドには、両親がいない。
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両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
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両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
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今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
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2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
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とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
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売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
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経験値も金にもならないこのダンジョン。
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Free Emblem On-line
ユキさん
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今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
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自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
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そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
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ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
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ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
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どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
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