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一般常識を学ぼう

一つの経験

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「ご飯も食べ終わったし…後は…」

夕食を終え、する事と言えば寝る事…くらいになってきた
空は暗くなったが、焚き火の明かりのお陰で、その周辺は明るい

「後は寝るだけだな…
それで、番をする順番だが…
今回はユウキに色々教える必要があるから
2人一組で番をするのが一番だと思うが…」
「お!なら俺がユウキと組んで、色々教えてやるよ!
シーフの色々ちょっとしたコツを教えてやるよ!」
「…と、いうわけだ…
ユウキとキール、俺とニールで番をしよう」
「じゃ、じゃぁ…先に僕達…が、番してるから…
二人は…先に…寝てて…」
「5時間で交代だからな」
「了解!」
「分かった~」

と、いうわけでユウキは先にテントの中に入る
そこは外から火の光が入って来てぼんやりとした明るさはあるが
薄暗い状態だった

(まぁ、寝るだけだから、全然問題無いよね~)

メイキングで寝袋を作り、それを中央に配置し、その奥に荷物を置く

(後は…結界でもしておくか…)

そう、今回は番の人がいるが
もし、仮に一人で野宿をした場合、寝ずに番をするわけにもいかない
ならば、休みながらも危険を察知出来るように準備をしておくのが一番だ

(まずは、入り口…
そして…寝袋の周り…で、荷物周り…
これで、よし…と)

準備を万全にして、ユウキは眠りについた
外では、アレンとニールが談笑しながら番をしている

(…ん?…)

眠りについてから、どれくらいの時間が経っただろう…
ユウキは、ある異変に気付き意識が浮上した

(誰か入ってきた…?
そろそろ交代の時間なのか…?まだ眠いんだけど…)

アレンかニールが起こしに来たのかもしれない
そう思いながら、眠気と闘っている
そんな事をしている間に、その人は寝袋の近くにした結界の中に入った

(あぁ~…起こしに来たんだ…
起きろ~、僕…眠いけど頑張れぇ~)

相変わらず眠気と闘っているユウキ
だが、相手は一向にユウキを起こそうとする気配が無い

(あれ?…起こしに来たわけじゃない…のか…?)

不思議に思い、目を開けてみると…

「?!」
「お…起きたか…」
「『起きたか…』って近いだろ!!!」

ユウキに覆いかぶさるようにアレンがいて
そのアレンと目が合ったのだった
アレンはというと、特に驚く素振りはなく
いそいそと離れたのだった

「ちゃん…と…起き…た?」

ユウキの声を聞いてか、ニールが入ってきた

「起きたよ!でも、オカシクナイ!!?
山賊とかそういうのが来たら…っていう想定だったらさ!
入ってきた瞬間攻撃とかさ!!!
何で覆いかぶさるの!!?」
「荒々しい奴は入って来て速攻攻撃の可能性もあるが
暗殺系統であれば、静かに速やかに近付いて刺すだろ?」
「いや、暗殺されるの前提!!?」
「まぁ、それもあるが、一番の理由は…
お前、女だろ…
なら、寝込みを襲われる方の練習が必要だろ?」
「………ぇ?」
「ユウキ…少年…っぽい…けど…
そういうの…異常に察知の良い…変な人…は…
察知する…か、可能性…は、ある…からね?」
「ぇ…?」

ユウキを女の子として話を進める2人だが
一方、当の本人は性別が知れた事が受け止めきれず
思考はほぼ停止状態だ
脳内では「何故バレたのか」その言葉で埋め尽くされている

「ふぁ~…おい、お前ら…ユウキが混乱してるぞ…
まず、何で分かったか教えてやれよ…
あ、俺は身のこなし…というか…骨格?そんな所からかな…」

眠そうに現れたキールはそう言うと「顔洗ってくる…」と
テントの外に出て行った

「ぇ…こ…こっか…く?」
「僕は…か、状態異常の…解除魔法…かけた時に…
毒…が…体内…に残ってないか…確認した…から…
魔力…の流れ…で分かった…」
「…ぇ…マジ…で…?」
「俺は…あのボス戦の時に違和感があったな…
ユウキが助けてくれた時に、触れただろ?
あの時に、男にしては柔らかいって…」
「アレン…その…発言だけ聴く…とやばい…人…」

ジトー…っとした視線でアレンを見るニール

「いや!別にそういう意味じゃなくてな!!
キッカケはそこだったけど、今回の依頼で一人は女性っての聞いてただろ?」
「そう…言われてた…ね…」
「当たり前だが、ウルガーは男だし…残す所はユウキのみ…
まぁ、消去法だが…で、さっきのキッカケもあったし…
もうほぼ、断定してたのは、その辺だな」
「…あぁぁ…と、言う事は…あの依頼のせいで…」

バレた理由を知れば知る程、あの依頼を受けた事が悔やまれる

(…まぁ、キールの骨格…は騙せそうにないけど…)

あの依頼を受けていなければ、毒を受けて倒れる事も
その解毒の中でニールにバレる事もなかった
そして、あの依頼を受けていなければ…
アレンに決定打を与える事も無かった
キールに関しては…どのパターンで出会っても
骨格を弄れるわけでは無いので、バレるだろうが…
少なくとも、あの依頼を受けていなければ出会わなかったかもしれない…

(あの依頼を受けた僕のバカ…
でも、きっと困ってると言われたら断れないしなぁ…)

あの依頼が存在している時点で、ユウキに断る術はない
困っている人を突き放す事が出来ないのだから…

(…と、言う事は…時間を巻き戻して、レミールを始末すれば…)

という考えが頭に浮かび、そして瞬時にそれを消す

(いや、たかだかレミールを始末するだけで、レアな属性使うなんて勿体ない…)

かなり失礼な事を考えているが、誰にも伝わる事は無い
そして、目の前の二人には何を考えているかが伝わっていないため
特にニールがあたふたしている

「ご…ごめん…ね?し、知られたく…無かったん…だよ…ね?」
「いや、知られたくなかったとしても、変態的な奴は気付くからな…
その練習の一環だと思って、諦めてくれ
別に、俺達は言いふらそう…とか思ってるわけじゃない
ただ、こういう場合もあるから気をつけろ…というだけだ」
「あ…うん…ちょっと(というかだいぶ…)驚いたけど
まぁ、聞く感じによると、バレたのは仕方なさそうだし…
うん、こういう事もある…って事で学習しておく事にするよ…」

ユウキは一つの経験…として受け止める事にしたのだった
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