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首謀者 前編
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「わざわざセルザローグまでご足労頂きありがとうございますわ!」
小太りの夫人が扇子を口元に置きながら、上品に笑う。
ミルナバは、こちらの機嫌を取ろうとするあからさまな夫人の態度に眉を顰める。
ミルナバたちは現在、セルザローグの東隣のミドザリア王国まで来ていたのであった。
隣にいるレンダはティーカップを傾け、呑気に出された紅茶を一気に飲み干していた。
レンダにとって、家主用に作られた大きさのティーカップでは小人の物のように小さく見えてしまう。
レンダのあまりに速いおかわりに給仕係が慌てて茶葉にお湯を注いでいた。
遠慮のない飲みっぷりに流石の夫人の口角もヒクついてしまうほどであった。
「それで?ご要件とは一体どのようなものなんですの?」
小太りの夫人は自分の心を落ち着けるように紅茶を飲みながら本題に入る。
ミルナバはレンダに目配せをし、依頼のあった書状を取り出させ、テーブルに広げる。
大理石で作られた、権力を見せつけているような豪勢なテーブルに目もくれずレンダは大雑把に書状を広げるのであった。
「この書状は貴女が依頼した物で間違いですね?」
ミルナバはぎこちない敬語を使いながらそう訊ねる。
夫人は小首を傾げながら、「そうですが・・。」と、不思議そうに聞き返すのであった。
「実は我々が到着する前にミドザリア王国の騎士団が魔女狩りを行っていまして・・。」
「そうなんですか・・。」
夫人の何が言いたいのかよくわからないといった顔にミルナバ鋭い眼光を向ける。
「本来ならあり得ないことですよ?我々教会と魔女教の討伐を目的として編成された王国騎士団が会い見えるなんてことはね・・。」
ミルナバのその言葉を聞いてもなお、理解していない顔の夫人にミルナバは苦笑してしまう。
「そもそも、今回の調査は何かと不可解な点が多かったんですよ」
ミルナバはそう言い指を一つずつ数え、立ていく。
「一つ、王国騎士団が動いているのに、わざわざ近隣諸国の教会にも書状が来ていたこと。
二つ、魔女教徒を厳しく取り締まっているはずのあなた方夫妻が王国騎士団の魔女教討伐をすることを聞かされていない」
夫人は威圧的に問い詰めるミルナバに目を白黒させる。
「そしてだ・・。」
ミルナバはそう言い、首に掛けている十字架を外す。
ジャラッとチェーンが音を立てながら空白の間を不穏な音が掻き立てる。
「おしどり夫婦の夫人が旦那と一緒にいないなんてね・・。」
ミルナバの言葉と同時に、目の前の夫人が席を立つ。
瞬間ミルナバは後を追いかけるように席を立ち、十字架を宙に投げる。
「捕縛の糸」
その声と共にミルナバの投げた十字架から無数の糸のような細かい光が夫人目掛け襲いかかる。
なす術なく夫人はその光に絡め取られ、身動きが取れなくなる。
オロオロと辺りを見渡す夫人であったが、近辺にいた給仕係は私の意図を汲み取ったレンダが同じく、捕縛の糸を使い捕らえていたのであった。
「さ、白状したらどうさね。アンタは一体誰なんだい?」
小太りの夫人が扇子を口元に置きながら、上品に笑う。
ミルナバは、こちらの機嫌を取ろうとするあからさまな夫人の態度に眉を顰める。
ミルナバたちは現在、セルザローグの東隣のミドザリア王国まで来ていたのであった。
隣にいるレンダはティーカップを傾け、呑気に出された紅茶を一気に飲み干していた。
レンダにとって、家主用に作られた大きさのティーカップでは小人の物のように小さく見えてしまう。
レンダのあまりに速いおかわりに給仕係が慌てて茶葉にお湯を注いでいた。
遠慮のない飲みっぷりに流石の夫人の口角もヒクついてしまうほどであった。
「それで?ご要件とは一体どのようなものなんですの?」
小太りの夫人は自分の心を落ち着けるように紅茶を飲みながら本題に入る。
ミルナバはレンダに目配せをし、依頼のあった書状を取り出させ、テーブルに広げる。
大理石で作られた、権力を見せつけているような豪勢なテーブルに目もくれずレンダは大雑把に書状を広げるのであった。
「この書状は貴女が依頼した物で間違いですね?」
ミルナバはぎこちない敬語を使いながらそう訊ねる。
夫人は小首を傾げながら、「そうですが・・。」と、不思議そうに聞き返すのであった。
「実は我々が到着する前にミドザリア王国の騎士団が魔女狩りを行っていまして・・。」
「そうなんですか・・。」
夫人の何が言いたいのかよくわからないといった顔にミルナバ鋭い眼光を向ける。
「本来ならあり得ないことですよ?我々教会と魔女教の討伐を目的として編成された王国騎士団が会い見えるなんてことはね・・。」
ミルナバのその言葉を聞いてもなお、理解していない顔の夫人にミルナバは苦笑してしまう。
「そもそも、今回の調査は何かと不可解な点が多かったんですよ」
ミルナバはそう言い指を一つずつ数え、立ていく。
「一つ、王国騎士団が動いているのに、わざわざ近隣諸国の教会にも書状が来ていたこと。
二つ、魔女教徒を厳しく取り締まっているはずのあなた方夫妻が王国騎士団の魔女教討伐をすることを聞かされていない」
夫人は威圧的に問い詰めるミルナバに目を白黒させる。
「そしてだ・・。」
ミルナバはそう言い、首に掛けている十字架を外す。
ジャラッとチェーンが音を立てながら空白の間を不穏な音が掻き立てる。
「おしどり夫婦の夫人が旦那と一緒にいないなんてね・・。」
ミルナバの言葉と同時に、目の前の夫人が席を立つ。
瞬間ミルナバは後を追いかけるように席を立ち、十字架を宙に投げる。
「捕縛の糸」
その声と共にミルナバの投げた十字架から無数の糸のような細かい光が夫人目掛け襲いかかる。
なす術なく夫人はその光に絡め取られ、身動きが取れなくなる。
オロオロと辺りを見渡す夫人であったが、近辺にいた給仕係は私の意図を汲み取ったレンダが同じく、捕縛の糸を使い捕らえていたのであった。
「さ、白状したらどうさね。アンタは一体誰なんだい?」
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