戦国主婦

三苦之一幸(sankunoissi)

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二児の母で専業主婦 2020年秋

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「お父さん、お母さん、じゃ行ってくる。お願いね。なんかあったら電話して。」

母は奥の台所で包丁を手にして返事した。
「はいよ。もう二人とも大きいんだから大丈夫ずら、気を付けて行ってこーし。」
今日は、ママ友とのお茶会。子供たちを実家の父母にあずけて、たまには美味しいものでも食べに行こうと思っている。

私は、渡辺わたなべ めぐみ。
山梨県生まれ、山梨県育ちの35歳。
12歳の娘と10歳の息子をもつ、二児の母。
現在、子育てもある程度一段落。お料理は得意だけど、掃除洗濯も苦手。
働くわけでもなく、ぐーたらな毎日を過ごす専業主婦。
3歳年上の旦那と大学で知り合って卒業と共に早々と結婚。一般サラリーマンの平均年収的な、ごくごく普通の家庭。

今日のママ友ランチ会へは、待ち合わせ時間の11:30より少し早めに向かう。
山梨県では、車がないとどこへも行けないので、1人一台の愛車マイカーが必要なのである。
20分ほどで、最近ママ友の中では評判の甲府にある行列必須の、お洒落なカフェに到着。
駐車場から入口へゆっくりと歩いて行くと、ちょうど11:00。既にもう女性客が30人程並んでいた。
その一番後ろへ並んでいると、すぐ後ろから声がした。

「めぐ~久しぶり。」
小学校時代から、なんとなく仲良しの幸子である。店の入口で会って少し話をして、あの頃を思い出す。
幸子は相変わらず天然で、久し振りに会ったはずなのにバズーカみたいに一人で言いたいことだけ言って、話が止まらない。
他のママ友も到着して、行列の後ろへ並び話に加わった。
「11:30ちょうど、順番待ちも次だね。」
そう言うと、突然、両手をパンッと打って、幸子が飛び跳ねながら言った。
「そうだ。今日予約してるから、並ばなくていいんだった。」
皆一応に、口をポカンと開けたままズッコケた。押されて店内に入店。

幸子は私の隣にヅカっと座ると、もう決めてきたかのように誰の意見も聞かず左手を大きく広げてオーダーした。
「すみませ~ん。これ5つね。」

こんな時、子供の学校の事や、お互いの旦那自慢と、色々な話になるが、最終的に、パートや職場での人間関係の話に移っていくのだ。

(仕事をしていないのは私だけ。)
なんだか気不味い雰囲気になり口数が少なくなってしまう。
それをさとってか、雰囲気を読まないからなのか、幸子が話しかけてきた。
「めぐって結婚前にイベント業やってたよね。今仕事していないんでしょ。ちょっと手伝ってくれないかな?」
「え?結婚前って、あれはアルバイトみたいなもんだよ。何を手伝うの?」
「おもてなし武将隊って知ってる?イケメンの戦国武将の格好した男の子たちのお世話をして欲しいの。ボランティア的な~軽い気持ちでいいから~。時給900円どうで?」
「900円もくれるの?それはやる。」
と誘われ、軽い気持ちでボランティアすることになった。

帰り道、車の中でCDをセット。歌が流れる中一緒になって歌う。
「だってあなたに会いたい~から~♪」口ずさみながら、一人で叫んだ。
「よし!だつ
   ぐーたら主婦!」
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