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ラグーン

妄想暴走少女

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「うふふ、あなたはワタクシの白馬の王子様なの♪」
「お~い、僕の話きけよ~」
「そう…この運命の出会いの前では、全ての出来事がかすんで見えてしまいますわ!!」
「いや、僕の話は!!?ってか、キミのキャラの濃さの前では
 すべてが普通に見えるよ!!!」

ユウキの話を全く聞いていない少女は、自分の話を続ける

「そう、街を歩いて悪い人に絡まれていたワタクシを、華麗に助け出し…」
「絡まれてたの、お姉さんだから、キミじゃないから!!!」
「そして、か弱く震えるワタクシを見て、こう声をかけるのよ」
「話し聞けやぁぁぁ!!!!」
「『可愛いお嬢さん、大丈夫ですか?』そして、ワタクシはこう答えますわ!
 『えぇ、ありがとうございます』そのワタクシの言葉を聞いて、アナタは
 ワタクシに手を差し出し、助け起こしてくれるのです!!」
「おい!今話の中で、周りに花が咲き乱れてるのは、僕か!?僕なのか!!?」
「『あぁ、可憐なお嬢さん、僕は貴方に恋をしてしまったようです』
 熱のこもったその視線に、ワタクシは顔を赤らめながら、こう答えるのです」
「おい!誰だよ!それ、誰なんだよ!!僕じゃないぞ!!!」
「『ワタクシも、アナタに一目ぼれしてしまったようですわ』その言葉を聞いて
 アナタはワタクシに…き…き…き…キャー!恥ずかしいですわ!!」
「そこまで赤裸々に話しておいて、今更何が恥ずかしいねん!!!!」

ユウキの華麗なツッコミが入った!
しかし、少女は同じ舞台には立っていなかった!空振り!!

「はぁ…噂に違わぬ妄想少女っぷりね…」
「え?妄想少女?」
「えぇ、そうよ…妄想少女、ユメ
 彼女は妄想が始まると、止まらなくなるのよ
 特に、恋愛関係はとても盛り上がるわ」
「…そのようやな…
 人の話いっこも聞いてへんし!!!」
「さぁ!プロポーズならいつでも受けますわ!」
「せぇへんわ!!!!!」

ユウキの一言に、妄想少女はガーンとあからさまにショックを受けた
その様子に周りの人は、呆れた顔しか出来ない

「そ、そんな…あんなに愛し合ったじゃない!!」
「今会ったばっかりや!!!そんな記憶欠片も無いわ!!!」
「うぅ…酷いわ…あの日の誓いは嘘だったのね!」
「嘘も何も、そんな事実無いっつーの!!!
 勝手に捏造せんとって!」
「酷いわ!!」

そう言って、妄想少女は走り去る
周りはポカーン…である
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