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月で逢おうよ 23
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暖かい湯につかり、冷え切った体を温めると、勝浩はやっと人間に戻った気がしてほっと息を吐く。
「とにかくもう、面倒なことは考えないようにしよっと」
自分を励ますように呟いてみる。
もう胸が痛くなるような思いはごめんだ。
明日は合宿も終わって帰るだけだし。
長谷川さんの車にはもう乗れないから、検見崎さんの車にでも乗せてもらえばいいか。
湯船から上がると、新しいTシャツと下着に着替えてバスルームを出た勝浩は、自分用のベッドにうずくまるユウのすぐ横に長身の男が立って窓を眺めているのに気づいた。
「おやすみなさい」
さっさとベッドにもぐりこもうとした勝浩は、急に腕を引かれて振り仰いだ。
「話をしないか」
幸也は低く言った。
「俺には話なんかありません」
勝浩は幸也を睨みつけた。
くだらない言い訳も聞きたくないし、もう蒸し返したくもない話だった。
「いいから、聞けってんだよ!」
激高した幸也は乱暴に勝浩を起き上がらせた。
「過去の行状は別としても、今回、俺はお前をだまそうなんて気はこれっぽっちもない!」
「わざわざ部屋割りに小細工したくせに?」
勝浩はきっと幸也を見据えた。
「だから、それは、お前と一緒の部屋になりたかったからだって」
「へえ、それで今夜何を決めるつもりだったんです?」
冷ややかな勝浩の言葉に、幸也は一瞬たじろぐ。
「だから、だから、俺は……、お前がずっと好きだったんだよ」
そんな幸也の言葉を聞いて、勝浩はわざとらしくため息をつく。
「長谷川さん、それ、自分で言ってて、よく恥ずかしくなりませんね? 立ち聞きなんかしなけりゃ鵜呑みにしたかもしれないけど、残念でしたね」
幸也はちっと舌打ちした。
「これだよ、お前は多分、信じないと思った。だから、なかなか告ることもできなくて、俺はアメリカくんだりまで逃げたんだ」
勝浩は顔を上げて、部屋の中をうろうろと歩きながら話す幸也を見つめた。
「高三のあの時、俺は志央にはっきりフられてやっと目が覚めたって感じだった。俺自身になれたっていうか。そしたら、お前のことが気になり始めて。でもいくら俺でも、あいつがダメならやっぱりお前が好きだなんて、そんなことを言えるほど厚顔無恥じゃなくて」
それを聞いて何を言ってるんだと勝浩は鼻で笑う。
「だから、ずっと言えなくて。でも時がたてば、ひょっとしたら言える時がくるかもしれないって。とりあえず距離をおこうって、その間に、もし、お前が誰かを見つけたら、仕方ない……そう思いながら、やっぱ心配でさ。たまたま慶洋大にいたタケに、ワゴンと引き換えにお前のようすを報告しろってだな。だが、俺とあいつよく似てるし、従兄弟だって気づかれたら、お前が敬遠するんじゃないかと思ったのさ」
「なかなかつじつまの合った作り話ですね」
勝浩の一言に、幸也ははあっと息をつく。
「やっぱ信じないだろ、お前は」
「検見崎さんも、じゃあ、知ってて俺のことを報告していたと」
「言っとくが、やつにはただ、気になる後輩がいるから、お前のことを報告しろって言っただけだ。詳しい話なんか何もしてないからな。あいつは仕事にワゴンが欲しかっただけで、ウソの下手なヤツだし」
幸也は声を張り上げる。
「よく似ててもそこが違うんですね」
「言ってくれるじゃねーか。とにかく、俺はあっちにいて、お前の代わりを探したよ。だけどどいつもこいつもやっぱ、お前じゃなかった。そんな時、タケから、お前を狙ってるらしい女の子がいるって聞いて、いてもたってもいられずに、舞い戻ってきたんだよ」
煙草をくわえてはまたはずし、幸也は落ち着きなくそれを指の中でもてあそぶ。
「あの時、久しぶりに飲み会で会った時も、お前見て舞い上がりたいくらいだったけど、さり気に近づいた方がいいって思って。な、少しは信じてくれよ」
懇願するように幸也は勝浩を見た。
「ひかりさんだっているくせに」
「あいつはガキの頃からのダチで、その、俺のことよく知ってるから」
「ひかりさんもグルなんですか?」
すかさず勝浩は切り返す。
幸也は隣のベッドに座り、頭をかきむしった。
「ひかりは関係ねーって! 一体どうしたら、信じてくれるんだよ? しろってんなら、土下座でもなんでもするさ」
「やめてください。いい男が台無しですよ。眠った方がいい。朝になったらくだらないことは忘れてるかもしれないし」
幸也の話をさらりと流して、ベッドにもぐりこもうとする勝浩の腕を幸也は再び掴む。
「ああ、そうかよ! 言葉で信じないんなら体でわからせてやるさ」
いきなり毛布をはいで襲いかかってくる幸也に驚いて、勝浩は抵抗する。
「バカなこと! あんた、何やってんのか、自分でわかってんの」
「わかってるさ。夕べだって、一緒にいたら襲っちまいそうだったから、リビングで寝たんだ」
「え……」
一瞬、勝浩が怯んだ隙に、幸也は勝浩を押さえ込み、勝浩のTシャツを捲し上げる。
「やめ…てください!」
「無理だな…もう。嫌われるんならとことん嫌われろ、だ」
「とにかくもう、面倒なことは考えないようにしよっと」
自分を励ますように呟いてみる。
もう胸が痛くなるような思いはごめんだ。
明日は合宿も終わって帰るだけだし。
長谷川さんの車にはもう乗れないから、検見崎さんの車にでも乗せてもらえばいいか。
湯船から上がると、新しいTシャツと下着に着替えてバスルームを出た勝浩は、自分用のベッドにうずくまるユウのすぐ横に長身の男が立って窓を眺めているのに気づいた。
「おやすみなさい」
さっさとベッドにもぐりこもうとした勝浩は、急に腕を引かれて振り仰いだ。
「話をしないか」
幸也は低く言った。
「俺には話なんかありません」
勝浩は幸也を睨みつけた。
くだらない言い訳も聞きたくないし、もう蒸し返したくもない話だった。
「いいから、聞けってんだよ!」
激高した幸也は乱暴に勝浩を起き上がらせた。
「過去の行状は別としても、今回、俺はお前をだまそうなんて気はこれっぽっちもない!」
「わざわざ部屋割りに小細工したくせに?」
勝浩はきっと幸也を見据えた。
「だから、それは、お前と一緒の部屋になりたかったからだって」
「へえ、それで今夜何を決めるつもりだったんです?」
冷ややかな勝浩の言葉に、幸也は一瞬たじろぐ。
「だから、だから、俺は……、お前がずっと好きだったんだよ」
そんな幸也の言葉を聞いて、勝浩はわざとらしくため息をつく。
「長谷川さん、それ、自分で言ってて、よく恥ずかしくなりませんね? 立ち聞きなんかしなけりゃ鵜呑みにしたかもしれないけど、残念でしたね」
幸也はちっと舌打ちした。
「これだよ、お前は多分、信じないと思った。だから、なかなか告ることもできなくて、俺はアメリカくんだりまで逃げたんだ」
勝浩は顔を上げて、部屋の中をうろうろと歩きながら話す幸也を見つめた。
「高三のあの時、俺は志央にはっきりフられてやっと目が覚めたって感じだった。俺自身になれたっていうか。そしたら、お前のことが気になり始めて。でもいくら俺でも、あいつがダメならやっぱりお前が好きだなんて、そんなことを言えるほど厚顔無恥じゃなくて」
それを聞いて何を言ってるんだと勝浩は鼻で笑う。
「だから、ずっと言えなくて。でも時がたてば、ひょっとしたら言える時がくるかもしれないって。とりあえず距離をおこうって、その間に、もし、お前が誰かを見つけたら、仕方ない……そう思いながら、やっぱ心配でさ。たまたま慶洋大にいたタケに、ワゴンと引き換えにお前のようすを報告しろってだな。だが、俺とあいつよく似てるし、従兄弟だって気づかれたら、お前が敬遠するんじゃないかと思ったのさ」
「なかなかつじつまの合った作り話ですね」
勝浩の一言に、幸也ははあっと息をつく。
「やっぱ信じないだろ、お前は」
「検見崎さんも、じゃあ、知ってて俺のことを報告していたと」
「言っとくが、やつにはただ、気になる後輩がいるから、お前のことを報告しろって言っただけだ。詳しい話なんか何もしてないからな。あいつは仕事にワゴンが欲しかっただけで、ウソの下手なヤツだし」
幸也は声を張り上げる。
「よく似ててもそこが違うんですね」
「言ってくれるじゃねーか。とにかく、俺はあっちにいて、お前の代わりを探したよ。だけどどいつもこいつもやっぱ、お前じゃなかった。そんな時、タケから、お前を狙ってるらしい女の子がいるって聞いて、いてもたってもいられずに、舞い戻ってきたんだよ」
煙草をくわえてはまたはずし、幸也は落ち着きなくそれを指の中でもてあそぶ。
「あの時、久しぶりに飲み会で会った時も、お前見て舞い上がりたいくらいだったけど、さり気に近づいた方がいいって思って。な、少しは信じてくれよ」
懇願するように幸也は勝浩を見た。
「ひかりさんだっているくせに」
「あいつはガキの頃からのダチで、その、俺のことよく知ってるから」
「ひかりさんもグルなんですか?」
すかさず勝浩は切り返す。
幸也は隣のベッドに座り、頭をかきむしった。
「ひかりは関係ねーって! 一体どうしたら、信じてくれるんだよ? しろってんなら、土下座でもなんでもするさ」
「やめてください。いい男が台無しですよ。眠った方がいい。朝になったらくだらないことは忘れてるかもしれないし」
幸也の話をさらりと流して、ベッドにもぐりこもうとする勝浩の腕を幸也は再び掴む。
「ああ、そうかよ! 言葉で信じないんなら体でわからせてやるさ」
いきなり毛布をはいで襲いかかってくる幸也に驚いて、勝浩は抵抗する。
「バカなこと! あんた、何やってんのか、自分でわかってんの」
「わかってるさ。夕べだって、一緒にいたら襲っちまいそうだったから、リビングで寝たんだ」
「え……」
一瞬、勝浩が怯んだ隙に、幸也は勝浩を押さえ込み、勝浩のTシャツを捲し上げる。
「やめ…てください!」
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