35 / 67
そんなお前が好きだった 35
しおりを挟む
「うーん、そんなことあったのか。江藤先生に挨拶にいったら、全然昔通り、明るかったぞ」
「まあ、それがさ、秀喜も実は割とすぐに離婚して、結局、秀喜家出てまた江藤先生と付き合い始めて」
元気は笑った。
「秋に正式に結婚式するらしいけど、近々籍入れるってよ」
「何だそうなのか、めでたいじゃないかよ」
井原は冷酒をぐいぐい空けてかなり酔っているので、声がでかい。
「そうなんだよ、でさ、仲間で先にウェディングパーティやろうって話になってるわけさ」
「なるほど。しかし何だって、そんな回り道になったんだ?」
井原は納得がいかないと腕組みをする。
「そりゃ、家の格式だの、年がどうのと、両方の親がうるさかったからな」
「つまんねえこだわり」
井原がすぱっと言い放つ。
「まあな、実際つまんないってわかってても、うるさいやつらがいるわけさ。秀喜の最初の結婚相手ってのがどっかの良家の子女って話だったのが、実は元カレと切れてないわ、遊び人だわってのがわかったし、姉が娘連れて戻ってきてさ、これがまたしっかりした子で、その子に女将をつがせるってことになって、秀喜は経営者に納まったっつう話」
元気は鮎をつつきながら、「パーティは俺の店でやるんだが」と付け加えた。
「元気の店でか? またライブやる?」
「お前は! まあ、やる予定だけどまだ詳細は未定だ。今度みんなで話すことになってる」
「わかった、俺も混ぜろよ! いや、秀喜も苦労したんだな。しかし純愛貫いたか、いい話じゃん。うん」
井原は一人悦に入っている。
「しかし、何? そんな話、この界隈じゃみんな知ってる話とか?」
改めて井原が確認する。
「あたりまえだろ? この狭い街で、こそこそやってもどっかで誰かが見てるんだよ。で、あっという間に噂は広がる」
「そんなに? あっという間に? え、じゃ俺のことも?」
それまで黙って二人の高校時代の話を聞いていた豪が、口を挟む。
「ああ、とっくだろ?」
サラリと元気は答えた。
「ええ、そうなのか? 元気のお母さんも知ってるとか?」
少し焦り気味に豪は言い募る。
「みたいだぜ?」
「みたいってそんな、無責任な」
豪はふう、と大きな溜息をついた。
「お前、さっき姉貴から電話来た時、坂之上豪って知ってるかって聞いたら、芸能人並みに人気あるらしいじゃん、界隈どころか日本中知れ渡ってるんじゃないのかよ? イケメンカメラマンとかって」
「いや、それは、いんすけど…………」
豪は井原に詰め寄られて、言動が尻すぼみになる。
「まあ、飲めよ。お前って元気とどこで知り合ったの?」
俄かに機嫌がよくなった井原は豪のグラスに酒を注ぐ。
「俺は、元気の大学の後輩で、GENKIのファンで写真撮らせてもらってて」
「フーン、それ以来の付き合いってわけか。それで今はグローバルに仕事してるってわけかよ、クソ!」
持ち上げているのかけなしているのかわからない言い回しで井原は自分のグラスにも酒を注ぐ。
「はあ……」
豪は何と答えていいかわからず、曖昧な返事をした。
「そいつ今日はかなりハチャメチャだから、適当に聞き流しとけ」
軽く言うと、元気はうまいな、と冷酒を空ける。
「どうしたんだよ、井原さん」
「ま、いろいろあるみたいだぜ」
ごまかした元気を豪は怪訝な顔で見た。
店を出ると、酒をがぶ飲みして酔いつぶれた井原を元気がタクシーで送って行った。
爆睡している井原を担ぎ上げて、井原の部屋に運ぶと、両親は笑いながら済まないと言った。
「いつもはこんなに酔っぱらったりしないんだが」
「まあ、たまにはありますよ」
ベッドに井原を放り投げると、元気は脱がせた上着をハンガーにかけてクローゼットに引っ掛けた。
その時、上着のポケットから携帯が落ちた。
元気が携帯を拾った時、画面が見えた。
画面にちょっと触れると簡単にロックが外れた。
元気はついアルバムを見てしまった。
「やっぱな………」
呟いた元気は少し首を振り、画像を閉じると、携帯をポケットに戻した。
「まあ、それがさ、秀喜も実は割とすぐに離婚して、結局、秀喜家出てまた江藤先生と付き合い始めて」
元気は笑った。
「秋に正式に結婚式するらしいけど、近々籍入れるってよ」
「何だそうなのか、めでたいじゃないかよ」
井原は冷酒をぐいぐい空けてかなり酔っているので、声がでかい。
「そうなんだよ、でさ、仲間で先にウェディングパーティやろうって話になってるわけさ」
「なるほど。しかし何だって、そんな回り道になったんだ?」
井原は納得がいかないと腕組みをする。
「そりゃ、家の格式だの、年がどうのと、両方の親がうるさかったからな」
「つまんねえこだわり」
井原がすぱっと言い放つ。
「まあな、実際つまんないってわかってても、うるさいやつらがいるわけさ。秀喜の最初の結婚相手ってのがどっかの良家の子女って話だったのが、実は元カレと切れてないわ、遊び人だわってのがわかったし、姉が娘連れて戻ってきてさ、これがまたしっかりした子で、その子に女将をつがせるってことになって、秀喜は経営者に納まったっつう話」
元気は鮎をつつきながら、「パーティは俺の店でやるんだが」と付け加えた。
「元気の店でか? またライブやる?」
「お前は! まあ、やる予定だけどまだ詳細は未定だ。今度みんなで話すことになってる」
「わかった、俺も混ぜろよ! いや、秀喜も苦労したんだな。しかし純愛貫いたか、いい話じゃん。うん」
井原は一人悦に入っている。
「しかし、何? そんな話、この界隈じゃみんな知ってる話とか?」
改めて井原が確認する。
「あたりまえだろ? この狭い街で、こそこそやってもどっかで誰かが見てるんだよ。で、あっという間に噂は広がる」
「そんなに? あっという間に? え、じゃ俺のことも?」
それまで黙って二人の高校時代の話を聞いていた豪が、口を挟む。
「ああ、とっくだろ?」
サラリと元気は答えた。
「ええ、そうなのか? 元気のお母さんも知ってるとか?」
少し焦り気味に豪は言い募る。
「みたいだぜ?」
「みたいってそんな、無責任な」
豪はふう、と大きな溜息をついた。
「お前、さっき姉貴から電話来た時、坂之上豪って知ってるかって聞いたら、芸能人並みに人気あるらしいじゃん、界隈どころか日本中知れ渡ってるんじゃないのかよ? イケメンカメラマンとかって」
「いや、それは、いんすけど…………」
豪は井原に詰め寄られて、言動が尻すぼみになる。
「まあ、飲めよ。お前って元気とどこで知り合ったの?」
俄かに機嫌がよくなった井原は豪のグラスに酒を注ぐ。
「俺は、元気の大学の後輩で、GENKIのファンで写真撮らせてもらってて」
「フーン、それ以来の付き合いってわけか。それで今はグローバルに仕事してるってわけかよ、クソ!」
持ち上げているのかけなしているのかわからない言い回しで井原は自分のグラスにも酒を注ぐ。
「はあ……」
豪は何と答えていいかわからず、曖昧な返事をした。
「そいつ今日はかなりハチャメチャだから、適当に聞き流しとけ」
軽く言うと、元気はうまいな、と冷酒を空ける。
「どうしたんだよ、井原さん」
「ま、いろいろあるみたいだぜ」
ごまかした元気を豪は怪訝な顔で見た。
店を出ると、酒をがぶ飲みして酔いつぶれた井原を元気がタクシーで送って行った。
爆睡している井原を担ぎ上げて、井原の部屋に運ぶと、両親は笑いながら済まないと言った。
「いつもはこんなに酔っぱらったりしないんだが」
「まあ、たまにはありますよ」
ベッドに井原を放り投げると、元気は脱がせた上着をハンガーにかけてクローゼットに引っ掛けた。
その時、上着のポケットから携帯が落ちた。
元気が携帯を拾った時、画面が見えた。
画面にちょっと触れると簡単にロックが外れた。
元気はついアルバムを見てしまった。
「やっぱな………」
呟いた元気は少し首を振り、画像を閉じると、携帯をポケットに戻した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる