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第1章:港町ポルト編

第004話 『その日、蛇を見つけた』

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 森へと入った私は、色々な物を楽しく採取していった。
 魔法のスキル上げはスキルキャップである10に到達したから、今はスキル上げはしていない。
 後衛職のスキルキャップは、レベル1毎に最大でも5ずつなんだけれど、どうやらグランドマスターはスキルキャップも規格外みたいね。

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名前:ルミラムネの実
説明:食べるとラムネの味がする実。甘くて人気
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「ルミラムネの実は、ジャムも作れるけど、そのまま食べるのが好きなのよね」

 サイズはサクランボ程度の大きさで、1本の枝に何個も実が集まっている。
 旅の糖分としても優秀だけれど、甘いものは純粋に好きだ。恐らくシラユキがそうだったのだろう。
 背伸びしても届かない位置にあるため、風魔法で枝を落として、マジックバッグに収納した。

**********
名前:リト草
説明:調合することでHPポーションになる。根っこを落とすと効果が低減する。
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名前:ゲドク草
説明:苦いが解毒作用がある。葉を煎じる事で解毒薬になる。
**********

「何束で1セットだったかしら? まぁ、余っても調合のスキル上げに使うし、あるだけ取っておきましょ」

 目に入るものは根こそぎ持っていく事にした。
 街の外壁は見覚えがあると思っていたが、森に入ってしばらくして確信した。ここはゲーム最初に訪れる『港町ポルト』と、近くにある『西の森』だった。
 レベル1からのレベル上げに、何度もお世話になった場所であるため、思い入れも深い。

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名前:ワイルドシープの尖角
説明:ワイルドシープに生える一本角。根本を削れば薬になるが、他は観賞用の価値しかない。
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名前:ワイルドシープの毛皮
説明:毛皮、羊毛ともに加工することで様々な製品になる。
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名前:ワイルドシープの肉
説明:ワイルドシープの肉。つまりラム肉。独特の臭みはあるが美味。
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 そんな森の中でも、初期ランク低レベルでは、エンカウント=死。であるワイルドシープが現れたけれど、こちらはノーマルLv50相当。
 剣の一振りで首を落とし、血抜きをした上でノーマル職業『狩人』のレベル1で習得するノーマルスキル『解体』を使い、風魔法と剣で捌いた。そしてお肉と角、毛皮を手に入れた。
 捌いてる途中、血の匂いに釣られてゴブリンが何匹か来たけど、片耳を残して全部灰になっていただいた。

 森に入る前にも片耳を取ったけれど、これは冒険者ギルドに提出するためだ。冒険者ギルドは、主に『依頼』と『常駐』の2種類のクエストがある。
 『依頼』は国や個人からのお願いのもの、『常駐』は周囲の危険とされる魔物を討伐するというもの。『依頼』は重要度が高く料金も難易度も高いが、『常駐』は安い代わりに必要とされる魔物の部位さえ提出すれば即金が得られる。
 ゴブリンは『右耳』で、ワイルドシープは『角』の先だ。角の根本は使えるモノなので証拠としては扱わない。一緒に出せば追加のお金は貰えるけど。

「……これだけ倒してもレベルが上がらない。やっぱり最高峰職業なだけあって必要経験値がバカみたいにあるのね」

 森に入ってから倒した魔物はゴブリン11匹、ワイルドシープ1匹。私の記憶が正しければゴブリンは7、8匹でワイルドシープ1匹分になったはず。
 しかも、レジェンドでもワイルドシープ1体でレベル2になる必要経験値は十分溜まっていたはず。
 グランドマスターはレジェンドより明確に強いことがわかってる。必要経験値もそれ相応だろう。
 どれほど必要かはまだわからないが、先は長いかもしれない。

 そして結構な数のゴブリンとエンカウントしているが、ワイルドシープの戦闘より前が8匹。後が3匹。
 私のいい匂いに寄ってきたに違いないわ。まるで誘蛾灯ね。
 ……『解体』後からは全然寄ってこないわね?

「んん? もしかして、ちょっと匂う? そんな私もアリといえばアリだけど、血生臭いよりは汗臭いほうがまだ良いわ。それに、この後街に行くんだから、多少は綺麗にしなきゃ」

 なんだかゴブリンや血の匂いがまとわりついたような気がしたので、体を洗うことにした。
 炎と水の魔法でお湯を作り、息を止めて全身に纏わせる。そして洗濯機の要領で水と風の魔法で全身をシェイクした。最後に水魔法の力で液体をその辺に放り投げる。

「ぷはっ! 息留めながら魔法って結構辛い……それに」

 スキルレベルがまだ10だからか、お湯はぬるま湯だし、シェイクはユルユルだし、体はビショビショである。
 水も滴るカワイイ私。一見の価値あり! ……高級宿は急務である。あと石鹸も欲しくなった。

 とりあえず、操作出来る分だけ追加で水分を外に飛ばす。特に下着。締めに炎と風の魔法をドライヤー代わりにして乾かそうとしたが、ヌルい風になった。別に要らなかったかも。

「はぁ、はやくレベルを上げたい。そして魔法を使えるレベルにしたい……あら?」

 気が滅入ってくるが、この森で一番お金になりそうな目当ての物を見つけた。

**********
名前:エメラルドスネークの抜け殻
説明:魔獣エメラルドスネークの抜け殻。非常に珍しく、金銭アップのお守りに使われる。財布に使うと効果が高まるといわれている。
**********

「やった!」

 何度も通った森だけに、この抜け殻が落ちているポイントは大体把握している。
 見つけるのは容易かったが、やっぱりレア物を見つけられると嬉しい。
 ポイントは、1本だけポツンと孤立した大樹があり、その周囲に茂みがあれば、その中に落ちていることが多い。
 エメラルドスネークは全長3メートルから5メートルの大蛇だが、気性は大人しく木の実や魔力しか食べない。大樹に住んでいて月に一度しか地面には降りてこないが、その度脱皮をする。
 狩らなければ月一で抜け殻をくれるいい子なのだ。私はこの抜け殻は趣味じゃないので使わないけれど!
 でもエメラルドスネークは目がクリクリしていてとてもカワイイと思うの。ほら、こんな感じに……。

「キュル」
「あら、カワイイ」

 いつの間にか目の前にいた。そしてやっぱり大きくてカワイかった。
 手を伸ばすと、手のひらに頭をのせて「キュルキュル」と鳴く。……やっぱりカワイイ!
 それにしてもこんなに人懐っこかったかしら……?

「キュルル」
「キュル」
「クルル」

 気付けば何匹ものエメラルドスネークに囲まれていた。手の上でゴロゴロしてきたり、顔や体に擦りついてくる。カワイイなぁもう!
 何度も不意を突かれているけれど、彼らには敵意がないから戦闘職のアビリティでは気付くことが出来ない。そもそもレベルが低いから索敵系がまだまだ全然なのだけれど。

「あなたたち、魔力を食べるんでしょう? だったらこれをあげるわ」

 魔力で作った、バレーボールサイズの水の玉……『魔力水』を彼らの顔に近づける。すると物凄い勢いで飲み始めた。
 彼らは魔力水を勢い良く取り込み、飲み干すと同時に体を光らせた。表面の皮が『ペリペリ』と剥がれ落ちる。そう、全員が瞬間的に脱皮を行ってみせたのだ。
 彼らの脱皮の瞬間は、ゲームでも見たことがなかったから、興奮する!
 私も輝きながら脱いだらカワイイかしら……? 装備次第ね。いつか試してみましょう。
 そういえば、脱皮は魔力を過剰に摂取すると起きるのだろうか? あんまりやりすぎると体を壊しちゃいそうね。脱皮って体力使いそうだし……。

「キュルキュル!」
「キュルル!」
「クルル!」

 まぁ喜んでるみたいだし、いっか。
 ……え? コレくれるの?

「ありがとう、貰っておくわ」

 彼らは新鮮なその抜け殻を押し付けてきたので、遠慮なくもらうことにする。なんだか皮も輝いてない?
 すべてをマジックバッグに収納したところで、容量の限界が近づいていた。そろそろ引き上げよう。

「じゃあ、またね」

 惜しむ彼らに別れを告げ、早々に来た道を戻っていく。あまり長居すると採取に夢中になって日が暮れそうだからね。
 パンパンになったマジックバッグ。どれだけの金額になるか、今から楽しみ。

『……ああ、お金に目がくらむ私もカワイイ』
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