27 / 37
魔女伝説
しおりを挟む『魔女伝説』
それはミドザリア王国だけでなくその他大勢の諸国を含むオベスト大陸全域に伝えられる逸話である。
この世界では人類が誕生したときに、すでに魔の存在というものがあり、その二つの勢力は長年に渡って争いを続けていたのである。
だが、魔の存在は序列を作り一つの魔族という括りで勢力を広げ人類を脅かすものへと変化していくのであった。
それを見かねた神は、人類に役職という適当なものを与えて、魔族に抗う術を身につけさせたのである。
役職を身につけた人類はある者は剣技の才能がずば抜けており、ある者は屈強な身体を活かした闘い方をする者などが現れたのだという。
だがこれはあくまで、人類の身体能力を活かした役職であり、次第に身体能力の優れた魔族には有効的でないことが判明したのであった。
人類は困窮し、このまま淘汰されるだけの存在になるのかと嘆き悲しんだ。
そんな時に現れたのが、世の理を覆す魔を使役する存在と、人々に光を与える者。
これが後の魔女と勇者である。
その二人の活躍により、魔を討ち滅ぼす寸前まで人類は魔族を追い詰めるのであったが、魔女は魔族との共存を望み、魔族の長である魔王と画策していることが分かり魔女は民衆の前で火刑にかけらしまったのであった・・。
ーーーーー
「と、まあこんな話ですね。私たち王国民はこの魔女伝説を教養として語り継ぐべきもののはずなのですが、この村は魔女について何も教えていないらしいですね」
「・・・。」
ヴェンタレスはため息混じりで、私の両親を一瞥する。
両親はそんなヴェンタレスに鋭い視線を送る。
「私たちの生活に関わりのないことは教えてないんですよ。それにそんな難しい話をするには私の娘は早すぎますよ」
そう言い苦い顔をする両親を見て私はホッと胸を撫で下ろす。
何故なら、私はこの両親の下に生まれてきて本当に良かったと心から思うことができたからである。
「そうですね初めて知りました。そんなくだらない話があったなんて私は知りませんでした」
私はあえて強い言葉を選びヴェンタレスの話を小馬鹿にする。
私の言葉を聞きヴェンタレスは珍しく眉をピクリと動かして不快感を表す。
「どういうことですかね?」
「その話の伝えたいことは心の綺麗な者を落として喜ぶ馬鹿な人たちになりなさいと伝えたいのですかね?」
私は少女の特権の無垢な笑顔を向けながら、毒を吐く。
そんな話あってたまるか・・。
私の内心ははらわたが煮えたぎるほどに怒り狂っているが、ここで解放してしまえば相手の思う壺だ。
だからこそあえて私はヴェンタレスを挑発する。
ヴェンタレスは口元をヒクつかせ、両親はその様子に笑いを堪えていた。
だが・・・。
「ククク。心が綺麗ねぇ・・。平和ボケの馬鹿の言葉らしいな」
ヴェンタレスは私を嘲笑いながらそう言う。
初めて見せるヴェンタレスの敵意を感じ場が凍りつく。
ヴェンタレスは一呼吸置くと、「さて本題ですが・・。」と、話を切り出す。
「今話した魔女伝説ですが、ある一説では、魔女は転生の魔法を完成していたとかなんとか・・。」
ヴェンタレスはあえて言葉を濁し私を一瞥する。
見透かしたような彼の瞳から、次に放つ言葉を予測できた私は身構える。
「我々は魔女の復活を許してはいけない、だからこそ魔女が蘇った今私たちで手を下さなければならないのです」
ヴェンタレスはそう言い私に向かって手を伸ばす。
「バウッ!!」
足元にいたフェニの鳴き声で私は瞬時に判断する。
ヴェンタレスの手元から先程所持していた鉈のような武器が空間を歪めて出現していたのだ。
ヴェンタレスはその武器を私の首めがけて横一閃に振り抜く。
「初見で躱すとはお見事ですね。流石は魔女様ですね」
満足したような顔でヴェンタレスはそう言い全てを悟った顔をする。
「貴様ッ娘に何をするんだ!」
「あなた待ってッ!?」
ヴェンタレスの急襲に父が怒りの声を上げヴェンタレスに掴みかかるのであったが、無表情になった彼はそのまま父に自身の武器を振り上げ父の顔を斬りつけるのであった。
「・・・っ!?」
父はすんでのところで避けることに成功したが、バランスを崩しそのまま後ろに倒れてしまうのであった。
母の言葉が無ければ父の傷は深くなっていただろう。
私はそのことを想像して背筋を凍らせたのと同時に再び怒りが込み上げる。
「な、何をしているんですか!?」
「魔女を擁護することは反逆罪ですからね、貴方の両親は知らなかったにしても貴方を育ててしまいましたからね、立派な反逆罪になるんですよ」
「そ、そんなことって・・ッ!?」
「ああ、だからみんなですね・・。」
ヴェンタレスは顎に手を当てて何か思い出したような仕草を見せて私の言葉を遮るのであった。
そして、おもむろに外を指さす。
外の光景を見て父の下に駆け寄っていた母が悲鳴をあげる。
なんと、ミリアンヌの住んでいる家に火が放たれていたのである。
「この村の人々は全て処罰の対象になりすね」
目元の笑ってないヴェンタレスの笑みに、私は怖気がする。
「フェニ下がってて・・。」
ヴェンタレスのドス黒い感情が現れ、私は殺気を押し殺せていないフェニにそう言うと、交戦の意志を見せるのであった。
フェニでは村ごと潰しかねない・・。
どうしていつもこうなるのかな・・。
私は平凡で居させてくれないこの世界に唾を吐きたい気分になっていたのであった・・。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる