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月で逢おうよ 19
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「でも、やっぱ、二人雰囲気似てるよな、ユウ。調子いいだけじゃなくてさ」
だからどうということはない。
それ以上詮索しようとは思わなかった。
だがその答えを、勝浩は意外なところから知ることになった。
垪和や美利が作ってくれたおにぎりなどで昼を食べた後で、また一緒にくっついてきた幸也と勝浩がリビングのソファでコーヒーを飲んでいると、ひかりがテニスに誘いにきた。
「勝浩もやるか?」
「いえ、ちょっと疲れたんで遠慮します。俺にはお構いなく。長谷川さん、どうぞ行ってきてください」
愛想笑いを浮かべ、勝浩は言葉通り遠慮した。
やっぱ……だめだなぁ。
二人の仲睦まじいところなんか見たくもない。
「じゃ、タケ、呼んできて。三人じゃできないじゃない」
ひかりが幸也の腕を掴んで、駄々をこねる。
「しゃーねーな、わかったから、離せって」
席を立って、幸也は検見崎を呼びに行った。
するとリリーもやってきて二人は幸也の座っていたソファに座り、携帯をいじり始めた。
間近で見ると、二人ともかなりな美人だ。
でも気さくで、誰とでも陽気に話している。
だが、自分はやはりこの二人とは関わりたくないと勝浩はその場を立ち去ろうとした。
「勝浩、テニス苦手なの?」
いきなり聞かれて、いや、別に普通ですけど、と答える。
「幸也、とてもじょうず」
リリーがたどたどしい日本語で笑う。
「そうですね、彼は昔から何でもこなすし。でも検見崎さんもテニスかなりな腕ですよ」
「タケ? そうね、二人で子供の頃からよく競ってたわよ」
ひかりが言った。
「ひかりさん、検見崎さんや長谷川さんとは昔から知り合いなんですか?」
勝浩はふと、聞いてみたくなった。
「うん、パパ同士が友達だから」
なるほど、そういう家柄の人種なわけだ。
「そうなんですか。でも、あの二人って何か、似てますね。雰囲気とか。不思議と」
何気なく口にする勝浩に意外な答えが返ってきた。
「あら、だって、従兄弟だもん、似ててもおかしくないよ」
「え…………」
頭の中でその意味を勝浩がしっかり把握するまで、しばしの時間を要した。
「従兄弟…って、あの二人?」
得体の知れない何かを飲み込んだように勝浩は息が詰まりそうになった。
「知らなかったの? ほら、二人のおじいちゃま、元政治家の」
「ああ、長谷川元外相?」
「幸也のパパとタケのパパが、その息子だから。タケのパパは婿養子に入ったから、検見崎だけど」
「え、そうなんだ………じゃあ、似てても当然ですね」
ごく普通に答えたつもりだったが、勝浩はかなり動揺していた。
だってそんなこと、二人とも何も……。
じゃあ、俺のこと、検見崎さん、初めから知ってた、とか? まさか、ね。
でも、何で、俺に近づいてきた?
検見崎さんがこの会に入ったのって、俺が入ってすぐあとだった。
ダブってまた一年生なんだとかって言って。
だから、どうしたっていうんだ?
俺のことなんか知ってたって、あの人にとって何の得にもならないじゃないか。
考えすぎだ。そんなこと。
そうは思うのだが、何やら嫌な感じが抜けてくれない。
「お前、顔色悪いぞ、勝浩」
はっと気づくと、目の前に幸也がいた。
「結構陽射し強かったからな。お前、何でもムキになってやりすぎるんだよ。休んだ方がいいぞ」
「え、ええ、いえ、ちょっと遊びすぎて疲れただけで、平気です。行ってらっしゃい」
そんな風に気にかけてくれるのは嬉しいけれど、逆に心が苦しくなる。
幸也の心配そうな目から顔をそらし、勝浩がふらふらと自分の部屋へと階段を上がり始めると、足元に寝そべっていたユウも起き上がり、とことことあとに続く。
本でも読もっと。
せっかく楽しい気分でいたのに、余計なことは考えないようにしよう。
外界から何もかもシャットアウトしてしまいたい、そんな気分だった。
夕方、勝浩がユウを連れて散歩から帰ると、既に検見崎たちの手で焼き肉が美味そうに焼けつつあった。
夜は屋内で焼き肉パーティの予定だったが、検見崎達がすっかり準備をしてくれたようだ。
「勝浩くん、早くおいでよ、なくなっちゃうよ」
美利に呼ばれて、勝浩はその隣に座った。
みんな、よく食べてよく飲んだ。
美利は飲み物を取ってきたり、皿を取り替えたりと何かと勝浩の世話をやいた。
「ごめん、いいよ、俺、自分でやるから」
「だって、なんか元気ないし、勝浩くん」
そんなに意気消沈ぶりが伝わってしまうのだろうかと、勝浩は気を取り直した。
「ちょっと今日、はしゃぎすぎてさ、運動不足がたたって疲れたんだよ。猫たち、みんないる?」
「うん、チャー子ってば、お風呂場好きなんだよね、なぜか。トラ吉とクロが喧嘩するから、クロは私の部屋にいるの」
「トラ吉、血の気多いよなー」
しばらく猫たちの話題で勝浩は美利と一緒に笑った。
犬たちは、宴会の前にみんな部屋に避難させている。
何せ、カラオケをやるもの、踊りだすもの、はじけきった夜が深まると、度をこえた酔っ払いが、リビングのあちこちで死屍累々と倒れ込む姿が見られた。
だからどうということはない。
それ以上詮索しようとは思わなかった。
だがその答えを、勝浩は意外なところから知ることになった。
垪和や美利が作ってくれたおにぎりなどで昼を食べた後で、また一緒にくっついてきた幸也と勝浩がリビングのソファでコーヒーを飲んでいると、ひかりがテニスに誘いにきた。
「勝浩もやるか?」
「いえ、ちょっと疲れたんで遠慮します。俺にはお構いなく。長谷川さん、どうぞ行ってきてください」
愛想笑いを浮かべ、勝浩は言葉通り遠慮した。
やっぱ……だめだなぁ。
二人の仲睦まじいところなんか見たくもない。
「じゃ、タケ、呼んできて。三人じゃできないじゃない」
ひかりが幸也の腕を掴んで、駄々をこねる。
「しゃーねーな、わかったから、離せって」
席を立って、幸也は検見崎を呼びに行った。
するとリリーもやってきて二人は幸也の座っていたソファに座り、携帯をいじり始めた。
間近で見ると、二人ともかなりな美人だ。
でも気さくで、誰とでも陽気に話している。
だが、自分はやはりこの二人とは関わりたくないと勝浩はその場を立ち去ろうとした。
「勝浩、テニス苦手なの?」
いきなり聞かれて、いや、別に普通ですけど、と答える。
「幸也、とてもじょうず」
リリーがたどたどしい日本語で笑う。
「そうですね、彼は昔から何でもこなすし。でも検見崎さんもテニスかなりな腕ですよ」
「タケ? そうね、二人で子供の頃からよく競ってたわよ」
ひかりが言った。
「ひかりさん、検見崎さんや長谷川さんとは昔から知り合いなんですか?」
勝浩はふと、聞いてみたくなった。
「うん、パパ同士が友達だから」
なるほど、そういう家柄の人種なわけだ。
「そうなんですか。でも、あの二人って何か、似てますね。雰囲気とか。不思議と」
何気なく口にする勝浩に意外な答えが返ってきた。
「あら、だって、従兄弟だもん、似ててもおかしくないよ」
「え…………」
頭の中でその意味を勝浩がしっかり把握するまで、しばしの時間を要した。
「従兄弟…って、あの二人?」
得体の知れない何かを飲み込んだように勝浩は息が詰まりそうになった。
「知らなかったの? ほら、二人のおじいちゃま、元政治家の」
「ああ、長谷川元外相?」
「幸也のパパとタケのパパが、その息子だから。タケのパパは婿養子に入ったから、検見崎だけど」
「え、そうなんだ………じゃあ、似てても当然ですね」
ごく普通に答えたつもりだったが、勝浩はかなり動揺していた。
だってそんなこと、二人とも何も……。
じゃあ、俺のこと、検見崎さん、初めから知ってた、とか? まさか、ね。
でも、何で、俺に近づいてきた?
検見崎さんがこの会に入ったのって、俺が入ってすぐあとだった。
ダブってまた一年生なんだとかって言って。
だから、どうしたっていうんだ?
俺のことなんか知ってたって、あの人にとって何の得にもならないじゃないか。
考えすぎだ。そんなこと。
そうは思うのだが、何やら嫌な感じが抜けてくれない。
「お前、顔色悪いぞ、勝浩」
はっと気づくと、目の前に幸也がいた。
「結構陽射し強かったからな。お前、何でもムキになってやりすぎるんだよ。休んだ方がいいぞ」
「え、ええ、いえ、ちょっと遊びすぎて疲れただけで、平気です。行ってらっしゃい」
そんな風に気にかけてくれるのは嬉しいけれど、逆に心が苦しくなる。
幸也の心配そうな目から顔をそらし、勝浩がふらふらと自分の部屋へと階段を上がり始めると、足元に寝そべっていたユウも起き上がり、とことことあとに続く。
本でも読もっと。
せっかく楽しい気分でいたのに、余計なことは考えないようにしよう。
外界から何もかもシャットアウトしてしまいたい、そんな気分だった。
夕方、勝浩がユウを連れて散歩から帰ると、既に検見崎たちの手で焼き肉が美味そうに焼けつつあった。
夜は屋内で焼き肉パーティの予定だったが、検見崎達がすっかり準備をしてくれたようだ。
「勝浩くん、早くおいでよ、なくなっちゃうよ」
美利に呼ばれて、勝浩はその隣に座った。
みんな、よく食べてよく飲んだ。
美利は飲み物を取ってきたり、皿を取り替えたりと何かと勝浩の世話をやいた。
「ごめん、いいよ、俺、自分でやるから」
「だって、なんか元気ないし、勝浩くん」
そんなに意気消沈ぶりが伝わってしまうのだろうかと、勝浩は気を取り直した。
「ちょっと今日、はしゃぎすぎてさ、運動不足がたたって疲れたんだよ。猫たち、みんないる?」
「うん、チャー子ってば、お風呂場好きなんだよね、なぜか。トラ吉とクロが喧嘩するから、クロは私の部屋にいるの」
「トラ吉、血の気多いよなー」
しばらく猫たちの話題で勝浩は美利と一緒に笑った。
犬たちは、宴会の前にみんな部屋に避難させている。
何せ、カラオケをやるもの、踊りだすもの、はじけきった夜が深まると、度をこえた酔っ払いが、リビングのあちこちで死屍累々と倒れ込む姿が見られた。
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