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前途多難
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この世界にいる私の願いはただ一つ。
それは、争いのない平穏な生活。
もう二度とあんな世界を見たくないから・・。
それが私の周りだけでもいいの・・。
正義とか悪とかそんな物が見えないような場所で一生を終えたい、だからフェニが来た時もミリアンヌが魔女を調べ、探そうとした時も内心は気が気ではなかったのだ。
何げない日常が崩れてしまうのが怖かったからだ。
そして何よりも争いは自己主張の塊であり、人間の醜いところが見えてしまうのだからだ・・。
ーーーーー
「どうしよう、炭酸水を作るための重曹ってないんだね・・。」
私は目の前の現実に項垂れるしかなかった。
前世にいたときは化学の実験で炭酸水を作ったことがあったから、その知識を利用して炭酸飲料を作ろうとした私であったが、その肝心の物がこの世界にはなかったのだ・・。
「クエン酸は果実で代用できるけど重曹自体がないとどうすることも出来ないだよね・・。」
私はため息混じりにそんなことを言い、石造りの階段に腰掛ける。
私は今、セルザローグと呼ばれる国の城下町に来ているのでった。
というのも、父は月に数度作物を出荷しに城下町に訪れるているので、頼み込んで連れて来て貰ったのでる。
村からセルザローグの城下町まではかなり離れており、移動だけで7時間ほど馬車に揺られなければならず、険しい道のりになるので、父も最初は私の同行を渋っていたのだが、私の熱意に負けて同行を許可してくれたのであった。
本来だったら、飛行魔法で数時間で来ることが可能なのだが、私の小遣いで商品が買えない場合は骨折り損なので、親におねだりする算段であったために、馬車に揺られながらのキツイ旅路を渡って来たのであった。
(ちなみに今回フェニはお留守番だから、相談する相手もいないんだよね)
が、収穫がないため私は頬杖をついてどうしたものかと考えながら街並みを見ていると、私の頭の中に一つの仮説が思い浮かぶ。
もしかしたら一般的に売られていない高価なものなのかも・・。
中世のヨーロッパでは、胡椒が銀と同価値だったとされていたらしいので、私はこの世界の重曹も同じことが起きているのではないかという結論に至り、立ち上がる。
父を振り切っているので、早めに合流しないと、大騒ぎになりそうなので、私は駆け足で、大通りを抜けていくのであった。
ーーーーー
この城下町では、一般の人が行き交う大通りには、露店や食品が多く立ち並ぶが、その奥へ進んで行くと高級用品店などが多く点在しているのであった。
私は小走りで、一つ一つの店舗の内装で判別し、過ぎ去っていく。
高級レストラン・宝石店・装飾屋・紳士服を取り扱っている店など、立ち寄ったことなどない店などが立ち並んでおり、行き交う人々の視線が段々と冷たい物に変わっていることに気づく。
田舎からやって来ている私の服装は襟元が伸びた使い古しの衣服であったためだろう。
どこの世界でも身分格差っていうのはあるのだろう・・。
すれ違う通行人の視線が『貧乏人が此処を彷徨くな』と、言っているほど怪訝な目が私に降り掛かる。
だが、今はなりふりを構ってはいられない。
私は蔑まれた視線を気にしないフリをして、歩みを進めるのであった。
しばらくすると、前方に雑貨屋らしき店を見つけることができたのだ。
だが近づいてみると・・。
「何だか古臭いお店・・。」
他の店舗と比べて、あまりにもボロボロな外装のその店を見て期待値が急降下してしまう。
というか、辺りの様子もどこかおかしい・・。
この近くだけ、やけに人通りが少ないのである。
それだけではなく、通り道も小汚く、地面に座り込んでいる人物もチラホラと見受けられ、治安の悪さが窺える。
「アンタこんなところで何をしているんだい?」
後方から突然声をかけられ、私は肩をビクつかせて驚く。
そこには、ローブを被った人物がこちらを窺うように佇んでいた。
僅かに見える手は白魚のように白く、枝のように細かった。
「え、えっとある物を探していて・・。」
「ふぅん・・そう。ならウチに入ったら?」
ローブの人物は中性的な声でそう言うと、ボロボロの雑貨屋らしき店の中へと入っていき、私は驚きの声を上げる。
「え・・えっ?」
「ここ、アタシの家でアタシの店だから」
ローブの人物はそう言い、エスコートする様に私の身長に合わせて屈み、手を差し出す。
「じ、じゃあお邪魔します・・。」
私はそう言い、ローブの人物のことを疑いもせずに手を取ってしまうのであった。
それは、争いのない平穏な生活。
もう二度とあんな世界を見たくないから・・。
それが私の周りだけでもいいの・・。
正義とか悪とかそんな物が見えないような場所で一生を終えたい、だからフェニが来た時もミリアンヌが魔女を調べ、探そうとした時も内心は気が気ではなかったのだ。
何げない日常が崩れてしまうのが怖かったからだ。
そして何よりも争いは自己主張の塊であり、人間の醜いところが見えてしまうのだからだ・・。
ーーーーー
「どうしよう、炭酸水を作るための重曹ってないんだね・・。」
私は目の前の現実に項垂れるしかなかった。
前世にいたときは化学の実験で炭酸水を作ったことがあったから、その知識を利用して炭酸飲料を作ろうとした私であったが、その肝心の物がこの世界にはなかったのだ・・。
「クエン酸は果実で代用できるけど重曹自体がないとどうすることも出来ないだよね・・。」
私はため息混じりにそんなことを言い、石造りの階段に腰掛ける。
私は今、セルザローグと呼ばれる国の城下町に来ているのでった。
というのも、父は月に数度作物を出荷しに城下町に訪れるているので、頼み込んで連れて来て貰ったのでる。
村からセルザローグの城下町まではかなり離れており、移動だけで7時間ほど馬車に揺られなければならず、険しい道のりになるので、父も最初は私の同行を渋っていたのだが、私の熱意に負けて同行を許可してくれたのであった。
本来だったら、飛行魔法で数時間で来ることが可能なのだが、私の小遣いで商品が買えない場合は骨折り損なので、親におねだりする算段であったために、馬車に揺られながらのキツイ旅路を渡って来たのであった。
(ちなみに今回フェニはお留守番だから、相談する相手もいないんだよね)
が、収穫がないため私は頬杖をついてどうしたものかと考えながら街並みを見ていると、私の頭の中に一つの仮説が思い浮かぶ。
もしかしたら一般的に売られていない高価なものなのかも・・。
中世のヨーロッパでは、胡椒が銀と同価値だったとされていたらしいので、私はこの世界の重曹も同じことが起きているのではないかという結論に至り、立ち上がる。
父を振り切っているので、早めに合流しないと、大騒ぎになりそうなので、私は駆け足で、大通りを抜けていくのであった。
ーーーーー
この城下町では、一般の人が行き交う大通りには、露店や食品が多く立ち並ぶが、その奥へ進んで行くと高級用品店などが多く点在しているのであった。
私は小走りで、一つ一つの店舗の内装で判別し、過ぎ去っていく。
高級レストラン・宝石店・装飾屋・紳士服を取り扱っている店など、立ち寄ったことなどない店などが立ち並んでおり、行き交う人々の視線が段々と冷たい物に変わっていることに気づく。
田舎からやって来ている私の服装は襟元が伸びた使い古しの衣服であったためだろう。
どこの世界でも身分格差っていうのはあるのだろう・・。
すれ違う通行人の視線が『貧乏人が此処を彷徨くな』と、言っているほど怪訝な目が私に降り掛かる。
だが、今はなりふりを構ってはいられない。
私は蔑まれた視線を気にしないフリをして、歩みを進めるのであった。
しばらくすると、前方に雑貨屋らしき店を見つけることができたのだ。
だが近づいてみると・・。
「何だか古臭いお店・・。」
他の店舗と比べて、あまりにもボロボロな外装のその店を見て期待値が急降下してしまう。
というか、辺りの様子もどこかおかしい・・。
この近くだけ、やけに人通りが少ないのである。
それだけではなく、通り道も小汚く、地面に座り込んでいる人物もチラホラと見受けられ、治安の悪さが窺える。
「アンタこんなところで何をしているんだい?」
後方から突然声をかけられ、私は肩をビクつかせて驚く。
そこには、ローブを被った人物がこちらを窺うように佇んでいた。
僅かに見える手は白魚のように白く、枝のように細かった。
「え、えっとある物を探していて・・。」
「ふぅん・・そう。ならウチに入ったら?」
ローブの人物は中性的な声でそう言うと、ボロボロの雑貨屋らしき店の中へと入っていき、私は驚きの声を上げる。
「え・・えっ?」
「ここ、アタシの家でアタシの店だから」
ローブの人物はそう言い、エスコートする様に私の身長に合わせて屈み、手を差し出す。
「じ、じゃあお邪魔します・・。」
私はそう言い、ローブの人物のことを疑いもせずに手を取ってしまうのであった。
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