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第1章:港町ポルト編
第024話 『その日、リーリエと知り合った』
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シェリーがのけぞった体勢から復帰した。私の活躍を間近に見ていた分、回復も早いみたい。
「はぁ、本当にシラユキは規格外だな」
「シェリー? 聞いてないわよ、こんなにすごいだなんて」
先ほどまで目が点になっていたメアが息を吹き返した。それでもまだ手が震えている。
「ハハハ、忙しくて伝えていなかった。そうだな……シラユキは魔法1つで北の森にあったオークの集落を消しとばしたぞ」
「集落が、消し……? オークの集団が燃え尽きた、とかではなく?」
「文字通り消しとんだ。……集落丸ごとだ。オークが殲滅された事は私もこの目で見届けたが、再び集まっていないかの確認は必要だろう。あとでメアの名前で緊急依頼を出しておいてくれ。その報告でどういった惨状になっているかがわかる」
「ふえぇ……報告を読むのが怖い……」
メアが再びプルプルと震えだした。同時に球体も震えている。我慢だよ内なる欲望。
「メアの胸も大概じゃない?」
あっ、私の方が我慢できなかった。だってプルプルしてるんだもの。
「お、王都に行けば、私より大きい人が居るんですからね!」
「……なんですって!?」
王都……恐ろしい場所!
「シラユキ、1つだけ確認がしたい。……『ファイアーボール』の魔法書だが、作成にかかった所要時間はどの程度だ?」
「コレ? 1分くらいね」
「「……」」
2人は頭を抱えるも、メアは何かに気づいたのか、急に目を輝かせ始めた。
「あ、あの、シラユキさん……」
「何かしら」
「ウィ、『ウィンドランス』の魔法書を作ること、出来ますか?」
「あら、欲しいの?」
「はいぃ! 王都でも常に品切れで……金貨何百枚でもお支払いしますので!」
ランス高いわね。まぁ利便性高い魔法だし、序盤の火力魔法でもあるし、燃費もいいし……『魔法言語』なしだと80ページから200ページってところかしら? そりゃ量産は面倒だわ。
だって1文字書き込むだけで、魔力持っていかれるもの。やってらんないわね。
「そうねえ……ならまた今度持ってくるわ。値段は、一晩2人一緒に私の抱き枕ね」
「私もか!?」
「わ、わかりました! よろしくお願いします!!」
「おいメア、勝手に決めるな!」
「シェリーも欲しい魔法書あったら言ってくれて良いわよ?」
「むぅ……」
そう唸ってシェリーは、そっと羊皮紙に書いて渡してきた。何々、『アイスウェーブ』に『アイスランス』、『ウォーターランス』ね。
「3つも欲しいなんて、欲張りさんね」
「いや違うぞ!? そういうわけではなくだな、シラユキに、また、その……」
何やら言い淀んでいるが、この3つの中で私のオススメを教えてほしかったのか、それともレクチャーしてほしかったのか。でもダメよ、できる事が多い方が戦いの幅が広がるし、どれか1つしか教えないなんて選択肢は無いわ。
ご褒美は当然要求するけど。
「まあ良いわ。今度まとめて持ってくるから覚悟しておきなさい」
「ああっ、シェリー! ズルイですよ!」
「ならメアも、欲しいものはここに記載なさいな」
「やった! 本当ですか!?」
「その代わり2人とも、抱き枕関係なく好きにするわね」
「はわわわわ……」
「……私の場合、ソレ以前から好きにされていなかったか?」
「あら、一応加減はしていたのよ?」
「そ、そうか。……まぁ、シラユキなら、構わないか」
よし、言質は貰った。このお話が終わり次第早速好きにさせてもらおう。
それにしてもなんでこの人たち、こんなにガードが緩いのかしら? 普通もっと拒否するわよね。
……そのうち調べてみましょうか。
「脱線したが、話を戻そうか。メアも構わないな?」
「え、ええ」
ランスの魔法が手に入る事に、メアはまだ興奮冷めやらぬ様子だ。シェリーもメアが嬉しそうにしているので放っておく事に決めたらしい。
「やれやれ、今ギルドで預かっているゼルバだが、領主に提出することとなった。その引き渡しと同時に詳細な報告をすることとなった。そこに、シラユキも同行して欲しい」
「それはいつ?」
「シラユキの都合のつく日で構わないが、最短で明日になる」
「シェリーとメアも来るのかしら?」
「ああ、もちろん同行する」
「なら明日で良いわ。ソレが終わったらそのままベッドインね?」
それを聞いてシェリーの顔が引きつった。
「……そ、そんなに魔法書の用意が早いのか?」
「ええ。予定は大丈夫かしら」
「……仕方がない、空けておこう。メアも構わないな」
「え? ……そうね、大丈夫よ」
シェリーは半ば諦めたような顔をしている。失礼ね、無理やりはしないわよ。メアは案の定聞いていなかったらしい。
「用件はコレでおしまいなら、私も聞きたい事があるんだけれど良いかしら」
「うん? 何が気になるんだ?」
「もう少ししたら私、王都に向かわないといけないじゃない? 1人で行くのも寂しいし、ついて来てくれる人を探してるの。でもシェリーもメアも街から離れられないでしょう?」
「そうだな。ついて行きたいのは山々だが、掃除や街の基盤の立て直しで忙しくなりそうだ」
メアもうんうん頷いている。本当にこの人ギルドマスターなのかしら? 実質シェリーがギルドマスターなのでは?
「そこで相談なんだけれど、今この街に『特殊奴隷』っているかしら?」
◇◇◇◇◇◇◇◇
聞きたいことも聞けたし、メアとシェリーの2人の腰を砕いたところで、ギルドの正面フロアまで戻ってきた。そしてカウンターには復活したクルルちゃんがいた。
「あっ、シラユキさん。シェリーさんからカードを預かってますよー」
「あら、ありがとう。うん、ちゃんとランクDね」
新しいギルドカードを受け取る。小汚い茶色から黄色になったわね。この色の順番は何かしら? 白はブランク、茶色は銅、黄色は……硫黄? なわけないわよね。ゴールド? うーん、黄銅かしら。
「おめでとうございます。宣言通り2日で更新しちゃいましたね」
「私としてはのんびり依頼をこなして上げていきたかったんだけどね。世界が放ってくれなかったわ」
大袈裟に手振りで演出をしてみると、クルルちゃんは目を輝かせた。うーんチョロすぎる。大丈夫かなこの世界の女の子。
「それじゃ、またね」
『ポンヤリ』しているクルルちゃんを置いて、その場を立ち去った。さて、ギルド内部での用事は済んだし、すぐにでもあそこに向かおう。そう思っていた矢先、ギルドの入り口近くに見知った顔が見えた。
「あっ、リリちゃーん!」
昨日ぶりだけれど、リリちゃん成分を補給するために抱きしめる。何だかリリちゃんがいないとダメになってきたわね。本気で連れていっちゃダメかしら……?
「あらあら、あなたがシラユキさんですか?」
「ほぇ? ……そ、そうです」
あ、あら? リリちゃんと思ったけど、もしかして違う人!?
で、でも見た目はそっくり……あ、いや、少し身長が高い? あと大人の色気も感じる!?
「今日シラユキさんがここに来られると聞いて、ご挨拶に参りました。昨日、リリがようやく帰ってきてくれた時は本当にうれしくて……しかもオークに捕まっていたとか。何かが起きる前にあの子を助けていただいて、本当にありがとうございます。貴女はあの子の恩人です……!」
「あ、えっと、ごめんなさい。リリちゃんのお姉さんだったかしら?」
「あ、紹介が遅れました。私はリーリエ、リリの母です。娘がお世話になりました」
「リリちゃんママ!? ちっちゃい! カワイイ!!」
え? 見た目中学生なんですけど。リリちゃんって人族よね? ママも人族……よね?
「うふふ、ありがとうございます。小さくても腕には自信があるんですよ」
そう言ってサムズアップするリリちゃんママ。力こぶは全然出てないから、カワイさしかわからない。
とりあえず見させてもらおう。
「『観察』」
**********
名前:リーリエ
職業:狩人
Lv:34
サブ職業数:0
総戦闘力:1460
**********
リリママつよおおおおい!! 威張り散らしていたどこぞの誰かさんより強いじゃない。周りをキョロキョロするが、目的の舎弟は見当たらなかった。
「えっと、失礼ですが、そんなに強いなら、どうして自分でリリちゃんを探しに行かなかったんですか?」
この強さなら、精鋭オークはまだしも通常オーク程度なら遠距離から狩れたのではなかろうか。
「それは……お恥ずかしい話なのですが、先日から体調を崩していまして……ギルドに手伝いをお願いをしたんです」
「そうだったんですね。今は平気ですか? なんでしたら回復魔法をお掛けしますよ」
確かによくみると顔色が優れない感じがする。
「宜しいのですか? ふふ、リリから聞いていた通り、シラユキさんは素敵な方ですね」
「ぐぅ……」
色気のあるリリちゃんやばい。違った、リリママやばい。破壊力高すぎる……!
『ハイリカバリー』
淡い光がリーリエさんを包み込む。効果がなければ光は素通りしてしまうため、何かしらの効果はあったのだろう。回復魔法に関しても、明らかにHP以外にも効果があるみたい。どこからどこまで回復するのか、コレも調べておかないといけないわね。
「はぁぁ、ポーションでは治らなかった疲れが取れていきます。ありがとうございます、シラユキさん」
血行が良くなったのだろうか。頬を赤らめ微笑むリリママ。なんか1つ1つの動作がエロく感じる。これがロリママ……! 旦那さんはロリコンだと思ったけど、この人の色気はヤバイ。
これは子供産んでますわ。
「娘だけではなく私の体まで……なんてお優しい方なのでしょう。あの子が懐くのも当然ですね。あの子も言っていました。シラユキさんは強くて、格好良くて、綺麗で、とっても優しいと。本当でしたね」
「はうっ!」
リリママの笑顔ッ! 心が溶けそうになる……!
「リリちゃん含めて、こんなカワイイ体にもしもがあったら大変です。助けるのは当然ですよ」
カワイイは世界の宝よ!
「ふふ、こんなおばさんをカワイイだなんて、ありがとうございます」
「カワイイに年齢も国境も、種族も関係ありません。リリママはカワイイんです!」
「……ありがとうございます。なんだか照れてしまいますね」
「……ちなみにおいくつですか? あとノームの血とか入ってます?」
「ふふ、気になりますか? 今年で26です。私の知る限りでは先祖にノームはいませんね」
「全然若いじゃないですか!」
あれ? リリちゃんって12歳だよね。ってことは13で出来て14で産んだとかそういう……旦那はロリコン。有罪! ギルティ!!
でも適性審査は成人式みたいなものだって誰かが言ってたような? ……あ、昨日シェリーが言ってたんだっけ。ということは……私のリリちゃんの貞操が危ない!?
「と、ところでリリちゃん知りませんか?」
「リリなら今、適性審査の最中ですよ。今朝、「リリ、魔法使いになってくるね!」といって飛び出していきました。子供は元気ですね。大変な目にあって、やっと帰ってきたばかりなのに」
ふふっと思い出し笑いをするリリママ、カワイイ……。
「でもあの子、魔法なんて使えないのに、急に魔法使いだなんて、どうしたのかしら……」
不思議そうな顔をするリリママ。リリちゃん内緒にしてるのね。だったら私も言わないでおこう。あとで2人で驚かせてあげましょう!
「そういえばリリと会う約束をされていたんですよね。あの子なら、もう少し時間がかかると思います。恐らくお昼の鐘が鳴るころには終わると思うのですが……」
「そうですか……リリちゃんとは一緒に街の外にお出かけする予定なんですけど、良かったらリーリエさんもついてきてくれると嬉しいです」
「いいんですか?」
「私は勿論、リリちゃんも、リーリエさんが一緒の方が良いと思います!」
「ふふっ、わかりました。では、お言葉に甘えて」
「それでは、リリちゃんが戻るまでは買い物をしてきますね」
「はい、いってらっしゃい、シラユキさん」
先に用事を済ませてからリリちゃんとベッタリ行動よ。リリちゃんの安全は私が守る!
それにしても、リリママもいいなぁ……。甘えたくなる。これがバブみというやつかしら。
『リリママ……侮れないカワイさね……!』
「はぁ、本当にシラユキは規格外だな」
「シェリー? 聞いてないわよ、こんなにすごいだなんて」
先ほどまで目が点になっていたメアが息を吹き返した。それでもまだ手が震えている。
「ハハハ、忙しくて伝えていなかった。そうだな……シラユキは魔法1つで北の森にあったオークの集落を消しとばしたぞ」
「集落が、消し……? オークの集団が燃え尽きた、とかではなく?」
「文字通り消しとんだ。……集落丸ごとだ。オークが殲滅された事は私もこの目で見届けたが、再び集まっていないかの確認は必要だろう。あとでメアの名前で緊急依頼を出しておいてくれ。その報告でどういった惨状になっているかがわかる」
「ふえぇ……報告を読むのが怖い……」
メアが再びプルプルと震えだした。同時に球体も震えている。我慢だよ内なる欲望。
「メアの胸も大概じゃない?」
あっ、私の方が我慢できなかった。だってプルプルしてるんだもの。
「お、王都に行けば、私より大きい人が居るんですからね!」
「……なんですって!?」
王都……恐ろしい場所!
「シラユキ、1つだけ確認がしたい。……『ファイアーボール』の魔法書だが、作成にかかった所要時間はどの程度だ?」
「コレ? 1分くらいね」
「「……」」
2人は頭を抱えるも、メアは何かに気づいたのか、急に目を輝かせ始めた。
「あ、あの、シラユキさん……」
「何かしら」
「ウィ、『ウィンドランス』の魔法書を作ること、出来ますか?」
「あら、欲しいの?」
「はいぃ! 王都でも常に品切れで……金貨何百枚でもお支払いしますので!」
ランス高いわね。まぁ利便性高い魔法だし、序盤の火力魔法でもあるし、燃費もいいし……『魔法言語』なしだと80ページから200ページってところかしら? そりゃ量産は面倒だわ。
だって1文字書き込むだけで、魔力持っていかれるもの。やってらんないわね。
「そうねえ……ならまた今度持ってくるわ。値段は、一晩2人一緒に私の抱き枕ね」
「私もか!?」
「わ、わかりました! よろしくお願いします!!」
「おいメア、勝手に決めるな!」
「シェリーも欲しい魔法書あったら言ってくれて良いわよ?」
「むぅ……」
そう唸ってシェリーは、そっと羊皮紙に書いて渡してきた。何々、『アイスウェーブ』に『アイスランス』、『ウォーターランス』ね。
「3つも欲しいなんて、欲張りさんね」
「いや違うぞ!? そういうわけではなくだな、シラユキに、また、その……」
何やら言い淀んでいるが、この3つの中で私のオススメを教えてほしかったのか、それともレクチャーしてほしかったのか。でもダメよ、できる事が多い方が戦いの幅が広がるし、どれか1つしか教えないなんて選択肢は無いわ。
ご褒美は当然要求するけど。
「まあ良いわ。今度まとめて持ってくるから覚悟しておきなさい」
「ああっ、シェリー! ズルイですよ!」
「ならメアも、欲しいものはここに記載なさいな」
「やった! 本当ですか!?」
「その代わり2人とも、抱き枕関係なく好きにするわね」
「はわわわわ……」
「……私の場合、ソレ以前から好きにされていなかったか?」
「あら、一応加減はしていたのよ?」
「そ、そうか。……まぁ、シラユキなら、構わないか」
よし、言質は貰った。このお話が終わり次第早速好きにさせてもらおう。
それにしてもなんでこの人たち、こんなにガードが緩いのかしら? 普通もっと拒否するわよね。
……そのうち調べてみましょうか。
「脱線したが、話を戻そうか。メアも構わないな?」
「え、ええ」
ランスの魔法が手に入る事に、メアはまだ興奮冷めやらぬ様子だ。シェリーもメアが嬉しそうにしているので放っておく事に決めたらしい。
「やれやれ、今ギルドで預かっているゼルバだが、領主に提出することとなった。その引き渡しと同時に詳細な報告をすることとなった。そこに、シラユキも同行して欲しい」
「それはいつ?」
「シラユキの都合のつく日で構わないが、最短で明日になる」
「シェリーとメアも来るのかしら?」
「ああ、もちろん同行する」
「なら明日で良いわ。ソレが終わったらそのままベッドインね?」
それを聞いてシェリーの顔が引きつった。
「……そ、そんなに魔法書の用意が早いのか?」
「ええ。予定は大丈夫かしら」
「……仕方がない、空けておこう。メアも構わないな」
「え? ……そうね、大丈夫よ」
シェリーは半ば諦めたような顔をしている。失礼ね、無理やりはしないわよ。メアは案の定聞いていなかったらしい。
「用件はコレでおしまいなら、私も聞きたい事があるんだけれど良いかしら」
「うん? 何が気になるんだ?」
「もう少ししたら私、王都に向かわないといけないじゃない? 1人で行くのも寂しいし、ついて来てくれる人を探してるの。でもシェリーもメアも街から離れられないでしょう?」
「そうだな。ついて行きたいのは山々だが、掃除や街の基盤の立て直しで忙しくなりそうだ」
メアもうんうん頷いている。本当にこの人ギルドマスターなのかしら? 実質シェリーがギルドマスターなのでは?
「そこで相談なんだけれど、今この街に『特殊奴隷』っているかしら?」
◇◇◇◇◇◇◇◇
聞きたいことも聞けたし、メアとシェリーの2人の腰を砕いたところで、ギルドの正面フロアまで戻ってきた。そしてカウンターには復活したクルルちゃんがいた。
「あっ、シラユキさん。シェリーさんからカードを預かってますよー」
「あら、ありがとう。うん、ちゃんとランクDね」
新しいギルドカードを受け取る。小汚い茶色から黄色になったわね。この色の順番は何かしら? 白はブランク、茶色は銅、黄色は……硫黄? なわけないわよね。ゴールド? うーん、黄銅かしら。
「おめでとうございます。宣言通り2日で更新しちゃいましたね」
「私としてはのんびり依頼をこなして上げていきたかったんだけどね。世界が放ってくれなかったわ」
大袈裟に手振りで演出をしてみると、クルルちゃんは目を輝かせた。うーんチョロすぎる。大丈夫かなこの世界の女の子。
「それじゃ、またね」
『ポンヤリ』しているクルルちゃんを置いて、その場を立ち去った。さて、ギルド内部での用事は済んだし、すぐにでもあそこに向かおう。そう思っていた矢先、ギルドの入り口近くに見知った顔が見えた。
「あっ、リリちゃーん!」
昨日ぶりだけれど、リリちゃん成分を補給するために抱きしめる。何だかリリちゃんがいないとダメになってきたわね。本気で連れていっちゃダメかしら……?
「あらあら、あなたがシラユキさんですか?」
「ほぇ? ……そ、そうです」
あ、あら? リリちゃんと思ったけど、もしかして違う人!?
で、でも見た目はそっくり……あ、いや、少し身長が高い? あと大人の色気も感じる!?
「今日シラユキさんがここに来られると聞いて、ご挨拶に参りました。昨日、リリがようやく帰ってきてくれた時は本当にうれしくて……しかもオークに捕まっていたとか。何かが起きる前にあの子を助けていただいて、本当にありがとうございます。貴女はあの子の恩人です……!」
「あ、えっと、ごめんなさい。リリちゃんのお姉さんだったかしら?」
「あ、紹介が遅れました。私はリーリエ、リリの母です。娘がお世話になりました」
「リリちゃんママ!? ちっちゃい! カワイイ!!」
え? 見た目中学生なんですけど。リリちゃんって人族よね? ママも人族……よね?
「うふふ、ありがとうございます。小さくても腕には自信があるんですよ」
そう言ってサムズアップするリリちゃんママ。力こぶは全然出てないから、カワイさしかわからない。
とりあえず見させてもらおう。
「『観察』」
**********
名前:リーリエ
職業:狩人
Lv:34
サブ職業数:0
総戦闘力:1460
**********
リリママつよおおおおい!! 威張り散らしていたどこぞの誰かさんより強いじゃない。周りをキョロキョロするが、目的の舎弟は見当たらなかった。
「えっと、失礼ですが、そんなに強いなら、どうして自分でリリちゃんを探しに行かなかったんですか?」
この強さなら、精鋭オークはまだしも通常オーク程度なら遠距離から狩れたのではなかろうか。
「それは……お恥ずかしい話なのですが、先日から体調を崩していまして……ギルドに手伝いをお願いをしたんです」
「そうだったんですね。今は平気ですか? なんでしたら回復魔法をお掛けしますよ」
確かによくみると顔色が優れない感じがする。
「宜しいのですか? ふふ、リリから聞いていた通り、シラユキさんは素敵な方ですね」
「ぐぅ……」
色気のあるリリちゃんやばい。違った、リリママやばい。破壊力高すぎる……!
『ハイリカバリー』
淡い光がリーリエさんを包み込む。効果がなければ光は素通りしてしまうため、何かしらの効果はあったのだろう。回復魔法に関しても、明らかにHP以外にも効果があるみたい。どこからどこまで回復するのか、コレも調べておかないといけないわね。
「はぁぁ、ポーションでは治らなかった疲れが取れていきます。ありがとうございます、シラユキさん」
血行が良くなったのだろうか。頬を赤らめ微笑むリリママ。なんか1つ1つの動作がエロく感じる。これがロリママ……! 旦那さんはロリコンだと思ったけど、この人の色気はヤバイ。
これは子供産んでますわ。
「娘だけではなく私の体まで……なんてお優しい方なのでしょう。あの子が懐くのも当然ですね。あの子も言っていました。シラユキさんは強くて、格好良くて、綺麗で、とっても優しいと。本当でしたね」
「はうっ!」
リリママの笑顔ッ! 心が溶けそうになる……!
「リリちゃん含めて、こんなカワイイ体にもしもがあったら大変です。助けるのは当然ですよ」
カワイイは世界の宝よ!
「ふふ、こんなおばさんをカワイイだなんて、ありがとうございます」
「カワイイに年齢も国境も、種族も関係ありません。リリママはカワイイんです!」
「……ありがとうございます。なんだか照れてしまいますね」
「……ちなみにおいくつですか? あとノームの血とか入ってます?」
「ふふ、気になりますか? 今年で26です。私の知る限りでは先祖にノームはいませんね」
「全然若いじゃないですか!」
あれ? リリちゃんって12歳だよね。ってことは13で出来て14で産んだとかそういう……旦那はロリコン。有罪! ギルティ!!
でも適性審査は成人式みたいなものだって誰かが言ってたような? ……あ、昨日シェリーが言ってたんだっけ。ということは……私のリリちゃんの貞操が危ない!?
「と、ところでリリちゃん知りませんか?」
「リリなら今、適性審査の最中ですよ。今朝、「リリ、魔法使いになってくるね!」といって飛び出していきました。子供は元気ですね。大変な目にあって、やっと帰ってきたばかりなのに」
ふふっと思い出し笑いをするリリママ、カワイイ……。
「でもあの子、魔法なんて使えないのに、急に魔法使いだなんて、どうしたのかしら……」
不思議そうな顔をするリリママ。リリちゃん内緒にしてるのね。だったら私も言わないでおこう。あとで2人で驚かせてあげましょう!
「そういえばリリと会う約束をされていたんですよね。あの子なら、もう少し時間がかかると思います。恐らくお昼の鐘が鳴るころには終わると思うのですが……」
「そうですか……リリちゃんとは一緒に街の外にお出かけする予定なんですけど、良かったらリーリエさんもついてきてくれると嬉しいです」
「いいんですか?」
「私は勿論、リリちゃんも、リーリエさんが一緒の方が良いと思います!」
「ふふっ、わかりました。では、お言葉に甘えて」
「それでは、リリちゃんが戻るまでは買い物をしてきますね」
「はい、いってらっしゃい、シラユキさん」
先に用事を済ませてからリリちゃんとベッタリ行動よ。リリちゃんの安全は私が守る!
それにしても、リリママもいいなぁ……。甘えたくなる。これがバブみというやつかしら。
『リリママ……侮れないカワイさね……!』
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02章――冒険の始まり・死に続ける
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