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月で逢おうよ 17
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だから、垪和に代わり、勝浩はもくもくと肉や野菜を焼くことに専念した。
「検見崎さん、代わりましょうか?」
美利がやってきて、そう言うと、「っと、んじゃあ、代わって、美利ちゃん」と検見崎は自分のエプロンを取って渡し、すかさず勝浩の肘を意味ありげに小突く。
にやにやしている検見崎は勝浩に睨まれ、ちょっと肩をすくめて声を上げた。
「勝っちゃん! 焼けすぎ、ピーマン」
「っと、ナスもそろそろ、みなさん、お皿、ください~」
まさか勝浩への告白を聞かれていたとは知らないから、美利は勝浩の横で嬉しそうに手を動かす。
「何だよ、いつのまにそこの二人、できちゃってんの?」
「えー、知らなかった、美利と勝浩くんって、そうなのぉ?」
酒が入っているから、みんな勝手なことを言う。
「あの子が勝浩に告ってたって?」
犬たちにおすそ分けをしながら、幸也はへらへらやってきた検見崎を掴まえて問いただした。
「そ。でも、美利ちゃんと勝っちゃん、いいセンいってると思わねぇ?」
「…フン…んなもん、わかるかよ」
途端、幸也はムッとした顔をする。
「何だよ、その冷たい反応」
検見崎の声が高かったので、何気なく勝浩が顔を上げると、幸也の視線とぶつかった。
咄嗟に目をそらした幸也に、ドクン、と勝浩の心臓が軋む。
「幸也、顔が怒ってる~」
ビールを手にやってきたひかりが、幸也の顔を見てわざわざ指摘した。
「勝浩くん、彼女いたんだね?」
「うるさいな、ほっとけよ」
酔っ払ったひかりがゲラゲラ笑った。
夜も深まると、さすがに肌寒い。
少しは食べたのだが、ものを口に入れることも何だか億劫になり、勝浩はバーベキューのあとジャンケンゲームなどにもちょっと加わっただけで、みんなが楽しそうにやっている花火を離れたところに座って見ていた。
美利はふいに元気がなくなった勝浩を心配して、さっきまで傍にいたが、花火に行っておいでよ、と勝浩に促されて、みんなの輪の中に戻った。
ひかりの甲高い笑い声がどこにいても聞こえる。
勝浩にはひどく耳障りだった。
今更なのに、嫉妬している。
浮かれてた。
また幸也と一緒にいられることに。
バカみたいだ。
「勝浩、ここにいたのか。なんだ、どした? 具合悪いのか?」
隣にきて座ったのは、勝浩を具合悪くさせた本人だった。
「ちょっと、酔ったみたいで。俺、先に休んでいいですか?」
「ああ、大丈夫か?」
まともに顔を見たら、言いたくないことを言ってしまいそうだ。
無理やり笑顔を返しただけで、勝浩は自分の部屋に向かった。
玄関のドアを開けると、大きな山荘を自由に探検できるとあって、猫たちが大喜びで走り回っている。
山道を散歩に連れて行ってもらい、ご飯をたらふく食べてご満悦の犬たちは、リビングで思い思いに寝そべっていた。
勝浩を見るとユウが嬉しそうに尻尾を振って、あとに続く。
自分の部屋に入り、勝浩が「よしよし」とユウの頭を少し撫でてやると、ユウは勝浩が持ってきてくれた自分のベッドに横たわる。
それを見て少し微笑みながら勝浩はベッドに腰を下ろした。
心が重い。
何もここに現れなくてもいいのに。
ひょっとしなくても幸也は彼女と約束をしていたのかもしれない。
だから、幸也は自分と一緒の部屋をいやがったのだ。
「ちぇ、考えてたって仕方ない。風呂入って寝よ」
立ち上がるのも億劫な気分だったが、湯船に湯を張ると、バスタオルを持って風呂に向かった。
幸也が部屋に戻ってきたのは、十二時になろうという時間だった。
「……ん……長谷川さん…」
ややあって、傍らに誰がが立っている気配に、寝ぼけ眼で勝浩は幸也を見上げた。
「悪い、起こしちまったか。いいから寝てろ。ちょっと煙草吸ってくるから」
くしゃっと勝浩の髪を撫でると、幸也はまた部屋を出て行った。
そのまま幸也が帰ってこなかったのは、翌朝、勝浩が起きて、隣のベッドが使われていないことでわかった。
勝浩はふうっと大きくため息をつく。
「仕方ないじゃん」
だいたい、忘れてるはずだったんだから、長谷川さんのことなんか。
「何で今更、また、昔みたいにあの人のことでどぎまぎしなくちゃならないんだよ、俺」
自分に言い聞かせるように言うと、ユウにリードをつけて散歩に連れ出した。
どうせ今だけのことだし。
この合宿が終われば、またあの人は住む世界が違う人になるだけだ。
変に期待したりしたら、またがっかりするのが関の山だ。
世の中、思い通りに行かないことの方が多いんだから。
勝浩が食堂に入っていくと、何人かが起きだしていて、朝食を取っていた。
「おはようございます」
朝食はパンと卵や野菜のセルフサービス、のはずだが、ちゃっかり女の子にオムレツなんかを作ってもらっている男どももいる。
「おはよー、勝浩くん、夕べ大丈夫だった?」
勝浩に気づいて美利が心配そうな顔を向けた。
「ああ、うん、美利ちゃん、酒強いなー」
「へへ。あ、作ったげよか? オムレツ」
「ねー、美利ちゃん、チャー子知らない? ごはんまだなのよ」
キッチンに取って返そうとした美利を、階段を降りてきた垪和が呼んだ。
「え、さっきリビングの梁の上にいましたけど」
「あ、いいよ、美利ちゃん、俺、自分でやるから」
勝浩は美利を促した。
「うん、ごめん」
美利は少し名残惜しそうに垪和と一緒に猫を探しに行った。
「検見崎さん、代わりましょうか?」
美利がやってきて、そう言うと、「っと、んじゃあ、代わって、美利ちゃん」と検見崎は自分のエプロンを取って渡し、すかさず勝浩の肘を意味ありげに小突く。
にやにやしている検見崎は勝浩に睨まれ、ちょっと肩をすくめて声を上げた。
「勝っちゃん! 焼けすぎ、ピーマン」
「っと、ナスもそろそろ、みなさん、お皿、ください~」
まさか勝浩への告白を聞かれていたとは知らないから、美利は勝浩の横で嬉しそうに手を動かす。
「何だよ、いつのまにそこの二人、できちゃってんの?」
「えー、知らなかった、美利と勝浩くんって、そうなのぉ?」
酒が入っているから、みんな勝手なことを言う。
「あの子が勝浩に告ってたって?」
犬たちにおすそ分けをしながら、幸也はへらへらやってきた検見崎を掴まえて問いただした。
「そ。でも、美利ちゃんと勝っちゃん、いいセンいってると思わねぇ?」
「…フン…んなもん、わかるかよ」
途端、幸也はムッとした顔をする。
「何だよ、その冷たい反応」
検見崎の声が高かったので、何気なく勝浩が顔を上げると、幸也の視線とぶつかった。
咄嗟に目をそらした幸也に、ドクン、と勝浩の心臓が軋む。
「幸也、顔が怒ってる~」
ビールを手にやってきたひかりが、幸也の顔を見てわざわざ指摘した。
「勝浩くん、彼女いたんだね?」
「うるさいな、ほっとけよ」
酔っ払ったひかりがゲラゲラ笑った。
夜も深まると、さすがに肌寒い。
少しは食べたのだが、ものを口に入れることも何だか億劫になり、勝浩はバーベキューのあとジャンケンゲームなどにもちょっと加わっただけで、みんなが楽しそうにやっている花火を離れたところに座って見ていた。
美利はふいに元気がなくなった勝浩を心配して、さっきまで傍にいたが、花火に行っておいでよ、と勝浩に促されて、みんなの輪の中に戻った。
ひかりの甲高い笑い声がどこにいても聞こえる。
勝浩にはひどく耳障りだった。
今更なのに、嫉妬している。
浮かれてた。
また幸也と一緒にいられることに。
バカみたいだ。
「勝浩、ここにいたのか。なんだ、どした? 具合悪いのか?」
隣にきて座ったのは、勝浩を具合悪くさせた本人だった。
「ちょっと、酔ったみたいで。俺、先に休んでいいですか?」
「ああ、大丈夫か?」
まともに顔を見たら、言いたくないことを言ってしまいそうだ。
無理やり笑顔を返しただけで、勝浩は自分の部屋に向かった。
玄関のドアを開けると、大きな山荘を自由に探検できるとあって、猫たちが大喜びで走り回っている。
山道を散歩に連れて行ってもらい、ご飯をたらふく食べてご満悦の犬たちは、リビングで思い思いに寝そべっていた。
勝浩を見るとユウが嬉しそうに尻尾を振って、あとに続く。
自分の部屋に入り、勝浩が「よしよし」とユウの頭を少し撫でてやると、ユウは勝浩が持ってきてくれた自分のベッドに横たわる。
それを見て少し微笑みながら勝浩はベッドに腰を下ろした。
心が重い。
何もここに現れなくてもいいのに。
ひょっとしなくても幸也は彼女と約束をしていたのかもしれない。
だから、幸也は自分と一緒の部屋をいやがったのだ。
「ちぇ、考えてたって仕方ない。風呂入って寝よ」
立ち上がるのも億劫な気分だったが、湯船に湯を張ると、バスタオルを持って風呂に向かった。
幸也が部屋に戻ってきたのは、十二時になろうという時間だった。
「……ん……長谷川さん…」
ややあって、傍らに誰がが立っている気配に、寝ぼけ眼で勝浩は幸也を見上げた。
「悪い、起こしちまったか。いいから寝てろ。ちょっと煙草吸ってくるから」
くしゃっと勝浩の髪を撫でると、幸也はまた部屋を出て行った。
そのまま幸也が帰ってこなかったのは、翌朝、勝浩が起きて、隣のベッドが使われていないことでわかった。
勝浩はふうっと大きくため息をつく。
「仕方ないじゃん」
だいたい、忘れてるはずだったんだから、長谷川さんのことなんか。
「何で今更、また、昔みたいにあの人のことでどぎまぎしなくちゃならないんだよ、俺」
自分に言い聞かせるように言うと、ユウにリードをつけて散歩に連れ出した。
どうせ今だけのことだし。
この合宿が終われば、またあの人は住む世界が違う人になるだけだ。
変に期待したりしたら、またがっかりするのが関の山だ。
世の中、思い通りに行かないことの方が多いんだから。
勝浩が食堂に入っていくと、何人かが起きだしていて、朝食を取っていた。
「おはようございます」
朝食はパンと卵や野菜のセルフサービス、のはずだが、ちゃっかり女の子にオムレツなんかを作ってもらっている男どももいる。
「おはよー、勝浩くん、夕べ大丈夫だった?」
勝浩に気づいて美利が心配そうな顔を向けた。
「ああ、うん、美利ちゃん、酒強いなー」
「へへ。あ、作ったげよか? オムレツ」
「ねー、美利ちゃん、チャー子知らない? ごはんまだなのよ」
キッチンに取って返そうとした美利を、階段を降りてきた垪和が呼んだ。
「え、さっきリビングの梁の上にいましたけど」
「あ、いいよ、美利ちゃん、俺、自分でやるから」
勝浩は美利を促した。
「うん、ごめん」
美利は少し名残惜しそうに垪和と一緒に猫を探しに行った。
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