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神様は悪人
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泣き虫で叶いもしない絵空事ばかり言う私は皆んなの嫌われ者であったが、皮肉にも最後の戦いまで生き残ってしまった。
〝magical girl killing〟
それが、魔法少女である私が強制的に参加させられた殺し合いのゲームであった。
世の中の負の感情を浄化させることが役目の魔法少女であったが、羨望の眼差し・嫉妬・憎悪、そのさまざまな感情を向けられる魔法少女こそ、大きな負の感情を抱くらしい。
魔法少女は消耗品、心が濁れば魔法少女としての力が衰える。
だがその負の感情を魔法少女自身は浄化させることが出来ない・・。
ならどうするのか・・。
それが、魔法少女同士の殺し合い。
浄化出来ないなら消せばいいのだ。
その程のいい大掃除に選ばれたのが、魔法少女同士の殺し合い、〝magical girl killing〟で、あったのだ。
主催者は分からないが、彼らの「勝者の願いを叶える」と、いう甘言に乗ってしまった魔法少女による殺し合いは凄惨たるものであった。
ーーーーー
「お願い!私のために死んでよッ!?」
私の上に跨りヒステリックに喚き散らしたのは、氷塊の魔法少女と呼ばれる氷室鈴菜であった。
普段は二つ名のように、冷静沈着な性格の彼女であったが、私との最後の戦いにおいて、その感情を閉ざしていた厚い氷が溶け、彼女の本心が露わになる。
彼女は自身の魔杖を氷の短刀に変えて私の喉元に突き立てていた。
私は彼女の気持ちを尊重したい、彼女に勝たせてあげたい・・だからこそ無駄な抵抗はせずにその短刀が喉元を斬り裂くのを待っていたのだが、私の能力がそれを拒む。
私の名は慈優愛。
二つ名は慈愛の魔法少女、笑っちゃうでしょ?
自分の名前に慈愛が入っていて、魔法少女としてもその言葉が入るなんて、でも実際は慈愛とはかけ離れた魔法少女になってしまったの。
いや、能力の強さでいったらそうなるのかな・・。
私の魔法少女としての能力は、対象者の行いを制限する能力である。
私との関わりが深いほどその能力は強くなり、現在相対している鈴菜は、私とこの馬鹿げたゲームを共に歩んできたかけがえのない友人である。
だから、彼女に私の能力は強く働いた。
私を殺せないという制限が・・。
それが慈愛の正体、愛や大切にしたいという感情に対して、強く左右されるこの能力は不可視の鎖と化す。
馬鹿げた話だが、私の能力は彼女が人の道に外れることを拒んでいるのだ、だから彼女は無抵抗の私を殺せない、それが今の現状である。
「この能力を解いてよ!優愛はゲームに勝ちたくないって、その時が来たら私を殺してって言ってたじゃない!全部嘘だったって言うのッ!?」
血走った眼で怒鳴り散らす鈴菜の言葉に私は首を振る。
「違う!私は戦いたくないし、スーちゃんに勝って欲しいよ・・!」
「違くなんかない!貴女はいつもそうよ。綺麗事ばかり述べて周りに嫌われたくないだけでしょ。能力なんて、自分の意思でどうにでもなるのそれをしないのは自分可愛さだからでしょ!」
彼女の言葉は正しかった。
自分の意思で能力を解くことは出来るが、私はそうはしなかった。
無意識下の中で私は生きようとしているのだろう。
「解け!さっさと解けよ!そして死ね!」
彼女の罵詈雑言に私の顔は歪む。
「もう・・やめて・・こんな世界間違ってるよ!?二人で助かる方法がきっとあるはず・・。」
「今更何を言っているの?」
彼女は私の言葉を嘲るようにして訊ねる。
彼女の瞳は淀んでおり、この世界に絶望しているようであった。
だが、その瞳は私の一言で憎悪の熱を帯びる。
「散々人を見殺しにしておいてよくもまあそんなことが言えるわね!あんたもこのゲームに乗っかったクズでしょうが!」
彼女は当たりもしない氷の短刀に力を入れて何度も私目掛け振り下ろす。
やがて、彼女は諦めたのか短刀を地面に落としておもむろに立ち上がる。
「何しているんだろうね私たち・・。必死になって人を殺そうとしているだなんて、こんなことして何になるんだろうね・・?」
何故か笑みを向ける鈴菜に私の頭はいち早く気づく・・。
彼女の頭上には、彼女が形成した槍の形を模した氷柱が現れていた。
「もうどうでもいいわ、自分の叶えたい夢よりもゆあちゃんの方が大切だよ・・。」
「ダメッ!?スーちゃん待って・・!?」
私は彼女と氷柱の間に割って入る。
氷柱は無常に私の身体を貫き、私は地面に横たわる。
おそらく、彼女に対する無作為な攻撃に私の慈愛の能力が発動しなかったのだろう・・。
その呆気ない最期に、泣き崩れる鈴菜の思いが伝わったように雨が降り出す。
さっきは散々なことを言ったくせに・・。
私は苦痛で顔が歪まないように表情を引き締める。
最後ぐらい微笑みたかったが、気を抜くと泣き叫びたくなるほどの苦痛が自分の身体を襲う。
こんなに痛いんだ、皆んなこんなに苦しい時に笑っていたんだ。
私の頭の中には今まで死んでいったこのゲームの参加者たちの顔が思い浮かぶ。
私はおもむろに鈴菜の手を握ると、ゆっくりと目を閉じる。
最後に私がすることは、その時が来るのをただ待つだけだ。
鈴菜が必死に何かを訴えかけていたが、耳が遠くなっていてよく聞き取れなかった。
身体に力が入らずに、そっと瞼を閉じた世界は暗く、身体が弱り、死の恐怖がすぐそこに佇んでいた。
だが、彼女の温もりを感じ、静かにその世界の中に私は溶け込んでゆくのであった・・。
〝magical girl killing〟
それが、魔法少女である私が強制的に参加させられた殺し合いのゲームであった。
世の中の負の感情を浄化させることが役目の魔法少女であったが、羨望の眼差し・嫉妬・憎悪、そのさまざまな感情を向けられる魔法少女こそ、大きな負の感情を抱くらしい。
魔法少女は消耗品、心が濁れば魔法少女としての力が衰える。
だがその負の感情を魔法少女自身は浄化させることが出来ない・・。
ならどうするのか・・。
それが、魔法少女同士の殺し合い。
浄化出来ないなら消せばいいのだ。
その程のいい大掃除に選ばれたのが、魔法少女同士の殺し合い、〝magical girl killing〟で、あったのだ。
主催者は分からないが、彼らの「勝者の願いを叶える」と、いう甘言に乗ってしまった魔法少女による殺し合いは凄惨たるものであった。
ーーーーー
「お願い!私のために死んでよッ!?」
私の上に跨りヒステリックに喚き散らしたのは、氷塊の魔法少女と呼ばれる氷室鈴菜であった。
普段は二つ名のように、冷静沈着な性格の彼女であったが、私との最後の戦いにおいて、その感情を閉ざしていた厚い氷が溶け、彼女の本心が露わになる。
彼女は自身の魔杖を氷の短刀に変えて私の喉元に突き立てていた。
私は彼女の気持ちを尊重したい、彼女に勝たせてあげたい・・だからこそ無駄な抵抗はせずにその短刀が喉元を斬り裂くのを待っていたのだが、私の能力がそれを拒む。
私の名は慈優愛。
二つ名は慈愛の魔法少女、笑っちゃうでしょ?
自分の名前に慈愛が入っていて、魔法少女としてもその言葉が入るなんて、でも実際は慈愛とはかけ離れた魔法少女になってしまったの。
いや、能力の強さでいったらそうなるのかな・・。
私の魔法少女としての能力は、対象者の行いを制限する能力である。
私との関わりが深いほどその能力は強くなり、現在相対している鈴菜は、私とこの馬鹿げたゲームを共に歩んできたかけがえのない友人である。
だから、彼女に私の能力は強く働いた。
私を殺せないという制限が・・。
それが慈愛の正体、愛や大切にしたいという感情に対して、強く左右されるこの能力は不可視の鎖と化す。
馬鹿げた話だが、私の能力は彼女が人の道に外れることを拒んでいるのだ、だから彼女は無抵抗の私を殺せない、それが今の現状である。
「この能力を解いてよ!優愛はゲームに勝ちたくないって、その時が来たら私を殺してって言ってたじゃない!全部嘘だったって言うのッ!?」
血走った眼で怒鳴り散らす鈴菜の言葉に私は首を振る。
「違う!私は戦いたくないし、スーちゃんに勝って欲しいよ・・!」
「違くなんかない!貴女はいつもそうよ。綺麗事ばかり述べて周りに嫌われたくないだけでしょ。能力なんて、自分の意思でどうにでもなるのそれをしないのは自分可愛さだからでしょ!」
彼女の言葉は正しかった。
自分の意思で能力を解くことは出来るが、私はそうはしなかった。
無意識下の中で私は生きようとしているのだろう。
「解け!さっさと解けよ!そして死ね!」
彼女の罵詈雑言に私の顔は歪む。
「もう・・やめて・・こんな世界間違ってるよ!?二人で助かる方法がきっとあるはず・・。」
「今更何を言っているの?」
彼女は私の言葉を嘲るようにして訊ねる。
彼女の瞳は淀んでおり、この世界に絶望しているようであった。
だが、その瞳は私の一言で憎悪の熱を帯びる。
「散々人を見殺しにしておいてよくもまあそんなことが言えるわね!あんたもこのゲームに乗っかったクズでしょうが!」
彼女は当たりもしない氷の短刀に力を入れて何度も私目掛け振り下ろす。
やがて、彼女は諦めたのか短刀を地面に落としておもむろに立ち上がる。
「何しているんだろうね私たち・・。必死になって人を殺そうとしているだなんて、こんなことして何になるんだろうね・・?」
何故か笑みを向ける鈴菜に私の頭はいち早く気づく・・。
彼女の頭上には、彼女が形成した槍の形を模した氷柱が現れていた。
「もうどうでもいいわ、自分の叶えたい夢よりもゆあちゃんの方が大切だよ・・。」
「ダメッ!?スーちゃん待って・・!?」
私は彼女と氷柱の間に割って入る。
氷柱は無常に私の身体を貫き、私は地面に横たわる。
おそらく、彼女に対する無作為な攻撃に私の慈愛の能力が発動しなかったのだろう・・。
その呆気ない最期に、泣き崩れる鈴菜の思いが伝わったように雨が降り出す。
さっきは散々なことを言ったくせに・・。
私は苦痛で顔が歪まないように表情を引き締める。
最後ぐらい微笑みたかったが、気を抜くと泣き叫びたくなるほどの苦痛が自分の身体を襲う。
こんなに痛いんだ、皆んなこんなに苦しい時に笑っていたんだ。
私の頭の中には今まで死んでいったこのゲームの参加者たちの顔が思い浮かぶ。
私はおもむろに鈴菜の手を握ると、ゆっくりと目を閉じる。
最後に私がすることは、その時が来るのをただ待つだけだ。
鈴菜が必死に何かを訴えかけていたが、耳が遠くなっていてよく聞き取れなかった。
身体に力が入らずに、そっと瞼を閉じた世界は暗く、身体が弱り、死の恐怖がすぐそこに佇んでいた。
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