33 / 37
去りゆく影と心残り
しおりを挟む
村の人たちが突如風船のように破裂し、死亡した王国騎士たちを土に埋めている作業をする中、大木から二つの視線がその様子を捉えていた。
「なんだったんだ、あれは・・?」
「遠隔魔法のようだけど、高位のモノのようだね・・。」
神父服を身に纏った男女がベーラたちのいる村の近くの木々から分析してたのであった。
だが、そんな驚きもすぐに収まり、二人は現状について深刻な面持ちに変わる。
「問題はあの魔女たちだよな・・。」
そう問題を提起したのは、金の短髪に巨体が特徴的な男のレンダ・サンゼルマンであった。
粗野でガサツな態度からは想像が出来ないが彼はセルザローグの教会の神父であるのだ。
「まさか一人はいると読んでいたんだけど、その他に候補が二人もいるなんてね・・。」
レンダの言葉に頷き、事の深刻さが表に出てしまうほどのため息を吐くのは、女性でありながら、セルザローグの教会の神父を務めるミルナバという女であった。
胸の起伏が表れないようにサラシを巻き、高身長が活きた出で立ちは関わりがないと女性と気づかないほど側から見ればただの男性に見えるだろう。
ミルナバは顔を黒塗りの仮面で覆っており、その仮面を動かしながらレンダを一瞥する。
「レンダ、アンタまさか喧嘩をふっかけようなんて考えてないだろうね?」
「ガハハ・・それも悪くねえな」
レンダの言葉にミルナバは仮面の額に手を置き天を仰ぐ。
この大馬鹿者が・・。
そう言いたい気持ちもあったが、ミルナバは思考を巡らす。
というのも、早いうちに仕掛けることにメリットは確かに存在するからだ。
今仕掛ければ、未熟な魔女候補二人は容易に対処が出来るだろうし、レンダとミルナバは対魔女教徒のプロフェッショナルだ。
おそらく一対ニの図になれば勝てるだろう・・。
だが・・。
「一旦教会に戻って報告しに行くよ」
「まじかよ・・。まあ楽しみは後にとっていた方がいいしな・・。仕方ねえか」
残念そうな口ぶりのレンダにミルナバは呆れてしまう。
この男は本当にどうしよもない男だなと感じるミルナバであった。
あの魔女が一番の危険分子であり、奥底がわからない以上下手に手を出さない方がいいだろう。
そう考えたミルナバは音を立てないようにそっと村から離れる。
「でもよ・・。あの魔女まさか姿を変えれるとはな。情報提供者はどうやって見極めたんだろうな?」
レンダが帰りの道中にふと、顎をさすりながらミルナバに訊ねる。
ミルナバは知らないよと、冷たくあしらいつつ、懐から貨幣を入れる小さな麻袋を取り出す。
セルザローグで出会った礼儀正しい少女から貰った物であるその麻袋を握りしめ先刻の魔女を思い出す。
魔女が家に帰っていく時にその姿から一人の少女に戻ったその時、ミルナバは目を疑った。
それもそのはず、先日ミルナバと出会ったその少女の正体が異端審問の対象の魔女であったのであった。
「やっぱりこの世界に神様なんていやしないね・・。」
ボヤくようなミルナバの呟きをレンダは無言で受け止めるのであった。
そんな様子のレンダについ笑いが出てしまうミルナバ。
「何がおかしいんだ?」
「意外にも優しい一面があったことに不覚にも笑ってしまったよ」
「お前は本当に可愛げがねえよな!」
腕を振り回し皮肉を言ったレンダの袖から丸めた紙筒が落ちる。
それは村に出向く理由となった教会からの書状。
ミルナバは落ちた書状を取ろうとするレンダを見ながら眉を顰める。
「そういえば送り先はどこだったかね?」
「ああ?お前ちゃんと見てねえのかよ・・。コレはだな・・。」
そこでレンダは言葉を失う。
「ミドザリア王国から・・だな」
「ならどうして王国騎士が来ていたんだい?」
ふとした疑問だが、足を踏み入れるべきではない問題なのかも知れない。
「これは何かありそうだね・・。」
ミルナバは納得のいかない出来事に直面し、物に当たるように地面を蹴るのであった。
「なんだったんだ、あれは・・?」
「遠隔魔法のようだけど、高位のモノのようだね・・。」
神父服を身に纏った男女がベーラたちのいる村の近くの木々から分析してたのであった。
だが、そんな驚きもすぐに収まり、二人は現状について深刻な面持ちに変わる。
「問題はあの魔女たちだよな・・。」
そう問題を提起したのは、金の短髪に巨体が特徴的な男のレンダ・サンゼルマンであった。
粗野でガサツな態度からは想像が出来ないが彼はセルザローグの教会の神父であるのだ。
「まさか一人はいると読んでいたんだけど、その他に候補が二人もいるなんてね・・。」
レンダの言葉に頷き、事の深刻さが表に出てしまうほどのため息を吐くのは、女性でありながら、セルザローグの教会の神父を務めるミルナバという女であった。
胸の起伏が表れないようにサラシを巻き、高身長が活きた出で立ちは関わりがないと女性と気づかないほど側から見ればただの男性に見えるだろう。
ミルナバは顔を黒塗りの仮面で覆っており、その仮面を動かしながらレンダを一瞥する。
「レンダ、アンタまさか喧嘩をふっかけようなんて考えてないだろうね?」
「ガハハ・・それも悪くねえな」
レンダの言葉にミルナバは仮面の額に手を置き天を仰ぐ。
この大馬鹿者が・・。
そう言いたい気持ちもあったが、ミルナバは思考を巡らす。
というのも、早いうちに仕掛けることにメリットは確かに存在するからだ。
今仕掛ければ、未熟な魔女候補二人は容易に対処が出来るだろうし、レンダとミルナバは対魔女教徒のプロフェッショナルだ。
おそらく一対ニの図になれば勝てるだろう・・。
だが・・。
「一旦教会に戻って報告しに行くよ」
「まじかよ・・。まあ楽しみは後にとっていた方がいいしな・・。仕方ねえか」
残念そうな口ぶりのレンダにミルナバは呆れてしまう。
この男は本当にどうしよもない男だなと感じるミルナバであった。
あの魔女が一番の危険分子であり、奥底がわからない以上下手に手を出さない方がいいだろう。
そう考えたミルナバは音を立てないようにそっと村から離れる。
「でもよ・・。あの魔女まさか姿を変えれるとはな。情報提供者はどうやって見極めたんだろうな?」
レンダが帰りの道中にふと、顎をさすりながらミルナバに訊ねる。
ミルナバは知らないよと、冷たくあしらいつつ、懐から貨幣を入れる小さな麻袋を取り出す。
セルザローグで出会った礼儀正しい少女から貰った物であるその麻袋を握りしめ先刻の魔女を思い出す。
魔女が家に帰っていく時にその姿から一人の少女に戻ったその時、ミルナバは目を疑った。
それもそのはず、先日ミルナバと出会ったその少女の正体が異端審問の対象の魔女であったのであった。
「やっぱりこの世界に神様なんていやしないね・・。」
ボヤくようなミルナバの呟きをレンダは無言で受け止めるのであった。
そんな様子のレンダについ笑いが出てしまうミルナバ。
「何がおかしいんだ?」
「意外にも優しい一面があったことに不覚にも笑ってしまったよ」
「お前は本当に可愛げがねえよな!」
腕を振り回し皮肉を言ったレンダの袖から丸めた紙筒が落ちる。
それは村に出向く理由となった教会からの書状。
ミルナバは落ちた書状を取ろうとするレンダを見ながら眉を顰める。
「そういえば送り先はどこだったかね?」
「ああ?お前ちゃんと見てねえのかよ・・。コレはだな・・。」
そこでレンダは言葉を失う。
「ミドザリア王国から・・だな」
「ならどうして王国騎士が来ていたんだい?」
ふとした疑問だが、足を踏み入れるべきではない問題なのかも知れない。
「これは何かありそうだね・・。」
ミルナバは納得のいかない出来事に直面し、物に当たるように地面を蹴るのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる