ダークファンタジーの魔法少女、異世界スローライフで日常を知る

終結

　フェニはどこか楽しげに森をウロウロと歩いていた。

　その姿は電話中のサラリーマンのようで思考と身体が連動してあるようであった。

　その様子はフェニの狼の姿では、とても可愛らしく映るのであった。

　だが、そんな姿を見て不機嫌な目を向ける存在がいた。
　
　それは宙に浮き扇子を口元で広げる天女の様な女であった。

　「忌々しいですわ・・。」

　女の切長の瞳が細まり、フェニを見据える。
　その凍てつくような視線を受けフェニは面倒くさそうに女の方を向く。

　人間なら平静でいられないほどの女の圧も気にしないフェニの余裕に女は歯軋りを起こし苛立ちを露わにする。

　「その顔は何ですの！？」
　「ボクは今、念話をしているんだ。そこにいると目障りだからさ早く消えてくれよ・・。」
　「私を差し置いて・・ッ！？信じられないですわ！」
　「ハア・・。」

　女は金細工のように光り輝く長髪を掻きむしりながら叫ぶ。
　フェニはそんな様子の女を見て蔑んだ目を向ける。

　「昔から知っているだろ？ボクは自分の楽しい時間を邪魔されることがこの上なく嫌いだってことをね・・。」

　声音と顔つきだけでなく、フェニから放たれる殺気に似た威圧感を受け女はたじろぐ。

　「わ、私は貴方のことを思って・・ッ！？」
　「何度も同じことを言わせるなよ？」

　普段の口ぶりとは違うフェニ圧のある言い方に女は小さな悲鳴をあげる。

　やがて、女は項垂れると吹っ切れたような笑顔になり顔を上げる。
　貼り付けた面のような不気味な笑顔を向ける女は手を広げてフェニに近づく。

　「わかりましたわ。今日はもうお暇を頂きたいと思いますわ」

　空気に溶けいるように粒子状に消えてゆく女は、不機嫌な顔をしたフェニ向けて、

　「そんな顔をなさらないで下さい。不安分子は一つ残らず消して去りますから」

　女が不敵に笑いながら言い終えたその時であった。

　『キャアアアア！』

　頭の内側が振動するほどのミリアンヌの叫び声が伝導文字テレパス・コードを伝い聴こえてくる。

　『ど、どうしたんだい！？』
　『あ、頭がぁ・・、騎士たちの頭が、き、急に・・うぅっ』

　ミリアンヌの取り乱した心の声を聞き、フェニは慌てる。
　その様子を見て気味がいいといった風な顔を見せる女をフェニは睨みつける。

　「おい！村の人たちに何をした！」
　「先程も言いましたよね？不安分子は一つ残らず消すと・・。」

　女は不吉な笑みをフェニに向けたまま姿を消すのであった。

　「・・・全くアイツは・・。」

　悪態を吐いたフェニはその苛立ちを悟られないように伝導文字テレパス・コードを使いミリアンヌを宥めるのであった。