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月で逢おうよ 25
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あまりの強烈な刺激は痛みとも何ともつかず勝浩の言葉さえ奪う。
「もちょと……力抜け…な……頼むから……俺ぁ、お前と一つになりてぇんだ………」
耳元に届いた幸也のそんな切なげな言葉に勝浩から次第に力が抜けていく。
「わりぃ………加減できねぇ………勝浩……かつ……」
軽口をたたいて勝浩をからかっているときの幸也はどこにもなく、口ではなだめすかしながら、容赦なく勝浩の体を開いていく。
「や……長谷川…さ…ん……!!」
「……幸也だ、幸也っ……て言って……………好きだ……勝浩………」
幸也の唇が耳朶に触れたまま動く。
「……ずるい………ゆき……っ!」
中で暴れ狂うのが幸也なのだと思うと、愛しさが込み上げて、広い背中に指がきつく食い込んでしまう。
もう嘘でも何でもいい、もうどうなってもいい……!
まるで身体の細胞の全てが幸也で満たされ、甘く変貌していく。
「………あ………あっ……」
勝浩の唇から制御不能な微かな喘ぎが色を帯びて漏れる。
「……かつ…ひろ…かつひろ……」
小さく悲鳴のようなひと際艶めいた吐息とともに幸也の指が濡れた途端、幸也も一気に果てた。
荒い息のまま、幸也はすぐに勝浩を抱きしめる。
こんなにも離れ難く、愛しい存在だったのに。
そんな想いに突き動かされ、幸也はぐったりした勝浩の顔を上げさせて唇を重ねる。
二度ともう、お前を傷つけるようなまねはしないから。
幸也は腕の中で意識を手放してしまった勝浩を見つめながら心に誓った。
日頃の行いがそんなによかったろうか、と思うほど見事な快晴の中、『動物愛護研究会』の一行は、一路帰途についた。
ただし、行きと少々違うのは、アウディのハンドルを握っているのが勝浩だということくらい。
「うわつ! 勝浩、勝浩、もちょっとゆっくりハンドルきろーな」
サイドシートで裏返った声を上げているのは、幸也の方である。
「案外、気が小さいんですね」
ヘアピンカーブで手に汗握る幸也の横で、勝浩が平然と言う。
確かにちょっとハンドルを切り損なった日には、谷底へ真っ逆様だろう。
「勝浩、お前、さてはわざとだな?」
「まさか」
うっかり、運転代わってみるか、などと口にしたばかりに。
いや、朝、目が覚めたときから、勝浩のご機嫌をいたく損ねてしまったらしい。
幸也がベッドから降りる頃には、勝浩はすっかり身支度を整えていた。
「おはようございます」
「今何時?」
「早くしないと、朝ご飯食べられなくなりますよ」
「うーん、俺、朝ご飯より、勝浩が食べたいな」
パンツ一丁で、勝浩の背後から抱きすくめる幸也を、いきなり肘鉄が襲う。
「朝っぱらから、ふざけたことをぬかしていると、おいていきますからね! ユウの散歩に行ってきます」
それでも、視線を合わせようとしない勝浩の首は真っ赤に染まっている。
「俺も行く! 五分、待ってろ」
慌ててシャワーを浴びた幸也は、Tシャツにハーフパンツを履くと、ユウを伴い、勝浩と一緒に部屋を出た。
それからがまたいけなかった。
「おっはよ! 勝っちゃん」
まず検見崎だ。
「仲良くお散歩っつーことは、幸也、夕べはうまくいったわけね」
にやにや笑う検見崎に、「おかげさまで」などとぬけぬけと幸也が答える。
「ああ、勝っちゃんがこんなインランなタラシに食われちまったなんてなー」
「ちょ、人聞きの悪いこと言わないで下さい」
反論するものの勝浩の顔は既に熱い。
本当は意地で普通に立っていようとしているが、身体はがくがくなのだ。
「もうこんなやつの肩持っちゃって、嘆かわしい」
検見崎は勝浩の肩に腕を乗せ、大げさに泣き真似をする。
「あら、ようやく決めたのね、幸也。かわいい勝浩をさらわれないように気をつけなさいよ。タケとかあぶなそー」
勝浩は怒りと羞恥に真っ赤になってその場から必死で逃げ出した。
「おい、勝浩、待てってば」
ハイキングコースをユウと歩いていても、勝浩はぷりぷりしている。
が、どうかすると転びそうになるのを気づかれまいとしている勝浩が、幸也は可愛くて仕方がない。
「ったく、恥知らずもいいとこだよ」
「いいじゃん、嬉しいから。勝浩は嬉しくないのか?」
もちろん、勝浩としても嬉しくないはずはない。
「だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょ」
「俺はみんなに宣言してもいいんだが」
「…………とりあえず、やめてください、それだけは」
ムッとしたまま勝浩は言った。
「わかった。じゃ、今夜はうちで、どう?」
「は?」
勝浩はうっかり振り返ってしまった。
「もちょと……力抜け…な……頼むから……俺ぁ、お前と一つになりてぇんだ………」
耳元に届いた幸也のそんな切なげな言葉に勝浩から次第に力が抜けていく。
「わりぃ………加減できねぇ………勝浩……かつ……」
軽口をたたいて勝浩をからかっているときの幸也はどこにもなく、口ではなだめすかしながら、容赦なく勝浩の体を開いていく。
「や……長谷川…さ…ん……!!」
「……幸也だ、幸也っ……て言って……………好きだ……勝浩………」
幸也の唇が耳朶に触れたまま動く。
「……ずるい………ゆき……っ!」
中で暴れ狂うのが幸也なのだと思うと、愛しさが込み上げて、広い背中に指がきつく食い込んでしまう。
もう嘘でも何でもいい、もうどうなってもいい……!
まるで身体の細胞の全てが幸也で満たされ、甘く変貌していく。
「………あ………あっ……」
勝浩の唇から制御不能な微かな喘ぎが色を帯びて漏れる。
「……かつ…ひろ…かつひろ……」
小さく悲鳴のようなひと際艶めいた吐息とともに幸也の指が濡れた途端、幸也も一気に果てた。
荒い息のまま、幸也はすぐに勝浩を抱きしめる。
こんなにも離れ難く、愛しい存在だったのに。
そんな想いに突き動かされ、幸也はぐったりした勝浩の顔を上げさせて唇を重ねる。
二度ともう、お前を傷つけるようなまねはしないから。
幸也は腕の中で意識を手放してしまった勝浩を見つめながら心に誓った。
日頃の行いがそんなによかったろうか、と思うほど見事な快晴の中、『動物愛護研究会』の一行は、一路帰途についた。
ただし、行きと少々違うのは、アウディのハンドルを握っているのが勝浩だということくらい。
「うわつ! 勝浩、勝浩、もちょっとゆっくりハンドルきろーな」
サイドシートで裏返った声を上げているのは、幸也の方である。
「案外、気が小さいんですね」
ヘアピンカーブで手に汗握る幸也の横で、勝浩が平然と言う。
確かにちょっとハンドルを切り損なった日には、谷底へ真っ逆様だろう。
「勝浩、お前、さてはわざとだな?」
「まさか」
うっかり、運転代わってみるか、などと口にしたばかりに。
いや、朝、目が覚めたときから、勝浩のご機嫌をいたく損ねてしまったらしい。
幸也がベッドから降りる頃には、勝浩はすっかり身支度を整えていた。
「おはようございます」
「今何時?」
「早くしないと、朝ご飯食べられなくなりますよ」
「うーん、俺、朝ご飯より、勝浩が食べたいな」
パンツ一丁で、勝浩の背後から抱きすくめる幸也を、いきなり肘鉄が襲う。
「朝っぱらから、ふざけたことをぬかしていると、おいていきますからね! ユウの散歩に行ってきます」
それでも、視線を合わせようとしない勝浩の首は真っ赤に染まっている。
「俺も行く! 五分、待ってろ」
慌ててシャワーを浴びた幸也は、Tシャツにハーフパンツを履くと、ユウを伴い、勝浩と一緒に部屋を出た。
それからがまたいけなかった。
「おっはよ! 勝っちゃん」
まず検見崎だ。
「仲良くお散歩っつーことは、幸也、夕べはうまくいったわけね」
にやにや笑う検見崎に、「おかげさまで」などとぬけぬけと幸也が答える。
「ああ、勝っちゃんがこんなインランなタラシに食われちまったなんてなー」
「ちょ、人聞きの悪いこと言わないで下さい」
反論するものの勝浩の顔は既に熱い。
本当は意地で普通に立っていようとしているが、身体はがくがくなのだ。
「もうこんなやつの肩持っちゃって、嘆かわしい」
検見崎は勝浩の肩に腕を乗せ、大げさに泣き真似をする。
「あら、ようやく決めたのね、幸也。かわいい勝浩をさらわれないように気をつけなさいよ。タケとかあぶなそー」
勝浩は怒りと羞恥に真っ赤になってその場から必死で逃げ出した。
「おい、勝浩、待てってば」
ハイキングコースをユウと歩いていても、勝浩はぷりぷりしている。
が、どうかすると転びそうになるのを気づかれまいとしている勝浩が、幸也は可愛くて仕方がない。
「ったく、恥知らずもいいとこだよ」
「いいじゃん、嬉しいから。勝浩は嬉しくないのか?」
もちろん、勝浩としても嬉しくないはずはない。
「だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょ」
「俺はみんなに宣言してもいいんだが」
「…………とりあえず、やめてください、それだけは」
ムッとしたまま勝浩は言った。
「わかった。じゃ、今夜はうちで、どう?」
「は?」
勝浩はうっかり振り返ってしまった。
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