ダークファンタジーの魔法少女、異世界スローライフで日常を知る

タカヒラ 桜楽

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魔女伝説

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 『魔女伝説』

 それはミドザリア王国だけでなくその他大勢の諸国を含むオベスト大陸全域に伝えられる逸話である。

 この世界では人類が誕生したときに、すでに魔の存在というものがあり、その二つの勢力は長年に渡って争いを続けていたのである。

 だが、魔の存在は序列を作り一つのという括りで勢力を広げ人類を脅かすものへと変化していくのであった。
 
 それを見かねた神は、人類に役職ジョブという適当なものを与えて、魔族に抗う術を身につけさせたのである。

 役職ジョブを身につけた人類はある者は剣技の才能がずば抜けており、ある者は屈強な身体を活かした闘い方をする者などが現れたのだという。

 だがこれはあくまで、人類のであり、次第に身体能力の優れた魔族には有効的でないことが判明したのであった。
 
 人類は困窮し、このまま淘汰されるだけの存在になるのかと嘆き悲しんだ。
  
 そんな時に現れたのが、世の理を覆す魔を使役する存在と、人々に光を与える者。

 これが後の魔女と勇者である。

 その二人の活躍により、魔を討ち滅ぼす寸前まで人類は魔族を追い詰めるのであったが、魔女は魔族との共存を望み、魔族の長である魔王と画策していることが分かり魔女は民衆の前で火刑にかけらしまったのであった・・。

 
 ーーーーー

 「と、まあこんな話ですね。私たち王国民はこの魔女伝説を教養として語り継ぐべきもののはずなのですが、この村は魔女について何も教えていないらしいですね」
 「・・・。」

 ヴェンタレスはため息混じりで、私の両親を一瞥する。
 両親はそんなヴェンタレスに鋭い視線を送る。

 「私たちの生活に関わりのないことは教えてないんですよ。それにそんな難しい話をするには私の娘は早すぎますよ」

 そう言い苦い顔をする両親を見て私はホッと胸を撫で下ろす。
 何故なら、私はこの両親の下に生まれてきて本当に良かったと心から思うことができたからである。

 「そうですね初めて知りました。そんなくだらない話があったなんて私は知りませんでした」

 私はあえて強い言葉を選びヴェンタレスの話を小馬鹿にする。
 私の言葉を聞きヴェンタレスは珍しく眉をピクリと動かして不快感を表す。

 「どういうことですかね?」
 「その話の伝えたいことは心の綺麗な者を落として喜ぶ馬鹿な人たちになりなさいと伝えたいのですかね?」

 私は少女の特権の無垢な笑顔を向けながら、毒を吐く。

 そんな話あってたまるか・・。

 私の内心ははらわたが煮えたぎるほどに怒り狂っているが、ここで解放してしまえば相手の思う壺だ。
 だからこそあえて私はヴェンタレスを挑発する。
 ヴェンタレスは口元をヒクつかせ、両親はその様子に笑いを堪えていた。
 
 だが・・・。

 「ククク。心が綺麗ねぇ・・。平和ボケの馬鹿の言葉らしいな」

 ヴェンタレスは私を嘲笑いながらそう言う。
 初めて見せるヴェンタレスの敵意を感じ場が凍りつく。

 ヴェンタレスは一呼吸置くと、「さて本題ですが・・。」と、話を切り出す。

 「今話した魔女伝説ですが、ある一説では、魔女は転生の魔法を完成していたとかなんとか・・。」

 ヴェンタレスはあえて言葉を濁し私を一瞥する。
 見透かしたような彼の瞳から、次に放つ言葉を予測できた私は身構える。

 「我々は魔女の復活を許してはいけない、だからこそ魔女が蘇った今私たちで手を下さなければならないのです」

 ヴェンタレスはそう言い私に向かって手を伸ばす。

 「バウッ!!」

 足元にいたフェニの鳴き声で私は瞬時に判断する。
 ヴェンタレスの手元から先程所持していた鉈のような武器が空間を歪めて出現していたのだ。
 ヴェンタレスはその武器を私の首めがけて横一閃に振り抜く。

 「初見で躱すとはお見事ですね。流石は

 満足したような顔でヴェンタレスはそう言い全てを悟った顔をする。

 「貴様ッ娘に何をするんだ!」
 「あなた待ってッ!?」

 ヴェンタレスの急襲に父が怒りの声を上げヴェンタレスに掴みかかるのであったが、無表情になった彼はそのまま父に自身の武器を振り上げ父の顔を斬りつけるのであった。

 「・・・っ!?」

 父はすんでのところで避けることに成功したが、バランスを崩しそのまま後ろに倒れてしまうのであった。
 母の言葉が無ければ父の傷は深くなっていただろう。
 
 私はそのことを想像して背筋を凍らせたのと同時に再び怒りが込み上げる。

 「な、何をしているんですか!?」
 「魔女を擁護することは反逆罪ですからね、貴方の両親は知らなかったにしても貴方を育ててしまいましたからね、立派な反逆罪になるんですよ」
 「そ、そんなことって・・ッ!?」
 「ああ、だからみんなですね・・。」

 ヴェンタレスは顎に手を当てて何か思い出したような仕草を見せて私の言葉を遮るのであった。
 そして、おもむろに外を指さす。

 外の光景を見て父の下に駆け寄っていた母が悲鳴をあげる。
 なんと、ミリアンヌの住んでいる家に火が放たれていたのである。

 「この村の人々は全て処罰の対象になりすね」

 目元の笑ってないヴェンタレスの笑みに、私は怖気がする。
 
 「フェニ下がってて・・。」
 
 ヴェンタレスのドス黒い感情が現れ、私は殺気を押し殺せていないフェニにそう言うと、交戦の意志を見せるのであった。

 フェニでは村ごと潰しかねない・・。

 どうしていつもこうなるのかな・・。

 私は平凡で居させてくれないこの世界に唾を吐きたい気分になっていたのであった・・。
 
 

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