ダークファンタジーの魔法少女、異世界スローライフで日常を知る

タカヒラ 桜楽

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危険生物の正体

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 私は自分の腕を掴むレーネを不審な目で見つめる。
 この少女は一体何を知って、何を隠しているのか・・。
 
 「レーネちゃんどういうことなのか説明して?」
 「言えない・・。言ってもしんようしてくれないと思う。」
 「そんなことない、レーネちゃんの言葉を信じるから私に教えて・・。」
 「ダメ・・。」

 頑なに首を横に振り続けるレーネ。
 どうしたものかと私が悩んでいると、痺れを切らした兄のモートリーがレーネの服を掴み怒鳴り声をあげる。
 
 「いいからさっさと言えよ!早くしないと、ミリアンヌが・・。」
 「そんこと、レーネに言われても・・。レーネたちじゃどうすることもできない・・。」
 「それを決めるのはお前じゃない!」
 「お兄ちゃん!」

 焦りと怒りで我を失っている兄はレーネに強くあたる。
 そんな兄を私は一喝する。
 珍しく声を荒げた私に兄は思わず黙ってしまう。

 「な、何だよ・・。」
 「焦る気持ちはわかるけど、だからってレーネにあたるのは違うよ・・。」

 時間が惜しいと感じた私は優しくレーネの腕を振り解き、語りかけるように話す。

 「レーネちゃん、あなたの話したくないことを無理に問い詰めたりしてごめんね。話したくないなら話さなくていい、けれどこれは私自身がしたいことなの、だから止めないで・・。」
 「ベーラちゃんダメッ!」

 私はレーネの静止の言葉を受け止めず、自身に強化魔法をかける。
 眩い光が私を包むと、兄は私の意図を察したのか、レーネを抱き抱える。

 「ベーラ、お前の力はならミリアンヌを探せるかもしれないけど無理はするなよ!今大人を呼んでくるから・・。」
 「ありがとうお兄ちゃん!」

 私はそう言い残すと、必死で止めようとするレーネの声を背にして、大地を蹴るのであった。


 ーーーーー

 父親よりもうるさいイビキが聞こえ、ミリアンヌの意識が覚醒する。
 と、同時にミリアンヌの鼻を腐敗臭が突き抜けるように臭う。
 その臭さに吐き気を催したミリアンヌは、その場に吐瀉物を吐き出す。
 その音で何者かが目覚め、大きく身を捩る。
 ミリアンヌは驚きのあまり、悲鳴をあげることも出来ずにじっと、目の前の怪物を見ることしか出来ずにいた。
 木をもへし折れそうなほどの大きさの口に、見るものを石のように固めてしまうと錯覚するほどの威圧感のある鋭い眼。
 そして、幻想的で不気味な淡い紫の発色の毛が、うねるように動く。
 ミリアンヌの前にいたのは体長十数メートルもある大狼であった。
 大狼が身を捩ってこちらを向こうとしている姿はさながら大蛇のようであった。

 ミリアンヌが流線的なその毛の動きに目を奪われていると、ミリアンヌの顔ほどに大きな怪物の両眼がミリアンヌを捉える。

 「やっと起きた?」

 優しく問いかけた大狼であったがら獰猛な口が動くだけで、ミリアンヌには命の危険が陥るほど、恐怖を植え付けられる。
 
 「こ、来ないで・・。」
 「勘違いしないでよ、ボクは君を食べたりしないよ。ボクが間違えて君を連れてきてしまったんだ。本当におっちょこちょいだよねえ、ハッハッハ!」

 大狼は大気が揺れるほど大きな笑い声をあげる。
 ミリアンヌはそんな大狼を見て、おそるおそる訊ねる。

 「誰と間違えたんですか・・?」
 「君たちと一緒にいた少女だよ。僕も初めて会うからどんな背格好なのかとかはわからないんだよね。ただ、魔力の質がとても多い人というべきかな・・。」
 
 大狼は欠伸混じりにそう言うと、

 「君も結構秘めている物があると思って連れてきたんだけど・・君じゃなかったんだよね・・。近くで見たら全然ちがったよ」

 と、言い顎でミリアンヌの後方を指す。

 「だから君はもう帰っていいよ。この獣道をまっすぐ行くと村に着くはずだから・・。」

 大老はそう言い終わると、再び犬のように丸くなってしまうのだった。
 巨体のせいで大蛇が蠢いているような不気味さでミリアンヌはその場から一目散に立ち去ろうとしたそのときだった。

 「キャアアアア!!」

 ミリアンヌはようやく自分のいたところに気がつき尻もちをつく。

 ミリアンヌの周辺には食い荒らされた動植物がひろがっていたのだ。
 猪や鹿、鳥だけではなく、成人男性よりも遥かにおおきい熊さえも貪られていた。

 数日間放置されているのだろう。 

 死肉の中から蛆が湧いており、腐敗臭の原因に気づき、ミリアンヌはまた地べたに嘔吐する。

 「おいおい・・。ボクの寝床を汚さないでくれよ?」
 「こ、これ・・全部あなたがやったの?」
 「・・・?それは同然だろう。お腹が空いたら何かを食べるしかないだろう。手短にあった物を食べたんだよ」

 猟師すらも手を焼く熊を食物として見ているこの大狼により大きな恐怖をミリアンヌは抱く。
 
 ミリアンヌはこの場から早く逃げたくて、走り出そうとしたその時であった。

 「ボクさ・・結構お腹空いているんだよね。ここ最近ロクにご飯も見つからないし、大変なんだよねえ」

 含みのある言い方をした大狼は、次の瞬間ミリアンヌを取り囲むよう自身の身体を円にしてミリアンヌを閉じ込める。

 「村に戻ってさ大人たちにこう言ってくれないかな?『村の魔女を森にいるフェンリルに差し出せ』ってね。もしが姿を表さなかったら、村人全員食べちゃうから、もちろん君もね?」

 ニチャアと君の悪い笑いを浮かべる大狼に、ミリアンヌは恐怖のあまり身体が弛緩し、脱力感から尿を垂れ流す。

 「た、助けて・・。」
 「さっきから君は汚いなあ?ここはボクの寝床だって言ったでょ?あんまりおイタをしちゃんなら・・。」

 大狼はそういながら、大きな口を開ける。獣臭さと、暗闇のような口内がミリアンヌの眼前に近づく。

 「ここで食べちゃってもいいんだよ?」
 「ーーーッ!?」

 明らかな殺気にミリアンヌは声にならない叫び声をあげる。
 
 その時であったーーー。

 「そこまでにして!」

 森の木々を掻き分け大狼とミリアンヌの前に少女が姿を現す。
 淡い金色の光を帯びたその少女はよく村で遊んでいた男友達の妹であった。

 「・・・ベーラちゃん・・!?」

 その少女はいつもの穏やかな雰囲気とは違い、鬼気迫る物を感じミリアンヌは何が起こっているのかわからずにいた。

 

 
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