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月で逢おうよ 11
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子供たちと一緒に無心に遊ぶ幸也が何だか清々しく、子供たちは彼に懐いて、彼の教えることに素直に頷いていた。
とてもいい人だと思っていたのに、その人の嫌なところを見つけるとがっかりすることがあるが、何てひどい人だ、と思っていた相手のいいところを偶然見つけたりすると、それがひどくすばらしいことのように思えてしまう。
勝浩があれほど嫌っていた陵雲学園高校を受験したのは、その公園で幸也を見た、それだけが理由だった。
品行方正、成績優秀な勝浩を周りが推したのをきっかけに勝浩が生徒会に入ったのも、幸也がいたからだ。
再び会ってみると、幸也とジャイアン志央との悪ガキコンビはエスカレートしていて、生徒会長と副会長という名前の裏でやりたい放題。
それでも成績は常にトップクラス、しかも生徒会の仕事はきちんとこなし、全校生徒の信頼も厚い。
加えて見てくれは申し分ない、とくれば、少ない女子生徒の殆どを味方につけたようなものだ。
悪ふざけが好きな幸也と志央のコンビは、案の定まじめな勝浩を面白がってからかい、勝浩はムキになって二人に意見する。
だが、いじめられるばかりだった子供の頃とは違い、勝浩は正しいと思ったら教師にですら遠慮なくずけずけものを言う、ある意味外見を裏切るキャラクターになっていた。
いつか二人の尻尾を掴んでギャフンといわせてやろうと思っていた勝浩に、思ってもいないチャンスが訪れたのは一年の冬休みのことだ。
一家でディズニーランドに出かけた勝浩は、パレードを見てからチェックインしたホテルのラウンジで、それぞれ女連れの幸也と志央に出くわしたのだ。
「やだぁ、すんごい飛ばすんだもん、幸也ったら。車、浮いてたわよぉ」
可愛い美女がしなだれかかっている幸也は私服というだけで高校生には見えない。
「ドイツ車は頑丈だから平気平気」
車のキーらしきものをちゃらちゃら手でもてあそんでいる幸也の後ろには、志央が大人の美女といちゃらいちゃらくっついたまま歩いている。
「負けちゃったじゃない、志央」
「俺は安全運転だからね、君に怪我させたくないしさ」
ドイツ車? 安全運転?
いくら誕生日早くても、二年の冬に十八歳になるわけないじゃん、普通。
ギロッと睨みつける勝浩に、ようやく幸也が気づき、さすがにちょっと驚いたようだ。
勝浩はその場で何か言うでもなく、踵を返すと、家族に合流した。
三学期の生徒会は静かだった。
勝浩が、いつ、何を言うか、幸也も志央も戦々恐々として、ようすを伺っていたに違いない。
思えば、その頃からこの二人は何人女を落とすか、なんてことを競争して、しかも賭けなんかをしていたのだろう。
人の心をもてあそぶなんて、ほんとに許せないやつらだ!
そう思う傍から、勝浩の目は幸也を追っていた。
だから、幸也が誰を追っていたか、はたでみていれば一目瞭然だったのだ。
そして度を越した遊びの賭けの代償は、幸也と志央の間にあった危うい絆の亀裂。
どちらが先に落とすか、性懲りもない、志央のターゲットは春にやってきたでかい転入生、そして幸也はこともあろうに勝浩をターゲットにしたのだ。
女子生徒が少なかったからか、きれいな志央に夢中になるのは女子ばかりではなかった。
だが、まさか志央がそのターゲットに本気の恋をするなんて、幸也としても思ってもみなかったのだろう。
「女やガキ相手なら、俺も許してたさ」
幸也が志央にキスしているところを勝浩は垣間見てしまった。
「ヤローになんかお前が本気になるなんて思ってなかった」
急に自分に優しくなった幸也のことを、勝浩も変だとは思っていた。
「志央と俺がよくやる遊びだ。どっちが早く落とすかってな」
「ほんと、サイッテーだよ、あんたたちって」
露悪的な台詞を吐く幸也に、勝浩は辛辣な台詞を投げつけた。
結局、ジャイアン志央は本気の恋を成就させ、学園の大学に進学し、幸也は志央とでかい転入生をからかうことで、一見してさほど変わらない風を装いながら、学園を卒業していった。
幸也の、志央への想いがどれほど深いものか、ずっと幸也を見てきた勝浩だからこそわかる。
志央を見つめる眼差しがどれほど優しかったか、それを気づかないなんて、志央はバカなやつだ。
でも、あなたがちょっとからかったつもりの俺が、実は随分傷ついていたなんて、それこそ思ってもみなかったんだろうな。
ずっと好きだった。
嘘の優しさでさえ、つい嬉しくなってしまうくらいに―――――――。
とてもいい人だと思っていたのに、その人の嫌なところを見つけるとがっかりすることがあるが、何てひどい人だ、と思っていた相手のいいところを偶然見つけたりすると、それがひどくすばらしいことのように思えてしまう。
勝浩があれほど嫌っていた陵雲学園高校を受験したのは、その公園で幸也を見た、それだけが理由だった。
品行方正、成績優秀な勝浩を周りが推したのをきっかけに勝浩が生徒会に入ったのも、幸也がいたからだ。
再び会ってみると、幸也とジャイアン志央との悪ガキコンビはエスカレートしていて、生徒会長と副会長という名前の裏でやりたい放題。
それでも成績は常にトップクラス、しかも生徒会の仕事はきちんとこなし、全校生徒の信頼も厚い。
加えて見てくれは申し分ない、とくれば、少ない女子生徒の殆どを味方につけたようなものだ。
悪ふざけが好きな幸也と志央のコンビは、案の定まじめな勝浩を面白がってからかい、勝浩はムキになって二人に意見する。
だが、いじめられるばかりだった子供の頃とは違い、勝浩は正しいと思ったら教師にですら遠慮なくずけずけものを言う、ある意味外見を裏切るキャラクターになっていた。
いつか二人の尻尾を掴んでギャフンといわせてやろうと思っていた勝浩に、思ってもいないチャンスが訪れたのは一年の冬休みのことだ。
一家でディズニーランドに出かけた勝浩は、パレードを見てからチェックインしたホテルのラウンジで、それぞれ女連れの幸也と志央に出くわしたのだ。
「やだぁ、すんごい飛ばすんだもん、幸也ったら。車、浮いてたわよぉ」
可愛い美女がしなだれかかっている幸也は私服というだけで高校生には見えない。
「ドイツ車は頑丈だから平気平気」
車のキーらしきものをちゃらちゃら手でもてあそんでいる幸也の後ろには、志央が大人の美女といちゃらいちゃらくっついたまま歩いている。
「負けちゃったじゃない、志央」
「俺は安全運転だからね、君に怪我させたくないしさ」
ドイツ車? 安全運転?
いくら誕生日早くても、二年の冬に十八歳になるわけないじゃん、普通。
ギロッと睨みつける勝浩に、ようやく幸也が気づき、さすがにちょっと驚いたようだ。
勝浩はその場で何か言うでもなく、踵を返すと、家族に合流した。
三学期の生徒会は静かだった。
勝浩が、いつ、何を言うか、幸也も志央も戦々恐々として、ようすを伺っていたに違いない。
思えば、その頃からこの二人は何人女を落とすか、なんてことを競争して、しかも賭けなんかをしていたのだろう。
人の心をもてあそぶなんて、ほんとに許せないやつらだ!
そう思う傍から、勝浩の目は幸也を追っていた。
だから、幸也が誰を追っていたか、はたでみていれば一目瞭然だったのだ。
そして度を越した遊びの賭けの代償は、幸也と志央の間にあった危うい絆の亀裂。
どちらが先に落とすか、性懲りもない、志央のターゲットは春にやってきたでかい転入生、そして幸也はこともあろうに勝浩をターゲットにしたのだ。
女子生徒が少なかったからか、きれいな志央に夢中になるのは女子ばかりではなかった。
だが、まさか志央がそのターゲットに本気の恋をするなんて、幸也としても思ってもみなかったのだろう。
「女やガキ相手なら、俺も許してたさ」
幸也が志央にキスしているところを勝浩は垣間見てしまった。
「ヤローになんかお前が本気になるなんて思ってなかった」
急に自分に優しくなった幸也のことを、勝浩も変だとは思っていた。
「志央と俺がよくやる遊びだ。どっちが早く落とすかってな」
「ほんと、サイッテーだよ、あんたたちって」
露悪的な台詞を吐く幸也に、勝浩は辛辣な台詞を投げつけた。
結局、ジャイアン志央は本気の恋を成就させ、学園の大学に進学し、幸也は志央とでかい転入生をからかうことで、一見してさほど変わらない風を装いながら、学園を卒業していった。
幸也の、志央への想いがどれほど深いものか、ずっと幸也を見てきた勝浩だからこそわかる。
志央を見つめる眼差しがどれほど優しかったか、それを気づかないなんて、志央はバカなやつだ。
でも、あなたがちょっとからかったつもりの俺が、実は随分傷ついていたなんて、それこそ思ってもみなかったんだろうな。
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