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大狼の求める魔女
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私の頬を鼻息が強く触れ、むず痒さで意識が覚醒する。
「ここは・・?」
「起きた?」
頭に直接響くような大きな声に驚き私は頭を押さえる。
意識が目覚めた私は全長が貴族の城のように大きい大狼のお腹の中で気絶していたらしい。
捕まってしまったという絶望感とは裏腹に、ビーズソファのような不思議な感触に私は夢心地になってしまっていた。
「私たちをどうする気なの?」
「それは教えられないね」
私が大狼の腹を撫でながらそう聞くと、身を捩りながら大狼は素っ気なく答える。
「君といると調子が狂うよ。ボクは早く魔女を見つけないといけないのに・・。」
唸り声を上げながらそう言うが、大狼は私たちが自身の身体から滑り落ちないようにバランスをとっている。
大狼にとって私たちは保護対象のような物なのだろう。
根本にある性格はとても優しいものなのではないかと、数度の言動で私はそう感じた。
「貴方が魔女を見つけたらどうするつもりなの?」
「教えられないね・・。」
「そればっかり・・。」
呆れた私が寝返りをうつとそこには、穏やかな顔で寝ているミリアンヌがいることに私は安堵する。
彼女が無事であって良かった・・。
だが、この後のことを考えると自然と身体が強張る。
「安心しなよ、彼女と子供たちはちゃんと返してあげるよ・・。ボクにとって必要ないからね」
「ちょっと待ってその言い方じゃまるで・・。」
「君は返さないよ?まだ君が魔女ではないと断言出来たわけじゃないしね」
大狼の言葉に私は大きくため息を吐く。
この世界でも私は危険なことに巻き込まれるのだろう。
なんて不運なんだろうと、自分を嘆いていると、大狼がふと気づいたように訊ねてくる。
「どこで魔法は学んだんだい?」
「・・・え?」
大狼の疑問に私は口籠る。
「その・・突然使えるようになっただけなので、独学?ですかね・・。」
「そんなわけないないでしょ。君の魔法は感覚で出来る域を優に超えているよ」
大狼はそう言い私を見定めるような視線で見る。
私の顔ほどある大きな眼が私を捉える。
「もしかして君が魔女なのかい?魔力の流れも相応しい波動も少し違うけど、そう思わせる何かが君にはあるんだよ・・。」
息が詰まりそうになるほどの圧が大狼から出される。
過呼吸になるほどの緊張に押し潰されそうになったその時であった・・。
「違う!魔女はレーネなの!」
大狼に注目を浴びるようにそう言い切ったのは、黒髪の少女のレーネであった。
「レーネちゃん・・どうしてここに!?」
「ごめん、ベーラちゃん。でもやっぱり、ほっとけないから・・。」
レーネは申し訳なさそうに私にそう言うと、大狼をキッと睨みつける。
「これで十分でしょ?他の子供たちを返して、そして村には何もしないで・・。」
「君が魔女・・?ああそうか」
レーネの言葉に大狼は首を傾げるが、しばらくすると合点がいったのか、大きな頭を縦に振る。
「君はボクの求める魔女に満たないんだよ。いや二人ともと言うべきか」
大狼はそう言うと、鋭い眼光を私たちに向ける。
実際はレーネに対してだが、全方から睨まれるような錯覚に陥るほど、大狼の眼光から放たれる威圧的な視線はそう感じざるえなかった。
「ボクに隠し事とはいい度胸だね」
張り詰めた空気に押し潰されそうになる私たちは、身体を震わし近づいてくる死の恐怖をただ待つことしか出来ずにいた。
レーネは大狼の圧に負け地べたにへたり込む。
少動物のように震えるレーネを大狼は軽蔑な眼差しで見据える。
「これでハッキリしたよ、魔女は君だ」
私を見つめそう断言した大狼の眼は好奇心のようなもので疼いていた。
「ここは・・?」
「起きた?」
頭に直接響くような大きな声に驚き私は頭を押さえる。
意識が目覚めた私は全長が貴族の城のように大きい大狼のお腹の中で気絶していたらしい。
捕まってしまったという絶望感とは裏腹に、ビーズソファのような不思議な感触に私は夢心地になってしまっていた。
「私たちをどうする気なの?」
「それは教えられないね」
私が大狼の腹を撫でながらそう聞くと、身を捩りながら大狼は素っ気なく答える。
「君といると調子が狂うよ。ボクは早く魔女を見つけないといけないのに・・。」
唸り声を上げながらそう言うが、大狼は私たちが自身の身体から滑り落ちないようにバランスをとっている。
大狼にとって私たちは保護対象のような物なのだろう。
根本にある性格はとても優しいものなのではないかと、数度の言動で私はそう感じた。
「貴方が魔女を見つけたらどうするつもりなの?」
「教えられないね・・。」
「そればっかり・・。」
呆れた私が寝返りをうつとそこには、穏やかな顔で寝ているミリアンヌがいることに私は安堵する。
彼女が無事であって良かった・・。
だが、この後のことを考えると自然と身体が強張る。
「安心しなよ、彼女と子供たちはちゃんと返してあげるよ・・。ボクにとって必要ないからね」
「ちょっと待ってその言い方じゃまるで・・。」
「君は返さないよ?まだ君が魔女ではないと断言出来たわけじゃないしね」
大狼の言葉に私は大きくため息を吐く。
この世界でも私は危険なことに巻き込まれるのだろう。
なんて不運なんだろうと、自分を嘆いていると、大狼がふと気づいたように訊ねてくる。
「どこで魔法は学んだんだい?」
「・・・え?」
大狼の疑問に私は口籠る。
「その・・突然使えるようになっただけなので、独学?ですかね・・。」
「そんなわけないないでしょ。君の魔法は感覚で出来る域を優に超えているよ」
大狼はそう言い私を見定めるような視線で見る。
私の顔ほどある大きな眼が私を捉える。
「もしかして君が魔女なのかい?魔力の流れも相応しい波動も少し違うけど、そう思わせる何かが君にはあるんだよ・・。」
息が詰まりそうになるほどの圧が大狼から出される。
過呼吸になるほどの緊張に押し潰されそうになったその時であった・・。
「違う!魔女はレーネなの!」
大狼に注目を浴びるようにそう言い切ったのは、黒髪の少女のレーネであった。
「レーネちゃん・・どうしてここに!?」
「ごめん、ベーラちゃん。でもやっぱり、ほっとけないから・・。」
レーネは申し訳なさそうに私にそう言うと、大狼をキッと睨みつける。
「これで十分でしょ?他の子供たちを返して、そして村には何もしないで・・。」
「君が魔女・・?ああそうか」
レーネの言葉に大狼は首を傾げるが、しばらくすると合点がいったのか、大きな頭を縦に振る。
「君はボクの求める魔女に満たないんだよ。いや二人ともと言うべきか」
大狼はそう言うと、鋭い眼光を私たちに向ける。
実際はレーネに対してだが、全方から睨まれるような錯覚に陥るほど、大狼の眼光から放たれる威圧的な視線はそう感じざるえなかった。
「ボクに隠し事とはいい度胸だね」
張り詰めた空気に押し潰されそうになる私たちは、身体を震わし近づいてくる死の恐怖をただ待つことしか出来ずにいた。
レーネは大狼の圧に負け地べたにへたり込む。
少動物のように震えるレーネを大狼は軽蔑な眼差しで見据える。
「これでハッキリしたよ、魔女は君だ」
私を見つめそう断言した大狼の眼は好奇心のようなもので疼いていた。
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