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希望とか愛とか夢とか
僕には何もない
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死にかけてから明らかに頭が鈍くなった。
脳に酸素が行ってない時間があるから当然なのかも知れない。
集中力もなくなったし、物忘れも酷くなった。何より新しく何かを覚えることができなくなった。
僕は倒れた当時、仕事で独立するつもりでいた。
そのために転職して修行を開始したばかりだった。
そしてその道は無情にも断たれた。転職して僅か2週間後のことだった。
これからどうやって生きていけばいい?
後から病院での記憶がいくつかフラッシュバックした。
ストレッチャーで運ばれていたのだろう、物凄い速さで移動しているのがわかった。
変な石板の下に止まったと思った。手術台のライトだろうが、何故石板と思ったのかはわからない。
とても暖かく感じた。自分に治療が必要だということはなんとなくわかった。だから、それが治療なんだと思った。
しばらくすると、自分の体から魂が抜けた。
物凄いスピードで空へ動き出し、あっという間に宇宙へ出た。
速度が段々遅くなる。赤い、そして熱い。どうやら、太陽に突入した。
ふと思い浮かんだ。
「火葬されてないか、これ?」
声を出そうと必死にもがく。
「おいふざけんな!生きてるぞ!」
心の中で何度も反芻したが、声どころか指一本動かない。
また思い浮かぶ。
「もしかすると、死んでも意識はあるのかも知れない」
誰も証明できないことだ。死んだ人間にだけ理解できる感覚。
「やはり自分は死んだのだろうか」
「なら仕方ないか」
「生きることもそろそろ疲れた」
次々に思い浮かんでは消える。
諦めて目を閉じた。
意識が戻った瞬間が何度かある。
ベッドで目が覚めた。上半身が起き上がっており、身体中に管が刺さっている。
やはり指一本動かない。周りで医師や看護師だろう、談笑しているのが酷いノイズと共に耳に入る。
誰も僕に気が付いていないようだった。目の前の通路を忙しく人が通る。
すぐに意識を失ったのだろう、少し目を閉じたつもりだったが、目を開けるとさっきとは別の場所にいた。
正確にいうと、天井が見えた。
また目を閉じる。目を開けると別の天井に変わっている。
不思議に思って何度か繰り返した。
やはり、目を開けるたびに天井が変わる。
夢もいくつか観た。
オペラ座のような所で神に触れた気がした。
オーロラのような姿で女性の神だった。
白い巨大な宮殿のような場所で白馬の彫像のような神にも会った。
自分が平面の世界に閉じ込められて、延々とテレビCMのようなコメディを見ていた。
平面の世界が恐ろしかったことを覚えている。このまま元に戻れない気がしたからだ。
目を開けると、九州にいるはずの弟と縁を切っていた母親が居た。
「あ、気づいた」
「兄貴ね、倒れたんだよ。心臓が止まったの」
「でも大丈夫。どんどん良くなってるから」
僕は祖父が亡くなった時を思った、というより、いつも心に抱えているのだ。
肺がんで亡くなった祖父にも亡くなる寸前まで告知をしなかった。大好きで祖母と共に最も尊敬している人だ。
まさか意識を取り戻した病人に死亡宣告はすまい。
「嘘だ」と返した。
「死なせてくれ」と続けた。
本当に死にたかった。僕にとって生きることは拷問だ。死ぬ勇気がないから、臆病だから生きているのだ。
今だってそうだ。生きることが辛い。楽しいとか嬉しいなんて感情はまるでない。
僕には希望がない。気狂いの両親のもと、貧乏な環境で育ち、両親と兄に虐げられ、独立にも失敗し、今となっては社会的地位も最底辺だ。
生きるための燃料が決定的に枯渇している。それは即ち、希望に他ならない。
僕はもう、疲れた。何も考えたくない。
脳に酸素が行ってない時間があるから当然なのかも知れない。
集中力もなくなったし、物忘れも酷くなった。何より新しく何かを覚えることができなくなった。
僕は倒れた当時、仕事で独立するつもりでいた。
そのために転職して修行を開始したばかりだった。
そしてその道は無情にも断たれた。転職して僅か2週間後のことだった。
これからどうやって生きていけばいい?
後から病院での記憶がいくつかフラッシュバックした。
ストレッチャーで運ばれていたのだろう、物凄い速さで移動しているのがわかった。
変な石板の下に止まったと思った。手術台のライトだろうが、何故石板と思ったのかはわからない。
とても暖かく感じた。自分に治療が必要だということはなんとなくわかった。だから、それが治療なんだと思った。
しばらくすると、自分の体から魂が抜けた。
物凄いスピードで空へ動き出し、あっという間に宇宙へ出た。
速度が段々遅くなる。赤い、そして熱い。どうやら、太陽に突入した。
ふと思い浮かんだ。
「火葬されてないか、これ?」
声を出そうと必死にもがく。
「おいふざけんな!生きてるぞ!」
心の中で何度も反芻したが、声どころか指一本動かない。
また思い浮かぶ。
「もしかすると、死んでも意識はあるのかも知れない」
誰も証明できないことだ。死んだ人間にだけ理解できる感覚。
「やはり自分は死んだのだろうか」
「なら仕方ないか」
「生きることもそろそろ疲れた」
次々に思い浮かんでは消える。
諦めて目を閉じた。
意識が戻った瞬間が何度かある。
ベッドで目が覚めた。上半身が起き上がっており、身体中に管が刺さっている。
やはり指一本動かない。周りで医師や看護師だろう、談笑しているのが酷いノイズと共に耳に入る。
誰も僕に気が付いていないようだった。目の前の通路を忙しく人が通る。
すぐに意識を失ったのだろう、少し目を閉じたつもりだったが、目を開けるとさっきとは別の場所にいた。
正確にいうと、天井が見えた。
また目を閉じる。目を開けると別の天井に変わっている。
不思議に思って何度か繰り返した。
やはり、目を開けるたびに天井が変わる。
夢もいくつか観た。
オペラ座のような所で神に触れた気がした。
オーロラのような姿で女性の神だった。
白い巨大な宮殿のような場所で白馬の彫像のような神にも会った。
自分が平面の世界に閉じ込められて、延々とテレビCMのようなコメディを見ていた。
平面の世界が恐ろしかったことを覚えている。このまま元に戻れない気がしたからだ。
目を開けると、九州にいるはずの弟と縁を切っていた母親が居た。
「あ、気づいた」
「兄貴ね、倒れたんだよ。心臓が止まったの」
「でも大丈夫。どんどん良くなってるから」
僕は祖父が亡くなった時を思った、というより、いつも心に抱えているのだ。
肺がんで亡くなった祖父にも亡くなる寸前まで告知をしなかった。大好きで祖母と共に最も尊敬している人だ。
まさか意識を取り戻した病人に死亡宣告はすまい。
「嘘だ」と返した。
「死なせてくれ」と続けた。
本当に死にたかった。僕にとって生きることは拷問だ。死ぬ勇気がないから、臆病だから生きているのだ。
今だってそうだ。生きることが辛い。楽しいとか嬉しいなんて感情はまるでない。
僕には希望がない。気狂いの両親のもと、貧乏な環境で育ち、両親と兄に虐げられ、独立にも失敗し、今となっては社会的地位も最底辺だ。
生きるための燃料が決定的に枯渇している。それは即ち、希望に他ならない。
僕はもう、疲れた。何も考えたくない。
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