ダークファンタジーの魔法少女、異世界スローライフで日常を知る

タカヒラ 桜楽

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ローブの女

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 ローブの人物に誘われ私はその人物が経営しているという店内に入っていくのであった。
 店内の中は外装を見た時に想像したモノと同じ景色が広がっていた。
 天井四隅には蜘蛛の糸が張っており、埃被った本や瓶が乱雑に陳列されていた。
 他にも、瑞々しさのない果実や湿気ている焼き菓子なども目に入り、経営が心配になるほどの雑さが窺える。

 「アンタ、ここの出身の子じゃないでしょ?」

 ローブの人物は、そのローブを店の奥にあった椅子に掛けながら私に訊ねる。
 ローブを脱いだその姿は、容姿端麗という言葉しか思い浮かばない容姿をした女性であった。
 ショートボブの金髪に、鼻筋の通った顔は、女性でありながら格好良さが引きたっていた。
 ジーンズに白のワイシャツがボーイッシュでありながら、スタイルの良い曲線美が際立ち、女性の艶かしさを醸し出しており、同性ながら私の鼓動が早くなっていた。

 「え、えっと少し離れたところの村からやってきました。ベーラ・マルキスといいます、よろしくお願いします」
 「そう、アタシはミルナバ。小さいのにしっかりしているのね」

 ミルナバと名乗った女性はそう言い私に椅子に座るように促す。
 私はおそるおそるその椅子に座るが、値札があることに気づき不安になる。

 「これ、商品ですよね?座っちゃっていいんですか?」
 「別にいいわ。ここにちゃんと商品として売れる物なんてありゃしないわ」

 ミルナバのあっけらかんとした態度に私は苦笑してしまう。
 
 「それで、どうして此処にやってきたの?此処がどういうところか知っているのかしら?」

 ミルナバはそう言いつつ私にお茶を差し出す。

 「えっと、欲しいものがあったんですけど、貴重な物だと思って高そうなお店を探していたらここまで来てしまって・・。」
 「何も知らずに近づいたわけね。道理で小さなお客さんが現れたわけね」

 ミルナバは、はあ、と大きなため息を吐き、頭を抱える。

 「此処はね、スラム街なのよ・・。」
 「えっ・・?だってさっきまで・・。」
 「ちょうどココが貴族と浮浪者の境界線なのよ。外からやって来る人の目を避けるためにこんな隅まで追いやられてしまったのよ」

 ミルナバの言葉に私は納得してしまう。
 多分この城下町を牛耳る人によって、肩身の狭い思いをしているのだろう。

 「そうだったんですね・・。」
 「だからあなた危なかったのよ?もう少しこっち側に踏み込んでいたら何をされていたか・・。」

 ミルナバはそう私を脅すと、ポケットから煙草を取り出し、おもむろに煙草に火を付け吸い始めるのであった。
 
 「ミルナバさんは助けてくれたんですね。ありがとうございました」

 ミルナバはお礼を言う私に気恥ずかしそうに払うように手を振る。

 「別にいいのよ。アタシがお節介なことをしただけだしね・・。それよりもあなたは何を探していたの?」

 ミルナバはそう言い、口から蒸気のように大量の煙を吐き出す。

 「そ、その実は・・。」

 と、私はミルナバに自身の計画を話すのであった。


 ーーーーー

 「へえー、炭酸水ねえ・・。」
 「私が前いた国では大人気な飲み物でして・・。」

 私は前世の記憶があることを隠し、別の国から来た異国の少女を演じて彼女に説明したのであった。

 「残念だけど、セルザローグ近隣諸国にはない代物ね。その重曹ってヤツもね」
 「やっぱりそうですか・・。」
 「まあでも、
 「え!?どういう事ですか?」

 私の驚きの声に、ミルナバは重い腰を上げて私に近づく。
 
 「あなた錬金術って知ってるかしら?」
 「卑金属で貴金属を作ろうとするヤツですよね?」
 「それは初耳だけど・・。」

 私の答えにミルナバはクスクスと可憐に笑うと、私の目の前に片手を広げて見せる。

 「錬金術、まあ今では創造魔法クリエイトなんて言ったりするんだけど、ようはこうゆうこと」
 
 ミルナバはそう言うと、広げた手に魔力を込める。
 すると、ミルナバの手を中心に幾層にもなった円が出現し、渦を描くように不規則に層ごとに別れ回り出す。
 やがてその円の中心から、少しずつ水が溢れるように出てくる。

 「うわー!す、凄い。何もないところから水が出てきちゃった」
 「これが錬金術、魔力を錬り金すらも生成出来ることからそう呼んでいるのよ。やり方は簡単で、頭に思い浮かべた物をイメージし、魔力を練りながら物体を生み出す魔法なの。ただこの魔法はね・・。」
 「へえ・・じゃあ早速・・!」

 私はミルナバの説明を最後まで聞かずに立ち上がると、彼女と同じように錬金術をしようと片手を前に突き出して、手を広げる。

 思い浮かべたのは勿論炭酸水。
 頭の中に思い浮かべた炭酸水を作り出そうと、魔力を込めるのであったが、途中で魔力で作った円が解けて無くなり、倦怠感が私に襲いかかってくる。

 「ど、どうして・・?」
 「この錬金術はとても魔力と体力を消費するのよ。生命エネルギーを変換して物体を作るという原理だから、子供のあなたじゃとてもじゃないけど出来ないと思うわ」
 
 ミルナバの言葉に私は気落ちするが、私はすぐに違う手段を閃く。

 「ねえ、ミルナバさん魔力と体力があれば、錬金術は出来るんだよね?」
 「まあ、あとは作り出す物体の知識かな。それさえあれば大体の人は出来ると思うかな」
 
 ミルナバは顎に手を当て、思い出す仕草をしながらそう答える。

 「そうなんですね!ありがとうございます、勉強になりました!」

 私はそう言うと、ミルナバの手を取りぶんぶんと勢いよく握手をする。
 
 「何かの参考になったのら嬉しいよ・・。」
 「本当に助かりました、すみませんこんな物しかないんですけど受け取って下さい!」

 私はポッケからお小遣いの入った麻袋をミルナバに渡す。

 「い、いやこれは受け取れないよ・・。」
 「大丈夫ですよ!では私はこれで・・!」

 私は半ば強引にミルナバさんに麻袋を渡して、店を飛び出る。
 今頃父が私を必死に探しているであろうから、全速力で向かうのであった。

 
 錬金術は魔力量と体力がある魔法少女の姿でやればきっと出来るはずだ!

 私は炭酸飲料を作る計画に光が差し、笑顔が綻んでしまうのであった。
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