ダークファンタジーの魔法少女、異世界スローライフで日常を知る

タカヒラ 桜楽

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New World

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 それは突然のことであった。
 私は脳に電流が走り、木製のスプーンを床に落としてしまった。
 脳を鋭い痛みが通り抜け私は椅子から崩れ落ち、背中を丸めて苦痛の表情を浮かべるのであった。
 齢7歳私はその時、前世の記憶を思い出したのだ。

 「あああぁぁぁぁ!!!」

 「ベーラどうしたの!?」

 突然の私の言動に、母が寄り添い介抱する。 
 母の手は暖かく、普段は熱を出すと母の手を恋しく思うのだが、今回はそうはいかなかった。
 脳が焼け切れるように痛く、今の私にとって母の行動は焼け石に水であり、余裕のない私は母の手を振り払う。

 取り乱した私を家族はとても心配していたが、その痛みは数分後にピタリと止んでしまった。

 「だ、大丈夫なのか?」

 と、恐る恐るそう聞いたのは、現在の世界の兄モートリーであった。
 私は平静を装った顔で、何事もなかったかのように席をつく。

 「何か怖い声が聞こえたの・・。」

 私はそう言いぎこちのない笑みを家族に向ける。
 この世界では、あらゆる現象が解明されてない中世紀のような途上文化であるし、なによりも魔法という物が公になっている世界なので家族はすぐに私の言葉を信じてくれたのであった。

 「今度また聞こえたら、お兄ちゃんに言うんだぞ?お兄ちゃんがベーラを守ってやるんだからな」

 兄は胸を張ってそう言い、木製のスプーンを立てる。

 そんな姿を見て、両親は微笑む。
 怖がる必要はないと言った様子であったが、私の両手は酷く震えていた。

 私は突然前世を思い出してしまったのだ。
 魔法少女の時に体験した、辛い過去が雪崩のように私の記憶を呼び起こさせたのだ。
 

 私は瞬時に理解した。
 これが夢や妄想の産物ではないことに・・。
 というのも、私の身体にはあの時の力が偶然にも継承されていたのだ。
 こちらの世界でいう魔力が私の身体を循環しているのが身体を通して脳に伝わる。
 先程まで感じなかった、この力の流れは前世の物と全くと言っていいほどに同じであった。

 だが、私はいつものように純真な子供のフリをしながら食事を再開した。
 この世界でも争い事が各地で勃発しているが、魔法少女の力はこちらの世界でも強大な物になるだろう。
 もしかしたら軍事的利用もあるかもしれない。

 だから、私は隠し通す。

 この平凡な世界で生きていくために・・。
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