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3.君は汚れない
しおりを挟む【宗一.大学2年】
夏休みに入って少しはゆっくり過ごせると思った。
大学も、弟、耀の高校も休みだし。
けど学費は待ってくれないし。
金銭的に大変な事、耀には知られたくない。
優先順位を自分じゃなくて僕にされたら困るから。
両親が保証人うんぬんで莫大な借金をして、あっという間に今まで住んでた家から出て、僕達兄弟だけ知り合いの家へ間借りが始まった。
…間借りと言っても父の知り合いのお宅は豪邸で、寝る所、食事の面でも何も変わらない程だから耀が借金の問題に気付かないでいてくれて助かっている。
両親はどうにか借金を返すめどが立つまで連絡もそこそこに遠くにいる。
大学を辞めようかとも考えたけれど、父のゲーム会社を継ぐ為、数年だけ…頑張れるまでは頑張る事にした。
けど…耀の進学のお金…それまでにどうにかなるかな…
高校が休みで日中の予定が無い耀は、ゲームをしてるか僕と過ごすか。
そんな中、夕方や夜、男と過ごす。
…僕の身体が一つじゃ足りない。
純粋な母親は元気だろうか。
母親にそっくりなうえに、まだ世間の汚れをしらない純粋な耀は、僕が守るよ。
「なんで、そんなにボロボロなのに、
平気そうにするんですか?
ツライならツライって、
大変なら大変って、言えばいいのに」
ここにもいる。
世間の汚れを知らない、純粋で、真っ直ぐな心の持ち主。
しかも、なんでこんなに大人びてるんだろ。
今、僕はツラくても、どんなに大変でも、グチる相手がいないんだよ…
夏休みが半分くらい過ぎた。
お昼ご飯を食べてから家庭教師の時間が始まる。
朝も昼も夜ご飯も、耀と食べられる。
今日も昼ご飯、2人で食べてきた。
「…まさか、ここに来る前に
ヤッてきてたりします?
…14歳に刺激与えすぎです」
「…いや…身体使うお小遣い稼ぎは少し控えてる。
疲れが出てきたから…」
控えてるって言っても頻繁に会う人が5人から1人か2人になったぐらい。
僕は何もしなくてもお金を貰えるはずだった。
身体を許せば。
お尻を使う事に抵抗あったけど、慣れたら事前事後に気をつければ特に問題無かったし、ゴムは絶対付けて貰うし。
安易に始めた訳じゃない…
家の事情を軽く話して、時間に縛られないでお金を稼ぎたいと、何人か大人に相談した。
…ゲームの案とか、そういう事でお金になるかと思ったから。
甘かったんだ。
まだ学生の僕が、稼げる事は無いと言われた。
そして、…お小遣いはあげるよ?って。
さらに、好意を持たれた相手にも援助して貰い、合わせて10人くらい。1度だけの人も。週に一度とか、定期的な人も。
どうして汚ない大人はセックスにハマるんだろう。
そして、どんどん欲深くなる。
僕からは、何も与えられないのに。
僕は身体の慣れと共に、嫌気が増してしまった。そして、それでも辞めない僕は…
19歳で汚ない大人の仲間入り。
「僕だったら、体が疲れても、
絶対気持ちは疲れない仕事を選ぶな…」
ほら、また僕より正当な事言ってる。
しかも、僕の気持ちが疲れてるって事?
…なんでわかるんだよ…
「僕だって、1人ならそうしてたよ。
けど、僕の気持ちが疲れても
守りたいものがあるんだよ!」
つい後半、口調が荒くなってしまった。
「…ごめんなさい、何も知らないのに口出して…
…今日も、問題解いてる間は休んでて下さい。
終わったら起こします」
僕が謝るべきなのに…
八つ当たりだ…
5つも年下の子に、気を使わせてる。
もっと、先生として…
大人として、きちんとしないと………
静かな隼君の部屋の中。
いつものように床に座ってベットに頭を乗せる。
隼君の、小さな声で問題を読む声…
シャーペンの芯を出す音…
ページをめくる音…
僕は、すごく安心して、目を瞑り、この部屋で過ごせている事になんとなく感謝する…
「先生…終わりました。…先生?」
「……僕、自分でふざけて…
自分の事、先生とか言ったけど…
全然、先生とか言われる人間じゃないし…」
「…?…すごく熱心に勉強教えてくれて
先生、ですよ??」
「…普通さ、…友達…尊君が宗兄って呼んでたら、
同じように呼びやすいと思うんだけど…
隼君は…呼んでくれないよね…」
「………」
「……あー……
けど、隼君に先生って呼ばれてた方が、
人としてちゃんとしなきゃって思えていいかも…」
目は閉じたまま、頭をベットに乗せたまま
隼君と話す。
…そろそろ目を開けて、問題の答え合わせをしないと。
「そ、う兄……… 今、大変?」
「………」
『うん』と返事をしてしまいそうになっても、喉までで言葉をどうにか押し殺す。
「宗兄…… 今、ツライですか?」
ちょっと待って。
今、目を開ける事も、口を開く事も。
どうにか…愚痴らずにいさせて。
どうにか堪えるから。
ベットの軋む音と共に、フワッと僕の髪を撫でられる感覚。
…多分、頭を撫でられてる。
「…ごめんなさい…
子供で、頼りにならなくて……」
…なんて返せばいい?
僕の自己満足の為に、半分無理矢理、家庭教師に付かれて勉強させられて…
更に僕の気持ちを汲み取って…
心配したり謝ったり…
僕の頭を撫でながらゆっくり動く手を捕まえた。両手で。
…この純粋な子を、
僕が汚してしまいませんように。
けど…僕、ギリギリの精神状態で進もうとしてるから…
ギリギリ…潰れてしまう前に…
少しだけ甘えさせて。
どうにか耐えられるように。
隼君の手をとったまま、起き上がってベットに座る。
急に隣に座られてびっくりしたのか大きな目を見開いてる。
大丈夫、ハグしたくらいじゃ君は汚れないから。
そっと抱きしめた。
ほら……ホントに君は優しいね。
嫌がらず、そのままの体勢でいてくれる。
優しさにつけ込みそうだよ。
目を合わせられずに、離れようとした。
「…キスも…宗兄には何の意味も無いですよね。
…料金は出世払いでいいですか…?」
両手で頬に手を添えられ、そっと唇がかする。
僕は、キスされた。
…僕にとって何の意味も無いのか?
……隼君には?
「…僕は、先生だから、
意味が有っても無くても困る」
「ダメですか?」
「……困る。…隼君、
自分の事何歳だと思ってるの」
「子供は大人にキスしたら、ダメですか?」
「僕は大人だから、子供にしたらダメ」
「…僕、が、宗兄に、キスしたらダメ??」
返事に困る。
隼君からのキス。
そんなご褒美、貰ってもいいんだろうか……
断る事も出来ず、自分からはしないから、と…
勝手に自分の中で正当化して…
隼君からのご褒美を
あれから何度貰っただろう。
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