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第4章:魔法学園 入学準備編
第094話 『その日、ギルド本部に到着した』
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「ちょっとズレちゃったけど、『付与士』の話に戻すわね。『付与士』は『紡ぎ手』や『導き手』と似たような所があるけど、『導き手』とは全然異なるの。違いはわかる?」
アリシアは理解していそうな顔。
リリちゃんは分かってなさそう。
ママは何となく分かっていそう。
リディはクエスチョンマークが浮かんでいて、イングリットちゃんは難しそうな顔をしている。
「それじゃあアリシア、まずは今理解してる範囲で、『付与士』と他2種の違いを答えてみて」
「はい。『紡ぎ手』と『導き手』は習得している技術を他者に伝える職業です。ですが『付与士』は技術を教える職ではなく、武器や防具などに力を与える職、と言うことですね?」
「正解ー! ご褒美にナデナデしてあげましょうー」
「光栄です」
満面の笑みを浮かべるアリシアはナデナデする。『付与士』の存在そのものを知らなかったようだけど、これだけ答えられたら十分だわ。
アリシアは優秀な生徒ね。よしよし。
「じゃあママ、それを踏まえて『付与士』と『紡ぎ手』の関連性を答えてみて」
「えっと、シラユキちゃんが作る魔法書は全部『魔法言語』で書かれていて、それらはダンジョンから稀に出土するってお話だったから、『ワード』も『魔法言語』も、どちらも極めるにはダンジョンの存在が欠かせないって所が、『付与士』と『紡ぎ手』の関係……かな?」
「大正解ー!」
ママを抱きしめて撫で回す。ちゃんと見てるし覚えていたわね。いい子いい子。うりうりうり。
「は、はうう」
困り顔のママもカワイイ。もっと撫でちゃう。
「ちなみに『導き手』が教える戦闘スキルは、先人達が開発した技術を後世に伝え続けているものだから、ダンジョンから出土することは無いと思うわ」
「勉強になります!」
イングリットちゃんはメモを必死に取っているようだった。この子も熱心ね。
でもネームドの魔物が、武器スキルを獲得できる『奥義書』を飲み込んでいて、解体したらドロップした。なんて事もゲーム中ではあったから、一概にありえないとも言えないのよね。まあでもダンジョンは関係ないから良いのか。
「じゃあ、シラユキは今『付与士』ってことなの?」
「いいえ、そうであってそうじゃないわ」
「ええ? どう言うこと……?」
「ううーん、リディって口は堅い? 私の秘密なんだけど……」
「堅いわよ。職業柄、人の相談とか話とかよく聞きけど、内緒話をひけらかしたことはないわ」
「イングリットちゃんは……」
「シラユキ様が言うなと仰るのでしたら、天界まで持っていきましょう」
「まあそこまでは言わないけど。いつかバレることだと思うし」
コレは家族にも伝えていなかったわね、そういえば。
アリシアにも、視せただけで詳しい説明はしていなかった。
「私の今の職業はね、全ての職業を制覇した者だけが就ける特殊な職業なの。だから、全ての職業で実行可能な特殊行動の全てが出来るわ。でもこの職業に就いた代償として、レベルは1からにリセットされてしまったし、生産スキルも魔法スキルも武器スキルも、全て0からのリスタートになったわ」
あと、『グランドマスター』から他の職業に転職出来るかどうかは解らない。けれど、戻れる保証が無いから試せないのよね。何らかのピンチで他職業のレベル100の戦闘能力が求められたとしても、この万能な職業の恩恵を捨てると後々に響いてきそうだわ。
もし勝てない強敵が現れたとしても、逃げればいいのよ!
「……成程。お嬢様の知識と経験、そしてレベルとスキル値が噛み合わないと思っていましたが、そんなことになっていたのですね」
「じゃあ、お姉ちゃんは全部の職業を極めちゃったの?」
「そうよー」
「じゃあじゃあ、魔法も?」
「全部覚えたわよー」
「ふわああ」
リリちゃんのお目目がキラキラと輝いている。お姉ちゃんはすごいでしょー。えへん。
「それってとんでもないことだと思うけど、今までの努力が全部無かったことにされちゃったのよね。シラユキちゃんはショックじゃなかった?」
「え? ううん、もう1回初心に戻って遊べてるから、むしろ有難いかな」
「ふわああ」
ママも同じ反応をしてる。目に映る煌めきは別の意味合いを持っていそうだけど。
「ちょ、ちょっと待って、話についていけないんだけど」
「ではシラユキ様は、『聖女』も経験されていると言うことですか?」
「ええ、経験済みよ」
「……よ、よろしいのですか。このような重大なことを私なんかに……」
「だって、イングリットちゃんの事は信頼してるし」
「!! ……はいっ! その期待に応えられるよう、頑張ります! 私も必ずや『聖女』になりますので、どうか見守っていて下さい!」
「勿論よ。『聖女』に関してもそうだし、それ以外でも分からない所があれば相談に乗るわよ」
「ああ、シラユキ様……」
お祈りポーズになったイングリットちゃんを見て思う。そう言えば最近アリシア、このポーズしなくなったわね。神格化は辞めたのかしら?
それとも考えに変化があったのかしら。
「あー、えっと。んんー」
リディはまだ考え込んでいる。分からないなら無理に考えなくてもいいのに。
「つまりシラユキは、『踊り子』もマスターしたって事、よね?」
「そうなるわね。でも今のレベルは低いから、流石に現役には勝てないと思うわ」
スキルやアビリティによる技術面でのカバーは出来ないけど、ステータスの暴力があるから一概には言えないところなんだけど。でも高いステータスや、CHRによる魅力増し増しがあったとしても、それだけじゃ本場の『踊り子』には敵わないと思うのよねぇ。
「じゃあシラユキって、『踊り子』としての先輩になるじゃない。……そ、そんなに凄いのに、あたしなんかの踊りが見たいの?」
「もう、イングリットちゃんもそうだったけど、自分をなんかなんて卑下したりしないで。貴女達はちゃんと立派で魅力的だわ。そしてカワイイんだから、もっと胸を張りなさい」
「シラユキ……」
リディは頷いてこちらを見た。うん、大丈夫そうね。
「分かった。シラユキがそう言うなら、あたしが出来る全力の舞いを見せてあげる!」
「楽しみにしているわ」
着ぐるみ姿でキメ顔をするリディがカワイかったので、全力でハグをした。そろそろ到着する頃合いだし、その着ぐるみパジャマも脱がなきゃね。
彼女の着替えを手伝っていると、馬車の速度が明らかに減速して、止まった。そして御者さんが駆け寄ってくる様子まで、全て『探査』で見て取れた。
「シラユキ様、皆さん。冒険者ギルドに到着致しました」
「ありがとう、今行くわ。さあ皆、荷物は全部片付けてから行きましょう」
『はい!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
私と閣下が横並びになり、その後ろを皆が付いてくる形で冒険者ギルドへと入っていく。入ってきた私達に冒険者たちからは好奇の目を向けられた。
先頭を歩く閣下のマントには家紋がついていない。だけどその出で立ちからは貴族のオーラが溢れ出ていた。でも冒険者達は、閣下の存在には大して驚いている様子がないわね。
流石に王都だけあって、貴族なんて見慣れているのかしら。
「なああの男、どこの貴族だ?」
「さあな、家紋無しだなんて珍しいが、新参かお忍びか。まあ俺たちには関係ない話だ」
「それもそうか」
「それより見ろよ、あの先頭にいる女もそうだが、綺麗どころばかりじゃねえか」
「メイドも連れているし、どこかのお嬢様か? ともかくこの城下町に住んでる奴じゃないな。エルフのメイドを連れるなんて真似、貴族のボンボンがどれほど馬鹿でも出来やしねえ」
「だが首輪も奴隷紋も見当たらないぞ」
「あーん、あの小さい子達姉妹かしら。可愛すぎるわ」
「触らせてくれないかなー」
賑やかなところね。これからここのギルドは拠点になるんだし、早めに顔を売っておきたいところだわ。でも、今はまだその時じゃない。だからそれは、次の機会に持ち越すことにしよう。
そしてこのギルドは、外から見たときもそうだったけれど、王都の城下町を丸々カバーするだけあってとんでもなく大きいわ。受付の数からして尋常じゃない。
でも、8列は流石に多すぎるんじゃないかしら。
「朝のピーク時はこれでも回らないほど混雑するんですよ」
「ほぇー、凄いのね」
私の思考に答えるようにアリシアが耳打ちをしてくれる。
やっぱりアリシア、ここでも活動していたのよね。そのままアリシアのうんちくに耳を傾けていると、このギルドの反対側に、利便性も考えて第二の予備ギルドを設けないかと言う話もあったんだそうな。
ただ、貴族のナワバリ意識というか、利権とか何やらが絡まり合ってまるで話が進められないとか。
笑えるわね。
そんなこんなで、今は昼間に近い時間帯。ピークもだいぶ過ぎているせいか、受付も空いていて、あまり待たされることなく受付へと辿り着いた。
「初めまして、私はギルド本部受付嬢のリスティーナと申します。この度は如何されましたでしょうか」
営業スマイルのリスティーナちゃん。うん、この子も中々カワイイわね。王都のギルド員の女性服はミニスカにハイソなのね? 誰よ設計した奴! ナイスと言わざるを得ないわ!
「Bランク冒険者パーティ、『白雪一家』よ。護衛依頼が完了したので、その処理をお願いしたいのだけど」
「同行しているBランク冒険者のリディエラよ。同じく護衛に参加させてもらったわ」
私達の言葉に周りで聞き耳を立てていた冒険者達が騒ぎ始める。
「あれが冒険者だって?」
「Bランク!? 嘘だろ、まるで見えないぞ……」
「ってことはあの子達もそうなの!? 可愛いのに強いなんて……反則ね!」
「やばいわね!」
冒険者には見えないかぁ。
まあ、今の私……というか最近の私って、冒険者らしい格好を1度もしてないわね。というかアリシアと出会ってから、1度もそういう装備していないわ。『白の乙女』も、見た目重視だから冒険者用にはまるで見えないのよね……。カワイイから良いけど。
なんなら、この中で一番冒険者っぽい格好をしてるのってリリちゃんだけなんじゃない?
そう思っていたのはリスティーナちゃんも同様のようで、度肝を抜かれた顔をしていたわ。メイド服を着ているのが2人もいるんだし、貴族の一家が何か依頼をしに来たとかそんな風に思っていたのかも。
それで反応が少し遅れたみたいね。
「か、確認します。依頼書か依頼人の方は……」
「うむ、私が依頼人だ。この度は彼女達に護衛を任せたのだが、道中トラブルにも見舞われたが彼女たちは難なく解決してくれた。期待以上の成果であったので、レイモンド卿を交えて報酬の話がしたい」
そういって閣下は、事前に用意していた依頼書をリスティーナちゃんに渡す。そこにはきちんと、ナイングラッツ支部のハンコが烙印されていた。
流石にこれだけ周りから見られている中で盗賊などの話は出来ない。それを言ってしまえば、幌馬車や閣下のマントの家紋を隠した意味がなくなってしまうわ。
この辺りのことは、私では協力出来そうに無い領域の事だったので、その辺のさじ加減は閣下に任せることにした。
「護衛の達成報告ですね、畏まりました。しかし、生憎ギルドマスターは忙しくしておりまして、アポは取っておられないと難しいかと……。代わりに私が間に立ちましょうか?」
「そうか……。アポは無いのだが、こちらの冒険者は最優先の通行証を持っている。それを見せればレイモンド卿も対応せざるを得ないだろう」
「えっと、それは何でしょう……?」
閣下とリスティーナちゃんの視線がこちらへと向いた。うん、まあ一応コレは通行証になるわね。コレを優先しないで何を優先するのよっていうレベルの。
「これがあればギルドマスター……いえ、スラスト家のお客さんなんでしょう? メアとシェリーのお友達が来たって伝えてくれるかしら」
懐から以前にも役立った家紋の入ったブローチを見せる。その効果は抜群のようで、リスティーナちゃんの顔つきが変わった。
先ほどまでの一見さんお断りモードから最重要接待客に切り替わったようね。
「確認いたします! ……間違いありません、本物のようですね。メアお嬢様だけでなくシェリーさんの名前まで出てくるなんて……。彼女達から他に何か渡されていませんか?」
「ギルドマスター宛の手紙なら預かっているわ。シェルリックスとナイングラッツのギルドマスターの手紙もあるわよ」
3通の手紙が入った便箋を渡す。便箋の表にはそれぞれのサインが書かれていた。
それは各街のギルドマスター直々のサインでもあるんだけど、これ、ちょっと真似出来ないポイントがあるのよね。
それはポルトのサインだけは、メアとシェリーの2人が一緒に書いたサインだからだ。いつもメアのサインをシェリーが代筆をしてる形を取っているから、それぞれがちゃんとサインを書くのは稀みたい。
こんなの誰にも真似出来っこない。
「……確かに。手紙はお預かりします、皆さんはこちらへ。相談室へと案内します」
ブローチと便箋を大事そうに抱えたリスティーナちゃんに案内され、私達はギルドの奥へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
案内された場所は受付周辺の騒がしさも届かない奥まった空間だった。その中でも一際豪華な造りの相談室へと入っていく。
「ここでしばらくお待ちください」
「ええ、ありがとう」
閣下には上座に座ってもらい、私達は長いソファに腰掛ける。備え付けのティーポットから、アリシアがお茶を淹れてくれた。お茶と一緒に昨日のお菓子も出てくる。
うーん、初めての場所でも一瞬でお茶とお菓子が用意される。これぞアリシアマジック。
「……うん、とっても美味しいわ、アリシア」
「ありがとうございます」
「普段と味わいが違うのは茶葉のせいかしら、それとも……」
「はい! 魔力水を使わせて頂きました。気に入って頂けて嬉しいです」
「アリシア頑張っていたものね」
アリシアを撫で回す。魔力水という単語が出た時、何人かがビクッと動きが止まっていたようだったけど、気にしない方向で行くのかな。大仰なリアクションをする人は居なかった。
「気にしたら負け、気にしたら負け……」
「素晴らしいです、アリシア様……」
「これくらいの事では、もう驚かぬぞ……」
「こんなに美味しくなるなんて、やっぱり水魔法は大事なのね……」
「むむ、リリも頑張るの……」
気にしない……ように心掛けてるの間違いだったわね。
そうこうしているうちに、扉の外からドタバタと騒がしい音がして、1人の男が部屋に飛び込んできた。
「待たせたな! おお、グラッツマン。久しいな!」
「レイモンド卿、お久しぶりです」
閣下が立ち上がり一礼する。スラスト家は閣下よりも上の立場の人なのね。というか王国のギルドを纏めている人間が、1つの街の領主より下な訳ないか。
「おう。お前とは色々と語り合いたい所だが、まずは此方からだな。……ふむ、お前がメアとシェリーの友を名乗ったと?」
レイモンドと呼ばれた男が、アリシアをしばらく見た後に、私を捉えた。
獰猛な獣のような視線を飛ばしてくるのね。いや、ちょっと『威圧』混じってない?
遅れるようにしてリスティーナちゃんと、もう1人別の女性もやってきた。
「メアのパパって過保護なのね。シェリーの苦労が分かるわ」
「レイモンドはその筋では有名な方ですね。主に家族愛が強烈なのだとか」
「そうなのねー」
「……ほぉ、俺の前で堂々とお喋りに興じるとはな。貴様が凡人でない事はよく分かった。メアがこのブローチを持たせたのだから、信頼のおける者なのだろうが……。まずは名乗るべきでは無いか?」
「会って早々『威圧』ぶつける非常識な奴に名を名乗れと?」
『威圧』には『威圧』をもって応じる。挨拶としてはコレで十分なんじゃ無いかしら。
勿論周りには無関係の人もいるから、垂れ流しではなくレイモンドのみに照準を合わせて実行する。
「……ぬぅ」
「あなた、おふざけが過ぎますよ」
「くっ……そうだな。悪かった、俺が悪かった」
レイモンドが降参のポーズを取るので『威圧』を解除する。閣下が胸を撫で下ろしたのが見えた。
圧は飛ばしてなかったはずだけど、使用中は凄みというか存在感が増すから、気が気じゃなかったかしら。閣下には苦労をかけるわね。
「俺は冒険者ギルド・エルドマキア王国本部。ギルドマスターのレイモンド・スラストだ。レイモンドでもギルドマスターでも好きに呼ぶと良い」
「主人が失礼しました。私は冒険者ギルド・エルドマキア王国本部。副ギルドマスターのスメリアと申します」
冒険者ギルドは国ごとに本部が設置されていて、それぞれの本部が国内にある各街のギルドと連携を取り合っている。つまりポルトやシェルリックスの冒険者ギルドよりも上位が、ここエルドマキア王国の冒険者ギルド本部であり、更に上位は存在しない。
そして他国の冒険者ギルドとは横の繋がりはあれど、縦の繋がりはなかったりする。
「私は『白雪一家』のリーダー、シラユキよ。メアとシェリーとは色々あって仲良くなったの。……ところで、スメリアさんがメアのママで合ってますか?」
スメリアさんの胸を見る。
『威圧』をぶつけてくる相手を放置するわけにもいかず極力見ないように努めていたけど……。もう無理! 見ちゃう!!
「はい、合っていますよ。メアを愛称で呼んでくれるなんて、とっても仲良くしてくれたんですね」
胸だけじゃなく、顔つきもメアの面影があるわね。
「はい、それはもう! メアが私より大きい人がいるって言ってたけど、やっぱりスメリアさんの事だったんですね」
「もう、あの子ったらそんなことまで話していたの? 恥ずかしいわね」
スメリアさんが少し動くたびにその風船はそれ以上にたわむ。何よあの暴力的な球体は。
メアより大きいのに、不自然さをまるで感じないわ。この存在感でここまでカワイさを保てるなんて……。女性の神秘、侮りがたし! やはりカワイイは奥深いものよね……!
まあシラユキの胸は今のサイズが丁度良いバランスだから、これ以上大きくなったり小さくなったりは求めてないんだけど。
……成長したりしないわよね?
「あの子が心を開き、なおかつシェリーが気を許すなど……まさか貴様、うちのメアに手を出したのではあるまいな!?」
手を出すと言っても、どこまでが限度かは人によるから何とも言えないところなのよね。一緒には寝たけど、致したわけではないもの。そういう意味では、皆A止まりね。Bは怖いからまだしてないわ。
でも出したと言えば出したのよね。……うん、言わぬが花ね。
「まあそこはともかく、その手紙を読んでくれないと話が進まないので、まずはそれを見てくださいます?」
「そうですよあなた。あの子達からの手紙なんですから、まずは確認しましょう?」
「ぬう、そうだな……。ん? メルクリウスやシャルラの分も入っているではないか」
そう言ってメアのパパとママが向かいのテーブルで腰を据えて読み始めた。手持無沙汰になったので、隣に座ったアリシアと指を絡ませてイチャつく事にした。
『メアママもカワイイわね! 愛でたらダメかしら?』
アリシアは理解していそうな顔。
リリちゃんは分かってなさそう。
ママは何となく分かっていそう。
リディはクエスチョンマークが浮かんでいて、イングリットちゃんは難しそうな顔をしている。
「それじゃあアリシア、まずは今理解してる範囲で、『付与士』と他2種の違いを答えてみて」
「はい。『紡ぎ手』と『導き手』は習得している技術を他者に伝える職業です。ですが『付与士』は技術を教える職ではなく、武器や防具などに力を与える職、と言うことですね?」
「正解ー! ご褒美にナデナデしてあげましょうー」
「光栄です」
満面の笑みを浮かべるアリシアはナデナデする。『付与士』の存在そのものを知らなかったようだけど、これだけ答えられたら十分だわ。
アリシアは優秀な生徒ね。よしよし。
「じゃあママ、それを踏まえて『付与士』と『紡ぎ手』の関連性を答えてみて」
「えっと、シラユキちゃんが作る魔法書は全部『魔法言語』で書かれていて、それらはダンジョンから稀に出土するってお話だったから、『ワード』も『魔法言語』も、どちらも極めるにはダンジョンの存在が欠かせないって所が、『付与士』と『紡ぎ手』の関係……かな?」
「大正解ー!」
ママを抱きしめて撫で回す。ちゃんと見てるし覚えていたわね。いい子いい子。うりうりうり。
「は、はうう」
困り顔のママもカワイイ。もっと撫でちゃう。
「ちなみに『導き手』が教える戦闘スキルは、先人達が開発した技術を後世に伝え続けているものだから、ダンジョンから出土することは無いと思うわ」
「勉強になります!」
イングリットちゃんはメモを必死に取っているようだった。この子も熱心ね。
でもネームドの魔物が、武器スキルを獲得できる『奥義書』を飲み込んでいて、解体したらドロップした。なんて事もゲーム中ではあったから、一概にありえないとも言えないのよね。まあでもダンジョンは関係ないから良いのか。
「じゃあ、シラユキは今『付与士』ってことなの?」
「いいえ、そうであってそうじゃないわ」
「ええ? どう言うこと……?」
「ううーん、リディって口は堅い? 私の秘密なんだけど……」
「堅いわよ。職業柄、人の相談とか話とかよく聞きけど、内緒話をひけらかしたことはないわ」
「イングリットちゃんは……」
「シラユキ様が言うなと仰るのでしたら、天界まで持っていきましょう」
「まあそこまでは言わないけど。いつかバレることだと思うし」
コレは家族にも伝えていなかったわね、そういえば。
アリシアにも、視せただけで詳しい説明はしていなかった。
「私の今の職業はね、全ての職業を制覇した者だけが就ける特殊な職業なの。だから、全ての職業で実行可能な特殊行動の全てが出来るわ。でもこの職業に就いた代償として、レベルは1からにリセットされてしまったし、生産スキルも魔法スキルも武器スキルも、全て0からのリスタートになったわ」
あと、『グランドマスター』から他の職業に転職出来るかどうかは解らない。けれど、戻れる保証が無いから試せないのよね。何らかのピンチで他職業のレベル100の戦闘能力が求められたとしても、この万能な職業の恩恵を捨てると後々に響いてきそうだわ。
もし勝てない強敵が現れたとしても、逃げればいいのよ!
「……成程。お嬢様の知識と経験、そしてレベルとスキル値が噛み合わないと思っていましたが、そんなことになっていたのですね」
「じゃあ、お姉ちゃんは全部の職業を極めちゃったの?」
「そうよー」
「じゃあじゃあ、魔法も?」
「全部覚えたわよー」
「ふわああ」
リリちゃんのお目目がキラキラと輝いている。お姉ちゃんはすごいでしょー。えへん。
「それってとんでもないことだと思うけど、今までの努力が全部無かったことにされちゃったのよね。シラユキちゃんはショックじゃなかった?」
「え? ううん、もう1回初心に戻って遊べてるから、むしろ有難いかな」
「ふわああ」
ママも同じ反応をしてる。目に映る煌めきは別の意味合いを持っていそうだけど。
「ちょ、ちょっと待って、話についていけないんだけど」
「ではシラユキ様は、『聖女』も経験されていると言うことですか?」
「ええ、経験済みよ」
「……よ、よろしいのですか。このような重大なことを私なんかに……」
「だって、イングリットちゃんの事は信頼してるし」
「!! ……はいっ! その期待に応えられるよう、頑張ります! 私も必ずや『聖女』になりますので、どうか見守っていて下さい!」
「勿論よ。『聖女』に関してもそうだし、それ以外でも分からない所があれば相談に乗るわよ」
「ああ、シラユキ様……」
お祈りポーズになったイングリットちゃんを見て思う。そう言えば最近アリシア、このポーズしなくなったわね。神格化は辞めたのかしら?
それとも考えに変化があったのかしら。
「あー、えっと。んんー」
リディはまだ考え込んでいる。分からないなら無理に考えなくてもいいのに。
「つまりシラユキは、『踊り子』もマスターしたって事、よね?」
「そうなるわね。でも今のレベルは低いから、流石に現役には勝てないと思うわ」
スキルやアビリティによる技術面でのカバーは出来ないけど、ステータスの暴力があるから一概には言えないところなんだけど。でも高いステータスや、CHRによる魅力増し増しがあったとしても、それだけじゃ本場の『踊り子』には敵わないと思うのよねぇ。
「じゃあシラユキって、『踊り子』としての先輩になるじゃない。……そ、そんなに凄いのに、あたしなんかの踊りが見たいの?」
「もう、イングリットちゃんもそうだったけど、自分をなんかなんて卑下したりしないで。貴女達はちゃんと立派で魅力的だわ。そしてカワイイんだから、もっと胸を張りなさい」
「シラユキ……」
リディは頷いてこちらを見た。うん、大丈夫そうね。
「分かった。シラユキがそう言うなら、あたしが出来る全力の舞いを見せてあげる!」
「楽しみにしているわ」
着ぐるみ姿でキメ顔をするリディがカワイかったので、全力でハグをした。そろそろ到着する頃合いだし、その着ぐるみパジャマも脱がなきゃね。
彼女の着替えを手伝っていると、馬車の速度が明らかに減速して、止まった。そして御者さんが駆け寄ってくる様子まで、全て『探査』で見て取れた。
「シラユキ様、皆さん。冒険者ギルドに到着致しました」
「ありがとう、今行くわ。さあ皆、荷物は全部片付けてから行きましょう」
『はい!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
私と閣下が横並びになり、その後ろを皆が付いてくる形で冒険者ギルドへと入っていく。入ってきた私達に冒険者たちからは好奇の目を向けられた。
先頭を歩く閣下のマントには家紋がついていない。だけどその出で立ちからは貴族のオーラが溢れ出ていた。でも冒険者達は、閣下の存在には大して驚いている様子がないわね。
流石に王都だけあって、貴族なんて見慣れているのかしら。
「なああの男、どこの貴族だ?」
「さあな、家紋無しだなんて珍しいが、新参かお忍びか。まあ俺たちには関係ない話だ」
「それもそうか」
「それより見ろよ、あの先頭にいる女もそうだが、綺麗どころばかりじゃねえか」
「メイドも連れているし、どこかのお嬢様か? ともかくこの城下町に住んでる奴じゃないな。エルフのメイドを連れるなんて真似、貴族のボンボンがどれほど馬鹿でも出来やしねえ」
「だが首輪も奴隷紋も見当たらないぞ」
「あーん、あの小さい子達姉妹かしら。可愛すぎるわ」
「触らせてくれないかなー」
賑やかなところね。これからここのギルドは拠点になるんだし、早めに顔を売っておきたいところだわ。でも、今はまだその時じゃない。だからそれは、次の機会に持ち越すことにしよう。
そしてこのギルドは、外から見たときもそうだったけれど、王都の城下町を丸々カバーするだけあってとんでもなく大きいわ。受付の数からして尋常じゃない。
でも、8列は流石に多すぎるんじゃないかしら。
「朝のピーク時はこれでも回らないほど混雑するんですよ」
「ほぇー、凄いのね」
私の思考に答えるようにアリシアが耳打ちをしてくれる。
やっぱりアリシア、ここでも活動していたのよね。そのままアリシアのうんちくに耳を傾けていると、このギルドの反対側に、利便性も考えて第二の予備ギルドを設けないかと言う話もあったんだそうな。
ただ、貴族のナワバリ意識というか、利権とか何やらが絡まり合ってまるで話が進められないとか。
笑えるわね。
そんなこんなで、今は昼間に近い時間帯。ピークもだいぶ過ぎているせいか、受付も空いていて、あまり待たされることなく受付へと辿り着いた。
「初めまして、私はギルド本部受付嬢のリスティーナと申します。この度は如何されましたでしょうか」
営業スマイルのリスティーナちゃん。うん、この子も中々カワイイわね。王都のギルド員の女性服はミニスカにハイソなのね? 誰よ設計した奴! ナイスと言わざるを得ないわ!
「Bランク冒険者パーティ、『白雪一家』よ。護衛依頼が完了したので、その処理をお願いしたいのだけど」
「同行しているBランク冒険者のリディエラよ。同じく護衛に参加させてもらったわ」
私達の言葉に周りで聞き耳を立てていた冒険者達が騒ぎ始める。
「あれが冒険者だって?」
「Bランク!? 嘘だろ、まるで見えないぞ……」
「ってことはあの子達もそうなの!? 可愛いのに強いなんて……反則ね!」
「やばいわね!」
冒険者には見えないかぁ。
まあ、今の私……というか最近の私って、冒険者らしい格好を1度もしてないわね。というかアリシアと出会ってから、1度もそういう装備していないわ。『白の乙女』も、見た目重視だから冒険者用にはまるで見えないのよね……。カワイイから良いけど。
なんなら、この中で一番冒険者っぽい格好をしてるのってリリちゃんだけなんじゃない?
そう思っていたのはリスティーナちゃんも同様のようで、度肝を抜かれた顔をしていたわ。メイド服を着ているのが2人もいるんだし、貴族の一家が何か依頼をしに来たとかそんな風に思っていたのかも。
それで反応が少し遅れたみたいね。
「か、確認します。依頼書か依頼人の方は……」
「うむ、私が依頼人だ。この度は彼女達に護衛を任せたのだが、道中トラブルにも見舞われたが彼女たちは難なく解決してくれた。期待以上の成果であったので、レイモンド卿を交えて報酬の話がしたい」
そういって閣下は、事前に用意していた依頼書をリスティーナちゃんに渡す。そこにはきちんと、ナイングラッツ支部のハンコが烙印されていた。
流石にこれだけ周りから見られている中で盗賊などの話は出来ない。それを言ってしまえば、幌馬車や閣下のマントの家紋を隠した意味がなくなってしまうわ。
この辺りのことは、私では協力出来そうに無い領域の事だったので、その辺のさじ加減は閣下に任せることにした。
「護衛の達成報告ですね、畏まりました。しかし、生憎ギルドマスターは忙しくしておりまして、アポは取っておられないと難しいかと……。代わりに私が間に立ちましょうか?」
「そうか……。アポは無いのだが、こちらの冒険者は最優先の通行証を持っている。それを見せればレイモンド卿も対応せざるを得ないだろう」
「えっと、それは何でしょう……?」
閣下とリスティーナちゃんの視線がこちらへと向いた。うん、まあ一応コレは通行証になるわね。コレを優先しないで何を優先するのよっていうレベルの。
「これがあればギルドマスター……いえ、スラスト家のお客さんなんでしょう? メアとシェリーのお友達が来たって伝えてくれるかしら」
懐から以前にも役立った家紋の入ったブローチを見せる。その効果は抜群のようで、リスティーナちゃんの顔つきが変わった。
先ほどまでの一見さんお断りモードから最重要接待客に切り替わったようね。
「確認いたします! ……間違いありません、本物のようですね。メアお嬢様だけでなくシェリーさんの名前まで出てくるなんて……。彼女達から他に何か渡されていませんか?」
「ギルドマスター宛の手紙なら預かっているわ。シェルリックスとナイングラッツのギルドマスターの手紙もあるわよ」
3通の手紙が入った便箋を渡す。便箋の表にはそれぞれのサインが書かれていた。
それは各街のギルドマスター直々のサインでもあるんだけど、これ、ちょっと真似出来ないポイントがあるのよね。
それはポルトのサインだけは、メアとシェリーの2人が一緒に書いたサインだからだ。いつもメアのサインをシェリーが代筆をしてる形を取っているから、それぞれがちゃんとサインを書くのは稀みたい。
こんなの誰にも真似出来っこない。
「……確かに。手紙はお預かりします、皆さんはこちらへ。相談室へと案内します」
ブローチと便箋を大事そうに抱えたリスティーナちゃんに案内され、私達はギルドの奥へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
案内された場所は受付周辺の騒がしさも届かない奥まった空間だった。その中でも一際豪華な造りの相談室へと入っていく。
「ここでしばらくお待ちください」
「ええ、ありがとう」
閣下には上座に座ってもらい、私達は長いソファに腰掛ける。備え付けのティーポットから、アリシアがお茶を淹れてくれた。お茶と一緒に昨日のお菓子も出てくる。
うーん、初めての場所でも一瞬でお茶とお菓子が用意される。これぞアリシアマジック。
「……うん、とっても美味しいわ、アリシア」
「ありがとうございます」
「普段と味わいが違うのは茶葉のせいかしら、それとも……」
「はい! 魔力水を使わせて頂きました。気に入って頂けて嬉しいです」
「アリシア頑張っていたものね」
アリシアを撫で回す。魔力水という単語が出た時、何人かがビクッと動きが止まっていたようだったけど、気にしない方向で行くのかな。大仰なリアクションをする人は居なかった。
「気にしたら負け、気にしたら負け……」
「素晴らしいです、アリシア様……」
「これくらいの事では、もう驚かぬぞ……」
「こんなに美味しくなるなんて、やっぱり水魔法は大事なのね……」
「むむ、リリも頑張るの……」
気にしない……ように心掛けてるの間違いだったわね。
そうこうしているうちに、扉の外からドタバタと騒がしい音がして、1人の男が部屋に飛び込んできた。
「待たせたな! おお、グラッツマン。久しいな!」
「レイモンド卿、お久しぶりです」
閣下が立ち上がり一礼する。スラスト家は閣下よりも上の立場の人なのね。というか王国のギルドを纏めている人間が、1つの街の領主より下な訳ないか。
「おう。お前とは色々と語り合いたい所だが、まずは此方からだな。……ふむ、お前がメアとシェリーの友を名乗ったと?」
レイモンドと呼ばれた男が、アリシアをしばらく見た後に、私を捉えた。
獰猛な獣のような視線を飛ばしてくるのね。いや、ちょっと『威圧』混じってない?
遅れるようにしてリスティーナちゃんと、もう1人別の女性もやってきた。
「メアのパパって過保護なのね。シェリーの苦労が分かるわ」
「レイモンドはその筋では有名な方ですね。主に家族愛が強烈なのだとか」
「そうなのねー」
「……ほぉ、俺の前で堂々とお喋りに興じるとはな。貴様が凡人でない事はよく分かった。メアがこのブローチを持たせたのだから、信頼のおける者なのだろうが……。まずは名乗るべきでは無いか?」
「会って早々『威圧』ぶつける非常識な奴に名を名乗れと?」
『威圧』には『威圧』をもって応じる。挨拶としてはコレで十分なんじゃ無いかしら。
勿論周りには無関係の人もいるから、垂れ流しではなくレイモンドのみに照準を合わせて実行する。
「……ぬぅ」
「あなた、おふざけが過ぎますよ」
「くっ……そうだな。悪かった、俺が悪かった」
レイモンドが降参のポーズを取るので『威圧』を解除する。閣下が胸を撫で下ろしたのが見えた。
圧は飛ばしてなかったはずだけど、使用中は凄みというか存在感が増すから、気が気じゃなかったかしら。閣下には苦労をかけるわね。
「俺は冒険者ギルド・エルドマキア王国本部。ギルドマスターのレイモンド・スラストだ。レイモンドでもギルドマスターでも好きに呼ぶと良い」
「主人が失礼しました。私は冒険者ギルド・エルドマキア王国本部。副ギルドマスターのスメリアと申します」
冒険者ギルドは国ごとに本部が設置されていて、それぞれの本部が国内にある各街のギルドと連携を取り合っている。つまりポルトやシェルリックスの冒険者ギルドよりも上位が、ここエルドマキア王国の冒険者ギルド本部であり、更に上位は存在しない。
そして他国の冒険者ギルドとは横の繋がりはあれど、縦の繋がりはなかったりする。
「私は『白雪一家』のリーダー、シラユキよ。メアとシェリーとは色々あって仲良くなったの。……ところで、スメリアさんがメアのママで合ってますか?」
スメリアさんの胸を見る。
『威圧』をぶつけてくる相手を放置するわけにもいかず極力見ないように努めていたけど……。もう無理! 見ちゃう!!
「はい、合っていますよ。メアを愛称で呼んでくれるなんて、とっても仲良くしてくれたんですね」
胸だけじゃなく、顔つきもメアの面影があるわね。
「はい、それはもう! メアが私より大きい人がいるって言ってたけど、やっぱりスメリアさんの事だったんですね」
「もう、あの子ったらそんなことまで話していたの? 恥ずかしいわね」
スメリアさんが少し動くたびにその風船はそれ以上にたわむ。何よあの暴力的な球体は。
メアより大きいのに、不自然さをまるで感じないわ。この存在感でここまでカワイさを保てるなんて……。女性の神秘、侮りがたし! やはりカワイイは奥深いものよね……!
まあシラユキの胸は今のサイズが丁度良いバランスだから、これ以上大きくなったり小さくなったりは求めてないんだけど。
……成長したりしないわよね?
「あの子が心を開き、なおかつシェリーが気を許すなど……まさか貴様、うちのメアに手を出したのではあるまいな!?」
手を出すと言っても、どこまでが限度かは人によるから何とも言えないところなのよね。一緒には寝たけど、致したわけではないもの。そういう意味では、皆A止まりね。Bは怖いからまだしてないわ。
でも出したと言えば出したのよね。……うん、言わぬが花ね。
「まあそこはともかく、その手紙を読んでくれないと話が進まないので、まずはそれを見てくださいます?」
「そうですよあなた。あの子達からの手紙なんですから、まずは確認しましょう?」
「ぬう、そうだな……。ん? メルクリウスやシャルラの分も入っているではないか」
そう言ってメアのパパとママが向かいのテーブルで腰を据えて読み始めた。手持無沙汰になったので、隣に座ったアリシアと指を絡ませてイチャつく事にした。
『メアママもカワイイわね! 愛でたらダメかしら?』
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