魔術探偵

2章 悲しみの炎

序章

「拓真君。もしかして、俺の時代もう終わったの？あんなにたくさんの依頼来てたのに？」

都会にある小さな探偵事務所『源探偵事務所』は通称魔術探偵として一時、一部のオカルト好きの間で有名になっていた。それこそ、取材もした。
それなのに、あれから半年の月日が過ぎようとしていると、今はまた、冴えない探偵に戻っていた。

「それが、噂ってやつですよ。」

彼は、『前田 拓真』。
魔術についてよく知らない俺の変わりに魔術に対する知識を教えてもらうため彼は事務所のメンバーとして迎え入れた。

普段は俺の変わりに事務を任せた。
実際のところ彼には簡単なお仕事だったらしく、彼の元々の趣味でもあったゲームを今もしていた。

俺よりもよく仕事が出来るのと、魔術の知識で助けになっているためこの状況には俺からは何も言わなかった。
それに今まで一人だったこの事務所に話し相手がいるのも、正直ありがたいと思っている。

「え！？じゃあ俺も、普通に戻れるの。この摩訶不思議な依頼受けなくて済むの？」

この生活に慣れはじめてきた頃だが、自分の今のポジションはただ依頼を受けるだけで、解決方法などはだいたい拓真がしてくれていた。そのため本来の探偵であるはずなのに、なにもしなくていいということが、あまり嬉しくなかった。
魔術に関する依頼が減れば、必然的に、元の生活に戻れる。仕事が減ってしまうのは少し残念ではあるが、それはそれでいいのかもしれない。

プルルルルル

突然電話がなり、そこには『水谷  茜』と言う文字が見え、俺は咄嗟に嫌な顔をしてしまった。

「顔に出てますよ。どうせ師匠からなんでしょ。でも、やっぱりそれはないらしいですね。師匠が黙っちゃいないっしょ」

茜という人は、は表向きにはオカルト雑誌の編集をしているが、裏では魔術師をやっている。
彼女は、魔術師であることはあまり回りに知られたくないらしく、本来は彼女が魔術に対する知識を教えてもらうはずが、今はその弟子である、拓真がその役割をになっている。

そして彼女を嫌がるのは単純で、茜の俺に対する言葉が強い。
俺に限った話ではないのだが、このあたりの強い言葉にペースを乱されあまり会話が進まない。それが俺にとって少し苦手なことだった。

「やっぱダメか・・・」

俺は仕方がなく、スマホをとり電話に出た。

「はい、もしもし。茜さん、何かようですか？」

『お前に頼みたいことがあるんだがいいか？』