異世界でもうちの娘が最強カワイイ!

皇 雪火

文字の大きさ
上 下
21 / 252
第1章:港町ポルト編

第021話 『その日、身も心もホクホクになった』

しおりを挟む
「はぁー、ホクホク」

 奴の金庫には、さすが貿易を総括する闇ギルド! と言いたくなる量のお宝が詰まっていた。
 大量の金貨に、多様な属性の魔石達。と言ってもほとんどは小型で、中型は数個程度だったけど。まぁこの世界の人たちの戦闘力では、中型でもお宝に違いない。

 そして極め付けはマジックバッグ(中)! しかも見た目は肩掛け鞄タイプ。今までのマジックバッグ(小)は、簡単に入るサイズをまとめると50キロ~400キロと言ったところか。
 初期の1個に、道具屋での購入品、そしてオークの集落で得た遺品の計3個。内容量はそれぞれが200キロ、100キロ、80キロくらいね。
 それが今回の(中)は一気に800キロ! これは儲け物だったわね。あとは細々とした宝石類に、この大陸では珍しい異国の素材、例の御方からの指示書多数。と言ったところね。

 ルンルン気分で地下の牢屋へと向かった。道すがら、シェリーにボコられたと思しき奴らが転がっているが、加減されなかったのか見ていて痛々しい。
 目的のメアリースが目前に迫っているのだ。余計なことを考える暇がないのだろうし、そんなシェリーを邪魔する奴が悪い。

「到着ーっと」

 シェリーもリリちゃんも、囚われの人達とお話をしているみたい。
 牢屋の中には子供達もいるし、メアリースはシェリーの前にいる彼女ね。

 ……胸が凄く大きい!!!

 この大きさは狙われても致し方なしね。うん、納得。
 あら? もしかして開けられないのかしら?

「シェリー、どうしたの?」
「ああ、シラユキか。どうやらカギがないようなんだ。ここにいた連中は持っていないみたいだし、しまったな。気絶させる前に問いただすべきだった。無理に壊してトラップがあっても敵わんしな……」
「それならちょうど良いのがいるわ」

 後ろについてきているゴーレムもどきゼルバを見やる。

「ここの鍵はどこに?」
「ここにあります」

 腰のポーチ……恐らくマジックバッグから鍵を取り出した。ああ、まだ何か持ってるのね。あとでそのポーチも貰っておきましょうか。

「トラップはあるかしら?」
「かぎをつかえばもんだいありません」
「らしいわ」

 鍵を掴み、シェリーに投げ渡す。

「ああ、助かる」

 鍵を使い扉を開け、シェリーは全員の手錠を外していった。子供達はリリちゃんを交えて抱き合っているし、囚われの女性たちも泣いて喜んでいる。
 ……うん、最初に運ばれるだけあって、みんな綺麗でカワイイわね。少しくらいならお触りしても良いかしら?
 『フラッ』とそちらに吸い寄せられそうになったが、呼び止められてしまう。

「シラユキ、今日は本当にありがとう。私たちの命を救ってくれたばかりか、ここの鎮圧も手伝ってくれた。君なしでは彼女たちを救出することはできなかっただろう」
「あら、良いのよ。元々私にとってもメリットがあったし、オークから助ける事が出来たのは偶然よ」
「君ならそう言うと思っていたよ。その上で厚かましいことをお願いするようで申し訳ないのだが、彼女の首輪はなんとか出来るだろうか?」
「うん?」

 シェリーの視線の先、メアリースの首輪を見る。黒い靄が漂っているわね。どれどれ……さっきのと同系統かな?

*********
名前:呪いの沈黙の首輪
効果:装着者の声を封じる。
呪われており、未装着状態で触れると強制装着される。外すには専用の鍵が必要となる。
*********

「ふぅん……あの首輪の鍵はどこ?」
「あのおかたがおもちです」
「そ」

 そんなことだろうと思ったわ。つまり、今ここにはないわけだ。
 でも、文字化けした『隷属の首輪』に比べたら、生易しい物で良かったわね。呪われてるけど。

「『浄化』『魔法解除ディスペル』」

 黒い靄が消え、同時に『カチッ』と音が鳴る。彼女の首から取り外してみせると、メアリースは驚いた顔をしていた。

「浄化に魔法解除まで……貴女は聖女様ですか?」
「聖女じゃなくても浄化は出来るわ」

 『魔法解除ディスペル』は『浄化』と同じく神聖魔法の一つで、要求される魔法スキル値は55。
 聖女と賢者、精霊使い、大賢者専用の魔法だ。4つもあると専用感はあんまりないけど。

 オークの集落を吹き飛ばした後、寝てるシェリー達に回復や『浄化』をかけていたらスキルが上がり使えるようになった。
 効果は文字通り『魔法効果を解除する』というもので、『人工で作られた魔法』及び『魔道具』がその対象となる。
 魔道具の解除には『作成者のDEX、INT、MNDを上回る』という要求がされるが、今の私には苦ではない。

 全てを下回れば失敗し、どれかが上回れば確率で成功するが、失敗すると一時的にステータス減少のペナルティが起きる。全て上回れば失敗はなくなる。
 今のところ2回連続で成功しているが、恐らくあの御方のステータスを現時点で超えているのだろう。この先のことを考えると、とても安心できた。

「メア。シラユキは色々と規格外でな。言っていることは本当なのだろうが、細かく確認すると常識の違いに打ちのめされるぞ。込み入った話はまた今度にしよう。な?」
「え、ええ……わかったわ」
「あ、この首輪面白そうだから貰ってもいいかしら?」
「む。何に使うか知らないが、悪用はするなよ」
「しないわよ。それに黙らせるなら、ココで塞ぐわ」
「……ッ!」

 自分の唇をツンツンする。先ほどの一幕を思い出したのか、シェリーが顔を背けた。カワイイ反応するわね。
 メアリースは不思議そうな顔をしている。

「シェリー、どうしたの?」
「……なんでもない」
「フフッ」

 それにしても彼女がメアリースね。おっとりとした顔付きなのに、大層な武器たわわをお持ちで……!
 これは男を惑わす凶器ね。そりゃあの御方とやらに目を付けられるわよね。
 私だって今、すごく触りたいもの!

 そんな揺れる凶器を凝視していると、ふと隣から視線を感じた。ニヤニヤしたシェリーだった。
 シェリーは視線が合うと、彼女はメアリースの背後に回り込む。

「さて、メアリース。シラユキにはとても返しきれない借りが出来てしまったな?」
「え、そ、そうね。感謝してもしきれないくらいよ。私にできることなら何だってサポートしてあげたいわ」
「ん? 今何でもするって言ったよね?」

 両手をワキワキとさせる。
 飢えた獣の前で『何でもする』は禁句なのよ?

「あ、はい。私にできることであればですが……」
「だ、そうだぞ? シラユキ」
「それじゃあ遠慮なく!」
「え、ええっ? シラユキさん? ま、待ってくださ……ひゃあああ!!」

 しばらく凶器に埋もれた。


◇◇◇◇


「うーん、メアのコレを枕にしたい。けど、シェリーのお尻も捨てがたい。でも、リリちゃんを抱き枕にしたい……」

 堪能し終えたが、まだ両手は掴んだままだ。うん、名残惜しすぎて手放せない。
 メアリース……ううん、メアって呼んでいいんだって。
 メアは顔を真っ赤にしつつも、こちらに身を委ねている。不思議なことに初対面なのに嫌がられないせいか、遠慮なく揉んでしまった。
 仕方ないよね。魔性の凶器なんだもの。なんだか周囲の女性達からの視線が熱い。
 冷たいよりはいいけれど、なんで熱いのかしら?

「……さっきから欲望駄々洩れだぞ、シラユキ。戦いが続いたせいで、興奮が冷めないのか?」
「というよりは、一度操られて吹っ切れたというか、なんというか……」
「ふむ……後遺症では、ないのだな?」
「その心配はないわ。試してみる?」
「っ!? きょ、今日はもういい!」
「フフッ」

 名残惜しいがそろそろみんなを帰らせよう。私もなんだかんだで疲れちゃったし。
 メアを立たせると、シェリーが何かに気付いたようだ。

「む? 上が騒がしいな……。この騒ぎだ。誰かが通報したか」
「ああ、領主軍がやっときたのね。呼んでも全然来ないし、遅すぎて忘れていたわ」
「シラユキが呼んだのか? いつの間に……」

 私は天井に指をさして説明する。

「ほら、氷の柱を作り出したでしょ? あれ、屋根を突き抜けて空高くまで伸ばしたのよ。街全体から見えるようにね。……夕日に照らされてさぞかし目立ったことでしょうね」
「……なるほど、あの柱にはそんな意味も込められていたのか。そう考えると、確かに遅かったな」
「まあこいつらが、街に対して結構根深く刺さっていたから。手続きに時間がかかったのかもしれないわね」
「かも、しれんな。やれやれ、コレは後始末も大変そうだ。……よし! 全員一列に並んで私についてこい! 子供たちは真ん中へ。シラユキは殿を頼む」
「任せて」

 その後屋敷を出たところで、屋敷を包囲し警戒していた領主軍と鉢合わせするも、シェリーとメアの2人は顔が広く、トラブルもなく話が進んだ。
 結局ゼルバは、一旦メアが預かることとなり、ギルドの牢屋に入れておくとのこと。

 領主軍から事情聴取を受けることになったが、シェリーとメアの二人が率先して受けるとのことで、私は今日の所は帰って休んでいいそうだ。クエスト完了かしら?
 囚われていた女性達や子供たち、リリちゃんも一度ギルドに寄ってから帰宅するとのことで、リリちゃんと離れるのはお互いに、非常に惜しんだ。なので、明日の適性審査の後に会う約束をしてお別れした。

「魔法使いになるから、応援しててね!」

 リリちゃんカワイイ。応援しているわ、心からね。

 長引きそうなシェリーには泊っている宿は伝えておいた。用事があれば明日にでも連絡があるだろう。
 というか一番暴れまわったの私だし、呼ばれないなんてことは絶対ないわね。最悪朝一で呼び出される可能性だってある。
 ……今日は早く帰って寝よう。

 そのまま買い物もせず、ロイヤルに直帰した私は、夕食やお風呂も早めに切り上げ、ベッドに飛び込んだ。

「今日は本当に、色々あったなぁ……。イベントてんこ盛りだったなぁ……。こんなに濃ゆい一日は、もうきっとないわぁー。はあぁ、疲れたぁ……むにゃ」

 心地よい微睡に落ちていく。
 こうして私の、長い長い1日は、ようやく終わりを迎えた。

『そのセリフはフラグっていうのよ、マスター』
しおりを挟む
1/19の20時の投稿で他サイトで投稿中のものに追いつきます。以後隔日で20:01頃投稿予定です。
感想 1

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...