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近すぎて見えない山 1989年秋
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祖母と4歳の孫娘の2人での散歩。
そこは、甲府盆地を180度見渡せる景色が広がっていた。
遠くに見える青みがかった山々を指差しながら孫娘は言った。
「おばあちゃん、あの山は?」
すかさず祖母はその問いに答えた。
「あれは八ヶ岳。」
「あれは?」「あれは甲斐駒ヶ岳。」
「あれは?」「あれは北岳。」
女の子は、後ろをくるりと振り返ると、
「ん~じゃ、あのおっきい山は?」「あれは春日山
「じゃあ、富士山はどこにあるの?」「富士山はね、あの大きな春日山に隠れて見えないんだよ。」
「なんで、かくれてるの?みえないの?かすが山のほうが大きいの?」「なんでだろうね。近くにありすぎて、見えないんだよ。」
「なんで、近くにあるのに、大きいのに見えないの?」
「めぐちゃんは、自分の顔が、自分の目でみえるかい?」「みえない…」
孫娘は、一生懸命片目をつむったり、上を見たり、下を見たり、ほっぺたを押し上げたりしてみた。
祖母は、その姿に微笑みながら言った。
「そうだろう、近すぎるとみえないもんなんだよ。」「ほんとうだ~みえないね。」
手を繋いで、歌を歌いながら家に帰った。
祖母は、色々な話を私にしてくれた。
毎日の散歩が楽しみで、幼いながらもこんなひと時がとても幸せに感じていた。
そこは、甲府盆地を180度見渡せる景色が広がっていた。
遠くに見える青みがかった山々を指差しながら孫娘は言った。
「おばあちゃん、あの山は?」
すかさず祖母はその問いに答えた。
「あれは八ヶ岳。」
「あれは?」「あれは甲斐駒ヶ岳。」
「あれは?」「あれは北岳。」
女の子は、後ろをくるりと振り返ると、
「ん~じゃ、あのおっきい山は?」「あれは春日山
「じゃあ、富士山はどこにあるの?」「富士山はね、あの大きな春日山に隠れて見えないんだよ。」
「なんで、かくれてるの?みえないの?かすが山のほうが大きいの?」「なんでだろうね。近くにありすぎて、見えないんだよ。」
「なんで、近くにあるのに、大きいのに見えないの?」
「めぐちゃんは、自分の顔が、自分の目でみえるかい?」「みえない…」
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祖母は、その姿に微笑みながら言った。
「そうだろう、近すぎるとみえないもんなんだよ。」「ほんとうだ~みえないね。」
手を繋いで、歌を歌いながら家に帰った。
祖母は、色々な話を私にしてくれた。
毎日の散歩が楽しみで、幼いながらもこんなひと時がとても幸せに感じていた。
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