5 / 37
タナレスクの森
しおりを挟む
タナレスクの森とは、私たちの村から少し離れた森林地帯になっている場所である。
この森林では、動植物が多種多様存在し、子供の遊び場としてよく訪れられている所であった。
そんなタナレスクの森であったが、この頃都市伝説のような噂が広まっており、村の子どもたちはこの森に入ることを禁じられているのである。
というのも、雑貨や服などを届ける行商人が数十キロ離れた街のセルザローグと呼ばれる場所からこのタナレスクを通過してやって来るのだが、その行商人が何者かに襲われたらしい。
行商人はなんとか私たちの住む村にやって来たのだが、彼はとても巨大な怪物を見たと、傷口を見せながら喚いていた。
村の人たちは馬車にあった食べ物に釣られて熊が出たのだろうとその男の話をまともに聞き入れなかった。
だが、実際に行商人が襲われたことは事実なので、村の人たちは気性の荒い時期の熊がいるタナレスクの森に子どもたちだけで行くことを禁じたのだ。
だが、遠目から見ていた私だけが気づいていたのかもしれない。
その行商人からわずかな魔力残滓があったことに・・。
ーーーーー
私は真っ昼間なのに、日差しが十分に入らない森の中を怯えながら、歩みを進める。
余談だが、私は重度の怖がりで、夜一人でトイレを行くのも覚悟がいるほど、暗い所や霊的現象がにがてなのだ。
実際に今、物音がするだけでその場でうずくまって怖がってしまう始末である。
そんか私を見て、兄のモートリーが小馬鹿にするように笑う。
「アハハハ!なーにビビってるんだよ。何かあったら僕が守ってやるから大丈夫だよ!」
胸をドンと、叩いて言う兄に私はジト目を向ける。
「じゃあ、この森に入ったことはお兄ちゃんに無理矢理連れてこられったってお母さんに言うから」
「それはベーラが言わなければいい話だろ!?」
母の名前を出しただけで、大慌てをする頼りない兄を見て、私は情けなくなる。
私は本当に行きたくなかったのに、兄たちに無理矢理連れて来られたのは事実なので、帰ったらこっそり告げ口をしてやろう。
自分勝手の兄には母の雷は良い薬だろう。
私は半ベソをかく兄を想像してニヤけてしまう。
「何笑ってんだよ・・。」
「モートリー静かにしなさいよ」
兄の口を塞いで小声で怒鳴ったのは兄と同い年の少女、ミリアンヌであった。
ミリアンヌの鬼気迫る顔にモートリーはしゅんとした表情で静かになってしまう。
兄は将来尻に敷かれるのだろう。
そう思うほどに今の兄は威厳が消えかかっていた。
「モートリーあまり騒がないように・・。動物は大きな物音に敏感なんだ。興奮して襲い掛かってくるかもしれないから気をつけてね」
「ごめんなさい・・。」
みんなのまとめ役の歳の離れたアルフレッドが兄を諌める。
兄は前を行くアルフレッドと、ミリアンヌの後ろをトボトボとついて行く。
「捨てられた子犬みたい・・。」
私がボソッとその言葉を言うと、後ろから服を引っ張られる。
何事かとおそるおそる振り返ると、艶やかな黒髪の少女レネッタが怯えるように私の服を掴んでいたのだ。
「帰りたい・・。」
ボソッと小さくそう言ったレネッタ、もといレーネの腕は何かを恐れているように震えていた。
私は彼女の様子を見て、私と同じ怖がりさんなのだと思い、レーネの手を取る。
「怖がらなくていいよ・・。ほら早く行かないと置いていかれちゃうよ」
怯えるリーネを見て私の庇護欲が刺激される。
私は笑顔を振り撒くようにして言うと、彼女の手を引っ張る。
だが、散歩のルートを拒む飼い犬のように、頑なに歩こうとしないレーネに私は困惑する。
アルフレッドの口ぶりから最近こちらにやってきた様子であったから、初めての環境で怖がっているのだろう。
どうしたものかと、困っていると私たちはあることに気づく。
前を歩いていた三人がいなくなっていることに・・。
これってもしかて、私たち迷子になっちゃった?
この森林では、動植物が多種多様存在し、子供の遊び場としてよく訪れられている所であった。
そんなタナレスクの森であったが、この頃都市伝説のような噂が広まっており、村の子どもたちはこの森に入ることを禁じられているのである。
というのも、雑貨や服などを届ける行商人が数十キロ離れた街のセルザローグと呼ばれる場所からこのタナレスクを通過してやって来るのだが、その行商人が何者かに襲われたらしい。
行商人はなんとか私たちの住む村にやって来たのだが、彼はとても巨大な怪物を見たと、傷口を見せながら喚いていた。
村の人たちは馬車にあった食べ物に釣られて熊が出たのだろうとその男の話をまともに聞き入れなかった。
だが、実際に行商人が襲われたことは事実なので、村の人たちは気性の荒い時期の熊がいるタナレスクの森に子どもたちだけで行くことを禁じたのだ。
だが、遠目から見ていた私だけが気づいていたのかもしれない。
その行商人からわずかな魔力残滓があったことに・・。
ーーーーー
私は真っ昼間なのに、日差しが十分に入らない森の中を怯えながら、歩みを進める。
余談だが、私は重度の怖がりで、夜一人でトイレを行くのも覚悟がいるほど、暗い所や霊的現象がにがてなのだ。
実際に今、物音がするだけでその場でうずくまって怖がってしまう始末である。
そんか私を見て、兄のモートリーが小馬鹿にするように笑う。
「アハハハ!なーにビビってるんだよ。何かあったら僕が守ってやるから大丈夫だよ!」
胸をドンと、叩いて言う兄に私はジト目を向ける。
「じゃあ、この森に入ったことはお兄ちゃんに無理矢理連れてこられったってお母さんに言うから」
「それはベーラが言わなければいい話だろ!?」
母の名前を出しただけで、大慌てをする頼りない兄を見て、私は情けなくなる。
私は本当に行きたくなかったのに、兄たちに無理矢理連れて来られたのは事実なので、帰ったらこっそり告げ口をしてやろう。
自分勝手の兄には母の雷は良い薬だろう。
私は半ベソをかく兄を想像してニヤけてしまう。
「何笑ってんだよ・・。」
「モートリー静かにしなさいよ」
兄の口を塞いで小声で怒鳴ったのは兄と同い年の少女、ミリアンヌであった。
ミリアンヌの鬼気迫る顔にモートリーはしゅんとした表情で静かになってしまう。
兄は将来尻に敷かれるのだろう。
そう思うほどに今の兄は威厳が消えかかっていた。
「モートリーあまり騒がないように・・。動物は大きな物音に敏感なんだ。興奮して襲い掛かってくるかもしれないから気をつけてね」
「ごめんなさい・・。」
みんなのまとめ役の歳の離れたアルフレッドが兄を諌める。
兄は前を行くアルフレッドと、ミリアンヌの後ろをトボトボとついて行く。
「捨てられた子犬みたい・・。」
私がボソッとその言葉を言うと、後ろから服を引っ張られる。
何事かとおそるおそる振り返ると、艶やかな黒髪の少女レネッタが怯えるように私の服を掴んでいたのだ。
「帰りたい・・。」
ボソッと小さくそう言ったレネッタ、もといレーネの腕は何かを恐れているように震えていた。
私は彼女の様子を見て、私と同じ怖がりさんなのだと思い、レーネの手を取る。
「怖がらなくていいよ・・。ほら早く行かないと置いていかれちゃうよ」
怯えるリーネを見て私の庇護欲が刺激される。
私は笑顔を振り撒くようにして言うと、彼女の手を引っ張る。
だが、散歩のルートを拒む飼い犬のように、頑なに歩こうとしないレーネに私は困惑する。
アルフレッドの口ぶりから最近こちらにやってきた様子であったから、初めての環境で怖がっているのだろう。
どうしたものかと、困っていると私たちはあることに気づく。
前を歩いていた三人がいなくなっていることに・・。
これってもしかて、私たち迷子になっちゃった?
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる