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バレンタインバトル 11
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それを考えると、いくら工藤の命令とはいえ、自分が開けてしまって申し訳ない気がしてくる。
「とりあえず、これでOKってことで、食べ物飲み物以外は工藤の部屋に運んでおけばいいか」
けど、これってやっぱ俺がプレゼントなんかやっても、この中に埋もれるだけってやつ?
はあ、と大きく溜息をつくと、大体仕分けも終わったので、良太はもう切り上げて部屋に戻ることにした。
会社の上に自分の部屋があるというのは、便利なようで、気がつくと仕事をしたりしている自分がいて、何だかなぁと自分に呆れることがある。
「そうだ、母さんに礼言っとかないと」
自分宛のチョコやプレゼントをまとめて紙袋に入れると、良太はオフィスを出てエレベーターで自分の部屋へあがる。
荷物を置いてスニーカーを脱ぐと、パタパタと駆け寄ってきた猫たちを抱き上げて、エアコンを入れる。
「寒いよな~、イイコにしてたか?」
猫用に炬燵の温度を弱にしてつけているので、猫たちは炬燵の中でくっついて寝ているようだ。
猫のトイレを掃除したり、ご飯や水をあげたりしてから冷蔵庫を覗いたが、牛乳やポカリスエットくらいしか入っていない。
「おでんか何か、買ってくるかな」
口にすると急に腹が減ってきた。
以前は絨毯は敷いてあったものの、だだっ広い部屋の真ん中に炬燵を置き、パイプベッドやパイプハンガーを壁際に置いただけの寒々しい部屋だったのだが、昨年末から様相が一変した。
安っぽいパイプベッドやパイプハンガーは消え、部屋のど真ん中にクイーンサイズのベッドがでんと居座り、クローゼットやチェストやデスクなどのどっしりとした家具も増え、絨毯はふかふかに変わり、部屋らしくなったことは確かだが、炬燵はかろうじてベッドの横にあるものの、窓際に追いやられた。
まあ、炬燵に入ってテレビを観るというのはかわりばえしない習慣だが。
近くにあったダッフルコートを羽織り、スニーカーをひっかけて良太は外に出た。
エレベーターで一階に降りると警備員と目があったので、お疲れ様です、と会釈して通りへ飛び出した。
休日はサービスとして宅配便の受け取りもやってくれるので、良太にしてみれば大変ありがたい面々だ。
特に年末年始、加えてこの時期、宅配便が半端じゃなく届く。
駐車場の奥にあるちょっとした物置を宅配便置き場にして、受け取ったものはそこに保管してもらうことになっている。
クール便などは良太がいれば警備員室から連絡がくる。
昨年はチョコレートや酒などプレゼントのおすそ分けとして紙袋一杯警備員に渡したところ、結構よろこばれたので、今年も大量にもらってもらおうと思いながら、しょっちゅう通うコンビニへ向かった。
おでんに焼肉弁当、パンやポテトチップスなどを買うと、そそくさと部屋に戻る。
「うーー、さっぶーーーい! まずは風呂! 風呂入ろ!」
炬燵に買い物袋を乗せると、良太はバスタブに湯をためてゆったりとつかる。
風呂からあがり、ほかほかしていた良太だが、Tシャツにスエットでおでんや弁当をレンジにかけたりして歩き回っているうちに湯冷めしてきたらしい。
「いけね、せっかくあったまったのに。そうだ、沢村にもらった日本酒、あっためて飲めばいいじゃん」
慌ててスエットの上着を羽織ると、良太はオフィスから持ってきた自分宛のチョコなどが入った袋から日本酒の箱を取り出した。
マグカップに注いだ日本酒をレンジで温め、炬燵にまたもぐりこんでようやくささやかな晩餐を始めた。
外は夕方に差し掛かり、街の灯りが徐々にともり始めたところだ。
こうも寒い日が続くと、懐だけでなく心の中も寒くなるな…
「なんちって」
ナータンやマメ猫は二つくっついてペットベッドにのびて寝ている。
「平和過ぎるかも………」
独り言がそれこそ薄ら寒くて、テレビをつける。
ちょうどニュース番組が始まったところだが、テロやら殺人事件やら物騒な話が続いた後、バレンタインデーの平和そうな街のレポートに変わる。
携帯は手元にあるが、ワルキューレがとんと聞こえてこないのが物足りない。
「ま、いっか、明日の夜は東洋グループのパーティだから否が応でも顔を合わせるんだし……」
沢村が送ってきた日本酒は辛めだが飲みやすかった。
「やっぱ、あったまるぅ」
おでんをつつきながら弁当を半分ほど食べたところで、身体がほんわか温まってきた良太は、うつらうつらしているうちに眠ってしまった。
だから、しばらくしてドアが開いたのも気づかなかった。
「また、うたた寝してるのか」
つけっぱなしのテレビを消し、しばらく炬燵の上にあるものを見回していた工藤だが、起こすのも可哀相だと、傍らにあったダッフルコートを良太の上にかけ、そのまま部屋を出ようとした。
「へ……? 工藤?」
座布団に横になっていた良太は、気配にはたと顔をあげたが、アルコールと起きぬけの頭でしっかり状況を把握できない。
「寝るんならベッドに入れ。すぐ風邪を引き込むくせに」
「………飛行機、動いたんですか?」
「ああ、午後も遅くになってようやくな」
工藤の機嫌があまりよくないらしいことは、良太も感じ取る。
「とりあえず、これでOKってことで、食べ物飲み物以外は工藤の部屋に運んでおけばいいか」
けど、これってやっぱ俺がプレゼントなんかやっても、この中に埋もれるだけってやつ?
はあ、と大きく溜息をつくと、大体仕分けも終わったので、良太はもう切り上げて部屋に戻ることにした。
会社の上に自分の部屋があるというのは、便利なようで、気がつくと仕事をしたりしている自分がいて、何だかなぁと自分に呆れることがある。
「そうだ、母さんに礼言っとかないと」
自分宛のチョコやプレゼントをまとめて紙袋に入れると、良太はオフィスを出てエレベーターで自分の部屋へあがる。
荷物を置いてスニーカーを脱ぐと、パタパタと駆け寄ってきた猫たちを抱き上げて、エアコンを入れる。
「寒いよな~、イイコにしてたか?」
猫用に炬燵の温度を弱にしてつけているので、猫たちは炬燵の中でくっついて寝ているようだ。
猫のトイレを掃除したり、ご飯や水をあげたりしてから冷蔵庫を覗いたが、牛乳やポカリスエットくらいしか入っていない。
「おでんか何か、買ってくるかな」
口にすると急に腹が減ってきた。
以前は絨毯は敷いてあったものの、だだっ広い部屋の真ん中に炬燵を置き、パイプベッドやパイプハンガーを壁際に置いただけの寒々しい部屋だったのだが、昨年末から様相が一変した。
安っぽいパイプベッドやパイプハンガーは消え、部屋のど真ん中にクイーンサイズのベッドがでんと居座り、クローゼットやチェストやデスクなどのどっしりとした家具も増え、絨毯はふかふかに変わり、部屋らしくなったことは確かだが、炬燵はかろうじてベッドの横にあるものの、窓際に追いやられた。
まあ、炬燵に入ってテレビを観るというのはかわりばえしない習慣だが。
近くにあったダッフルコートを羽織り、スニーカーをひっかけて良太は外に出た。
エレベーターで一階に降りると警備員と目があったので、お疲れ様です、と会釈して通りへ飛び出した。
休日はサービスとして宅配便の受け取りもやってくれるので、良太にしてみれば大変ありがたい面々だ。
特に年末年始、加えてこの時期、宅配便が半端じゃなく届く。
駐車場の奥にあるちょっとした物置を宅配便置き場にして、受け取ったものはそこに保管してもらうことになっている。
クール便などは良太がいれば警備員室から連絡がくる。
昨年はチョコレートや酒などプレゼントのおすそ分けとして紙袋一杯警備員に渡したところ、結構よろこばれたので、今年も大量にもらってもらおうと思いながら、しょっちゅう通うコンビニへ向かった。
おでんに焼肉弁当、パンやポテトチップスなどを買うと、そそくさと部屋に戻る。
「うーー、さっぶーーーい! まずは風呂! 風呂入ろ!」
炬燵に買い物袋を乗せると、良太はバスタブに湯をためてゆったりとつかる。
風呂からあがり、ほかほかしていた良太だが、Tシャツにスエットでおでんや弁当をレンジにかけたりして歩き回っているうちに湯冷めしてきたらしい。
「いけね、せっかくあったまったのに。そうだ、沢村にもらった日本酒、あっためて飲めばいいじゃん」
慌ててスエットの上着を羽織ると、良太はオフィスから持ってきた自分宛のチョコなどが入った袋から日本酒の箱を取り出した。
マグカップに注いだ日本酒をレンジで温め、炬燵にまたもぐりこんでようやくささやかな晩餐を始めた。
外は夕方に差し掛かり、街の灯りが徐々にともり始めたところだ。
こうも寒い日が続くと、懐だけでなく心の中も寒くなるな…
「なんちって」
ナータンやマメ猫は二つくっついてペットベッドにのびて寝ている。
「平和過ぎるかも………」
独り言がそれこそ薄ら寒くて、テレビをつける。
ちょうどニュース番組が始まったところだが、テロやら殺人事件やら物騒な話が続いた後、バレンタインデーの平和そうな街のレポートに変わる。
携帯は手元にあるが、ワルキューレがとんと聞こえてこないのが物足りない。
「ま、いっか、明日の夜は東洋グループのパーティだから否が応でも顔を合わせるんだし……」
沢村が送ってきた日本酒は辛めだが飲みやすかった。
「やっぱ、あったまるぅ」
おでんをつつきながら弁当を半分ほど食べたところで、身体がほんわか温まってきた良太は、うつらうつらしているうちに眠ってしまった。
だから、しばらくしてドアが開いたのも気づかなかった。
「また、うたた寝してるのか」
つけっぱなしのテレビを消し、しばらく炬燵の上にあるものを見回していた工藤だが、起こすのも可哀相だと、傍らにあったダッフルコートを良太の上にかけ、そのまま部屋を出ようとした。
「へ……? 工藤?」
座布団に横になっていた良太は、気配にはたと顔をあげたが、アルコールと起きぬけの頭でしっかり状況を把握できない。
「寝るんならベッドに入れ。すぐ風邪を引き込むくせに」
「………飛行機、動いたんですか?」
「ああ、午後も遅くになってようやくな」
工藤の機嫌があまりよくないらしいことは、良太も感じ取る。
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