異世界でもうちの娘が最強カワイイ!

皇 雪火

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第1章:港町ポルト編

第003話 『その日、魔法を覚えた』

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 すぐにゴブリンは燃え尽き、森に火が広がらない事を確認してから、改めて身体を見回す。せっかく回避したのに、少しでも血がついていたりしたら負けた気分になりそうだからである。
 無事を確認したので、さっそく解放されたステータスのチェックだ。

**********
職業:グランドマスター
レベル:1

説明:全ての職業、及びスキルを限界まで成長させた者にしか取得出来ない職業。
全ての職業に対し適性を持つが、習得と同時に全てのスキルが失われる。

課題:獲得するには全ての職業の課題を一度も間違えず正確に答えること。
一度でも間違えると資格は失われる。
**********

「シビアすぎる! 課題えげつない! んっ、あっ、もしかして……」

 スキル一覧を広げると、説明文通り全てのスキルレベルが0になっていた。

「ぐぬぬ、せっかく育てたのに。……でも、せっかくシラユキとして生まれ変わったんだし、スキル上げがまた0から楽しめると考えたら、割とアリなのかも?」

 戦闘スキル、魔法スキル、生産スキル、全てがLv0になっていた。が、ポジティブに考えることにした。実際スキル上げをするのも、スキルが上がっていくところも、効率的なスキル上げを見つけ出すのも。何だかんだ言って好きなことなのだから。
 というか今のぐぬぬ顔、カワイかったのでは? 姿見がほしい! 切実に!

 気を取り直して次に、ステータスを調べることにした。いくら弱いゴブリン相手だからと言って、こちらはLv1にも達していない貧弱ステータスのはずだったのだ。
 それをほぼノーダメージであっさり倒せたし、無意識とはいえゴブリンの亡骸を灰に出来た火力も本来のスキル0では考えられない。

**********
総戦闘力:2099(+200)

STR:267
DEX:267
VIT:267
AGI:267
INT:267
MND:378(+100)
CHR:386(+100)

称号:求道者
**********

「は? ……うわ、えっぐい」

 総戦闘力とは、基本ステータスである『STR、DEX、VIT、AGI、INT、MND、CHR』の合計値と、装備などにより加算された補正値を足したモノであり、それだけで強さが決まるわけではないが、ある程度の基準がわかるような目安となっている。
 ステータスのバランスはキャラクター作成時に振り分けた数値が元となっており、職業毎に比重が異なるが、バランス型の職業の場合、元の振り分けが尊重される。
 シラユキの場合はSTR~INTまでを平均値のー4。MNDを平均値+5+余り値。CHRを平均値+15としている。
 カワイさが何より重要だけど、それを極めるには精神力が大事だもの!
 最初は偏ったステータスに苦労したが、今では良い思い出だ。

 そして総戦闘力はレベルと共に成長するが、それを表す計算式がある。
 『(職業基礎値+職業基礎値×職業成長倍率×現在レベル)×他職業補正値%+別枠補正値』となっている。
 『職業基礎値』は職業ランクと職種に割り当てられた基礎値で変動はしない。
 『成長倍率』も、職業ランクに割り当てられた数値で変動はしないが、現在のレベルが増えるごとにどんどん増える。
 『他職業補正値』はちょっと特殊で、『今の職業の現在レベル ≦ 他の職業の現在レベル』 の条件を満たす場合、その職業のランクごとに決められた補正値が加算される。最下級の剣士が条件を満たすなら0.5など。
 その補正値の合計値に100を足し、今の職業の計算式に%分、補正する。
 『別枠補正値』は装備やバフ……サポート魔法とかのプラス補正ね。

 『職業基礎値』は、ノーマルの前衛である『剣士』や『格闘家』は100。後衛職である『魔導士』や『調合師』は80。
 一番上のレジェンドの前衛である『勇者』は250で、後衛である『大賢者』は200。
 『成長倍率』は、ノーマルは『0.4』。ハイランクは『0.45』。エクストラは『0.55』。ハイエンドは『0.6』。レジェンドは『0.9』

 ちなみに『他職業補正値』は、ノーマルは『0.5%』。ハイランクは『1%』。エクストラは『2%』。ハイエンドは『4%』。レジェンドは『8%』

 例えば現在の職業が剣士Lv5で、他職業が0の場合。
 総戦闘力は単純に100+100×0.4×5=300となる。

 今度は勇者で、レベルが30の場合。
 ノーマル8種ともにLv50。ハイランク4種がLv40。エクストラとハイエンドが3種Lv30。他いくつかLv20前後の場合。
 Lv30未満の職業は補正値の対象外であるため、勇者の総戦闘力は
 (250+250×0.9×30)×((100+4+4+6+12)÷100)となり、8820となる。

 そして私の場合、現在の職業グランドマスター以外の職業は、全てLv100。
 ノーマルが8個、ハイランクが13個、エクストラが15個、ハイエンドが8個、レジェンドが4個のため、
 グランドマスターの職業がLv101以上にならない限り補正値は常に111%もある。つまり最後に2.11倍することになる。

 今わかっているだけの計算式でも、

 (Ⅹ+Ⅹ×Y×1)×2.11+200=2099。

 であるため、職業基礎値と職業成長倍率が今までの比ではない事が容易に想像できた。
 現状、いくつかレベルを上げてからじゃないとXとYの実数は予測がつけられないため、一旦は数字だけ覚えておいて、後日改めて考えることにした。

「とりあえず、レベル1の時点で剣士の純レベル50近い総戦闘力を有してるなら、そりゃレベル0だとしても大したダメージが入ることはないわけね。……この辺りで死ぬ危険性はまずなさそうね」

 それどころか、ケガらしきケガを負うのも一苦労しそう。いや、自分からケガは負う気はないが。

「うん? そういえばプラス200されてるけど、そんな装備つけてないわよね? というかそんな破格装備元の世界でも知らないわ。……思い当たる節と言えば、この称号ね」

 ステータスの求道者をタップする

**********
称号:求道者
真理を求めて日々精進を励むものに贈られる証。
該当のステータスに現在Lv×100の補正値。
**********

「うっわ、これもえっぐい。でも求道者……言い得て妙ね。私はカワイイの求道者、ってことでしょ? 誰が贈ったのか知らないけど、よくわかってるじゃない。なら計算式はこうね」

 (Ⅹ+Ⅹ×Y×1)×2.11+(200×1)=2099。

 現在の化け物じみたステータス。それに対してひとまずの理解が出来た。
 続いて私は、先ほど無意識に使っていた魔法を、今度はちゃんと使ってみる事にした。先ほど0.3も上がったことを考えれば、簡単に目的は達成できるだろう。
 掌に現れた炎が、見る見るうちに球体となり、回転する。それだけでどんどんスキルレベルが上昇していった。

『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.1アップ!』
『炎魔法のスキルが0.2アップ! 炎魔法のスキルが1になりました』
『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.3アップ!』
『炎魔法のスキルが0.3アップ! 炎魔法のスキルが2になりました』
『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.1アップ!』
『炎魔法のスキルが0.2アップ!』
『炎魔法のスキルが0.1アップ!』
『炎魔法のスキルが0.1アップ!』
『炎魔法のスキルが0.1アップ! 炎魔法のスキルが3になりました。ファイアーボールを取得しました』

「プレイ当初の頃に見つけたスキル上げの方法だったけど、現実になっても使えるみたいで助かるわ。この調子で他のスキルも3まで上げておきましょうか」

 『WoE』の魔法もまた特殊だと思う。
 『それはどういう形状をしたモノ』で『それがどういう存在』で『それがどういう結果をもたらすモノ』か。
 つまりプレイヤー自身が明確な魔法のイメージをする事で、炎、水、土、風、雷、氷の6属性と、神聖、暗黒の特殊2属性の力を引き出すことが出来る。
 イメージが正しければ成功し、誤っていれば失敗となり、不発やちょっと違うナニカが出たりする。

 また、スキルLv0のうちから、割と自由に自分の意志で操作することが出来る。そして必要なスキル値が定められた『魔法書』を使用することで、改めて魔法を取得できる。
 『魔法書』によるスキルの取得は、言うなればその魔法の使い方を『頭に直接叩き込まれる』という物で、その瞬間から『本物』を扱えるようになる。
 取得前にその魔法を使ってみようとしても『見様見真似の別物』であり、『本物』に劣る『それっぽい何か』という扱いとなる。

 必要なのは『職業レベル』ではなく『スキルレベル』というのがミソ。レベルやステータスだけ上げてもそれ相応の技術がなければ扱うことが出来ない。ただ、レベルによってスキルキャップも定められているため、レベルも必要ではあるのだが。

 そして職業が前衛であっても扱えるというのも面白い点だとおもう。ただ、スキル限界値が後衛職より低いし、職業専用魔法は使えないし、後衛職用のブーストアビリティもないし、INTも低いから威力はお察しだしで、扱いきれているかと言われると疑問だけれど。

『水魔法のスキルが0.1アップ! 水魔法のスキルが3になりました。ウォーターボールを取得しました』
『土魔法のスキルが0.1アップ! 土魔法のスキルが3になりました。アースボールを取得しました』
『風魔法のスキルが0.1アップ! 風魔法のスキルが3になりました。ウィンドボールを取得しました』
『雷魔法のスキルが0.1アップ! 雷魔法のスキルが3になりました。サンダーボールを取得しました』
『氷魔法のスキルが0.1アップ! 氷魔法のスキルが3になりました。アイスボールを取得しました』

「よし、完了ね。次に覚える魔法の疑似発動とその維持。楽々スキル上げはやっぱり有効よね。一気に上がるのも楽しいし。……それとたぶん、『頭に叩き込まれた』経験が既にあるから、疑似でも完成度高かったみたいだし。成長速度も想像以上に速かったわね」

 取得魔法一覧を開く。先ほど取得したボール系6種は明るく光っており、他、無数の文字列が暗く表示され、いくつもページが続いていた。

「前世で取得した魔法は、スキル値がリセットされただけで忘れていないのは嬉しい誤算ね」

 今度は6種の魔法を頭の上で回転させ、別の効率良いスキル上げを試しつつ、街の外壁を見る。

「さて、次は街かしら? ……いえ、さすがに大きな鏡が置いてある宿は高級宿だったはず。銀貨3枚じゃ心もとないし、きっと食費だってかかるわ。それに服も欲しい! 自前の鏡も買いたい!」

 視線を森に戻し、先ほどの黒焦げゴブリンを見る。

「どうせ冒険者ギルドには加入するんだし、最初のクエスト物は軒並み集めておくべきよね!」

 私はルンルン気分で森へと入っていった。その時点で魔法スキルは、6種ともレベル5に到達していた。

『……ああ、楽しそうな私もカワイイ』
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