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タナレスクの森
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タナレスクの森とは、私たちの村から少し離れた森林地帯になっている場所である。
この森林では、動植物が多種多様存在し、子供の遊び場としてよく訪れられている所であった。
そんなタナレスクの森であったが、この頃都市伝説のような噂が広まっており、村の子どもたちはこの森に入ることを禁じられているのである。
というのも、雑貨や服などを届ける行商人が数十キロ離れた街のセルザローグと呼ばれる場所からこのタナレスクを通過してやって来るのだが、その行商人が何者かに襲われたらしい。
行商人はなんとか私たちの住む村にやって来たのだが、彼はとても巨大な怪物を見たと、傷口を見せながら喚いていた。
村の人たちは馬車にあった食べ物に釣られて熊が出たのだろうとその男の話をまともに聞き入れなかった。
だが、実際に行商人が襲われたことは事実なので、村の人たちは気性の荒い時期の熊がいるタナレスクの森に子どもたちだけで行くことを禁じたのだ。
だが、遠目から見ていた私だけが気づいていたのかもしれない。
その行商人からわずかな魔力残滓があったことに・・。
ーーーーー
私は真っ昼間なのに、日差しが十分に入らない森の中を怯えながら、歩みを進める。
余談だが、私は重度の怖がりで、夜一人でトイレを行くのも覚悟がいるほど、暗い所や霊的現象がにがてなのだ。
実際に今、物音がするだけでその場でうずくまって怖がってしまう始末である。
そんか私を見て、兄のモートリーが小馬鹿にするように笑う。
「アハハハ!なーにビビってるんだよ。何かあったら僕が守ってやるから大丈夫だよ!」
胸をドンと、叩いて言う兄に私はジト目を向ける。
「じゃあ、この森に入ったことはお兄ちゃんに無理矢理連れてこられったってお母さんに言うから」
「それはベーラが言わなければいい話だろ!?」
母の名前を出しただけで、大慌てをする頼りない兄を見て、私は情けなくなる。
私は本当に行きたくなかったのに、兄たちに無理矢理連れて来られたのは事実なので、帰ったらこっそり告げ口をしてやろう。
自分勝手の兄には母の雷は良い薬だろう。
私は半ベソをかく兄を想像してニヤけてしまう。
「何笑ってんだよ・・。」
「モートリー静かにしなさいよ」
兄の口を塞いで小声で怒鳴ったのは兄と同い年の少女、ミリアンヌであった。
ミリアンヌの鬼気迫る顔にモートリーはしゅんとした表情で静かになってしまう。
兄は将来尻に敷かれるのだろう。
そう思うほどに今の兄は威厳が消えかかっていた。
「モートリーあまり騒がないように・・。動物は大きな物音に敏感なんだ。興奮して襲い掛かってくるかもしれないから気をつけてね」
「ごめんなさい・・。」
みんなのまとめ役の歳の離れたアルフレッドが兄を諌める。
兄は前を行くアルフレッドと、ミリアンヌの後ろをトボトボとついて行く。
「捨てられた子犬みたい・・。」
私がボソッとその言葉を言うと、後ろから服を引っ張られる。
何事かとおそるおそる振り返ると、艶やかな黒髪の少女レネッタが怯えるように私の服を掴んでいたのだ。
「帰りたい・・。」
ボソッと小さくそう言ったレネッタ、もといレーネの腕は何かを恐れているように震えていた。
私は彼女の様子を見て、私と同じ怖がりさんなのだと思い、レーネの手を取る。
「怖がらなくていいよ・・。ほら早く行かないと置いていかれちゃうよ」
怯えるリーネを見て私の庇護欲が刺激される。
私は笑顔を振り撒くようにして言うと、彼女の手を引っ張る。
だが、散歩のルートを拒む飼い犬のように、頑なに歩こうとしないレーネに私は困惑する。
アルフレッドの口ぶりから最近こちらにやってきた様子であったから、初めての環境で怖がっているのだろう。
どうしたものかと、困っていると私たちはあることに気づく。
前を歩いていた三人がいなくなっていることに・・。
これってもしかて、私たち迷子になっちゃった?
この森林では、動植物が多種多様存在し、子供の遊び場としてよく訪れられている所であった。
そんなタナレスクの森であったが、この頃都市伝説のような噂が広まっており、村の子どもたちはこの森に入ることを禁じられているのである。
というのも、雑貨や服などを届ける行商人が数十キロ離れた街のセルザローグと呼ばれる場所からこのタナレスクを通過してやって来るのだが、その行商人が何者かに襲われたらしい。
行商人はなんとか私たちの住む村にやって来たのだが、彼はとても巨大な怪物を見たと、傷口を見せながら喚いていた。
村の人たちは馬車にあった食べ物に釣られて熊が出たのだろうとその男の話をまともに聞き入れなかった。
だが、実際に行商人が襲われたことは事実なので、村の人たちは気性の荒い時期の熊がいるタナレスクの森に子どもたちだけで行くことを禁じたのだ。
だが、遠目から見ていた私だけが気づいていたのかもしれない。
その行商人からわずかな魔力残滓があったことに・・。
ーーーーー
私は真っ昼間なのに、日差しが十分に入らない森の中を怯えながら、歩みを進める。
余談だが、私は重度の怖がりで、夜一人でトイレを行くのも覚悟がいるほど、暗い所や霊的現象がにがてなのだ。
実際に今、物音がするだけでその場でうずくまって怖がってしまう始末である。
そんか私を見て、兄のモートリーが小馬鹿にするように笑う。
「アハハハ!なーにビビってるんだよ。何かあったら僕が守ってやるから大丈夫だよ!」
胸をドンと、叩いて言う兄に私はジト目を向ける。
「じゃあ、この森に入ったことはお兄ちゃんに無理矢理連れてこられったってお母さんに言うから」
「それはベーラが言わなければいい話だろ!?」
母の名前を出しただけで、大慌てをする頼りない兄を見て、私は情けなくなる。
私は本当に行きたくなかったのに、兄たちに無理矢理連れて来られたのは事実なので、帰ったらこっそり告げ口をしてやろう。
自分勝手の兄には母の雷は良い薬だろう。
私は半ベソをかく兄を想像してニヤけてしまう。
「何笑ってんだよ・・。」
「モートリー静かにしなさいよ」
兄の口を塞いで小声で怒鳴ったのは兄と同い年の少女、ミリアンヌであった。
ミリアンヌの鬼気迫る顔にモートリーはしゅんとした表情で静かになってしまう。
兄は将来尻に敷かれるのだろう。
そう思うほどに今の兄は威厳が消えかかっていた。
「モートリーあまり騒がないように・・。動物は大きな物音に敏感なんだ。興奮して襲い掛かってくるかもしれないから気をつけてね」
「ごめんなさい・・。」
みんなのまとめ役の歳の離れたアルフレッドが兄を諌める。
兄は前を行くアルフレッドと、ミリアンヌの後ろをトボトボとついて行く。
「捨てられた子犬みたい・・。」
私がボソッとその言葉を言うと、後ろから服を引っ張られる。
何事かとおそるおそる振り返ると、艶やかな黒髪の少女レネッタが怯えるように私の服を掴んでいたのだ。
「帰りたい・・。」
ボソッと小さくそう言ったレネッタ、もといレーネの腕は何かを恐れているように震えていた。
私は彼女の様子を見て、私と同じ怖がりさんなのだと思い、レーネの手を取る。
「怖がらなくていいよ・・。ほら早く行かないと置いていかれちゃうよ」
怯えるリーネを見て私の庇護欲が刺激される。
私は笑顔を振り撒くようにして言うと、彼女の手を引っ張る。
だが、散歩のルートを拒む飼い犬のように、頑なに歩こうとしないレーネに私は困惑する。
アルフレッドの口ぶりから最近こちらにやってきた様子であったから、初めての環境で怖がっているのだろう。
どうしたものかと、困っていると私たちはあることに気づく。
前を歩いていた三人がいなくなっていることに・・。
これってもしかて、私たち迷子になっちゃった?
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