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新社会人.兎山×社会人.虎亜
兎山×虎亜
しおりを挟む大手証券会社に入社して喜んでいたのもつかの間、今の時代でもこんなに夜飲み歩かされるなんて…ブラックもいいとこだ。
今日もキャバクラ。昨日もキャバクラ。
一昨日もそのまた一昨々日も…
今日も家に帰ったら母親に心配されるんだろうな。
母1人子1人で、心配ばかりかけてきて…
将来…きっと結婚は出来ない性癖だからこれくらいの心配はかけたくないのに。
「こいつ兎山。新入社員。
こんな顔して童貞だから。」
周りに座るお姉様方へ、先輩によって俺の紹介が始まる。
彼女がいるのか、とか。どんな子が好みなのか、とか。以前店で繰り返される会話に嫌気がさして"そういうの全く興味無いんです"と、うっかり口にしてしまった。
そして始まった童貞イジリ。
まぁ、男には使ってるから、それでも童貞なのかよく分からないけど。
「童貞くん、
このお姉さんの見えそうなおっぱいが
目の前にあってもムラムラしないの?」
「…すみません…ってムラムラした方が
すみませんだと思いますけど…」
「えーー!イケメンくんにムラムラされないの
ショックー!!
どうしてー?何で童貞ーー?
お姉さんに教えてくれたら逆に色々教えてあげるー!」
高くて耳に障る大きな声が店内に響いて、他の客からの視線も感じたところでトイレへ逃げた。
溜まるストレス。
こんなに会社に拘束されていたら、男とやる時間も無くて欲求不満もピーク。
少し広めの個室トイレでゆっくり手を洗った。
早く席に戻ったって早く帰れるわけじゃない。"延長"されずに早くお会計の時間が来るのをただ席で待たなければ。
トイレから出た先におしぼりを持って待つ女の子が目に入った。
「ハァーーー……」
出来るだけ小さく吐いた溜め息は、トイレに入ろうとすれ違ったサラリーマンに聞かれ、俺の顔を覗き込むように確認された。
「あ、イケメンチェリー君だ!」
「……はぁ?」
「チェリーって言っても君モテるでしょ?
しかも男にもー。可愛い顔してるからー。
まぁ今店にいる君の周りの人達に
そういう人種はいなそうだけど…」
ペラペラと話し出す、同じ歳くらいの男。背丈も同じくらい。
…そしてイケメンと言われる事に慣れてる僕でも心を奪われる程の整った造形の顔。
トイレのドアにかてけている手も細長い指、綺麗な爪、もう片方の手は話す度に大げさに動くけど、その動きも今まで会った人の中で格段に綺麗な動きで見惚れる程だった。
「…そういう人種…」
「ゲイ。当たり?」
見惚れる程の指が俺を指す。
俺も初めて心奪われた顔を指した。
「ゲイ??」
「っ…ふぁはっっ…!当たり!」
大きく開いた口と、下がった目尻。
整った造形を自分で思い切り壊すから、無邪気で可愛い性格が笑顔に表れてる気がした。
衝動的に彼にぶつかるように身体を重ねる。
周りにいる客や女の子に見つからないように彼を押しながら、彼と一緒にトイレに入った。
「いやいやいや……
ここそういう場所じゃないですから…」
身体全体を使ってトイレの壁に押し付ける。
顔や手から想像出来る身体は以外と筋肉が付いてそうだけど…
俺の方が筋肉あるな。
押し返してくる力に負けなかった。
首筋に顔を埋めて身体を密着させ、腰やお尻に手を伸ばし、トイレの鍵を閉める。
微かなアルコールの香りと、男らしい香水の香りが気持ちを落ち着かせるし、彼が発する言葉は低めでより落ち着く。
「……お尻揉むな…!馬鹿力かよ……
えー?……もーーなにこれ…
君に入れるならここでやってもいいよ?」
「……俺…に?」
「うん。俺いつもタチ。タチ以外嫌。」
同じ趣向の人と会えたと思ったのに…
こんなに何もかも惹かれる男…
今後人生で二度と逢えるかも分からないのに…
「……俺もタチ専…
1回だけチャンスを!
チェリーな俺にお恵みを!」
身体を離さずに訴える。
なんなら余計に強く身体を押し付けた。
耳を引っ張られ、顔が首から離されると近距離に整い過ぎた顔。
凄い目ヂカラで目が合うだけでも心臓が跳ねるのに、またその目元が少し下がると同時に口が大きく開き笑い出す。
……ほんと無邪気で可愛い…のに…
「…ははっ…恵まない!嫌!
けどキミ面白いね。
うーーん…2人でちょっと……
気持ち良くなれればいっか。
あ、先に出しちゃったら問答無用で入れるから。」
彼の手の動きはこんな時も綺麗で…
片方は俺の頭を包み、顔を寄せてきて重なる唇。
もう片方は俺を洋服越しに撫でるように動き出した。そこはあっという間に硬くなる。
深く交わった口付けは、絡んだ舌が熱くネットリと器用に動く。その舌を捉えて味わうのに夢中になった。
…このままのペースじゃ俺が先に…負けるかも…
感じ過ぎないように彼を感じる。
ジャケットを捲り、スーツのパンツに収まっていたシャツを引っ張り、素肌の脇腹、背中、胸を滑るように触れた。
自分の興奮が表れない様、壊れ物に触れる様に。
滑らかだけど吸い付いて離すことが出来ない素肌。こんな肌質、今までの触れてきた男の子で感じた事無い。
じゃあお尻は?太ももは?……あと…
カチャカチャと彼のベルトを外そうとすると、同時に俺のベルトも外される。
「…勝負だから。OK?チェリー君…」
「OK。っ……」
自分のベルトと下着を同時に少し下げ、彼のも一緒に下げる。
張り詰めている2人。
キスも深くなったりぶつかるように強くなる。
2つを一緒に包む彼の手の上から自分の手を重ねた。
空いてる手をまた彼の素肌に這わせる。
刺激で甘く吐き出す息を殺すように唇を重ねる。
下も上も、角度を変え、深く、浅く…
彼の空いてる手が、また俺の頭を包みながら髪に触れていた。
「……髪、好きなの?」
「…え?…あぁ…君、ペットみたいだから…」
なんか答えになっているような、なっていないような…
「兎山、だよ。名前…」
「ウサー!やっぱりペットー!
ヨシヨシ!わしゃしゃしゃー」
…少し唇が離れただけで、俺の頭をワシャワシャ乱しながらふざける男。無邪気だし、余裕そう。こっちは余裕なんて無くて早く勝負に勝ちたいのに……
少ししゃがんで彼のを口に含んだ。
舌で舐め回し、音を立てて吸う。
…多分これを繰り返すだけでも勝てそう…
「……俺、虎亜…………
オシッコ…したい……その為に来たんだった…」
トア……低めの声。
なのに可愛い話し方で気持ち良さげに話すからイマイチ内容が入って来ないけど…
……トイレ…その為に来たんだよな…
このまま続けたらどうなるだろ。
しかも後ろから刺激したら……
俺の唾液で濡れてた指を後ろに回し、擽るようして中へ進ませる。
トアが俺の手を掴んで離そうとするけど、そんな簡単に俺の手は止まらない。口も含んだまま離さずに舌と唇で吸い続けたら、身体から力が抜けるのがわかった。
「オシッコしたいってば!」
訴えてくるけど小声。
「……トアね。初めましてよろしく……」
「……っ……くっそ………ぁ……」
感じるのを我慢して、悪態をつくのも可愛い。
トアのを…掻き回す。
……中、どの辺がヤバイって知ってるから。
俺、努力と研究、学習するタイプだから。
尿意に響く箇所を指で押す。
「……アッ!!…ヤバイって!」
頭を力一杯に両手で剥がされ、俺の口と唾液の糸で繋がったまま…
トアは必死に便器に近づいた。
……指は抜かずそのまま前立腺を刺激する。
「………っ……そこっ……こ、らっ…」
そして上下しながら便器に向けるのを手伝うと、ドクドクと勢い良く飛ぶ白い液。
俺の頭を触る手が微かに震えている。
続けざまに尿が出る様も見入ってしまった。
「……ッ……んッ……」
尿を出してる時も感じながらでエロい。
あ、俺の手が中を刺激してるからか……
けど、タチしか嫌とか言ってお尻の感度も良さそうだけど……
「……これは、…勝負じゃなくない?
……オシッコって言ってるのにズル……」
出し切った後もプルプルと震えているトアを、背中から抱きしめた。
少しの罪悪感と昂揚感。
指を抜いただけでもビクンとなる彼からは文句は発せられなかった。
ゆっくり立ったまま後ろからすると、溜息と掠れた声が甘く漏れて…
腰の動きに力を入れてしまい、落ちそうになるズボン、シワになりそうなシャツ、気にしないといけない事も意識出来なくて…カチャカチャと鳴る2人のベルトも気にならずに、激しくなるのを止めれなかった。
「………ぁあ………あッ……ク、ッソ……」
………文句、発せられたか。
……そんな掠れた声が、余計に理性を刺激して腰も加速した……
「……どうする?
こんなに長くトイレに…2人で入ってて…」
「具合悪くなったから俺が看病しながら
連れて帰ったって事にしよ。
…俺の名刺、トアの上司に…
女の子に渡して貰ったり伝えて貰お。」
「……うん。俺、調子悪い。そおしお。」
彼は少し疲れていて…イヤ、まだ少し蕩けていてこんな状態で手放せない。
「俺にもウサの名刺頂戴。」
長い指の先が俺を向き、両手が綺麗に揃えられている上に1枚置く。
「そっちの名刺は?」
「ん。」
受け取った名刺には大手広告代理店の名前と、携帯電話の番号が書いてあった。
……これで連絡は取り合える。
トイレを出て、さっきは姿を見て溜息が出てしまったけれど、俺達を待っていた女の子に俺達の荷物を取って来て貰った。
そのまま2人で姿を消した。
「1回目はノーカン。
っていうか、毎回勝負でもいいよ。
次もその次も負ける気、無いから。」
ホテルに入ると元気を取り戻したトア。
再度勝負。
また最初から彼の身体を攻めて、味わって……
明け方、少し寝て目が覚めた時、俺の太ももに腕を巻き付けて寝てる姿が可愛いくて暫く笑いながら見つめていた事を、家に帰ってからも思い出して笑ってしまう。
自分の名刺入れに彼の名刺も大事に入れている。
もしかしたらまたキャバクラでも会うかもな。
夜遅くてもトアも飲み歩いてる可能性は高くて、連絡とれば会えるかもな…
…今日と明日の休み、予定を聞けば少しでも会えたかな…
次会える日が楽しみで想像を巡らす。
「休みでこんなに早く起きてくるの珍しいわね?」
「あんまり寝てないから…
これから寝るんだけど
今日何かあるの?デート?」
「え?デート…って…当たってるけど…」
「あなたも夜ご飯一緒に食べれる?
先方さんも息子さん連れて来るって…」
気取らない家の近くの焼き鳥屋。
先に待っていた俺の所へ歩み寄って来た母親の後ろには、初めて会った母親の彼氏。
そしてその息子……は初めてじゃなかった。
「…馬鹿力イケメンチェリ……」
俺を指差して発せられた言葉はそう聞こえたような。
母親はプロポーズをされ、俺は家族が2人増えるらしい。
この機に1人暮らしも考えたけど、殆ど家に帰れないような新社会人の俺は、何処で野垂れ死ぬかも分からないので諦めた。
トアも帰りが遅い生活だし、家の事はうちの母親が任せろと言うのでお願いするらしい。
「……こんな偶然あるんだ……」
まだ信じられない俺は、店の外に彼を誘って2人きりになった。
「……兄弟かよ……まさか弟と……」
「いやいやいや…俺がお兄ちゃんだから。
さっきの話、聞いてた?」
少し笑いながら話す彼の顔はやっぱり目ヂカラが強くて、整った造形にまた心を奪われた。
トアの見惚れる手が、お兄ちゃんは自分と言うように自分を指している。その手を掴んで建物の隙間に追いやり、唇を奪った。
彼との楽しい勝負、続けばいい。
勝ち続ければいい。
これからも確実に心配をかけてしまう母親と、
母親を支えてくれるであろう義父、
朝まで勝負していた彼と
弟にはなりたくない俺。
4人での生活が始まった。
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